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Melting Dead 最弱の科学者  作者: aki o
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出会い

 赤ちゃんが覚える息吹にも似た、胸の高鳴りが終わりを迎えようとしていた。

 画面に現れた敵と戦う気力は完全に失われた。出で立ちは、恋を覚えかけたくらいの小学生で、何んとも可愛らしいのだが、潤んだ瞳の奥底では、気高さと傲慢さが燃えたぎっていた。

 

 きっとどこかのお嬢様なのだろう。

 ウイルスマニアは、ユーザーの趣味まで把握しているのか!

 純白のワンピースと、夏の海辺を思い起こす麦わら帽子。永遠の雪に閉ざされた胸の高鳴りが少しずつ伝わってくる。大人用の大きな代物で、顔がつばに隠されている。首にかけた十字架は、焼けるような陽に照らされて白い。

 

 十字架だけではなく、肌が白一色だ! 他の色は決して混ざらない。肌色などもってのほか。

 一心に手のひらを合わせて祈り続ける君の願いを是非ともお聞きしたいものだ。

 

 エネルギー? 生憎、君の友達が奪っていったよ。

 金? 父に頼めばある程度は工面してくれるかもしれない。


 「もしもし。いつまで妄想しているの」

 「ほら、声まで可愛い……」

 

 声の主がパソコン上の少女であることに気付くまで、いや、正確に言うと、頭の混乱を整理して、そう結論づけるに至るまで、時間がかかった。父以外、ましてや、女性など入ったことのない、極めてプライベートな書庫を数回見渡した。父が残していった学術書、殊に、プログラムに関する書籍と、趣味のゲーム攻略本が所狭しと並んでいた。冷却ファンの音に掻き消されつつ、二度目の声が小さく聞こえた。

 

 「ここだってば」

 この少女が声の主なのか? たまげたものだ! これなら、秘密機関の情報収集やハッキングは簡単なわけだ。

 「聞こえてますか、無視しないで」

 親から突き放された幼児のように、今にも泣きださんばかりのか弱い声だ。

 

 「えっと、会話はどうすればいいのかな」

 「馬鹿なの? あなたが話そうと思えば話せるでしょう」

 だから、どうやって話すんだ。C言語なんて、これほど高度なプログラムには対応しないだろう。そもそも忘れているし。

  

         待てよ……


 「ほら、何かしゃべってみてよ。名前は何て言うの」

 「僕の名前は……」

 名前は、鈴木隆司だ。

 

 

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