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ねこだん!  作者: 藤樹
124/218

119 お魚団子と漫歩き

「おかえりなさい! 早かったのね。今度は何層まで行ったのかしら?」

「「「十層終わった!」」」

「あらあら! ご苦労様でした。それじゃあ、素材も沢山獲れたんじゃない?」

「あー……、どうだろ? そこそこ?」

「ん。水没した魔石も結構ある。苔猪(タイシシ)は流されたし」

「ふふふ。ここじゃみんな経験してるわね。じゃあ、解体所の方で素材を受け取りましょうか」


 受付嬢に着いて行き、隣の解体所の開いている作業台に素材を取り出していく。

 あまり多くないとはラウリー達の感覚でしかなく、受付嬢にしたら一層から十層までの素材としては十分に多い部類であった。


 例によって小さい物や欠けた魔石はラウリーが選別して手元に残し、水鼠の毛皮に自分達で食べたい物を残して他は買い取ってもらうのだった。



 宿に戻りゆっくりお風呂と夕食を堪能すれば、探索の疲れもあって早々に寝ることにした。


 ◇


 翌日、リアーネが頼んでいた造船工房の見学に行くのを見送って、ラウリー達は街の散策をすることにした。


「お魚!」

「ラーリ、早い。さっき朝食摂ったところでしょ」

「そうそう。今日はリーネに写真機(カメラ)だって借りて来てるんだから」

「撮影は任せるの! とりあえず一枚なの!」


 皆が会話に気を抜いている隙にロレットはパシャリと一枚撮影をして、削除して取り直しを要求されるも、削除したフリだけしてもう一枚撮影するのだった。

 街の中心近くまで来て組合(ギルド)の大きな建物の集まった所を背景に、何気ない日常の風景を屋台のおばさんと一緒に、大型犬と一緒に居た少女と撮影しお薦めのお菓子を教えてもらう。


「「「冷たーい! 美味しーーい!」」」


 果汁に少量の果肉を一緒に冷やしながら混ぜて作られた氷菓子を食べて皆は笑顔になるのだった。勢いよく食べてしまいラウリーとルシアナは頭がキーンとしてしまいレアーナとロレットに笑われることになる。



 神殿前でも撮影し、参拝のために中に入る。


「随分違うねー」

「うん。お城以上に目に痛い」

「あはははー。鬼族の伝統的な模様、なんだっけ?」

「模様そのものは悪くは無いの。もう少し落ち着いた配色なら大丈夫なの」


 四人の話が聞こえていた奥に居る神官のお爺さんが優しい表情で苦笑を浮かべていた。

 十の神様それぞれに手を合わせ、少額の寄付と迷宮攻略の安全を祈願してから神殿を後にした。



「お魚!」

「はいはい。わかったって」


 昼食時が近付いて目に付いた食事処へ入ることにした。


「いらっしゃい。注文どうするね?」


 そう言って女給さんがコップに冷えた水を入れてくれた。

 今日のお薦めを聞いて注文したのは魚の塩焼きやスープに焼き牡蠣だった。

 ラウリーは始終笑顔で食べていたが、スープに入っている団子を食べて驚きの表情になる。


「このお団子、お魚だ!」

「「「そうなの?」」」


 女給さんに聞くと、確かに魚をみじん切りにしてすり鉢で粘りが出るまで擂って団子にしたものだというのだった。


「魚のすり身はこの辺りじゃ色々とあるわよ。焼き物、蒸し物、茹で物、揚げ物。屋台で出してるところもあるけど、加工食品を扱ってる店なら色々そろってるよ」

「お姉さんありがとう! 後で行ってみる!」



「お魚のすり身ください!」

「お嬢ちゃん、どんなのが良いね?」


 見つけた加工食品店で早速ラウリーはすり身が欲しいと小鬼族の店員のおじさんに声を掛ける。どんな種類があるのかを聞くと、竹輪、蒲鉾、はんぺん、天ぷら、と一通り教えてくれたのだ。


「えーっと、一つずつください」

「あっはっは。そんなに買っていくのかい? そのまま食ってもいいが煮物や炒め物の具にしても美味いからな。ほい、毎度ありっ!」

「えへへへーー」

「ラーリ、買い過ぎ」

「嬉しいのは分かったから」

「早めに腰鞄(ウェストポーチ)に仕舞うの。リーネと食べるんでしょ」

「うん! そうだね」



 屋台の並ぶ一画に差し掛かると、昼食を済ませたというのに思わずフラフラと吸い寄せられるように近付いて行く。


「らっしゃい! お一つどうだい?」

「衣揚げ?」

「おっちゃん、中身は何?」

「魚貝のみじん切りとすり身の団子だ。ここらじゃわりとよくある料理なんだが知らんかね?」

「お魚! 五つ頂戴!」

「おっ、ありがとさん! ほいほいほいっと、おまちどう!」


 ラウリーは受け取った魚介の衣揚げを早速一つ齧ると尻尾を振りながら笑顔になるのだった。



 日が暮れて来てから着いた場所は港の突端にある、灯台の見える場所。

 夕日と共に灯されたばかりの灯台の姿を背景に撮影し、宿へと戻ることにした。



「ん。お帰り。ご飯の用意もうすぐだって」

「ただいま、リーネ! さっき下で聞いた。これお土産!」

「ラーリ、今出さないで良いから」

「そうそう。どれも食べ物なんだから」


 宿の部屋に戻って来た四人をリアーネが迎え出て、ラウリーは沢山の買い物と一緒に今日あったことを楽しそうに話すのだった。


「それで、リーネはどうだったの?」

「ん。楽しかったよ。魔導船の推進器の改良して来たし」

「あーー………、まぁ、リーネだしね……」

「ん? また明日も行ってくる」

「リーネが作れば凄い船になるんだろうね」

「んーー、全部作る程時間が取れないのが残念」

「時間があれば作る気なの? それだと探索者続けるのが無理そうなの」



 そんな休息と準備を三日かけてから、探索を再開するのだった。


 読んでいただけた方が楽しいひと時を過ごすことができれば幸いです。

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