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ねこだん!  作者: 藤樹
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056 薬の効能と新形状

「例えばこの草には毒性がある。しかし使用する量や調合方法、他の素材によっては薬となる。このような物もあれば、こっちの毒草はどう使おうとも毒にしかならない。またこちらの薬草、強力な効果の薬が作れるが沢山服用すれば体を壊す原因ともなる。何事にも適量というものがあることは覚えていてほしい」


 学院の実習棟の一室である調薬室の窓の外は、煙る様に降りしきる雨で随分と暗くなっていた。


「ね、ロット。薬って配合? とか厳しいよね」

「当然なの。先生の言うように毒にも薬にも成り得るの、だから気を抜いて薬のつもりで毒を作ってたら、死人が出るかもしれないの」

「そうだよねー。武具の類だって形ばっかりで強度のことが考えられてなかったら、肝心な時に壊れるかもしれないんだし、うちも作り手としては気の抜けないところだよー」

「そっかー。リーネが何か作る時もいっぱい調べて試作品作って、問題ないか確かめてる」

「うちだっていっぱい作ってるよ。百本打って何も掴めん様なら鍛冶には向いてないって、父ちゃんいつも言ってるよ」

「命を預ける物を作る側は、いつだって真剣に取り組んでるの」

「おぅ、お前ら。俺の授業も真剣に取り組んでほしいんだがなぁ?」

「「「あっ……ははは」」」


 こそこそ話していたつもりが、いつの間にやらすぐ後ろで腕を組んでいる教師が三人に冷たい視線を向けていた。


 ◇


「薬の回復量に対する、重量? 大きさ? ってどんな感じだろ? 小さくて軽い方が荷物にならないからいいと思うんだけど」

「うーんと、普通の傷薬は軟膏、綿紗(ガーゼ)、包帯なんかが必要だから、魔法薬に比べると大きくて重いの」

「ん。魔法薬はどれも百ミリリットル入りの小瓶で、初級、下級、中級、上級、特級の五種類ある。倍々で回復量が変わってくる」


 魔法薬は瓶の色、蓋の色で種類を判別できるように決められていた。


「ロット、味はどんな感じ?」

「特級に近い程、苦みを取るのが難しくなるの。だから、腕の悪い薬師の特級薬なんてよっぽど安くしないと売れないの」


 そんなことをしたら薬師は赤字になるとロレットは言い切る。


「そっかー、何かもっと手軽に回復できる薬とか無いのかなー?」

「ルーナ……無茶言わないの。一番手軽な手段が魔法薬なの」

「えーと、味がいまいち。値段が高い。これだと気軽には使えないよ」

「ん。気軽に使えてこそ手軽と言える。安い薬は味も回復量も少ない」

「状況にあった薬を選ぶのが面倒だってだけでしょ、ルーナは」

「あ、はははー……。無いかー。ロット作れない?」


 放課後にマリーレイン錬金術工房で集まった五人は、狩人(ハンター)として外に出るようにもなり魔法薬などの重要性を考えるようになっていたため、色々と話しているとルシアナが考えるのを放棄してしまったようだった。


「新しい薬? そうおいそれと作れるものじゃないわよ?」


 そう言ってマリーレインが本棚から取り出したのは『調合の歴史』『素材成分分析録』の二冊である。

 それらの本を開いてみれば、素材毎に薬としての製法や使用量によって、どのような効果があるのかなどが一覧表となって細々と書かれており、現在知られている素材がほぼ網羅されているため、調薬時に配分を決めるために使われることもある様な本であった。


「目がシパシパしてくる」

「ん。これだけの試験にどれだけの時間が掛かったのか……」

「ボクには無理。うん。無理」

「冶金の本もこんな感じだったなー……」

「だから、無理だと最初に言ったの」


 嬉々として目を通すのはリアーネくらいで、他は出来れば見たくないとすぐに視線を外している。


「まぁまぁ、ロット。もしかしたら、今まで薬と考えられてなかった素材なら、さっき言ってた様な薬も作れるかもしれないわよ。まず見つけるのが大変なんだけどね」

「んー……地域によって素材に差があるから、同じような効能を持つ別の素材を調べれば、何かしら発見はあるかも?」

「じゃあじゃぁ、使いやすくするのはできないの?」


 素材一つ調べるのにどれだけの時間を必要とするのかと想像もつかずに、それなら別に何かできないかと、ラウリーが言う。

 その言葉に何かしら思うところのあるマリーレイン。


「そうね、薬も色んな形態があるわね。粉薬、丸薬、液体薬、軟膏、塗り薬。魔法薬なら掛けるだけの液体薬もあるしね。使いやすいのは丸薬かしら」

「うーん? もしかして薬の形態で効果が変わったりとかあるの?」

「もちろんあるの! 同じ効果の薬でも効き目が出るのが早い順に液体薬、粉薬、塗り薬、丸薬なの。魔法薬でも同じなの」

「魔獣と戦ってる時に必要になったとしたら、丸薬みたいに手軽に使える物の方が良さそうだけど、早く効果が表れてくれないと困るよなー」


 実際の使用場面を思い浮かべてルシアナが手を顎に当てながら言う。


「ん。液体の丸薬があれば解決! 凍らせる? ゼリーにする?」

「あら! それは面白そうね! 他の薬師にも声を掛けて考えてみるわね」


 こんなのはどうだと耳をピコピコさせながらリアーネが言ったことに、マリーレインが面白がって考え始めることになった。



 後日、ゼリー封入液体薬が登場することになる。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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