068 思わぬ痕と黒い虫
注意)私も苦手なので詳細な表現はしてませんが“台所の嫌われ者の黒い虫”が出ます。
読み飛ばしていただいても後の話に影響はありません。
ここの所、連日掘削現場までの案内や周辺警戒の仕事ばかりだったが、ようやく休日を取ることができた。
双子はそろって炬燵に入ってぐうたらとして微睡みの中にあった時、階下からマリーレインの悲鳴が耳に飛び込んできた。
「マリー姉の声だ」
「ん。何かあったのかな?」
「どうす……ぐぅ……」
「ん………」
疑問に思いどうしようかと話しているうちに、まぶたが落ちて再び眠りに身を委ね様としたのだが、ドスンッ! ガチャンッ! と、盛大に音が鳴り響いた。
「「にゃっ!」」
いよいよ階下で何があったのか気になり、身を起こして部屋を出た。
トテトテとゆっくり降りて行くと、居間の卓を中心に広がる惨状が目に入って来た。
「あー、ちょっと助けてくれないかなー」
「マリー姉、どうしたのこれ?」
「ん。ちょっとじゃすまない感じ?」
首を傾げながら見たそこには、昼食の準備をしていたのだろう料理や食器がひっくり返って辺り一面に散乱していた。
よくよく見てみると、マリーレインは手に怪我を負っているようで血を流してもいるようだった。
「ん。マリー姉、手、出して。純粋なる魔の源よ、穢れの悉を祓えたまえ………『浄化』『止血』。大丈夫?」
「あぁ。リーネありがとう。もう大丈夫よ」
「マリー姉、何があったの?」
ラウリーの疑問にマリーレインは台所を指さして言った。
「大きな虫か何かが居たのよ。慌てて料理を運んで来たら、今度は足元を通り抜けたみたいで、びっくりして転んじゃったのよ」
「片付けよっか?」
「ん。そうしよう」
居間の片づけが終わり台所へと移ると、マリーレインの言った何かの影を捉えた。
「うわぁ……目が合っちゃった」
「ん、これは、酷い……何匹いるんだろ?」
そこには黒光りする握り拳程もある虫が蠢いており、双子は耳を萎れさせた。
「今までこんなこと無かったのに、何があったのかしら?」
冷静に見ることができて落ち着きを取り戻したマリーレインは原因を考え始める。
「どこから入って来たんだろ?」
「ん。今まで居なかったんだから、そう考えるのは当然」
「どこから来たのかよね? 街中でも見ないわよ?」
「んー……。とりあえずは対処しなきゃ。清浄なる風の流れよ、新たな風をここにもたらせ………『空気作成』」
リアーネの魔法によって数分としないうちにバタバタともがくように動いていたかと思えば、ひっくり返って足をピクピクと痙攣させ始めた。
「リーネちゃん? あなた、何やったの?」
「凄いねリーネ! みんな動かなくなったよ!」
「ん。台所の低い場所に特定成分だけの空気を作った」
「あ! なるほどね。じゃあ、もう?」
「ん。死んでるはず」
箒と塵取りで死んだ虫を片付け、ゴミ箱へ。
「どこから来たのか、思いつくかしら?」
「『敵意感知』じゃ判んないよね?」
「『生命感知』なら良さそうね。生命を支える熱き魂の灯よ、その脈動を示せ………『生命感知』」
マリーレインの使った魔法によって、台所の一画から反応が返って来たらしく、一緒に移動してみれば、どうやら食器棚の裏側の方から反応があるという。
「いっぱい居る?」
「えぇ、そうね。沢山いるわね。リーネ、さっきのもう一度お願いしていい?」
頼まれたリアーネは頷きを返して魔法を使うと、時間と共に急速に反応が無くなって行く。
「ん。ラーリ、魔法鞄取って来て、この食器棚どかしてほしい」
「わかったー。ちょっと待ってて」
しばらく待って魔法鞄を持って来たラウリーが食器棚を回収すると、そこには思った以上に沢山の虫の死体が集まっていた。
「「「うわぁーー………」」」
いやいやながらもゴミ箱に捨て、床が見える様になれば原因が見えて来た。
「ひび割れだね」
「ん。ひび割れ」
「ここから入ってきちゃったのか……」
「ん。まずは塞いでおこう。硬き大地の巌の塊よ、我の望む姿を与える………『石変形』」
ひび割れた個所の穴を塞いで取りあえずの処置とした。
「これはやっぱり、この前の地震が原因よね?」
「あー。そうかー。こんな所にも影響するんだ」
「ん。そうすると、排水溝? 上下水道施設とかも大丈夫なのかな?」
「さぁどうかしら? 水道組合の管轄だから後で聞いてみるわね。まずは昼ご飯の作り直しからね。どうしようかしら?」
「外で食べよう」
「ん。とりあえず穴は塞いだけど、ちゃんと見てもらった方が良い」
「そうね。そうしましょうか。だったらあなた達は着替えてきた方が良いわね」
部屋着姿の双子に言って着替えてから三人で出かけ、建築組合に工房の修理をお願いしたら、のんびりと昼食の時間を楽しむのだった。
読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。




