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ねこだん!  作者: 藤樹
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047 森の巡回と黄色札

「だいぶ暑くなってきたねー」

「ん。森を歩き回るのは辛い」

「鍛冶場よりましだけどねー」

「これくらいで音を上げてないでよ。まだ、半分も終わって無いんだから」


 もうすぐ夏を迎えようかという時期、本日は狩人(ハンター)組合(ギルド)の見習い仕事で北西の森の管理区域の見回りをしていた。


「しーっ! 何の音だろ?」


 ラウリーは森を突ききり何かが落ちて来たような音を聞きつけ、皆に示して視線を向ける。

 するとそちらから、ガヤガヤと数人の話し声が混じっていることをピコピコと動いていた耳が捕らえる。


「ん。行ってみる」

「あー、そうだ。声かけ、しなきゃ」

「解ってるんなら声を出す。はい!」

「「「こちら森林管理区域の巡回中の狩人(ハンター)でーす。何かありましたか?」」」


 三人が声を張って問いかけると、すぐに声が返って来た。


「こっちは林業組合(ギルド)の者だ。伐採の作業中だよ」

「林業って何だっけ?」


 あまり馴染みが無いせいで、ラウリーには林業と聞いて何であるのか思い浮かべることはできずに首を傾げてリアーネに聞く。


「ん。木材を扱う。木を植えて森の管理もする、らしい」

「挨拶しておいた方が良いのかな?」

「ほらほら、話してるうちに挨拶に行く!」



 指導員のパルヴィに追い立てられるように向かっていくと、四人の男性が鉈やノコギリを手に太い竹を切っていたようである。


「「「おはようございまーす」」」

「おぅ。おはようさん。何だ? またえらいちっこいのが来たな。ほら、お前らも挨拶しとけ」

「「「お、おはようございます!」」」

「見習いの指導中なのよ。ローデマーさんもですか?」


 見ると確かに、パルヴィが声を掛けた熊人族の男性以外は皆、双子達と同年代に見えた。しかし見たことの無い相手であるから別の学院出身者なのであろう。


「見たまんまだな。この時期はどこもそうだろう」


 今日は、下草刈りを兼ねて竹林の手入れに来ているという。


「大っきい竹だねー。水筒にするには大きすぎるよね?」

「ん。リーネ達用には大きい。大型の獣人用なら、何とか使えるかも?」


 周囲の竹はどれも立派で両手で輪を作っても指が届かない程の太さがあった。


「竹って建材やら色々使ってるけど、実とか生るんだっけ?」

「はっはー。大き目の実を付ける種類もあるが、どれも食えたもんじゃ無いなぁ。食うところなら、うーん……ほれ、そこに顔を出しておる」


 そう言って指さした先には地面からほんの少し穂先が出た竹の子が見つかった。


「えーっと? これは何?」

「ん。ラーリも好きな竹の子。掘って良い?」


 腰鞄(ウェストポーチ)からスコップを取り出しながらリアーネは聞いてみる。

「味は落ちるが食えはするじゃろ、本当なら朝早くに掘るのがええんじゃが、まぁ好きにしな。放っておいても鹿なんぞに食われることもあるからのぅ」

 するとリアーネは周囲を見渡し別の場所を掘り始めた。待つ程のことも無く竹の子が現れて、地下茎を狙ってザックリと突き刺した。


「おぉー、大っきいねー」

「竹の子ってこんな風にできてるんだ」


 地面を埋めて竹の子とスコップは腰鞄(ウェストポーチ)に片付ける。


「嬢ちゃんは良く知っとるようじゃな。ほれお前達も見てたろう? 竹の子は日に当たるとエグ味が出て来るからの、顔を出す前の物を探せるようにならんとなぁ。嬢ちゃんもそんなスコップよりも鍬使った方が楽に掘れるぞ」

「ん。知ってる。手持ちに無かった」

「そうかい。なら、下処理の仕方も大丈夫じゃな?」


 コクリと頷いて返事としたら、お互いの本来の仕事に戻ることにした。



 予定の見回り区域に戻りしばらくした頃、黄色の札の付いた小さな木が数本見えて来た。


「黄色の札だー。始めて見るかも」

「ん。何回か見てるよラーリ。何の木か判る?」

「いや、うちは判んない。なんだろ?」

「あっはは。まぁ、これくらい小さいとこの木は判りづらいよね。葉の形も随分と違うし」


 答えだと言って指さした先には、幹の太さが大人数人が腕を伸ばしてようやく抱えられる程もあり、あまり横方向には枝分かれせずに縦に伸びようとする姿の大木があった。


「えー? 全然違う……」

「ん。同じ木とは思えない」

「これが、あんなになるのかー」

「何年も掛かるし、育つ状況なり周りの状況によっては間伐されることだってあるからね。あそこまで大きくなれるかは、この木の成長次第よ」


 実を付ける訳でもなく、建材とされる木に黄色の札が付けられている理由が分からず聞いてみると、育成中の苗木はどれも黄色の札を付けて、見回りのたびに気に掛けるようにしているのだということだった。


 黄色札の物には不用意に手を出さない様に言われていたが、こういう意味もあるのだと教えられたのだ。



 その後は何事も無く柵のある辺りまでやって来た。


「今日は外の罠は良いんだっけ?」

「ん。他の班がやってる。リーネ達はここから別ルートで街へ戻る」

「パルヴィさん。見回りってこんなに何もないものなのー?」

「そんなに色々あったら大変よ。おおよそ見回り仕事はこんなものね。ただし、一人前の狩人(ハンター)は二人一組で倍くらいの範囲を回るけどね」



「黄色の札付いてる。大きいけど何かある?」


 街へと引き返す中で、黄色札の付いた大きな木を見つけたラウリーは不思議そうに首を傾げて疑問の声を上げた。


「ん? 草が、生えてる?」

「あー、ほんとだ。何種類か別の葉っぱがあるねー」

「これは、まぁ見たまんまよね。苗床みたいになってるのよ。それで、中には毒のあるのも混じってたりするけど、薬草になる物もあるから伐採するってわけにもいかなくて。黄色札の中にはこういうのもあるから気をつけてねー」

「「「はい!」」」


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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