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第24話 物資調達

 朝靄はすっかりと晴れ、気温も多少上がり、清々しい朝になった。


「おはよ~」


 続々と起きてくる面々と朝の挨拶をかわす。男連中はともかく、女の子達の可愛さを考えると朝の挨拶は至福の時である。


 美紀さんから支給された未来の歯ブラシを使いながら、こんなトラブルにならずに戦国時代に挑んでいたら、当然のように歯ブラシなんて物は存在しなかった事に気付く。


 時間の経過と共に、誰からでもなくテーブルに集まって話をしていると、ようやく優理が起きてきた。


「優理、おはよ~」


 唯ちゃんの挨拶を追いかけるように、皆からも挨拶が飛ぶ。


 優理は一つ一つ丁寧に返しているが、どうにも半分寝ている頭では歯切れが悪く、それがまたとても可愛かった。


(やっぱいいわぁ~、ホント最高)


 寝ボケ優理を眺めながら朝食を口に放り込んでいると、金田さんとつーくん、そして美紀さんの間で何かが決まったらしい。



 金田さんが立ちあがると、会議に入れない組に向って声をかけた。


「んじゃ、ちょっと行ってくるわ」


 そう言うと、美紀さんをチラっと見て「三十分くらいでつくかね?」と問いかける。


「はい、それくらいで大丈夫だと思います」


 答えると、昨日俺と一緒に見ていたリストに目線を落とした。


「装置を幾つか持ち帰るとなれば、帰りは一時間近くかかるかもしれません」



「えー、どこ行くんですかー」


 瑠依ちゃんが不満そうだ。


 美紀さんは不満そうな瑠依ちゃんを「伊藤さんいるからいいでしょ」と宥めながら、俺にもわかるように説明してくれた。


「先行スタッフの待機拠点に行くのよ。警報と同時に転送して行ったようなので、もしかしたら長期滞在用の備品が残されたままかもしれないの」


(長期滞在用か……それは確かにほしい)


 美紀さんは、俺に向って歩きながら言葉を続ける。


「ホントはね、石島さんにも来てほしいんだけど。こっちを放っておくわけにはいかないし」


 俺の目の前まで来ると、拳で俺の胸を軽く突いた。


「伊藤さんが起きるまで男性はお一人ですが、女の子達を頼みますね!」


 伊藤さんは体調が思わしくない。

 一晩の徹夜でぶっ倒れるとかオッサンすぎるだろうと思うが、色々考え込む人だから精神的にも疲労しているのだろうか。


 美紀さんは俺に女の子達を頼むと、つーくんと金田さんを引き連れ三人で先行スタッフの待機拠点とやらに向うため、山の中へ入っていった。


(頼りにされた! なんか嬉しい!)


 素直に嬉しい自分は、単純でバカなんだなと思ったけど、嬉しい物は嬉しいのだ、仕方がない。一人で喜んでいた俺の顔を覗き込むように、ニコニコ笑顔の唯ちゃんが俺に声をかけてきた。


「頼りにされてるって事ですよ? わかってます?」

「お、おう、大丈夫!」


 大丈夫だと言ってはみたが、何をすべきか、何もすべきではないのか、よく分からない。


 俺はちょっと考え込んだ。

 そんな俺を気遣ってか、優理が言葉を発する。


「そんなに難しく考えなくていいんじゃないかな?」


 優理の優しい言葉に勇気づけられる。


(優しいな、俺の天使ちゃん)


 優しい俺の天使ちゃんの言葉は続く。


「だってさ? 伊藤さんが起きるまでって言ってたし、本当に困ったら伊藤さん起こしちゃえばいいよね?」


(……グサッ)


 悪気は無いんだろうと思う。そうだろうけど、なんかグサっとくる一言だ。


「確かにそうですね。困った時に起こして怒るような人じゃないと思いますし」


(唯ちゃん、そうゆう事じゃなくて……)


 でも、きっと、それは正解だ。

 何が起こるか分からないけど、本当に困る事態が発生したら俺でも伊藤さんを起こしに行く。


 俺に任せるなんて、俺でも怖くて出来ない。

 何も答えが出ないまま、とりあえず座って待つ事にした。


「ねーねー、唯先輩っ」


 瑠依ちゃんが何かを唯ちゃんに確認しているようだ。


「ん? いいんじゃないかしら、さっき石島さん達も歯ブラシ使ってたみたいだし」

「ホント? やったね!」


(この子の感情は全身から出るんだな)


 体全部を使って喜びを表現した瑠依ちゃん。


「伊藤さん寝てるし、暇すぎて暇すぎて暇死する所でした!」


 そう言ってテーブルに付くと、その上に「トンッ」と小さい箱を置いた。


「トランプしよっ」


 三百年後でもトランプが存在するって事に感動したし、ババ抜きとか七並べとか、基本的な遊びも変わっていない事にとても安心した。



 なんやかんやと二時間くらい遊んでいると、ホクホクの笑顔で美紀さんが戻ってきた。

 その手にあったのは、俺達に支給された物と同じ麻袋。袋がパンパンになっている様子から、けっこうな量が入っていると思われる。


 それともう一つ、小さ目のジュラルミンケースみたいな箱があった。美紀さんは、袋とケースをテーブルに置くと、ケースを開いた。


「安全性はこれで格段に向上するわ」


 そう言いながら開いたケースを操作すると、ソーラーパネルが飛び出し、ケース中央に立ち上がるように小さなモニターが出現した。それが何かの説明を受ける前に、遅れていた金田さんとつーくんが戻ってくる。


 金田さんは、金田さんの身長よりも長いく、横幅もそこそこある円柱状の何かを肩に担ぎ。つーくんは四角い大きな箱を抱え、前がほとんど見えない状態で歩いている。


 美紀さんは、金田さんとつーくんの運んできた物体を指さす。


「喜べ! これでシャワーを浴びれる!」


 美紀さんの声に、女の子が歓喜の声を上げた。

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