044 射撃訓練と引き金
パシュッ! パシュシュッ!!
周囲が壁に囲まれた学院の射撃場に銃の発射音が微かに響く。
手にした拳銃の回転弾倉から魔筒を抜き去ってから小柄な梟人族の男性教官は生徒達へと顔を向ける。
「みんな見えるか? これが拳銃と言う武器だ」
凄い。始めて見た。音小さかった。と、ざわめく生徒。
ここに集まるのは今年十二歳になる者達ばかりで、双子達も初参加である。
五人全員初等部から高等部へと移り、リアーネに至っては高等部さえ持て余し十歳の頃から研究室に入り浸っていた。そんなリアーネ含めて年齢制限で今まで手にすることの無かった銃の訓練がようやく受けられるようになったのだ。
「銃は誰でも使える。引き金を引けば弾が飛んでいくんだ。だからこそ危険性をきちんと知って学ばなければ所持する許可は出されない」
教官の指示で皆は順番に弾の入っていない拳銃を保管棚から手に取って行く。
「こらっ! そこ! 弾が入って無かろうと銃口は覗くなっ! 人に向けるなっ!」
「「「はいっ! ごめんなさいっ!!」」」
ケイニーをはじめ数人の少年が、銃を構えて友人同士で銃口を向けていたのだから、怒られて当然であり、近くにいた別の教官に特大の拳骨を落とされ涙目である。
「教官ー、これで魔獣は倒せるの?」
「ん。威力が問題」
皆が思い思いに引き金を引いたり、回転式弾倉を振り出したりと各部を子細に観察しているときに、目をキラキラとさせたラウリーから質問が飛ぶ。
「おお、よく聞けよ! まずこの拳銃に使われている弾丸は弾丸径六ミリ、魔筒長十六ミリ、全長二十六ミリある。反動が少なく初心者にも扱い易い威力しかないが、それでも小型の魔獣、鎧兎とか十角鹿なら、問題なく倒すだけの威力がある。もちろん中たり所によるがな」
教官が嬉々として話し出せば周りで拳銃をいじっていた子供達も聞き入って、想像を膨らませ始める。
「何より属性弾の存在がある。例えば雷属性の弾が当たれば、大型魔獣でさえもしばらく痺れさせて隙を作り出すことが出来るんだ。たかが拳銃と侮ることはできないと、よくよく知っておいてほしい。まぁ、拳銃で十メートル離れて中てられたらいい方だがな」
「はいはい、マイオニ教官。銃器好きはそこらへんにしてほしいな」
虎人族の男性である戦技教官のネストリに窘められて、話し足りなそうに口をモゴモゴとさせた後、口をつぐんだマイオニは射撃を主に教える教官だ。
「ここにある狙撃銃や大型銃もその内に訓練する機会もあるだろう。とは言っても今日は拳銃しか使わないがね」
そう言ってネストリは、前方の台の上にある銃器を掲げて見せるが、大型の物は頑張っても無理そうだと双子はポケーっと眺めてしまう。
「こうかな?」
「ん? まだ引き金に指掛けちゃダメ」
「あーー……、チマチマと覚えなきゃならないこと多すぎるー!」
「ルーナは駄目そうだねー」
「私は戦技よりこっちの方が合ってる気がするの」
射場に向かって弾の入っていない銃を持ち、立ち方からグリップの握り方、腕を伸ばして狙いのつけ方を丁寧に指導を受けて、お互いに確認し合いながら繰り返す。
感覚派のルシアナには細々と注意が飛んできて、開始数分で銃に対する苦手意識が植え付けられてしまっていた。
引き金を引くのに合わせて送鉄が起き上がり、引ききってからカチンッ! と、打ち付けられる。
「引き金重いー、いっぱいやったら絶対指痛くなるよー」
「はははっ! ラウリーに良いことを教えてやろう! 先に送鉄を起こしてみろ」
教官の言葉に従い送鉄を起こし、構えて、引き金に触れる。
「!? え? な? えぇ!?」
「ん! 全然違う」
先ほどまでと違って、引き金を引くのがあまりに軽くて、皆が目を丸くして拳銃を見つめる。
「はっはっはー。驚いただろう? それが本来の引き金の感触だ。さっきまで重かったのは弾倉を回転させるのに必要な力も加わってたからだな」
「軽すぎてなんか怖い」
「ん。狙撃向き?」
「リアーネは気が付いたか。狙撃銃は引き金本来の重さしか必要ないからな」
「これ以上覚えること増やさないでー!」
「何か意味があるの? 落ち着いてゆっくり狙える時じゃないと狙撃できないとか?」
「ますます私向きかも知れないのー」
戦技の時とは違ってロレットにも使えそうだと喜ぶ様子が、ブワリと振られる尻尾に表れていた。
「では、全員銃を持って後方の卓に着け」
そして始まるのは、各部の名称、説明に操作方法、手入れの仕方だ。
「ぞんざいに扱えば、中るものも中らなくなる。分解整備もやってみようか!」
「今日はそこまでやる予定ではないよ。全く」
「おぉー……、これは、リーネが好きそう」
「ん。滾って来た」
「あははははー。任せた。ボクには無理」
「苦手なのってルーナだけじゃないか?」
「私もこういうのは好きな方なの」
専用の魔導具を使って、魔筒に欠片程の魔石を入れて弾丸を嵌め込み『衝撃波』の魔法が付与されれば、銃弾のできあがりだ。
「まとめて付与できないかな? 一個ずつ作るの大変だよ」
「んー。魔力の制御が上手だったらできるかも?」
「ラウリー、それはやめておいた方がいいぞ。不発弾になったら困るからなー」
教官による否定の声で、リアーネによる弾丸まとめて製造機の開発は始まる前に破棄された。
読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。




