027 魔力操作と練習法
「ラウリーなんかに負けてられるかーっ!!」
「そんなこと言って、できてないじゃないか、ケイニー……」
「こっちは光に適性ないんだから狡いんだよ! ベナーリだって光は無いだろうが」
「だから苦労してるんだって、解かれよ」
そんな声もどこ吹く風と気にせずいつもの四人は魔法の練習をする。
「二個ーひゅんひゅんー」
「動け……震えてないで、動いて」
「ふふーん! こっちは三個だー!」
「五個できたの……でも一緒に移動しちゃうのー」
体育館の片隅で『持続光』か『持続闇』を使った魔力操作の訓練中である。
「みんな、その調子だ! 魔法はただ使えば良いってわけではない。魔力操作が下手なら余計に魔力を消費したり、発動までに時間が掛かったりする。だからこそ、しっかりと練習するように!」
「「「……う、はい」」」
魔力を操作し複数個の光点を作り移動させたりしているのだ。複数個に分けるのも移動させるのも、しっかりと魔力操作ができなければ難しい。
一つの光点を移動させるのも大変そうなルシアナは苦手なのだろう。対して二個と少ないながらも個別に自在に動かすラウリーや五個に分けるロレットは得意なのが見て取れる。
「余裕があれば、魔力の流れもしっかりと感じるように。ただ操作しようとするよりも上達が早いと言われているからな! 熟練すれば魔力を直接見ることができるようになるらしい! 俺はできんがっ!」
「「「できねぇのかよっ!」」」
「赤と青ー」
「色まで! って、あぁー消えたー」
「うわ、ラーリ凄いなー」
「光の魔法に色ってつけられるのねー」
「えっと、魔力のしんぷく? を変えると色が変わるんだって、リーネが言ってた!」
「「「へーーー?」」」
「そうなのか!? よく解かって無さそうなのにラウリーはできるんだな」
ラウリーのした光の色を変えるのを見て教師含めて周りの皆が驚いていた。
「えっへん!」
「ラーリ器用だね……ちょっと分けてくれない?」
「で、で、どうやるの?」
「練習の仕方ってあるの? 私もできるかな?」
ラウリーは細長い光の帯を作り出し、なみなみと揺らすように形を変えていく。徐々に波が詰まって行くにしたがって赤、橙、黄、緑と変わっていった。
「ラーリは一度に二色までしか無理だけど、リーネは『幻影』の魔法みたいなことやってた!」
「本当かっ! 『幻影』ではなく?」
「うん!」
「光魔法中級の『幻影』を使わずに、『持続光』の魔力操作だけで『幻影』に仕立てるなんて聞いたことが無いぞ!」
「リーネ器用だね……分けてほしい……」
「どれくらい凄いか判んねー」
「魔力操作……だけでなのー?」
「『幻影』も使えるけど魔力操作の練習はその方が良いって、リーネ言ってた!」
「ああ、確かにそれはできるんなら有効な訓練になるだろうな。お前らも頑張らんとな」
「「「はーい!」」」
◇
「「「ごちそうさまでした!」」」
食堂で昼食を摂り終わり、五人はその場で引き続き話を再開する。
「リーネ魔法!」
「ん。解かった。 夜闇を払う光輝なるものよ、一時の灯りをもたらせ………『持続光』………」
「「「おぉーーっ!」」」
リアーネの灯した光は見る見るうちに魔法陣を描き出し、気が付いた時にはその場に先程食べ終えた昼食が現れたのだった。皿を手に持って動かして見せるリアーネをまねて、触ろうとする三人だが触ることができずに驚きを深める。
「リーネお腹減るから別のにしてー」
「ん、こんなのはどう?」
ラウリーの抗議を聞いて一瞬にして消え去った料理の代わりに、手のひらサイズのラウリーが現れた。
「「「可愛いーっ!」」」
「ありがとー!」
「ん、知ってる」
「ねぇリーネ。結局これって何がどうなってるの?」
ロレットの疑問も当然の物で、光魔法に魔力操作だけで行っているにしてはあまりにも高度な幻影であった。
「ん? 『持続光』で『幻影』の魔法陣を描いて制御してる。こんな感じ」
手乗りラウリーが解けていき魔法陣が現れる。普通に使用して漏れ出す魔力光とは違って、まるで実線のような白線で構成された魔法陣に、赤青緑と光点が走る様が見て取れる。
「んんっ? なんで他の魔法の魔法陣が出て来るの?」
「えっと? え?」
「この魔法陣、魔力漏れが見当たらない……の?」
小首をかしげ不思議そうにするロレットと、何が何やらわかっていない他三人。
「ん、ロットよく判ったね」
「ボクにも解かるように教えてー」
「そうだそうだー。これじゃ解んないー」
ルシアナとレアーナの不貞腐れたような声に呆れながらも解説が始まる。
下級魔法を熟練すれば中級や上級魔法の習得もできる様になり、かつ少ない魔力で行使できるようにもなるため、みな魔力操作の訓練はそこそこで終わらせてしまいがちである。しかし、魔力操作の技能に熟練すれば魔力を無駄なく使うことができるようになり、本来なら各魔法の習熟のためにも、こちらを優先して訓練すべきであった。
リアーネは四歳頃から村の錬金組合の図書室に入り浸って、いろいろと魔法の練習をしていたが、あまり危険な魔法を使って心配させたくなかったことや、中級以上の資料が少なかったことにより魔力操作の練習に集中していたという経緯がある。その練習が少々逸脱した高度なものであったため、高等部の無い村の学校では満足に教えることもできないと、街の学院を勧められたという経緯もあった。
魔力操作の熟練には魔力感知は不可欠のもので、感じることができなければ、魔力の安定供給や繊細な流れの制御などできようはずもないことだった。
「んー、魔力が漏れないように操作して、感知できなくなれば良い」
「おぉー? 解かったような解からないような?」
「ん。感知できないと、戦技訓練なら目隠しで稽古する感じ?」
「目をつむって針の糸通しするの」
「リーネ、ロット。そんなのボクにできる訳ないでしょー!」
「うちも無理そうー。結局どうやるの?」
「ルーナ魔法は苦手?」
「ほっといてっ!」
読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。




