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第14話 状況説明

 説明の前半部分は、今まで説明された事のおさらい程度。後半部分は、これからの事についてだった。


 まず、現在地について。


 ここは優理たちの時代でいう岐阜県北部に該当するらしい。

 この時代では飛騨という国名で、山を南に下ればすぐに美濃という国に入るそうだ。


 飛騨は人口の少ない山岳地帯で、人目に付かずにタイムズゲートを開くには好都合との事。


 地理の授業もあまり得意ではなかったが、流石にこれは理解できた。何故なら、飛騨は俺の地元だからだ。


 次に、年代。

 西暦で1567年との事。


 この1567年という数字は、俺が学校で習った年号に近しいものは無かった気がする。それ以上の説明は無かった。


 次に、俺達の事。これにはちょっと驚いた。


 タイムズゲートを利用して転送された先では、何故か年を取らないそうだ。身体的な成長は、トレーニングによる成長はあっても、加齢による成長はしないらしい。これは人間だけでなく、植物や動物を転送した場合でも同じで、ケガや病気をすればもちろん治ったりするが、成長や老化といった種類の事が殆ど起こらないそうだ。


 原因は、未解明らしい。


 次に、今後に行動について。


 現地点には既に先行してスタッフが転送されており、半径5kmまでは人家が無い事が確認されている。


 ここから少し山間を抜けた目立たない場所に、期間限定で簡易キャンプが設置されているが、それは四日後に解体となる。サポートの子達は簡易キャンプの解体後、すぐに元の時代に戻るらしい。


 その間、簡易キャンプにいれば寝る場所の心配はなさそうだ。


 しかし、半径5km圏内を一歩でも踏み出した場合、簡易キャンプに戻る事は認められておらず、そこから先は全て自己責任で行動しなければならない。


 支給品は、この時代に適した服装と、この時代の単位で五百文という通貨、それと携行食五日分が手渡されるとの事だ。まだ数日、優理と過ごせるかもしれないと思って安心した。



 次に、このヒストリーの終了について。


 四日後にスタッフとサポートの女の子は元の時代に転送されていく。


 その後、ゲートは一度閉じられる。

 ゲートは閉じるが監視は出来ているそうで、この中の誰かが大きな変革を引き起こせた場合、ゲートを解放してその時点での生存者を元の時代に回収するとの事だ。回収方法は様々だが、あまり気を使わずに強引に回収する可能性が高いと告げられた。


 逆に、変革を引き起こす者が出なかった場合。


 ここの地点の年代にして1618年1月1日を持って生存者を回収するとの事。五十年も与えられているだ。しかも歳を取らないのであれば、時間はたっぷりとあるように感じた。


 次に、監視方法と歴史の変革について。


 この時代の監視は直接的なリアルタイムではなく、ある程度の変革が発生する事で生じる「時空の歪み」のような物を感知する事で、間接的に行われるとの事。その歪みを感知し、その事象を確認し、選考委員がそれを変革と認めるかどうかの投票が行われる。


 ここで認められれば、ゲームチェンジャーだ。


 最後に、回収される「元いた時代」について。


 これが、衝撃的だった。俺は、よく考えれば当たり前の事に気付いていなかった。むしろこの説明は、その「当たり前」よりは俺に希望をくれる物だった。

 この地点と、元いた時代では、時間の経過が恐ろしく違うそうだ。過去の実例を挙げると、最も誤差が生じたケースで、転送先で百二十年の経過が、元の時代ではわずか九十五日間だったそうだ。


 今回はリミットが五十年。早ければ一ヶ月、遅くても一年くらいで戻れる事になるらしい。


 リアルタイムで五十年も経ってしまったら。俺が戻る頃には、優理はもうお婆ちゃんだ。いい人と結婚して、孫までいるかもしれない。今の優理と会えないなんて辛すぎるから、この説明は俺を救ってくれた。


 質問タイムが設けられたが、俺は特に聞く事がなかった。

 過去に受けた説明と、今回の最終説明で十分だったからだ。


 とはいえ十五名もいると、いくつかの質問がなされた。他の候補者からの質問の中には「聞かなくてもわかるだろ!」と思う質問も散見された。与えられた情報から、自分で答えを導き出す。

 ちょっと前までの俺に、そんな力は無かったと思う。


 伊藤さんや、金田さんの影響を受け、俺も少しは思慮深くなったのかもしれない。


 一つだけ、面白い質問があった。


 それは「この時代で子供を作る事ができるか?」という質問だった。


 結論、答えは「ノー」だ。


 転送先で細かい実験が出来ていないので明確な答えは無いそうだが。男女共に、転送された者の精子や卵子については、年を取ったり成長したりしない俺達本人と同じように、それが出来ないのではないか。というのが有力な説になっているとの事。


 気付けば、一つも質問をしなかったのは五人だけだった。


 俺とつーくん。

 金田さん、伊藤さん。

 そしてもう一人、ちょっと性格に難のある大森さんという候補者だ。


 一度、候補者として転送を経験しているはずの生還者の質問は、この時代で生き抜く上で欲しい情報を取ろうとするものだった。

 しかし、それは変革を起こすのに必要となる情報の部類に入るそうで、回答は与えられなかった。



 一通りの質問が終わると、簡易キャンプへの移動が行われた。



 まだ日も高くなりきらない午前中。季節は春なのだろうか、過ごしやすい陽気だった。

 簡易キャンプでは、十五個の候補者用のテントが設置されていた。

 サポートの子は、プレハブ造りの小屋に泊まるようだ。


 候補者は支給品を受け取ると、一度テントに入り、着替えを行った。


 粗末な服だ、コンセプトは修験者らしい。


 俺にはその修験者とやらが何なのか分からなかったが、時代劇に出てくる山伏のような雰囲気の見た目になった。

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