064 地震災害と下宿先
この冬、経験を積んで探索者を目指そうと約束して五人は学院を卒業する。
ラウリーとルシアナは狩人組合に所属する。
リアーネとロレットは狩人組合と錬金組合に所属する。
レアーナは狩人組合と鍛冶組合に所属する。
それに先だって双子は住居を決める必要に迫られていた。
「寮出たらどうする? 村に帰る?」
「ん……どうしようか? テルトーネの方が仕事も本もいっぱいだから迷う」
「ラーリ達は住む所から考えなくちゃいけないのか。大変だね」
錬金術工房の居間で焼き菓子を摘みながら困り顔で話している双子にマリーレインから声がかかる。
「家だったら、まだ部屋の空きがあるわよ」
「姉さま、他に弟子取らないの?」
元々は弟子を下宿させるためにある部屋だから、心配したロレットが聞いたのだ。
「ロットが一人前になってここを出てからゆっくり考えるわよ。だから気にしなくて大丈夫」
「だってさ! ボクも歓迎するよ!」
「二人が一緒なら私も嬉しいの!」
「おぉー! ほんとに良いの?」
「ん。ありがたい」
嬉しさに耳はピコピコ、尻尾はブンブン振られていた。
「いやー、リーネは色んな魔導具考えるんだもの一緒に居ると楽しいわ。だから、気にしなくていいのよ」
「「ありがとうございます!」」
双子にとっても下宿の申し出はありがたく、お世話になることにしたのだった。
◇
卒業式の翌日には、荷物を魔法の背負い鞄に全て詰め込んでしっかりと掃除をしてから『猫のかぎ尻尾』の部屋を後にした。
「この部屋、こんなに広かったんだねー」
「ん。いつの間にか沢山荷物が増えてた」
「リーネの本棚が一番大変だったけどね」
ラウリーは腰に手をやり冗談交じりに鼻息荒く、苦労したのだと尻尾でリアーネをペシペシと叩きながら主張する。
「ん……大半は寮の本棚に残していくけどね」
リアーネは悪いと思いつつも必要があって持っていたものだと言いわけをした。
名残惜しさを振り払い、さて行こうかと背を向けた。
「お邪魔しまーす」
「ん。ん? これからは『ただいま』かな?」
錬金術工房の扉を抜けて挨拶をしたはいいけれど、これからお世話になるのだからとリアーネは首を傾げて一瞬考え込んでしまった。
「おかえりなさい。そう硬く考えなくても、ここで下宿するのだから『ただいま』と言ってくれたら嬉しいわ」
そう言ってマリーレインは優しく微笑み迎えてくれた。
「部屋の準備は整ってるの!」
「ボク達が掃除しておいたからね!」
「「ありがとう!」」
胸を張って歓迎するルシアナとロレットに双子は抱き着きながらお礼を言った。
それから二階へ移動して、狭いながらも一緒が良いと双子は同じ部屋に荷物の配置場所を相談する。
どうしても場所を取る本に関しては、図書室として使っている部屋に置かせてもらうことにしていたのだ。
双子は引っ越し作業を何とか終わらせ、マリーレインたちは歓迎会だと食事も用意し、これからよろしくねとグラスを合わせた時に、それは起こった。
ドンッ! ドドドドンッ! ………グラグラグラグラグラッ!
「「にゃーーっ!」」
「な、なっ、なにっ!?」
「ひゃーー………!」
「ちょっと! じっとして! 頭抱えて!」
突然の突き上げるような衝撃の後、大きな揺れが数十秒ものあいだ街を襲った。
揺れが収まり大丈夫なのかと抱き合い、手をつなぎ合って辺りを見回し息をひそめて様子をうかがう。細かな揺れが残るのか、時おりカタカタと聞こえると、耳をそばだてビクリとしてしまう。
「みんな。大丈夫ね?」
恐る恐る聞くマリーレインに、皆は問題の無いことを伝える。
「ご飯は! 良かった、大丈夫」
「ん。図書室が心配」
「あーっ。ボクの部屋大丈夫かな……」
「私は台所の確認に行ってくるの」
屋内で一番の被害はリアーネの予想通りに図書室の本だったが、調薬室の器具の被害も大きかった。次はルシアナの観葉植物で、他も多少の被害はあったが大したものでは無さそうだった。
「街は大丈夫かな?」
「ん。心配。火事になってたりしないかな」
「そうね。みんなは中で待っていて、私が見て来るわ」
マリーレインが外に出て精霊の力を借りて街の様子を探ってみると、リアーネの心配通りにいくつかの小火を確認した。どれも離れた場所のため、自分達が避難も対処もする必要は無さそうであった。
「とりあえずは大丈夫そうよ。まずは……そうね、食事を済ませてしまいましょうか」
食事の後は家の状態を確認し不安のある所は魔法で補強していった。
周りの工房でも家の補強や修理を行っている様子を見ることができた。
一晩明けて、明るい中で家の状態を確かめて細々とした修理を行い、昼からは街中の確認がてら組合へ行くことにした。
まず立ち寄ったのは盾の乙女寮。今まで双子がお世話になっていた寮であるから、気にならないわけもない。
「みんなー、大丈夫だったー?」
「ん。昨日の地震は凄かった」
「あっ! 先輩方! ご心配ありがとうございますっ! 寮は大丈夫だったんだけど、お隣が結構崩れちゃってて、手伝いが大変でしたよ」
川沿いの北隣の建物が数件傾き崩れているのだと教えられた。様子を見るに住人の救助は終わっているらしく怪我の酷かった人達も急遽用意された救護所に運ばれ治療を受けているらしい。
その後、移動しながら確認すると、特に酷いのが街中の川沿い西側の並びだろうか。どこも旧来からの市街地で護岸や地盤沈下などの対策が不十分だった場所であろうと、入学初年の寮の出来事を双子は思い出した。
「「こんにちはー!」」
狩人組合に顔を出し、何かできることは無いかと聞いてみる。
「おぅ、それなんだがな、街中だけじゃなくて街の外、特に山の状態を調べた方が良いということになった。お前達にも行ってもらうが、今日はまだ無理だな。街中のことで手一杯だしよ」
そうして、瓦礫撤去や怪我人の治療に炊き出しなど、双子は手伝いに奔走した。
読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。




