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ねこだん!  作者: 藤樹
26/218

025 坑道探検と拡張案

「リーネ、なに買うの?」

「んー、硬銀(チタン)が欲しい……けど在庫が少ない?」


 資材店の商品棚を眺めながら、欲しい素材の少なさに沈み気味のリアーネである。

 双子の見ている金属素材の一画は砂粒程の大きさの金属が袋に詰められているか、十キロ程の金属塊が積み上げられていて、ラウリーの目には楽しいものでは無かったのだ。


「ちたん? で何作る? ラーリは楽しいのがいい」

「んー。眼鏡の枠、軽銀(アルミ)の代わり、ラーリ用の短剣、解体用ナイフ、包丁、鞄の留め金……色々使える?」


 リアーネは素材を見ながら何を作ろうか、作れるか、必要かと色々と思考を飛ばしていた。


「ちたん使うとどうなるの?」

「ん? 軽くできる」

「お嬢さん方、硬銀(チタン)をそんなに豊富に使うって加工はどうするんだい?」


 双子の会話に割って入ったのはエプロンを付け店内の確認をしていた羊人族の若い店員だ。


「リーネがやる」

「ん。自分でできる」

「なっ! 本当かい? そりゃ凄いな。高温に耐える炉が無くちゃ鍛冶はできないから、魔法鍛冶に熟練してなくちゃ中々扱えない筈なんだけどね。おかげでどこの店でも在庫を抱えないように少量しか注文してないはずだよ」

「そっかー、注文? 採りに行く?」

「んー……採りに行こうか。河原でも良いし」

「河原で採れるのかい? でも、どうだろう……廃坑でも良ければお願いしてみるけど?」

「廃坑! 楽しそう!」

「ん。採用」


 そして、建築組合(ギルド)に連れていかれ、採取物の種類や埋蔵量を報告することを条件に、徒歩で行ける距離にある近場の廃坑の鍵と地図を借りたのだった。


 お前が連れて来たのだからと羊人族の資材店店員のペッテリが双子を案内することになる。

 せっかくだから登録していけと受付のごつい体つきをした牛人族のおじさんに、認証札(カード)を要求されたのにはリアーネも何故なのだろうと頭を捻ることとなった。



「おぉー! ここ入って良いの?」

「ん。許可もらったところだよ」

「僕もここは初めてだよ。さて中に入ろうか」


 テルトーネの街から東に行った山肌にある廃坑の扉の文字を確認し、目的の廃坑に間違いないとリアーネは答えた。

 元々街の外壁用に石材を得ていた坑道で、鉱石の埋蔵量も少なく大量の石材が必要な訳でもなくなり、既に運用はされなくなった場所であった。魔獣などの住み家とならぬように木製だが立派な扉に閉ざされている。


 ペッテリが錠を開けて中に入ると、三メートルはある大きな扉の隙間から照らされた内部は、採掘の魔導具が使われただけあって床も壁も綺麗な平面を見せており、天井のみは丸い曲面を描いている。

 暗い所でもある程度見えるとはいえ、わざわざ暗い中を行く必要も無いので『持続光』で魔法の灯りを点す。


「きれーだね! 壁ツルツル!」

「ん。何かに使えそう」

「ではお嬢さん方、奥まで行こうか?」


 リアーネの手に握られている地図を見ながら緩やかな下り坂を進んで行く。地下二十メートルを超えた辺りから採掘跡が見られるようになった。そこは天井までの高さと幅が二十メートルを超える程もあり、奥行きも数百メートルはありそうだった。天井を支えるために残された柱の列や左右の岩肌は滑らかに処理がされていた。

 時おり左右に小さな採掘抗が現れ、双子はひょいと覗き込む。


「何かあるかな?」

「ん、行ってみる」


 そこは、荒々しい岩肌が直接見て取れる十メートル程の奥行しかなく、有用な素材が無いかと試掘された跡だと思われた。元の大空洞に戻り、途中『持続光』を掛け継いで四半刻もせず最奥部に到着した。


「周り見てるから、任せたー」

「ん。世界に満ちる魔の源よ、その脈動を示せ………『魔力感知』」


 続けて『金属探知』に『物質解析』と魔法を使っていく。

 この辺りには魔力溜まりの気配も無く、魔石が埋まっていることも無いだろうとリアーネは判断する。魔力の感じ方から魔力を帯びた金属も期待できず、使われなくなったのも納得できる結果だった。


 双子について周囲を見ていたペッテリは、特に問題のある場所が無いことを確認し、押し付けられた仕事の半分を終えた。


「んー……光輝放つ尊き金属よ、純粋たる姿を我が手に………『金属抽出』。ん、これくらいで大丈夫かな?」


 突き当たりの壁に手をついて『金属抽出』の魔法を掛けていき、種類毎に五キロ程の塊を六つずつ、石英に鉄、軽銀(アルミ)硬銀(チタン)と取り出した。塊とは言ってもぎっちり詰まった物では無く、スポンジ状に穴の開いた物でしかない。これは、魔力と時間を節約して成形の手間を省いたからで、いくらかの不純物も含まれるような物だった。


 すべて終えるまでには半刻近くも掛かっただろうその間に、明かりの魔法も途絶えて辺りは闇に包まれていた。


「終わった?」

「ん。どうして暗いまま? 夜闇を払う光輝なるものよ、一時の灯りをもたらせ………『持続光』」

「こんなに暗いの初めてで、怖くて、楽しかった!」

「んー……解かる」

「解っちゃうんだ……、僕は早く灯りを点けたかったんだけどね……」


 後は『石変形』でスカスカになった壁面を崩れないように均しておく。

 そうして目的を果たし帰って行った。



「で、これが廃坑から採れたってわけ?」


 持って帰って来た素材を見分したペッテリは、何やら思うところがあったらしい。


「これだけ採掘できて廃坑になった理由って何だと思う?」

「その頃は要らなかった?」

「ん。あの深さなら鉄も沢山採掘できたはず。魔石が目的でも思う程なかったからかな?」

「まぁ、そんなところだね。記録によるとテルトーネが街となる過程で大量の石材と木材、それから鉄を必要とした。もちろん硝子や軽銀(アルミ)も求められたが、必要量の桁が違うからね」


 街の建物以外にも魔獣対策の街を取り巻く外壁のためにも大量の石材を必要とした。その石材を調達するために、周辺に同じ様な坑道が複数作られていた。


「だからあの坑道は石材調達が主目的だったんだね。僕もわざわざ石を取るために廃坑に行こうとは考えなかったから、気にしたこと無かったんだけど、これはちょっと考えてみてもいいかも知れないね」

「んー……あまりお勧めはできない。六割石英、軽銀(アルミ)八分で、鉄は五分。硬銀(チタン)は一分の半分も無い。これだと河原の石と変わらない」

「……石以外は無いってことか。どうするかな」

「真っ暗で楽しかったよ?」

「ん。地下そのものが利用できる。気温が一定だから貯蔵庫や醗酵蔵向き?」

「んーー、その辺は間に合ってる……はず。醸造所も食品加工所も自前で地下蔵を持ってるからね。これから必要とされるのは、居住区の拡張じゃないかな」

「地下ホテル!」

「ん。地下街?」

「それは髭小人が喜びそうだね」

「他にも坑道あるんだよね?」

「ん? 繋げる?」

「穴を掘った分、いっぱい石も掘り出せる」

「ん。街の外壁の拡張用に使える」

「うーん。確かそんな話は聞いたことがある。東側の畑を潰すことになるから、その分の農地の確保がーとか、組合(ギルド)の上の方でやりあってるみたいだよ」

「地下街。楽しそうだよ?」

「んー……この辺りは地盤が弱いから、地盤工事も必要になる?」

「地下は排水処理とかも大変になるだろうし……今度組合(ギルド)に聞いてみるよ」


 ◇


「何作る?」

「ん。ラーリは何か欲しい物ない?」

「えーと……? 人形(フィギュア)?」

「ん。考えてみる」


 それからのリアーネは魔獣、魔物図鑑に狩人(ハンター)組合(ギルド)での聞き込みなどで、戦士と魔法使いなどを含めて、三十分の一縮尺で硬銀(チタン)軽銀(アルミ)製の人形(フィギュア)を作り上げる。

 大きなものを作って狩人(ハンター)組合(ギルド)の新人教育や学院向けの教材に検討されたり、遊戯盤の駒にと利用されていくことになる。


 残念なことにラウリーの求める物とは違って、リアルな造形の物だった。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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