わすれんぼうの国
ぎゃあー!大変だー!ひやー!私はだーれー!ここどこだよー!
ぼん「到着」
ぽん「ここはどんな国だろう」
ぼん「あのでっかい木の棒が気になるね」
とてものどかなこの国は、わすれんぼうの国。
そして、街の東南東にそびえ立つ、あれこそが忘れん棒です。
ぽん「誰!?」びくっ
ぼん「生理的に苦しい声がする!」
さりげなく酷いです。
ああ、なるほど、忘れん棒の影響を受けてしまいましたか。
アモルエ「おーーーーーい」
ぼん「近っ!」びくっ
ぽん「うるさい!」
ぼん「ん?」
ぽん「あなたさん、どこかで見たことある」
ぼん「僕も同じ」
チョコラティエ姉妹「誰?」くびかしげ
これはもう、かなり面倒なことになりました。
アモルエ「ごめんなさいね。今さっき、町に咲くオミソティスが壊滅的になったの」
オミソティスとは忘れな草と呼ばれる花の一種です。
忘れることのできない、おふくろの味噌汁の匂いのする花のことです。
ぼん「いい匂いがすると思った」くんくん
それのおかげで、みんな何も忘れずにいられるのです。
ぼん「て、だから誰!」おこだよ!
ぽん「正体を現せ悪党め!」きょろきょろ
もうしーらない。
アモルエ「あらら、私としたことが、ポケットティッシュしか持っていないわ。大事なオミソティスのサシャを忘れてしまうなんて……」
ぼん「誰?」
アモルエ「誰でしょう」
ぽん「わかった!ティッシュ配りの人だ!」
違います。
アモルエ「じゃあ、配らないとね」
ぽん「手伝うよ」
アモルエ「ありがとう、誰かさん」
ぼん「あ!ティッシュが一つしかない!」
アモルエ「あらーーーーー……」
ぽん「そうだ!ティッシュ配りの人からティッシュを貰って配ろう!」
ぼん「それだ!」
町中へと急ぐ一行。
しかしそこで待ち受けていたのは。
ぽん「あれ?なにしにここへ?」
ぼん「ここはどこ?ぼくはだあれ?」
アモルエ「あの、すみません」
花セレブ「あらやだわ、あなたオミソティスを持っていないのね」はい
アモルエ「ありがとうございます!おかげで、すべて思い出しました!」
花セレブ「やだわ。あたし何してたんだっけ」
アモルエ「あ、もしかして最後の一本……お返しします!」
花セレブ「ありがとう!すべて思い出したわ!」
アモルエ「あら?」
花セレブ「まあ大変!はい、これ!」
アモルエ「ありがとうございます!」
花セレブ「ん?あたし……」
アモルエ「あ!お返しします!」
花セレブ「ごめんなさいね、何度も」
アモルエ「何がでしょうか?」
花セレブ「あらやだわ。ほら、もう持っていってちょうだい」
アモルエ「ありがとうございま……いえ!そんなわけには!」
花セレブ「え?なにこれ?」
アモルエ「とにかく受け取って下さい!」
花セレブ「あ!あーまた!」
アモルエ「はい?また、とは?」
花セレブ「だからもう」はい
アモルエ「あ!いけません!」はい
花セレブ「いいからいいから!」はい
アモルエ「お気持ちだけで!」はい
ぽん「うるさーーーーーい!!」
ぼん「ごめん」
ぽん「何が?」
ぼん「え?」
ぽん「それよりお腹すいたなあ」
アモルエ「これ、何かわからないけど」
花セレブ「それはティッシュよ!」
ぽん「ぺっ!」びちゃ
花セレブ「そう。食べ物じゃないの」
ぼん「それ美味しそう」
花セレブ「これはダメよ!オミソティスだけはだめ!」
ぽん「あむ」
花セレブ「あーーーーー……あ?」
ぽん「足りない」ぺろり
ぼん「じゃあ、僕が何か探してきてあげる」
ぽん「いいの?」
ぼん「まかせて!どうしてか、あなたさんにはそうしなきゃいけない気がするの」
ぽん「じゃ、お願いします」
ぼん「何を?」
アモルエ「任せて」
ぽん「は?」
アモルエ「え?」
花セレブ「あらやだわ、みんなしてゾンビみたいにさ迷ってる。今日は何かのお祭りかしら」
アモルエ「そう!今日はお祭りなのね!」
ぽん「みんなで大騒ぎだー!」
ぼん「花火お願いしまーす!」
アモルエ「花火?」
ぽん「なあにそれ」
ぼん「さあ?」
花セレブ「みなさん!花火をご存知でありませんか!」
アモルエ「私も探してきます!」
ぽん「何を?」
アモルエ「ティッシュ配りのティッシュ……?」
ぼん「は?」
花セレブ「ティッシュ配りのティッシュのティッシュをティッシュがお願いしまーす!」
ぽん「意味わからない」
花セレブ「何かしら、ティッシュって」
いーーーい加減うっとーしくなってきました。
タマ「花火があったよ!」
ぽん「可愛いー!クアッカワラビーさんだー!」なでなで
ぼん「アホロートルだよ!」なでなで
タマ「ピューマだよ」
にゃんにゃんです。
しかし偉いですね。
タマ「友達のじいさんが花火を……友達のじいさんって誰?」
ポチ「俺じゃない?」
タマ「違う」
ポチ「そうかなあ」
ぽん「ゲジゲジだー!」なでなで
ぼん「ムカデだよ!」なでなで
ポチ「ヤスデじゃない」
わんわんです。
ポチ「そうかなあ」
それより何か慌ただしい様子ですよ。
おじさん「にげろー!」たたっ!
ぼん「どうして?」
おじさん「知らんがなんかヤバーい!」
おばさん「花火がある倉庫に火がついたのさ」
おじさん「誰だお前!」
おばさん「あんたの綺麗な奥さんを忘れたのかい」
おじさん「汚いじゃないか」
おばさん「ほお、せっかくお味噌汁を届けに来たってのに」ほかほかよ
おじさん「顔も能面みたいで受けるよな?な?」
ぽん「ふふっ、能面て何か分からないけどうけるー!」くすくす
笑ってる場合じゃ、あ、だめだ。
ぼん「わあ……きれい」きらきら
ぽん「美しなー」きらきら
おじさん「ああ、よく見たら美しいじゃないか」
おばさん「まったく、あきれた」やれやれ
アモルエ「ところで、なんだか熱くないですか?」
花セレブ「あれ?なんだか近くない?」
忘れん棒の国、大爆発。




