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闇と眠り
「もう少し分別がついていると思ったのだが……。君は、僕と似ているんだね。科学にはめっぽう強いが、社会不適格、といったところか」
違う、違う、違う……。少女は、幾度となく繰り返したが、隆司の耳には入らなかった。
「君はウイルスに向いていないのではないかな。演算能力は大したものだけど。教育が上手くいっていないようだ。君たちの仕事は人間を社会から排除することだろう。それに必要なことと言えば簡単だ。最強の詐欺師になることだ」
これほど恋愛を楽しめる世界は他にない。
何故かって? いつだって簡単にリセットすることが出来るからだ!
隆司は、コンピューターのメイン電源を落とした。冷却用のファンが力強く呻いていたが、やがて止んだ。ディスプレイに表示されていた少女は、一瞬のうちに消えてなくなった。
「二次元の闇に封印してあげよう……」
灰色がかったカーテンを勢いよく開け放つと、窓越しに伝う陽光が、青白く痩せこけた頬を撫でるように温めた。くだら野の息吹とかけ離れたひだまりに腰かけた部屋の主は、ひと時の眠りについた。