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ねこだん!  作者: 藤樹
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050 仕留め方と罠設置

「ね? あそこ、罠に何か掛かってない?」


 北西の森の柵を越えた辺りにある、狩猟罠の仕掛けられた区域の一点をラウリーが指し示した。


「ん。狼? 随分痩せてる。はぐれかな」

「暴れ疲れたとか? 仕留める時は、えーっと」


 そろそろと近づいて行くと、この辺りによく生息している真っ白なふわもこな毛をした白珠狼(ハクジュロウ)であることが確認できる。

 括り罠に絡めとられて諦めたような遠い目をしていたものが、双子達に気が付き鋭さを増す。


「気を付けてよ」


 パルヴィの注意も最小限で、双子は耳をピコピコと注意深く周囲の気配を探って行く。


「ん、周辺のことはリーネが見ておく」

「レーア、投げ縄で行く?」

「あぁ、そっか。いきなり近付く必要ないからね」


 リアーネが周囲を警戒し、腰鞄(ウェストポーチ)から投げ縄を取り出したラウリーとレアーナが二手に分かれて投擲した。

 躱そうと動いた白珠狼(ハクジュロウ)は、罠に縛られた右後肢が引かれキャンッと一鳴き動きを止めて、そこに上手くレアーナの放った縄が首に掛かって締め付けた。


「やった! かかった!」

「レーア、縄引いて動けなくする」

「あぁ、そうだった。ラーリも手伝って。せーの、せいっ!」


 暴れる白珠狼(ハクジュロウ)の力に対抗するためにラウリーも一緒に縄を引いて、罠と合わせて白珠狼(ハクジュロウ)の身動きを封じていく。多少暴れられても届かない距離からリアーネが魔法を使うことにした。


「ん。任せて。肉体を従える眩き御霊よ、仮初めの束縛をなす………『麻痺』」


 それまで、必死に体を動かし逃れようとしていた白珠狼(ハクジュロウ)は、魔法を受けてピクリピクリと痙攣を繰り返し始めた。


「ん。大丈夫そうだね? じゃあ、止めさすよ」

「縄無しでも良かったんじゃない? まぁ、リーネに任せる」

「ラーリはまだ、ロープ抑えておくからね!」


 リアーネが腰から自作の剣鉈を抜き放ち、白珠狼(ハクジュロウ)の首筋に突き刺した。素早く引き裂きその場を離れ、噴き出す血から身を躱した。

 剣鉈に着いた血を振り払っても取り切れず、布を取り出し拭い去る。


 そうこうしているうちに白珠狼(ハクジュロウ)の生きようとする意志が、だんだんと薄れるように痙攣も睨み付ける目の強さも消えて行った。

 噴き出す血の勢いも収まってから『脱血』と『浄化』を掛けて魔法鞄(マジックバッグ)に回収する。


「みんなよくやったね! 対応の仕方はまず合格よ」

「「「やった!」」」


 ここまでずっと見守っていたパルヴィの評価をする声に三人で喜びの声を上げた。


「じゃあ、罠を仕掛けなおさなきゃいけないから、あなた達でやってみて」

「「「はい!」」」


 元々使われていた罠は、鋼索(ワイヤー)が捻じられて断線が何か所か見つかった。

 白珠狼(ハクジュロウ)にもう少し体力があれば引き千切られていたかも知れなかったのだ。


「おぉー。実はけっこうギリギリだったのかも?」

「ん。体力回復中だったのかもしれない」

「何にせよ、うちらに怪我も無く仕留められてよかったよ」


 使われていた括り罠を外したら表示札も一緒に回収する。


「同じ場所に仕掛けてもダメだよね? リーネどこがいいかな?」

「んー……。狼の荒らした範囲の左右どちらか、かな?」

「右はすぐに別の罠が仕掛けてるみたいだね」


 三人で周辺を確認していくと、目で確認できる距離に罠の表示札を発見した。

 対して左側はしばらく罠は見当たらない。

 まずは左側ということにして、獣の痕跡を探していく。


「これはどう? 足跡」

「ん? 猪かな? ちょっと古そう?」

「糞も形が残ってるし、そこまで古くは無いんじゃない?」


 三人の見つけた場所を中心に見回していくと、踏み分けたらしき痕跡を発見していく。獣道というにはまだまだ新しい物であり、常に利用している物とは言い難い。


「この道、また使うかな?」

「んー……。どうとも判断し辛い。他よりはマシかも、程度かな」

「なら、取りあえずの候補かな? 他に何かない?」


 さらに探って行くと、鹿の食べた痕らしきものを発見する。

 低木の葉を中心に食べられているようで見晴らしの良くなった場所に出た。


「こっちのが酷いね、ここに仕掛けようか」

「ん。少し離してその右のまだ葉を付けてる辺りにした方が良い」

「あーそっか。じゃあ、やるか。パルヴィさーん。ここに罠、仕掛けちゃいますねー」

「えぇ。見てるわね」


 どこを通り何をするのか、鹿を想定して行動を考えて罠を仕掛ける場所を思案する。

 場所を決めたら、穴を掘って括り罠を設置する。

 近くの木に鋼索(ワイヤー)を巻き留め、罠自体は落ち葉などで隠していく。


「罠札付けて。完成ー」

「ん。大丈夫そう」

「確認お願いします!」

「緊張しなくても教えた通りに出来てるわよ。後はこれを置いておけばなお良し、だけどね」


 そう言ってパルヴィが鞄から取り出したのは鉱塩の塊だった。それを罠から少し離した場所に大き目の石の上に乗せたのだ。


「その石、何なの?」

「ん? 石……? 岩塩?」

「食べるの?」

「えぇ、そうね。舐める、だけどね。獣も塩は必要なんでしょう。鉄まじりの岩塩を加工したこれ気が付いたら八割方は舐めに来るわよ。罠に掛かるのも時間の問題、ってね」



 そして、その場を後にして他の罠も確認していく。

 問題があれば仕掛ける場所や罠の種類を変えて行き、獲物が掛かっていれば仕留めて回収をして、少し離して罠を仕掛けなおすのだ。



 そうして本日の予定の範囲を回り終えた時には、白珠狼(ハクジュロウ)に丸鹿二頭、金華猪(キンカジシ)の合計四頭の獲物を回収していた。指導員一人と見習い三人という数ではなかなかの猟課と言えるだろう。

 組合(ギルド)に戻って獲物は解体班にお任せすれば、本日の見回り仕事も終了だ。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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