ジェットコースタージェットコースタージェットコースター(2017)
__ジェットコースターで起こった事故のこと知ってるか?
「事故があった」とは聞くのに、どんな事故だったのか誰に聞いても答えが違うんだ。
☆
廃園に遊園地の謎を探るべく、僕は裏野ドリームランドにやってきた。誰にも見つからないよう深夜にうちを抜け出し、閉じられた門をよじ登り園内へと進入する。
すると
誰もいないはずなのに、背後から気配を感じる。振り返ると、ボロボロになったウサギのマスコットが僕に風船を差し出した。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
驚きのあまり後ろにひっくり返りそうになったけど、何とか踏ん張りそのまま振り返らずに駆け出した。
(まずい!やっぱりここは呪われた遊園地だったんだ、どうしよう……)
忍び込んだ事を後悔した僕はそのまま引き返そうと入り口を探して右往左往した。しかし、何処へ向かっても辿り着けなかい。
途方に暮れていると、古びたスピーカーから掠れた音声の場内アナウンスが鳴り響いた。
__ピーンポーンパーンポーン
「本日は裏野ドリームランドへお越し頂き、誠にありがとうございます。只今よりジェットコースターへのご乗車を承ります」
ジェットコースター!?
その単語を聞き、本来の目的を思い出した僕は勇気を振り絞り受付をする決心をした。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
受付のおばさんはウサギのマスコットと同じセリフを口にした。僕はお金を払おうと財布を取り出したけど、おばさんはそんなことはお構いなしに僕を座席へと連れていった。
少し弱気になった僕は堪らずおばさんに問いかけた。
「ねえ、このジェットコースターで昔事故があったんだよね?おばさん、何か知らない?」
おばさんは問いかけに対し、にっこりと答えた。
__死んじまったんだよ、私の坊やが。
!?
その声がまるで頭の中に直接響いてくるようで、僕は慌てておばさんの方へ目を見開いた。
しかし、そこにはもうおばさんの姿は無く、僕は呆気に取られた。
(どうしよう……)
再び不安にかられた。逃げ出そうと思い安全ベルトを外そうと試みるものの、それは一度下ろすと自分では外せないようになっているらしく、僕は覚悟を決める他ないらしい。
恐怖に身を震わせていると、隣の席から声がした。
「どうしたの?僕、ジェットコースターが怖いの?」
いつからいたのか、隣ではセーラー服のお姉さんが微笑んでいた。お姉さんは凄く美人で、僕の恐怖心は一気に吹き飛んだ。
「へ、へっちゃらだよ!これくらい!」
胸を張って答えると、お姉さんはにこにこと微笑み、手招きをした。頭を撫でてくれるようで、僕はお姉さんの方へ身を乗り出した。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
!?
その言葉を聞いた瞬間、僕は慌ててお姉さんから身を引いた。お姉さんは特に動揺する様子もなく、変わらず微笑んでいる。
僕は震える声で、お姉さんに問いかけた。
「お、お姉さん、このジェットコースターて事故があったこと……知ってる?」
すると、お姉さんは笑顔でこう答えた。
「女の子が一人、地面に投げ出されちゃったんだ」
え?女の子?
さっきおばさんは坊やが死んだって言ってたのに。言ってることが違うって、噂のまんまだ。
僕はお姉さんにおばさんが言っていたことを知っているか尋ねようとしたけれど、隣にはもう、お姉さんの姿は無かった。
__pppppppp
突然の着信音に僕の心臓は止まりそうになった。ポケットに手を入れると、携帯に電話がかかっている。非通知となっているため相手はわからない。
「も、もしもし……」
「間も無くジェットコースターが発車するよ、坊や準備はいいかい?」
声の主は最初に出会ったマスコットのように思えた。もしかしたら違うかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。
おばさんもお姉さんもきっと人間じゃない。逃げ出したい僕は力一杯叫んだ。
「準備できてない!早く下ろして!」
僕は藁にも縋る思いで携帯を握り締めた。しかしそんな僕の不安は呆気なく解消された。
「了解したよ。坊や、今ベルトを外すから早くお行き」
その声と同時に、僕は解放された。ジェットコースターを飛び降りた僕はそのままエントランスを目指して走り出した。
夢中で駆けていると、目の前にあのウサギのマスコットが現れた。それは何処か僕を遊園地の外へ案内しようとしているように見えた。前を進むウサギのマスコットを追い掛けていると、さっきは辿り着けなかった門の前までやってきた。
息を切らしながら辺りを見渡してみるものの、ウサギのマスコットの姿は何処にも見えない。それでも、僕はお礼を言わずにはいられず、心の中で強く、ありがとう!と叫んだ。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
僕は門を乗り越え、遊園地を後にした。
__ジェットコースターで起こった事故のこと知ってるか?
「事故があった」とは聞くのに、どんな事故だったのか誰に聞いても答えが違うんだ。
☆☆
廃園に遊園地の謎を探るべく、僕は裏野ドリームランドにやってきた。誰にも見つからないよう深夜にうちを抜け出し、閉じられた門をよじ登り園内へと進入する。
すると
誰もいないはずなのに、背後から気配を感じる。振り返ると、ボロボロになったウサギのマスコットが僕に風船を差し出した。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
驚きのあまり後ろにひっくり返りそうになったけど、何とか踏ん張りそのまま振り返らずに駆け出した。
(まずい!やっぱりここは呪われた遊園地だったんだ、どうしよう……)
忍び込んだ事を後悔した僕はそのまま引き返そうと入り口を探して右往左往した。しかし、何処へ向かっても辿り着けなかい。
途方に暮れていると、古びたスピーカーから掠れた音声の場内アナウンスが鳴り響いた。
__ピーンポーンパーンポーン
「本日は裏野ドリームランドへお越し頂き、誠にありがとうございます。只今よりジェットコースターへのご乗車を承ります」
ジェットコースター!?
その単語を聞き、本来の目的を思い出した僕は勇気を振り絞り受付をする決心をした。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
受付のおばさんはウサギのマスコットと同じセリフを口にした。僕はお金を払おうと財布を取り出したけど、おばさんはそんなことはお構いなしに僕を座席へと連れていった。
少し弱気になった僕は堪らずおばさんに問いかけた。
「ねえ、このジェットコースターで昔事故があったんだよね?おばさん、何か知らない?」
おばさんは問いかけに対し、にっこりと答えた。
__死んじまったんだよ、私の坊やが。
!?
その声がまるで頭の中に直接響いてくるようで、僕は慌てておばさんの方へ目を見開いた。
しかし、そこにはもうおばさんの姿は無く、僕は呆気に取られた。
(どうしよう……)
再び不安にかられた。逃げ出そうと思い安全ベルトを外そうと試みるものの、それは一度下ろすと自分では外せないようになっているらしく、僕は覚悟を決める他ないらしい。
恐怖に身を震わせていると、隣の席から声がした。
「どうしたの?僕、ジェットコースターが怖いの?」
いつからいたのか、隣ではセーラー服のお姉さんが微笑んでいた。お姉さんは凄く美人で、僕の恐怖心は一気に吹き飛んだ。
「へ、へっちゃらだよ!これくらい!」
胸を張って答えると、お姉さんはにこにこと微笑み、手招きをした。頭を撫でてくれるようで、僕はお姉さんの方へ身を乗り出した。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
!?
その言葉を聞いた瞬間、僕は慌ててお姉さんから身を引いた。お姉さんは特に動揺する様子もなく、変わらず微笑んでいる。
僕は震える声で、お姉さんに問いかけた。
「お、お姉さん、このジェットコースターて事故があったこと……知ってる?」
すると、お姉さんは笑顔でこう答えた。
「女の子が一人、地面に投げ出されちゃったんだ」
え?女の子?
さっきおばさんは坊やが死んだって言ってたのに。言ってることが違うって、噂のまんまだ。
僕はお姉さんにおばさんが言っていたことを知っているか尋ねようとしたけれど、隣にはもう、お姉さんの姿は無かった。
__pppppppp
突然の着信音に僕の心臓は止まりそうになった。ポケットに手を入れると、携帯に電話がかかっている。非通知となっているため相手はわからない。
「も、もしもし……」
「間も無くジェットコースターが発車するよ、坊や準備はいいかい?」
声の主は最初に出会ったマスコットのように思えた。もしかしたら違うかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。
おばさんもお姉さんもきっと人間じゃない。逃げ出したい僕は力一杯叫んだ。
「準備できてない!早く下ろして!」
僕は藁にも縋る思いで携帯を握り締めた。しかしそんな僕の不安は呆気なく解消された。
「了解したよ。坊や、今ベルトを外すから早くお行き」
その声と同時に、僕は解放された。ジェットコースターを飛び降りた僕はそのままエントランスを目指して走り出した。
夢中で駆けていると、目の前にあのウサギのマスコットが現れた。それは何処か僕を遊園地の外へ案内しようとしているように見えた。前を進むウサギのマスコットを追い掛けていると、さっきは辿り着けなかった門の前までやってきた。
息を切らしながら辺りを見渡してみるものの、ウサギのマスコットの姿は何処にも見えない。それでも、僕はお礼を言わずにはいられず、心の中で強く、ありがとう!と叫んだ。
「いらっしゃい坊や、しんでおいで」
僕は門を乗り越え、遊園地を後にした。
__ジェットコースターで起こった事故のこと知ってるか?
「事故があった」とは聞くのに、どんな事故だったのか誰に聞いても答えが違うんだ。
☆☆☆
廃園に遊園地の謎を探るべく、僕は裏野ドリームランドにやってきた。誰にも見つからないよう深夜にうちを抜け出し、閉じられた門をよじ登り園内へと進入する。
すると
誰もいないはずなのに、背後から気配を感じる。振り返ると、ボロボロになったウサギのマスコットが僕に風船を差し出した。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
驚きのあまり後ろにひっくり返りそうになったけど、何とか踏ん張りそのまま振り返らずに駆け出した。
(まずい!やっぱりここは呪われた遊園地だったんだ、どうしよう……)
忍び込んだ事を後悔した僕はそのまま引き返そうと入り口を探して右往左往した。しかし、何処へ向かっても辿り着けなかい。
途方に暮れていると、古びたスピーカーから掠れた音声の場内アナウンスが鳴り響いた。
__ピーンポーンパーンポーン
「本日は裏野ドリームランドへお越し頂き、誠にありがとうございます。只今よりジェットコースターへのご乗車を承ります」
ジェットコースター!?
その単語を聞き、本来の目的を思い出した僕は勇気を振り絞り受付をする決心をした。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
受付のおばさんはウサギのマスコットと同じセリフを口にした。僕はお金を払おうと財布を取り出したけど、おばさんはそんなことはお構いなしに僕を座席へと連れていった。
少し弱気になった僕は堪らずおばさんに問いかけた。
「ねえ、このジェットコースターで昔事故があったんだよね?おばさん、何か知らない?」
おばさんは問いかけに対し、にっこりと答えた。
__死んじまったんだよ、私の坊やが。
!?
その声がまるで頭の中に直接響いてくるようで、僕は慌てておばさんの方へ目を見開いた。
しかし、そこにはもうおばさんの姿は無く、僕は呆気に取られた。
(どうしよう……)
再び不安にかられた。逃げ出そうと思い安全ベルトを外そうと試みるものの、それは一度下ろすと自分では外せないようになっているらしく、僕は覚悟を決める他ないらしい。
恐怖に身を震わせていると、隣の席から声がした。
「どうしたの?僕、ジェットコースターが怖いの?」
いつからいたのか、隣ではセーラー服のお姉さんが微笑んでいた。お姉さんは凄く美人で、僕の恐怖心は一気に吹き飛んだ。
「へ、へっちゃらだよ!これくらい!」
胸を張って答えると、お姉さんはにこにこと微笑み、手招きをした。頭を撫でてくれるようで、僕はお姉さんの方へ身を乗り出した。
「いらっしゃい坊や、しんでおいで」
!?
その言葉を聞いた瞬間、僕は慌ててお姉さんから身を引いた。お姉さんは特に動揺する様子もなく、変わらず微笑んでいる。
僕は震える声で、お姉さんに問いかけた。
「お、お姉さん、このジェットコースターて事故があったこと……知ってる?」
すると、お姉さんは笑顔でこう答えた。
「女の子が一人、地面に投げ出されちゃったんだ」
え?女の子?
さっきおばさんは坊やが死んだって言ってたのに。言ってることが違うって、噂のまんまだ。
僕はお姉さんにおばさんが言っていたことを知っているか尋ねようとしたけれど、隣にはもう、お姉さんの姿は無かった。
__pppppppp
突然の着信音に僕の心臓は止まりそうになった。ポケットに手を入れると、携帯に電話がかかっている。非通知となっているため相手はわからない。
「も、もしもし……」
「間も無くジェットコースターが発車するよ、坊や準備はいいかい?」
声の主は最初に出会ったマスコットのように思えた。もしかしたら違うかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。
おばさんもお姉さんもきっと人間じゃない。逃げ出したい僕は力一杯叫んだ。
「準備できてない!早く下ろして!」
僕は藁にも縋る思いで携帯を握り締めた。しかしそんな僕の不安は呆気なく解消された。
「了解したよ。坊や、今ベルトを外すから早くお行き」
その声と同時に、僕は解放された。ジェットコースターを飛び降りた僕はそのままエントランスを目指して走り出した。
夢中で駆けていると、目の前にあのウサギのマスコットが現れた。それは何処か僕を遊園地の外へ案内しようとしているように見えた。前を進むウサギのマスコットを追い掛けていると、さっきは辿り着けなかった門の前までやってきた。
息を切らしながら辺りを見渡してみるものの、ウサギのマスコットの姿は何処にも見えない。それでも、僕はお礼を言わずにはいられず、心の中で強く、ありがとう!と叫んだ。
「いらっしゃい坊や、しんでおいで」
僕は門を乗り越え、遊園地を後にした。
__ジェットコースターで起こった事故のこと知ってるか?
「事故があった」とは聞くのに、どんな事故だったのか誰に聞いても答えが違うんだ。
☆☆☆☆
廃園に遊園地の謎を探るべく、僕は裏野ドリームランドにやってきた。誰にも見つからないよう深夜にうちを抜け出し、閉じられた門をよじ登り園内へと進入する。
すると
誰もいないはずなのに、背後から気配を感じる。振り返ると、ボロボロになったウサギのマスコットが僕に風船を差し出した。
「いらっしゃい坊や、楽しんでおいで」
驚きのあまり後ろにひっくり返りそうになったけど、何とか踏ん張りそのまま振り返らずに駆け出した。
(まずい!やっぱりここは呪われた遊園地だったんだ、どうしよう……)
忍び込んだ事を後悔した僕はそのまま引き返そうと入り口を探して右往左往した。しかし、何処へ向かっても辿り着けなかい。
途方に暮れていると、古びたスピーカーから掠れた音声の場内アナウンスが鳴り響いた。
__ピーンポーンパーンポーン
「本日は裏野ドリームランドへお越し頂き、誠にありがとうございます。只今よりジェットコースターへのご乗車を承ります」
ジェットコースター!?
その単語を聞き、本来の目的を思い出した僕は勇気を振り絞り受付をする決心をした。
「いらっしゃい坊や、しんでおいで」
受付のおばさんはウサギのマスコットと同じセリフを口にした。僕はお金を払おうと財布を取り出したけど、おばさんはそんなことはお構いなしに僕を座席へと連れていった。
少し弱気になった僕は堪らずおばさんに問いかけた。
「ねえ、このジェットコースターで昔事故があったんだよね?おばさん、何か知らない?」
おばさんは問いかけに対し、にっこりと答えた。
__死んじまったんだよ、私の坊やが。
!?
その声がまるで頭の中に直接響いてくるようで、僕は慌てておばさんの方へ目を見開いた。
しかし、そこにはもうおばさんの姿は無く、僕は呆気に取られた。
(どうしよう……)
再び不安にかられた。逃げ出そうと思い安全ベルトを外そうと試みるものの、それは一度下ろすと自分では外せないようになっているらしく、僕は覚悟を決める他ないらしい。
恐怖に身を震わせていると、隣の席から声がした。
「どうしたの?僕、ジェットコースターが怖いの?」
いつからいたのか、隣ではセーラー服のお姉さんが微笑んでいた。お姉さんは凄く美人で、僕の恐怖心は一気に吹き飛んだ。
「へ、へっちゃらだよ!これくらい!」
胸を張って答えると、お姉さんはにこにこと微笑み、手招きをした。頭を撫でてくれるようで、僕はお姉さんの方へ身を乗り出した。
「いらっしゃい坊や、しんでおいで」
!?
その言葉を聞いた瞬間、僕は慌ててお姉さんから身を引いた。お姉さんは特に動揺する様子もなく、変わらず微笑んでいる。
僕は震える声で、お姉さんに問いかけた。
「お、お姉さん、このジェットコースターて事故があったこと……知ってる?」
すると、お姉さんは笑顔でこう答えた。
「女の子が一人、地面に投げ出されちゃったんだ」
え?女の子?
さっきおばさんは坊やが死んだって言ってたのに。言ってることが違うって、噂のまんまだ。
僕はお姉さんにおばさんが言っていたことを知っているか尋ねようとしたけれど、隣にはもう、お姉さんの姿は無かった。
__pppppppp
突然の着信音に僕の心臓は止まりそうになった。ポケットに手を入れると、携帯に電話がかかっている。非通知となっているため相手はわからない。
「も、もしもし……」
「間も無くジェットコースターが発車するよ、坊や準備はいいかい?」
声の主は最初に出会ったマスコットのように思えた。もしかしたら違うかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。
おばさんもお姉さんもきっと人間じゃない。逃げ出したい僕は力一杯叫んだ。
「準備できてない!早く下ろして!」
僕は藁にも縋る思いで携帯を握り締めた。しかしそんな僕の不安は呆気なく解消された。
「了解したよ。坊や、今ベルトを外すから早くお行き」
その声と同時に、僕は解放された。ジェットコースターを飛び降りた僕はそのままエントランスを目指して走り出した。
夢中で駆けていると、目の前にあのウサギのマスコットが現れた。それは何処か僕を遊園地の外へ案内しようとしているように見えた。前を進むウサギのマスコットを追い掛けていると、さっきは辿り着けなかった門の前までやってきた。
息を切らしながら辺りを見渡してみるものの、ウサギのマスコットの姿は何処にも見えない。それでも、僕はお礼を言わずにはいられず、心の中で強く、ありがとう!と叫んだ。
「いらっしゃい坊や、しんでおいで」
僕は門を乗り越え、遊園地を後にした。
__ジェットコースターで起こった事故のこと知ってるか?
「事故があった」とは聞くのに、どんな事故だったのか誰に聞いても答えが違うんだ。
☆☆☆☆☆
廃園に遊園地の謎を探るべく、僕は裏野ドリームランドにやってきた。誰にも見つからないよう深夜にうちを抜け出し、閉じられた門をよじ登り園内へと進入する。
すると
誰もいないはずなのに、背後から気配を感じる。振り返ると、ボロボロになったウサギのマスコットが僕に風船を差し出した。
「いらっしゃい坊や、しんでおいで」
驚きのあまり後ろにひっくり返りそうになったけど、何とか踏ん張りそのまま振り返らずに駆け出した。
(まずい!やっぱりここは呪われた遊園地だったんだ、どうしよう……)
忍び込んだ事を後悔した僕はそのまま引き返そうと入り口を探して右往左往した。しかし、何処へ向かっても辿り着けなかい。
途方に暮れていると、古びたスピーカーから掠れた音声の場内アナウンスが鳴り響いた。
__ピーンポーンパーンポーン
「本日は裏野ドリームランドへお越し頂き、誠にありがとうございます。只今よりジェットコースターへのご乗車を承ります」
ジェットコースター!?
その単語を聞き、本来の目的を思い出した僕は勇気を振り絞り受付をする決心をした。
「いらっしゃい坊や、しんでおいで」
受付のおばさんはウサギのマスコットと同じセリフを口にした。僕はお金を払おうと財布を取り出したけど、おばさんはそんなことはお構いなしに僕を座席へと連れていった。
少し弱気になった僕は堪らずおばさんに問いかけた。
「ねえ、このジェットコースターで昔事故があったんだよね?おばさん、何か知らない?」
おばさんは問いかけに対し、にっこりと答えた。
__死んじまったんだよ、私の坊やが。
!?
その声がまるで頭の中に直接響いてくるようで、僕は慌てておばさんの方へ目を見開いた。
しかし、そこにはもうおばさんの姿は無く、僕は呆気に取られた。
(どうしよう……)
再び不安にかられた。逃げ出そうと思い安全ベルトを外そうと試みるものの、それは一度下ろすと自分では外せないようになっているらしく、僕は覚悟を決める他ないらしい。
恐怖に身を震わせていると、隣の席から声がした。
「どうしたの?僕、ジェットコースターが怖いの?」
いつからいたのか、隣ではセーラー服のお姉さんが微笑んでいた。お姉さんは凄く美人で、僕の恐怖心は一気に吹き飛んだ。
「へ、へっちゃらだよ!これくらい!」
胸を張って答えると、お姉さんはにこにこと微笑み、手招きをした。頭を撫でてくれるようで、僕はお姉さんの方へ身を乗り出した。
「いらっしゃい坊や、しんでおいで」
!?
その言葉を聞いた瞬間、僕は慌ててお姉さんから身を引いた。お姉さんは特に動揺する様子もなく、変わらず微笑んでいる。
僕は震える声で、お姉さんに問いかけた。
「お、お姉さん、このジェットコースターて事故があったこと……知ってる?」
すると、お姉さんは笑顔でこう答えた。
「女の子が一人、地面に投げ出されちゃったんだ」
え?女の子?
さっきおばさんは坊やが死んだって言ってたのに。言ってることが違うって、噂のまんまだ。
僕はお姉さんにおばさんが言っていたことを知っているか尋ねようとしたけれど、隣にはもう、お姉さんの姿は無かった。
__pppppppp
突然の着信音に僕の心臓は止まりそうになった。ポケットに手を入れると、携帯に電話がかかっている。非通知となっているため相手はわからない。
「も、もしもし……」
「間も無くジェットコースターが発車するよ、坊や準備はいいかい?」
声の主は最初に出会ったマスコットのように思えた。もしかしたら違うかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。
おばさんもお姉さんもきっと人間じゃない。逃げ出したい僕は力一杯叫んだ。
「準備できてない!早く下ろして!」
僕は藁にも縋る思いで携帯を握り締めた。しかしそんな僕の不安は呆気なく解消された。
「了解したよ。坊や、今ベルトを外すから早くお逝き」
その声と同時に、ジェットコースターは走り出した。
__ジェットコースターで起こった事故のこと知ってるか?
「事故があった」とは聞くのに、どんな事故だったのか誰に聞いても答えが違うんだ。