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ねこだん!  作者: 藤樹
41/218

040 体力測定とお友達

「決着付けようじゃないか、ラウリー!」

「………?」

「ケイニー、解って無いみたいだけど?」

「なんで判んねえんだよ!」

「いや、俺に言われても知らないって」


 少々力の入り過ぎなケイニーに対して「何言ってんだこいつ?」といった態度の双子であった。

 年末最後の試験によって来年度の教育計画を立てるのである。成績によっては飛び級もあるため、昨日までの気合が入ったままの者もいるようだ。今日、行われる体力測定は生徒全員参加であり、今頃教員室では採点作業も大詰めだろう。


「みんな揃ったな? では始めよう」


 そう言って、全員参加の体力測定が始まった。


「これ握れば良いの?」

「ん。思いっきり」


 んーーっ! っと、握力計を握りしめるとラウリーの尻尾が徐々にピンと上を向いて行く。これ以上はもう無理と脱力し座り込んでしまった。リアーネも同じように計測し数値を記録表に書いていく。



「イーマが測ってあげよう」

「イーニも測ってあげる」

「「ありがとう!」」


 三分の砂時計を片手に声を掛けてきたのは同じ組の燕人族の小柄な男女の双子、イルマリとイリニヤだった。明るい緑の髪をしたよく似た容姿の二人だが、髪の長さが違うために間違うことは無いだろう。彼らは普段は別の子達と五人組を作っているが、今日はラウリー達と同様にバラバラに行動しているようだった。


 これから行うのは、三分間で腕立て伏せが何回できるかを計測する。


「いーち、にーい、さーん………」


 一定のリズムで数を数える声はそろっているが、だんだんと不揃いに、間隔も長くなっていく。


「も、だめー」

「ん……疲れ、た」

「「じゃあ、交代だね」」

「「わかったー」」


 最終的に二十一回目が上がらずに記録はラウリー二十回、リアーネ十四回となった。

 体が軽いからかイルマリ、イリニヤの双子は三十回を超える記録だった。


「「もう、上がらないー」」

「イーマ凄かった。ラーリももっと頑張らないと」

「ん。イーニも凄かった。羽が広がっちゃうのは、どうして?」

「力入れると自然と?」

「力が入るとそうなる?」

「「そうなんだー」」



「こらー! ボール持って行っちゃダメー!」

「なんでー? 楽しーのにー」


 投擲の計測に来てみれば、白髪の小柄な犬人族の幼女のアネルマが、黒髪の羊人族の幼女のエリーナに怒られていた。

 ボールをどこまで遠く投げられるかを計測しているうちに、楽しくなってボールを追いかけて遊び始めてしまったようだ。


「エーナ、あれは仕方ない。ラーリもうずうずしちゃう」

「ん。アーネ、記録だけ測れば遊んでも怒られない、ちょっとだけ我慢」

「うーー、わかったー。ぜったいぜったい、終わったらボール投げして遊んでね」

「仕方ないなぁー。でも、終わってからだからね? アーネ」


 その気持ちは良く解かるといった表情で双子はエリーナを宥めることにして、計測をお願いした。

 エイヤッと、双子が投げればラウリー十六メートル、リアーネ二十一メートルだった。


「リーネちゃんすごいね! エーナ、そんなに遠くまで投げられなかったよ」

「私も私もっ! ラーリも投げるの上手だったね!」

「夏のお休みに狩人(ハンター)のじーじ達に教えてもらった!」

「ん、そう」


 そして、簡単に投げる時の体勢を見てあげて、計測しなおせば二人の記録も更新された。



「位置について、よーい………」


 パンッ! と、戦技教官が拳銃を上に向け空砲を撃つと、並んでいた生徒四人が一斉に走り出す。

 百メートル先のゴールラインでは、置時計を睨む計測係が四人いる。

 時計は懐中時計の魔導具が開発されてはいるが、ストップウォッチは発明されていなかった。そのため、時計を睨んでおおよその時間を計るしかなかった。


「サンテ速かったねー」

「ん。アルも速かった」

「「ありがとう!」」


 茶髪をなびかせた馬人族の少年サンテリと、黒銀の髪に長い耳をした兎人族の少年アルヴィが礼を言う。後の二人、黒髪の牛人族の少年タハヴォと、濃い赤髪の髭小人の少年オルヴォは随分と引き離されてのゴールだった。


「こいつらと一緒に走りたくなかった」

「勝てる気しないもんなー」


 膝に手を着きゼーハーと息を整える二人とそんな話をしていると、煩いのが近づいて来た。


「ラーリ! 勝負だ!」

「落ち着けって、ケイニー」


 そうして準備が整って、双子はせっかくだからと一緒に走ることにした。


「おぉー、じゃぁラーリと走るかー。負けないぞ」

「ん。リーネも相手になる」

「ふんっ! 負けた時の言い訳なら聞いといてやるっ!」

「ケイニー……。ハァ、まぁいいや、僕だって負けないからな」


 準備も整い位置につき、銃声と共に一斉に走り出す。足取り軽く一気に加速し双子はケイニー達を引き離した。結果は遠目に判るくらいの差をつけて双子がケイニー、ベナーリに勝ったのだった。


「くっそーーっ!」

「はぁ、はぁ。やっぱり無理だった……」

「「勝利!」」



「ヤアッ!」


 砂場の直前で踏み切り跳躍し、なかなかの距離で足を着いたが、その後がよろしくなかった。延ばした足がつっかえたのか、そのままドスンとお尻を着いた。尻尾は腰に巻き付けていたが、そうでなければ彼女の長めの尻尾では随分と記録を縮めてしまったことだろう。


「おしかったねー」

「ん。膝は曲げた方が良い」

「あーそっかー。ありがとっ。次はそうやってみる!」


 紫がかった黒髪の鼠人族の幼女ヴェルナがお礼を言って、再計測。今度は上手に着地できた。


「次はラーリの番!」

「ん。行けラーリ」


 助走をつけて勢いを殺さず踏み切れば、綺麗な弧を描き砂場に着地。


「ブヘッ!?」

「ん! ラーリ大丈夫?」


 着地と共に膝を曲げると、その勢いのまま顔から突っ込んでしまったのだ。


「後は……任せた。がくっ」

「ん。任せて!」


 着地はともかく二人とも、それなりの距離を跳んでいた。



「これ楽しくないー」

「ん……そういう、もの?」


 二十メートルの距離を開け、太鼓の音に合わせて引かれた線を越えて行く。次の太鼓に間に合うように、短距離走の繰り返し。しかし太鼓の間隔は少しずつ短くなっていく。最終的には四十五回と四十二回で太鼓の音に間に合わなくなり記録された双子であった。



 台の上に立ち膝を伸ばしたまま前屈し定規に付いた計測版を押し下げる。二人共に体が柔らかく足先を掌が丸々越える程だった。


「もうちょっと、行けそう?」

「んー……無理」

「よくそんなに曲がるねー」


 声を掛けてきたのは艶やかな緑の髪の小人の少年ヴァルトだった。彼は、足先にすら指先が届かずにいたようだ。いつもは陽気な少年もいささか疲れが見て取れる。


「猫人族だから?」

「そうだよー! ねっリーネ」

「ん? 関係なかった、はず?」


 種族によって体の硬い軟らかいは傾向としてあり、猫人族が特にそうなのか柔軟な者が多くいた。ただし、その状態を維持するためには適度に鍛える必要がある。



 一メートル程の間隔で三本の線が引かれている。左右に素早く移動して一分間で横向きに跳び往復する。


「にゃっはーっ!」

「ふっふっふっ……」

「「また負けたー……くそっ、次こそ!」」

「もう終わった」

「ん。これが最後だった」

「なぁっ!」


 一分間の全力はさすがに疲れもするだろう。一緒にやっていたケイニー達は、無駄に大きくはみ出して思うように回数をこなせなかったようだった。


「そのうち、ウチらの方ができるようになるって言ってたろ? 勝負したきゃ、ウチが相手になってやるって」

「お前には勝ってるし、良いんだよ!」


 鮮やかな赤髪をした獅子人族の幼女オイヴィがケイニーを諫めるように言ってきた。


「落ち着けケイニー。筆記なら体格関係なしに勝負できるだろ?」

「なるほど、それは!………それは、いいんだよ………」


 ベナーリの取り成しに旗色が悪いとケイニーの勢いは無くなっていった。



「ラーリ! リーネ! どうだった?」


 全ての計測が終わりルシアナが聞いて来た。その後ろにはレアーナとロレットの姿もある。


「きじゅんは全部こえた!」

「んー……ぎりぎり?」

「ボクは余裕だったよー」

「うち、早く走るのは無理ー、ゆっくりだったらいっぱい走れるんだけどなー」

「走るだけなら良かったの。他は……聞かないでほしいの……」

「ケイニーが勝負勝負って煩かった」

「ん。しつこかった」

「「「あはは………あいつ馬鹿だよねー」」」


 ◇


「勝負はいいのか、ケイニー?」

「……いいよ、これは」


 後日、筆記試験が帰って来た後にベナーリが聞けば、そんな答えが返って来た。

 よほどひどい結果だったのだろう。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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