039 試験勉強とお泊り
「きたー」
「ん。寒かった」
週末を目前にした放課後に、マリーレイン錬金術工房に来た双子は、先に来ていたレアーナと家人に挨拶をしてからロレットの部屋へと向かっていく。途中ルシアナの部屋を覗いてみれば、冬場にもかかわらず緑の多い状態だった。
「ごめんねー。ボクの部屋じゃみんな入れないし」
「気にしなくっていーの」
ロレットの部屋に入るや否やラウリーの指示が飛ぶ。
「座卓は隅に」
「ん! 炬燵登場!」
「やった! 持って来てくれたんだー!」
「なに? 前に言ってたやつだっけ?」
「えぇっ! 持って来てたの!?」
腰鞄から取り出した炬燵を部屋の中央に据え付け、さっと潜り込むとすかさず魔力を流して起動させる。
「丸形になってる!」
「ほんとだ」
「どういうことなの?」
「リーネ改造してた」
「ん。これでみんな入りやすい」
この炬燵は元々夏を前に両親へのお土産のついでに買った物であり、四角い天板の物だった。炬燵布団にまで手を出してはいないが魔石の魔法陣を調査して作り直すのなら、いっそのこと皆で入り易いようにと色々と手を入れていた。
「温くなってきた」
「んー。至福ー」
「リーネ、これって形以外でどこか変わったの?」
「炬燵用の魔法陣作ったのいつだっけ? リーネはちょくちょく何か作ってるし、どれが何用かいちいち覚えてないんだー……」
「寒くなる前に作ってたよね? 姉さまにも確認してもらってたの見てたのー」
「じゃあ、ずっと前なんだー? うちはその魔法陣見てないと思うー」
「んー……懐炉作った後? 発熱面を薄く広くする代わり加熱量を抑えたり、魔力消費を抑えたりー?」
「温かくなってきたから、細かいことはいいやー。ふわぁーー……」
「ルーナは適当だなー……そんなだから勉強見てもらうことになるんだよー」
「えぇー? レーアだってたいして変わんないでしょー」
「はいはい。このままじゃ眠くなるから、試験対策始めましょうなの!」
炬燵の魔力に皆、眠くなってきて、のんびりモードに突入しかけたが、ロレットの言葉に気を取り戻した。
「わ、びっくりした。何からやろうかー?」
「んー、書き取り、算術、歴史、地理、魔術……何でも見るよ?」
「算術ってソロバン使っていいんだっけ?」
「ルーナはちゃんと先生の話、聞こうな。使っても良いって言ってたよー」
「レーアが聞いてただと!? レーアはこっち側だと信じてたのに……」
「どっち側よ! いや、ロットには及ばないんだけどねー」
「ラーリも面倒見てあげるのー!」
「ラーリこそこっち側の印象受けるのに何で……」
「リーネが教えてくれるから?」
「ん。ずっとラーリの勉強見てる」
「くっ。ど、どうかこのボクを教え導いて下さいませー」
炬燵の天板に手をついて頭を下げるルシアナに、大仰に頷いたリアーネは早速とばかりにノートを広げ、各々勉強を始めるのだった。
リアーネはルシアナに付きっ切りで算術の計算問題の解き方を算盤を使いながら進めて行く。そこに他の皆も混ざるように一通り終われば、意味字のおさらい、そして地図を前に各地の名前と年代毎のできごとを交え話を続ける。
魔術に関しては、属性による性質の違いや大まかなできること、どのような魔法があるのかの筆記試験と実技試験とがある。実技試験では各属性の下級魔法の内六種が使えれば試験自体は合格がもらえる。安定して使える魔法が多ければ多いほど評価も高く、初等部では最低限三十六の下級魔法の習得が目標とされていた。
「んーと、どの属性でも魔力感知と魔力操作を鍛えれば早く習得できるから『持続光』で練習するのが一番」
と、リアーネは魔力光を十個作り出しそれぞれが別の色を放ち、複雑な軌道を持って部屋中を飛び回った。
「さすがリーネ!」
「ふふん」
「リーネ、多すぎ! ボクにはそんなの無理だってー」
「うわぁー……さすがリーネ。凄すぎてどうなってるのか解んないよ」
「何度見ても真似できそうに無いの……」
◇
「二人とも可愛いのー!」
夕飯を終え、お風呂上りに寝間着に着替えた双子にロレットが飛びついた。
双子の恰好は熊と兎の着ぐるみパジャマだったからだ。
「それって始めて見るけど、またリーネが考えたの?」
「うちも、ちょっとほしいかもー」
「いいでしょー」
「んー、組合に持ってった方が良い?」
「「「もちろん!」」」
その後、五人はロレットの部屋に布団を敷いてから、問題を出すのも答えるのも、魔力操作の練習を兼ねて魔力光の形を変えるという方法で勉強の続きをした。おかげでお喋りは、する余裕も無かった。
読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。




