051 新しい銃と軽量化
「えへへー。拳銃! 買っちゃった!」
「ん。狙撃銃、買った」
「え? えぇーーっ! うちにも、相談、してほしかった……」
耳をピコピコ尻尾をゆらゆら嬉しそうに言う双子を前に、黒銀の槌工房にレアーナの叫び声が響いた。
「ん、素材も買って来たから、色々改造する」
「よっし、手伝う! 手伝わせて! で、良いのが出来たら、うちのも作ろう!」
「リーネに任せておけば大丈夫!」
「ん。狩人組合で試験してもらって合格が出た後になるけど、大丈夫?」
「それっくらいなら、待つよっ! さぁっ、何から始める?」
「ん。改造するにも構造が判らないとできない」
「よっし、分解だね! ばらすぞー」
まずは拳銃の構造を分析するために、工具を手にバラバラに分解していった。
「小っちゃい部品もあるんだねー。ラーリにできるかな?」
「拳銃使うなら、整備するためにできる様にならなきゃ」
「ん。リーネが教えるから大丈夫」
構造を確認すると、単純化も合理化も突き詰められているように見えたため、素材と重量、部品の配置を少しいじるくらいしかリアーネには思いつけなかった。
「ん。よくできてる。ラーリが使い易い様に調整する程度しか、いじるところは無さそう」
「リーネ、持つとこ、もうちょっと細い方が良い」
「銃が登場してから百年だっけ? 結構経ってたよね? さすがに使い易くて修理しやすい様に、みんな考えて改良してきたんじゃない?」
長目の銃身には施条を施した白鋼の物に変え表面のみ酸化膜で覆って黒くする。
「なぁリーネ? 銃身の素材に白鋼使うのはどうして? もっと硬いのにすればいいんじゃないの?」
「ん? たしか、壊れる時に銃身が破裂しても撃ち手に被害を出さないため。だったはず?」
「あぁ、ちゃんと理由があったんだ。じゃあ、表面を黒くしたのは?」
「ん。光を反射させないため。獲物に気付かれる危険を減らしたい」
「なるほど! そこまで考えてなかったよ!」
「ん。何よりかっこいい!」
「本音はそっち!?」
コテリと首を傾げて自信なさげに言っているが、リアーネの尻尾は楽し気に揺れていた。
続いて硬銀合金で本体や他の部品を作って行き、回転弾倉付近に真銀を使って魔法陣を刻み、『加速』と『回転』『防音』『魔力集積』の魔法陣を焼き付けた魔石を埋め込んだ。
「この魔石って、何用? ってか、いつ作ったんだよ」
「リーネ、寮で作ってたよ」
「ん。『倍速』と『念動』を拳銃用に変更して魔法陣作り変えた。見る?」
「見せて見せてっ!」
既にリアーネの作る魔法陣は何度も見ているレアーナだが、直径五センチも無い細密に作られた魔法陣は、もはや錬金粘土で作れる限度を超えていた。
「小さい。………手作業じゃ無理、作れない。魔法陣保持用の枠付きって、なんでここまで?」
「ん? 限界に挑戦……てきな?」
リアーネを見る目がジトっとしたものになったレアーナは、重い息を吐き出して気分を入れ替える。
「うちも、もっと頑張らなきゃ……」
後、作るのは持ち手の部分。木材を滑らず握りやすい形に整えて炭で表面を黒く処理して、各種部品を組み立てていき、一応の完成を見る。
「ん。ラーリ、持ってみて」
「やった! できたんだ」
模造の弾丸を入れてから、構えて引き金を引いたり振り回してみる。
「小指のとこ気持ち悪い」「もう少し握るとこ重くして」「銃身って熱くならないかな?」
ラウリーの言葉を参考に、何度か持ち手の形状や重さの調節をして手に馴染む様になってきた。そうして完成したばかりの黒い拳銃を手にラウリーは満面の笑顔でお礼の言葉を言うのだった。
「リーネ、ありがとう! 買って来たのより軽くて扱いやすいよっ!」
「ん。よかった。後は試験が通れば問題ない」
お昼ご飯と午睡を取った後には狙撃銃の改造が始められる。
リアーネは拳銃と同様に分解して各部の分析、構造を解析していく。
「構造はこっちの方が複雑だね、大きいからかな?」
「ん? 大きいからじゃないよ? 装弾の仕方が違うからだね」
「なにリーネ。ラーリに相談? なんでも聞いて!」
「ん。『そうだん』違い。弾の込め方のこと」
「そっかー。でも、何かあったらいつでも言ってね」
「ありがと、ラーリ」
ラウリーは耳をピコピコと期待をするようにして、笑顔のリアーネと見つめ合う。
銃把を機関部の前に移動させて全長を短く全体の形状を変更し、他は拳銃と同じく銃身を黒く染めた白鋼に、他の部品は硬銀合金素材に置き換えていく。
黒くした木製の持ち手部分と銃把、銃床を一体化させて部品を組付けて行く。
「なんか? 随分形が違うよ?」
「短くなったねー」
「ん。短い方が取り回しが楽になる」
話しながらも作業を続け、銃床には衝撃吸収用の素材を張り付けて、衝撃はできるだけ和らげて体への負担を軽減させる。
「じゃあ、もっと短くしたら、もっと使いやすくなるのかな?」
「んーん。威力と命中精度が落ちる。だから、持ち手を前にずらした」
「あー、それでこんなバランスになってるのか。それにしても随分軽くなったねー」
照準器とレンズを調整すれば、概ね完成したと言えるだろう。
「ん、銃身に溝を掘ったり、あちこち肉抜きもして軽量化した」
ガショガショと、遊底や引き金などの具合を確かめ持ち手の形状などを修正し、納得のいったところで完成とした。
日が傾き始めた頃に、狩人組合に三人でやって来た。
「おぅ。嬢ちゃん達、今日はどうした? 見習い仕事の日じゃないだろう?」
「この拳銃、リーネが作った。使って大丈夫?」
「ん。この狙撃銃も、試験してほしい」
「大丈夫そうだったら、うちの分も作るんだ!」
事務方の兎人族のおじさんに作ってきた銃を見せ、使って大丈夫か確かめてほしいと頼み込む。
「はー、何だいこれは? みんな思い思いに改造したりはしているが、自分でここまで作る様なのは、お嬢ちゃんが初めてだね。で、試験かい? おい、誰か撃ってみるか?」
「お、良いのかい? 俺がやる。とっとと射撃場に行こうか」
楽しそうな表情を浮かべて、そう言って来たのは灰髪の狼人族の男性だった。
「ウルマスか。まぁ、銃好きのお前さんなら任せても大丈夫か」
「「「お願いします!」」」
まずは、弾を込めずに拳銃を構えて引き金を引く。
弾倉を開け模擬弾を入れて、またカチカチと引き金を引いて、動作を確認。
「うん、軽いなー。お嬢ちゃん用に調整したんだな?」
「そうだよ! リーネが使いやすくしてくれたんだ」
そしてようやく実弾を込め、パシュッ! っと、一発発砲したら銃の状態を確かめる。
次に弾倉一杯まで弾を込め、連続して発砲してから銃の状態を確かめた。
「何発撃つんだろ?」
「ん。沢山撃っても故障しないか確かめるんだと思う」
「そうだよなー。魔獣を前にして壊れたら危険だもんな」
弾倉を交換すること十七回、およそ百発近く発砲し、銃の状態を確かめる。
「ふんむ。なかなか良さそうだな。ばらして良いか?」
「ん。確認は必要」
しばし分解、部品の確認。ついでに掃除も済ませて組み立てなおす。
カラカラと弾倉を回転させては相鉄を引き、引き金に触れて具合を見る。
「拳銃は合格。変な癖も無い良い拳銃だった。照準の調整は自分でやれ」
良い拳銃の評価と合格にラウリーは嬉しそうに尻尾を揺らす。
「次はこの変な狙撃銃だな」
「ん……。変………変?」
拳銃と同じように弾を込めずに各部の動作を確認してから、模擬弾、実弾と確認を続け、同じく百発程の射撃を終えて、分解して確かめて行く。
「凄いなこれ。慣れが必要だが威力を維持したまま小さくまとめられてる。慣れなきゃ使い辛いだろうけど、最初からこれを使う分には関係ないし良いんじゃないか? こっちも合格だ」
「「「ありがとうございます!」」」
「よせよせ。俺も面白い銃を撃てたんだ、気にすることは無いさ」
みんな笑顔で銃の試験は終わりを迎えた。
そして、組合に銃を登録して双子は訓練に使い始めることになり、後日レアーナ用の拳銃も作ることになる。
読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。




