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ねこだん!  作者: 藤樹
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187 暑気対策と寄り道

「ねぇー、前にもこんなことしなかったー?」

「したねー。あの頃はリーネもレーアもいたから、もっと楽にできたよねー」


 ラウリーとルシアナはノィエトゥア建設時の頃を思い出しながら、森の奥深くで木槌を手にして杭を打ち込んでいた。


「そりゃ、俺達がリーネ達ほど役に立ってないってことか?」

「いや、ルー。どう考えてもこの手の作業でリーネとレーアには、かなわないよ」


 ある程度まで打ち込まれるまで杭を支えているのはルードルフとローラントの二人である。

 街壁の建設予定地の伐採も終わって壁の建設が始まっており、今後森の管理区域にする範囲を示す柵を、ラウリー達が作っているところであった。


 夏の虫が盛大に鳴く森の中、木陰に居る分にはそこまで暑く感じなくて済むのだが、日向に居ると容赦なく照り付けてくる陽光のために滝のような汗をかくことになる。


「それにしても、あっちーなー。もっと涼しくならんもんか……」

「そりゃあ、着てくる外套を間違えたルーが悪い」

「ローが『日傘』の魔法掛けてくれてるんだから、いくらかマシでしょー」

「水でも飲んどいたら? いくらかは気がまぎれるよ」


 ルシアナの言葉にそれもそうだと水筒から直接水を口にした後、残りを頭から被ることで涼を取ろうとするのだった。

 外套には『暖房』や『冷房』などの温度調節をしてくれる魔導具製の物があるのだが、ルードルフのみ何の機能も無いただの外套を着ていたのだ。


「はぁー! 生き返った! なぁ、ロー。この辺まとめて『冷却』とかできねえか?」

「気付いたか。できなくはないけど、数分で切れるぞ」


 ルードルフの我が侭を聞いているうちに、広範囲の温度を下げておけば魔法が切れた後も元に戻るまで時間が掛かると思い付いたために、ローラントは何度も魔法を使うことになるのだった。



「「「終わったー!」」」


 ルードルフ以外も環境が良いと作業がはかどるのか、思ったよりも早く予定の分量を終えることができた。


「涼しいといいね!」

「でも、ちょーっと範囲広すぎたんじゃない?」

「そうなのか、ロー?」

「……そうだね。魔法の維持よりも構成が大変だったよ」

「おぉ! なんか、いっぱい居る」


 道具を片付けているときに周囲に目を向けたラウリーが、数頭の白雨(ハクウ)山猫が木陰の涼しい場所で身を伏せていることに気が付くのだった。


「あぁ、快適な環境に集まって来たんだろう」

「僕達も帰ろうか」


 一行が街へと戻り始めた頭上を飛竜機が飛び過ぎていったのを目にしながら、資材運搬にも使っていた浮揚車(エアーバイク)に乗って帰ることにするのだった。

 森の上を浮揚車(エアーバイク)で移動してみると、思った以上にゴーグルに魔獣の反応が表れる。


「来るときも思ったけど、結構いるねー?」

「ここからだったら楽に狩りができそうだよね?」

「お前らみたいに、弓か銃を使ってりゃそうだろうけどなぁ」

「そうだね。ラーリもルーも狙撃銃を見繕ったほうが良いんじゃないか」


 枝葉に遮られて見通しが悪いとはいえ視界自体は広いために、地上を移動するよりも遠くにいる魔獣の存在に気が付くのだった。


「あー、これは、銃を保持してくれないと、ちょっと辛いかなー」

「ふーん? 弓には関係なさそうだねー」


 狙撃銃を構えたローラントは、無理な姿勢を修正しようといったん狙撃銃から手を放し、浮揚車(エアーバイク)の向きを変えてから改めて構え直すのを煩雑に感じたのだった。



「リーネー、どんな感じー?」

「ん? お帰り、ラーリ」


 ラウリー達は飛竜機の簡易工房に立ち寄って、帰りがけのローラントの思い付きを話していくと、それくらいならとリアーネとヴィヒトリの二人掛かりで、あっという間に改造してしまう。


「そんなもんに乗ったままじゃあ、勝手が違い過ぎるじゃろ? 狩猟用の浮揚車(エアーバイク)を考えてみるのも面白いかも知れんの」


 レアーナの祖父ヴィヒトリが言えば、開発機の試験運用は任せてほしいとローラントは手を取って答えるのだった。


「ここは涼しいね!」

「ん。暑いと作業にならない」

「ね、リーネ。扉全開なのに建物の中に入ると涼しくなるのって、どうなってるの?」

「おー、本当だ。おもしれー、なんだこれ」


 作成した飛竜機が出し入れできるように大きな扉が取り付けられているのだが、ルシアナは左右に大きく開け放たれているのに建物の中と外で温度が全く違うことに驚いたのだ。

 その声にルードルフは半身を建物の中に入れて温度の違いを楽しんでいた。


「ん、『防熱』で熱気が入ってこないようにしてる。後は冷風の魔導具で冷やしたり、建物を『冷却』してるだけだよ」

「なぁ、リーネ。それ屋外用の魔導具にできないか? 壁の建設、大変そうなんだけど」

「そりゃ、良いかも知れんのぅ。じゃが、儂らは今、手一杯じゃ。錬金組合(ギルド)に提案してみればどうかのぅ」


 ローラントは昼間の柵作りのことを交えて提案するが、ヴィヒトリの言葉に納得をして作成途中の飛竜機に目を向ける。

 簡易工房の手前側には小型の試作飛竜機が、奥には骨組みだけの飛竜機が鎮座しており、大きさの違いが実感できるのだった。


「なぁ……これって魔物の骨使ってたりは、しないよな?」

「生々しいというか、不思議な形をしてるね」

「ん、実は翼竜の骨格を……参考にしたけど全部金属」

「翼竜みたいに羽ばたかないよね? どうやって飛ぶ方向変えてるの、リーネ?」

「ん。『送風』とか使えば翼の形を変えたのと同じような効果が出せる。後、『飛行』で補助すれば姿勢の変更とか『重量軽減』の効果に偏りを持たせれば、擬似的に重心移動も再現できるから………」

「ちょっと、ラーリ。なんで聞いたの。リーネの解説が始まっちゃったじゃない」

「ダメだった? ルーナ?」


 尻尾を揺らしながら細かく説明を始めたリアーネの様子に、ルシアナは肩を落として小声でぼやくが、ラウリーは慣れたものでニコニコと耳を傾ける。

 ひとしきり説明して満足したリアーネの言葉が途切れたところに、ラウリーは別のことを聞くことで話を変えることにした。


「そういえば、さっき飛竜機飛ばしてたでしょ?」

「………ん? テルトーネでご飯食べて来た」


 浮揚車(エアーバイク)よりも大きな圧縮庫を載せているため一度に沢山の荷物を速く運べる飛竜機は、運輸組合(ギルド)を中心に早く実用化してほしいと言われているのだった。


 それなのに昼食のために飛ばしていて大丈夫なのかと、ルードルフとローラントに呆れたような目を向けられた。

 リアーネとしては飛行時の情報を多く収集して、操縦補助用の魔法陣を早く完成させたいという思いがあるために、もっと飛行時間を頻繁に取りたいと考えていた。


 組み立て作業に戻ったリアーネ達は、合間にラウリー達の本日の作業について聞いていた。


「うーんとねー、魔獣も暑いんじゃないかな?」

「あんまり木陰から動かないよねー」

「魔蟲は元気に飛び回ってるけどな」

「そういうのは虫除けの香を焚けば寄ってこないしね」


 柵を作っただけで何も狩る機会は無かったのだ。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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