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ねこだん!  作者: 藤樹
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060 魔法指南と特製弾

「みんな基本的な所は知っているはずだけれど、最も簡単な構成の魔導具と言えばどのような形になるかは解りますか?」


 森人の錬金術講師ヨハンナの質問に対して、四十人は居る教室内から返ってきた答えは、点火の魔導具だけだった。


「残念。私の言う簡単な構成とは売り物のことではなく、実際に効力を発揮する魔導具としての最小構成のことですよ」


 指先を立てクルクルとさせながら答えを待つが、誰からも正解が出ることは無く、仕方なしに模範解答を得られる相手に振ることにした。


「では、助手のリアーネさん、答えを」


 仕方なさそうに脇に居るリアーネを指名し、仕方なさそうにリアーネが答える。


「ん。魔石に魔法陣を焼き付けただけの物」

「その通りですね。用途に合わせて入れ物を作らなくても、最低限魔導具として機能します。入れ物を作るのは、利用しやすくするためであるとか、効果を高めるためであるとかでしょう」

「ん。後は複数の魔法陣を使用する魔導具で、複数の魔石に焼き付け、それらをつなぎ合わせる必要があり入れ物を用意することもある」

「そうですね。では一般で売られているもっとも簡単な構成の物は、おそらくこれでしょう」


 ヨハンナの指示の下リアーネが取り出したのは、革紐の首飾りに魔石が一つぶら下がっている、身体能力向上のお守りとして売られていた物だった。


「本日はこのような、簡易な構成でありながら、有用な魔導具を考えてもらいたい」

「ん。使用できる魔石は一つ。複数の魔法陣を詰め込めるのであれば挑戦してほしい。後は、首飾りでも、腕輪でもいいけど、革紐でぶら下げるだけの構造は変わらない」


 その説明を受け、生徒は思い思いに錬金粘土で魔法陣を作って行く。



 例に出した首飾りの影響か、多くの生徒が身体能力強化の魔導具を作成した。

 つまらないと思いながらも評価を進め、そんな中でも毛色の違う物が提出された。


「これは面白いですね。『時計』『時報』『幻影』と比較的簡単な魔法とは言え無理なく三つ組み合わせてありますね。惜しむらくは『魔力集積』が無いため定期的に手動で魔力を充填しなければならない点でしょう」

「ん。魔力効率より作り易さを考えて平面複層魔法陣にしている点も評価できる。後は形状と幻影で見せる意匠に気を配れば売り物になり得る」

「さすが色々と開発なさっている方は言うことが違いますね。近年使われるようになった秒時計(ストップウォッチ)もリアーネさんの開発した物でしたね。みなさんも負けてはいられませんよ」


 ◇


「浮かない顔ですがどうしましたか?」

「ん。翼竜の続報まだかなって?」

「気にはなりますが、あなたはまだ見習いであるのです。直接かかわることにはならないでしょう。先日の遭遇することなど本来あってはならないのですよ」


 授業を終えて、そんな話をしながら学院内の研究室に戻って行く。


 戻りましたと扉を開けた室内には、十人程を確認できた。ここに居る半数以上が学院所属の研究者であり、新しい魔導具の研究のかたわら教鞭をとっている者達だ。

 中には研究助手として卒業前の生徒が加わることもある。リアーネの場合は研究の手伝いではなく、自身の研究開発という違いはあるのだが。


「おや、先日の続きでは無いのですね?」

「ん。翼竜対策を考えておきたい」


 自身に与えられた席に着き、先日購入したばかりの大型狙撃銃に魔筒(薬莢)や弾丸用の素材に魔法陣、魔導書などを並べていると、そんな声が掛かった。


「これを、リーネでも使えるようにする」

「ふぅ……。まったく。あなたがどうこうすることでは無いのですが、まぁ、頑張りなさい」


 ヨハンナも自身の席に着き、研究を再開させたのだった。


「ん……。銃身は、白鉱にして形状、密度も調整……で、黒くする。軽量化は……今回は考えない方が良いかな?」


 銃身のみで二メートル近くある大型狙撃銃のバランスや施された魔法陣も修正していき『回転』『加速』『防音』『魔力集積』を焼き込んだ魔石を取り付けて、発砲時の反動を吸収するための仕掛けを銃床部分に作り付け、銃を支える二脚も取り付けた。


 銃弾作成の魔導具の魔筒(薬莢)に施す『衝撃波』の魔法陣も作り直して調整する。

 属性弾を主に使うことを想定し、弾丸部分に付与する魔法は『雷球』と『麻痺』『盲目』『半速』であった。

 これはリアーネの悪ふざけとも言える様な細密な魔法陣が作れなければ、弾丸に使われる様な小粒の魔石にこれだけの数を施すことは出来ないことだった。


 ひとしきり作業を終えた頃には、既に終業時間が迫っていた。



 帰りは五人が合流して狩人(ハンター)組合(ギルド)に顔を出す。


「翼竜どうにかなった?」

「ん。あと、新しい銃に手を入れて来たから試験してほしい」

「お。また何か作って来たのかい?」


 リアーネの声を聞きつけたウルマスが嬉しそうな顔をしてやって来た。


「ん? 細部の修正……だけかな? 銃本体より銃弾の方が手を入れた」

「何だそりゃ? まぁ何でも試してみりゃ解るってか」


 射撃場へと移動してリアーネが取り出した銃を見て、皆は驚きの声を上げてしまう。


「リーネ!? こんな大っきいの使えるの?」

「うちでも、これは扱いきれないんじゃない?」

「うっはー、リーネまた思い切ったねー。ボクの背よりあるんじゃないのこれ?」

「な、なんでこんな大きな銃作ったの? リーネほんとにこんなの使えるの?」

「おぉ! これって、クスタヴィんとこの銃じゃないか? 俺の銃もあの親父んとこで買ったやつだよ。良いの選んだじゃないか!」


 ラウリー達の驚きをよそに、おもちゃを手にしたように尻尾を振りながら、ウルマスが銃を手に取りおかしなところが無いかと各部の確認を始め、撃つ構えを取る。


「ん。立ったまま使うんじゃなくて、地面において伏せて使う」

「お? そうなのか? あぁっ! それで脚が付いてるのか! この大きさの銃はお嬢ちゃんが使って大丈夫か不安だったんだが、それなら行ける……のか?」

「ん。多分。不安もあるから試してほしい。後、弾はこれも使って」


 普通の十二×百ミリ弾以外にリアーネの用意した魔筒(薬莢)製の通常弾と属性弾を並べて置く。


「こっちは何か違うのか?」

「ん。魔筒(薬莢)に込めた魔法を少しいじった。威力が上がってるはず」


 任せておけとの返事に、皆も手伝い弾倉に弾を込めていく。

 大型狙撃銃用の的を用意し射撃体勢も整えて、照星頼りに狙いを付ける。


 ドッ……ゥンッ!


 リアーネの使っている狙撃銃よりも大きな弾を使うために、立てる音もかなり大きいようだった。


「うん。うん、うん、うん! いいねー。弾の伸びが違うよこれ。思ったほど反動も掛からないし、この使い方ならお嬢ちゃんでも大丈夫だろ」

「ん。良かった」


 その後、普通の弾を弾倉四つ分撃ち終えてからも、銃の状態を確認していく。


「本当にいいなこれ。俺も買っちゃおうかな」

「でもそれ、リーネが改造した銃だよ?」

「そうそう。そのまま注文してもきっと別物だよ」

「リーネだからねー。魔法鞄(マジックバッグ)のことは知ってるでしょ」

「そうなの。何作っても性能が上がってるの」

「お、おぅ。そうか。まぁ、なんだ。よかったらで良いんだが、どんな改造したのかクスタヴィの親父さんに見せてやってくれ」


 ラウリー達の注意に押され気味になるウルマスであるが、何とか手に入れられないかとそんなことを言う。


「ん。問題無い。そのためにも試射の続き」


 次はこれを試してほしいと改造魔筒(薬莢)の通常弾をリアーネは示す。

 各部の確認、弾倉を込めて的に狙いを付けて引き金を引く。


 ドッ……ガァーー……ンッ!!


「「「ひゃあっ!?」」」


 あまりの大きな音と反動で跳ね上がる銃に皆は悲鳴を上げたのだ。


「うっひゃー。こりゃたまらん。随分でかい音するんだな」

「え? よく聞こえない。まだ耳キーンってしてるー」

「ん。想像、以上」


 耳を抑えてフラリと体を揺らしながら双子はうずくまる。


「……何したら、こんなに……なるんだ?」


 破壊された的を見ながら、あまりの威力の違いに呆然とした呟きがウルマスの口からこぼれだす。


「ん。改造するから、ちょっと待っててほしい」


 気を取り直したリアーネはそう言って、腰鞄(ウェストポーチ)から魔法陣を取り出し『静寂』を追加して作り変え、新しい魔石に焼き込み交換する。

 次に硬銀(チタン)を取り出して、沢山の穴の開いた薄い円筒を作り、八層からなる返しを付けた一回り大きな円筒に収める。できた物を銃身の先端に取り付けて改造を終わらせた。


「ん、終わった。これで、試して」


 魔力の消耗度外視で素早く改造を終わらせたリアーネが息も荒くウルマスに試射の続きをお願いする。


「お、おぅ。任せろ」


 気を引き締めて射撃姿勢になり、引き金を引く。


 パシュッ!


「「「!?」」」

「おぉ! 随分と静かになったじゃないか!」


 通常弾よりもさらに静かな発砲音に皆は驚きの声を上げ、汗を拭きながらもリアーネは満足そうな顔をしている。

 各部の確認をしてから、さらに弾倉三つ分の試射を続けて問題無いことを確認する。

 次に使うのは属性弾だ。


「こいつの属性は何なんだ?」

「ん。『雷球』『麻痺』『盲目』『半速』の四つ」

「なんだ? 四種類の弾が混じってんのか?」


 リアーネの答えに不思議そうにウルマスが返す。


「ん? 一発に四種類付与されてる」

「へ? どんな魔石使ったんだそりゃ」

「ん。普通の属性弾に使うような小粒の魔石」


 見せられた魔法陣の小ささに驚きを通り越して呆れかえるウルマスとレアーナだった。

 属性弾の試射も問題なく終わって銃をばらして確認するも、問題は無いだろうと許可が出た。

 その後ようやく照準器を付け調整しながら、リアーネが試射を行った。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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