023 雨降り空と本の虫
「今日も雨ー」
「んー……降るかな?」
寮の自室の窓から見える外の様子に双子は何事か考えて、いそいそと登校の準備を始めていく。ポンチョよし、傘よし、長靴よし、タオルよし。雨対策は万全だ。
「「行ってきます!」」
今にも降ってきそうな空模様の下、手を繋いで歩いて行く。第三学院までは歩いて四半刻程、途中の露店街を通って行くと朝から賑やかな喧騒が迎える。
「「「おはよう!」」」
待っていた友人達へ挨拶を返して学院までの短な時間をお喋りをして過ごす。
露店からは近場で採れた野菜や果物の甘い香りが漂ってきそう。屋台が並び食べたばかりにも関わらず食欲をそそる匂いに足が止まりそうになる。さらに進んで商店の並ぶ一画の鞄店の硝子越しには動物鞄が並んでいるのを発見した。
「やっと落ち着いてきたって言ってたー」
「ん。欲しい人はみんな買ったっぽい?」
「持って人、時々見かけるよなー」
「まだ売れてるんだね」
「凄いのー」
「遠くの街はこれからだって!」
「ん。凄いことになってそう?」
「「「まだまだ売れそうなんだね!!」」」
校門をくぐり、車回しの辺りで初等部と高等部へと別れることに。
「お昼は一緒に食べようねっ!」
「ん。もちろん」
下駄箱で長靴を脱いでいると雨音が勢いよくザーザーと聞こえだす。
「ぎりぎりだった!」
「はー、助かったー」
「すっごい降って来たね。帰り大丈夫かなー?」
「リーネも間に合ったかな?」
心配しながらも教室へと入って行くと、多くの子達が窓の外を気にしていた。
◇
「先生ー、天気って変えられるのー?」
魔法の授業の時間に魔術教師ペレィトが雑談交じりに天候を操る魔法のことを話していた。
「ああ、変えられるぞ」
「「「ほんと!」」」
「ただし、凄腕の魔術師に限るがな」
「なんだー」「先生は」「できないんだ」「だねー」「晴れてほしい」「俺、雨具忘れた」「バカがいたー」「じめじめいつ終わる?」
一気に騒がしくなる教室に、諦めた様に雑談を続ける。
「水の上級魔法に風魔法、物によっては火の中級魔法なんかも使えないことには天候を変えることはできないからな。とてもとても大変な訓練を続けなきゃ使えるようにはならんのだ!」
「そっかー」
「リーネはできるかな?」
「あー、そうだねー」
「そうなのー」
降り方が弱まってきたとはいえ続く雨に皆、だれ気味である。
◇
放課後になり図書館で五人集まった。
「リーネ何読む?」
「んー? 魔導具の本」
「また何か作るのか? リーネは熱心だよなー」
「作る時は声かけてね! 土魔法はまだ特訓中だから、たいして手伝えないけど……」
「私も教えてほしいの!」
リアーネ以外は物語の絵本を手に取り読みふける。
迷宮攻略を題材にした絵本はどこの街でも子供達に人気なために、図書館にも沢山の種類が置かれている。
リアーネは変わらず魔道具の本に魔法陣の本、魔法の解説本と合わせて、魔法の検証。魔道具に使われる魔法陣を元に光魔法で構築する。様子を見ながら属性魔力を流していくと本の通りの効果が見れる。自身の作った鞄と違い、複数の魔石に別々の魔法陣を使って一つの道具が作られている。風を吹かせる魔法陣、温かくする魔法陣、魔力を集める魔法陣。普通の魔法として使った場合と魔法陣の構成が同じなのかと、一つずつ検証を進めていく。
「リーネ、今何やってるの?」
「んー、ドライヤー」
読み終わった絵本をぱたんと閉じたラウリーがリアーネに話しかけると、皆続いて話し始める。
「なに? 高性能なドライヤーとか?」
「凄い風とか……早く乾くとか?」
「髪が絡まないのがいいの!」
「んー……髪、絡まないのはいいかも。でも今考えてるのは乾燥機」
「「「かんそーき?」」」
「ん。じめじめで洗濯物が乾きにくいから」
「「「あぁーー……、なるほど?」」」
「んー……生乾きのタオルは匂いが……」
「「「そっか!」」」
ふかふかのタオルが気持ちいいのは皆の共通するところだった。
「そういや、リーネ天気を変える魔法って使える?」
「ん? 使えない。天候の魔法は調べてもない」
「そうなんだー」
「リーネだったら、できるかと思ってたよー」
「じゃあ、得意な属性魔法は何になるの?」
「金属扱うのは土の上級だよな」
「んーと、……風、土、光、闇、雷に無属性?」
「わ、そんなに!?」
「ん。特に土と無属性の上級魔法は魔導具を作るのに必須?」
雨音を聞きながら、ゆったりとした時間を過ごす五人だった。
読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。




