リポートの国
自分は敏腕プロデューサーになりたかった、あとイケメンにもなりたかったんですが。
初恋相手の、お前の母親がアイドルをやめて元気を無くして。
それから、なりたいことを諦めてしまったわけなんですが。
もこから元気をもらった今なら頑張れます。
一緒に頑張ろう。
もこ「ノブタさん……」
この涙と鼻水と汗にまみれたVHSレターは、ついさっき、連行前に彼が慌てて撮ったものです。
どうしても、もこちゃんに頑張ってほしいからと。
ぽん「なんでだろう。ぷちきもいかも」
もこ「うん。これはゴミ箱にぽいして」ずぼっ
ぽん「あれまあ」
もこ「気持ちを切り替えて、がんばっちや!」
まもなくーリポートの国ー。
リポートの国でございまーす。
ぽん「うざっ」
リポートされるスポットの多い国で、今日は、あの催し物広場に降ります。
ぴょん「出店がたくさん見えるな」セタップ
ぽん「早く降りよう!」るんるん
出店は対策済みだ!でも人は無理だった!だからやめて!
ぽん「到着!」
あら、飲食店はないみたい。
ぽん「お偉いさん出てこーい!」
キムチメン「呼んだ?ぽんちゃん」
ぽん「うわあ……」くちゃ
もこ「どちらさん?」
キムチメン「アニョハー!私はキムチメン、ニダ!」
もこ「アイマイ・もこです。はじめまして」ぺこり
キムチメン「良い子ニダ。なでなでしてあげるニダ」にちゃー
もこ「ぎゃあ!触らんで近寄らんで!」にげっ
ジョウズィ「シェイシェイ」やあ
もこ「おっきなサメ!次は、ぴょんぴょんの知り合いさん?!」
ジョウズィ「ぽんちゃんの友達です」
ぽん「友達じゃないです」のんのん
もこ「どっちよ」じとー
ぽん「なんでここにいるの?」あしぱたた
スターバ「ワタクス達はチームでボランティアに来たのよ」ぼいむぎゅ
ぽん「後ろからでもボインくるしい……」
スターバ「あら、これはソウリィ」
もこ「行こう」ひそ
ぴょん「そうしようか」
ぽん「おいてかないで!」
もこ「なんでそんなに嫌がっちや。失礼やよ」
ぽん「だってね、変な人たちだもん!ジョウズィさんとジングルさん以外」
マッスルサンタ「久しぶりだね」
もこ「あらイケメン……!」きゅん
ぽん「トナカイさんだよ」じとー
もこ「まさか。その冗談も失礼やよ」
マッスルトナカイ「私はジングル。トナカイだ」
もこ「…………」
ぴょん「変身した!」髪ぴこぴこ!
ぽん「行くね。はいさようなら」すたすた
スターバ「ストップ!飲食店ならここにありますよ!」ウィンク!
ぽん「空気食べたからお腹いっぱいです」
ジョウズィ「シェイ」
ぽん「やめてやめてやめて!ヒレはいりません!」
ジョウズィ「飲食店はやめました。待ち時間にマッサージをしてあげるから、さあおいで」シェイシェイ
ぽん「それなら、もこちゃんにしてあげて」
もこ「なんでおち?」
ぽん「疲れてるでしょう」
もこ「まあそやけど」
ジョウズィ「さ、こちらへどうぞ」
スターバ「ワタクス達は、お店をいざオープンよ!」
キムチメン「やるニダ!」
ジングル「私は呼び込みに行ってこよう」
ぴょん「オレも連れていってください」
ジングル「そしたら背中に乗るといい」
ぴょん「やった」よじよじ
ぽん「僕はスワンボートに帰ろう」
ネーシャ「手伝ってくれないの?」
ぽん「がおっしゅ!」がおー!
ネーシャ「パオオオオオン!」
ぽん「ごめんなさい!」ひっ!
ネーシャ「やあね、ただの挨拶よ。驚かせてごめんね」なでなで
ぽん「……怒ってない?」ちら
ネーシャ「カレーの国をメチャクチャにしたことも、秘伝のレシピをナマステしたことも怒ってないわ」にこっ
ナマステ隠蔽事件バレていた。
ぽん「ふぇぇ……ごめんなさいだよぅ」びくびく
ネーシャ「だから怒ってないってば。さ、一緒に美味しいカレーを作りましょう」
ぽん「やだ」ぷくー
キムチメン「じゃあキムチを浸けるニダ」
ぽん「やだ」ぷんぷくー
キムチメン「そう」
ぽん「はあ……」がっくし
スターバ「ササミをスライスらららのらー♪」
ぽん「ささみ?」ぴくっ
ネーシャ「あなたがここに来るのを知って、栄養満点の赤米を使ったササミカレーを作ることにしたの」
ぽん「ネーシャさん大好き!」むぎゅ!
ネーシャ「あら嬉しいわ」にこにこ
こうして、各チームに分かれてのリポート開始です。
ぽん「は?」
お仕事のこと忘れてないですか?
目の前にカメラがありますよ。
ぽん「可愛く撮ってね!」きゃぴ!
さてまずは、もこちゃんのリポートです!
マッサージコーナーのもこちゃーん!
もこ「うーい」はふー
完全にとろけてますね。
もこ「上手やっち。ジョウズィさんのマッサージ」
ジョウズィ「マントゥこねりの技術だよ」もみもみ
もこ「そう。あー力加減もちょうどいいんよね」
ジョウズィ「マントゥも人も同じ。どちらも、力よりも気持ちを込めるのがコツなんだ」もみもみ
もこ「どんなマントゥ作ってたん?」
ジョウズィ「ヒレを刻んで作ったフカヒレマントゥだよ」
もこ「え」
リンリン「ガオカオー」ひょこ
もこ「誰?」
リンリン「メイは湾发鈴。手伝いにきたナ」
もこ「待っち。なんで押さえつけるん?」
リンリン「ジョウズィさん、よろしナ」がっしり
ジョウズィ「ウォー!」ぎゅ!
もこ「うひひ!足はくすぐったいやよ!」けらけら
ジョウズィ「アーイ!」ぎゅぎゅ!
もこ「いったあ!」
ジョウズィ「ニィーーー!」ぎゅぎゅぎゅ!
もこ「や、やめっちふとも!腰いぎゃあ!」じたばた
ジョウズィ「シェイシェイシェイシェイシェイ!」ぎゅぎぎぎぎぎ!
もこ「やあー!」
気持ちがたくさん込められたようです。
よかったですね!
もこ「助けてえ!!」
さあ、お隣のぽんちゃんは最後にして、続いては、ぴょんちゃんのリポートです。
ぴょん「ボランティアのテントが多いな」
ジングル「今日は素晴らしい日だ」
ぴょん「ジングルさん達は、善の国から送られて来たんですか」
ジングル「そうだな。私たちは連絡を受けてここに来た」
ぴょん「じゃあ、善の国で優勝したことがあるんですね」
ジングル「ああ。さっきの仲間達とチームを組んでな」
ぴょん「それから善を学んだんですね」
ジングル「いや、私達はすぐに国を出てそれぞれの道を歩いた。私達にはやることがあるから」
ぴょん「そうですか。あの、突然ですけど正義ってなんだと思いますか」
ジングル「それはただの言葉に過ぎない。私はそう思う」
ぴょん「どうして?」
ジングル「見てみろ」
ぴょん「あれは、アロマテラピー?」
ジングル「あれも人のため、つまり正義と言えるだろう。しかし、彼らは正義としてあれを行っているだろうか」
ぴょん「楽しそうに笑ってるようにしか見えない」
ジングル「そう。そうなんだ。だから正義は口に出しては言葉に過ぎない」
ぴょん「……むずかしい」
ジングル「いち個人の考えだ。参考ていどに受け止めてくれ。参考、てわかるか」
ぴょん「はい、たくさん勉強しましたから。でも」
ジングル「でも?」
ぴょん「人の気持ちはよく分かりません」
ジングル「これから少しずつ、なんとなくでも感じられるようになる」
ぴょん「なるかな」
ジングル「ほら、見てみろ」
ぴょん「あの車イス、壊れてしまうんじゃないかな。あんなに大きくて重い人が乗ったら」
ジングル「ふっ、どうかな?」
ぴょん「動いた!すごい!」
ジングル「あれも人の気持ちだ。目に見て分かる気持ちだってあるんだ。ほら」
ぴょん「あの坂みたいなのは何だろう」
ジングル「聞いてみるといい」
ぴょん「すみません。この坂は何ですか?」
おじさん「向かいの車イスの為のスロープというものだよ。階段とか登れないからね、こうして移動しやすい角度の坂を作ってあげるんだ」
ぴょん「なるほど」
おじさん「思いやりさ」
ぴょん「思いやり……素敵です」
ジングル「他にも少し見てみよう」
ということで、ぴょんちゃんの好奇心のままにテントを巡ります。
ぴょん「可愛い。これは何ですか?」
おばさん「それは風呂敷。誰かに贈り物をするときに、楽しんでもらえるように、こうしてお洒落に包んであげるの」
ぴょん「だから色々な形があるんだ。この、持つところも合わせて一枚ですか?」
おばさん「そう」
ぴょん「この丸いうさぎみたいなの、可愛いです」
おばさん「それは花包みよ。教えてあげましょう」
ぽん「お願いします」
ゆっくりとゆっくりと巡ります。
ぴょん「いいにおい」くんくん
おじさん二号「コーヒー飲むか?甘口があるぞ」
ぴょん「じゃあ、いただきます」
おじさん二号「仕上げにちょい」ささっ
ぴょん「わあ!」髪ぴこぴこ!
おじさん二号「どうだおじさんのラテアート。そこの鹿を描いてみた」
マッスルトナカイ「トナカイだ」
おじさん二号「気にするな。大事なのはハートよハート」
ぴょん「ありがとうございます」
おじさん二号「喜んでもらえてなによりだよ。と、だからっておじさんのことを好きになっちゃ駄目だぞ」
ぴょん「ないです」
おじさん二号「一杯のコーヒーから恋が生まれるとか、そんな話があるんだがなあ」
ぴょん「それより、このコーヒーはチョコレートみたいな味がしますね」
おじさん二号「それはホットチョコレートだからな。どうだ、まんまとひっかかったな!」
ぴょん「はーん」
おや、あのお店は。
ぴょん「お菓子だ」
おばさん四号「これはドラジェと言って、アーモンドの砂糖菓子さ」
ぴょん「ちっちゃくて色とりどりで可愛いな」
おばさん四号「気持ちは大きいよ」
ぴょん「え?」
おばさん四号「中に入ってるアーモンドは、たくさん実がなる果実でね。それで、たくさん子供が産まれますようにと、結婚や出産祝いに贈ることが多いお菓子なのさ」
ぴょん「そうなんだ」
おばさん四号「あんたには早いけど、縁起物だから一つ持ってお行き」はい
ぴょん「ありがとうございます」
それからいくつか巡って、最後のテントへ。
ぴょん「ただいま」
もこ「おかえり」くたー
ぴょん「どうした?」
もこ「痛かったの……」うるうる
ぴょん「?」
もこ「それより、ぴょんぴょん。きちんとリポートできた?」
ぴょん「ごめん。リポートも呼び込みも忘れてた」
もこ「なんしてっちや!おちは、いっーぱい頑張ってリポートしたよ!」
そのほとんどが痛みに苦しむ姿で、後にかなりカットされたのを、この時の彼女は知るよしもなかった。
もこ「ほんと、なんしてたんよ」じとー
ぴょん「勉強してきた」
もこ「なんの」
ぴょん「気持ち」
もこ「はあ?」
ぴょん「前に、気持ちが大切って、ぽん太が言ってた」
ジングル「サンタの国の教えを覚えていてくれたんだな」
ぴょん「その通りだった。気持ちは大切だ」
もこ「?」
ぴょん「もこち、オレもマッサージしてあげよう」
もこ「いいいい!急になんで!?」
ぴょん「理由はない。気持ちだよ」
もこ「ありがた迷惑です!」
ぴょん「…………」髪しゅん…
ぽん「二人とも、カレーできたよ」
もこ「ちゃんとできた?」
なのり「なのり!」
ぽん「でも、ぷち大変でした」
ネーシャ「偉かったわよ。ゲロを吐いても一生懸命なところは、相変わらず立派だった」
もこ「ゲロ吐いた!?」
ぽん「ネーシャさんのカレーの匂いで、ネーシャさんのお尻の臭いを思い出してね……」ぞぞっ
もこ「はあ!?はあ!?はあ!?やめーよ、今からカレーを食べっちや!」
ぽん「トイレまで間に合ったからカレーには入ってないよ」
もこ「そういう話をやめっち言うてんの!」
ぽん「あー疲れた」
なのり「ササミしか料理してないなのり」
ぽん「柔らかくするのに大変でした!」
リンリン「ほんに柔らかくて美味しいナ」はふはふ
ぽん「おひさ」やあ
リンリン「ガオカオー。ぽんも食べナ」
ぽん「うん!いただきまーす!」
では、ぽんちゃん。
最後にしっかりとリポートお願いします。
ぽん「うまあい!」うまい!
きちんとなさい。
ぽん「えーと、ネーシャさんのカレーは、甘口でね、あとトロトロで美味しいです。でも」
でも?
ぽん「やっぱりササミが一番です!」にこっ!
いい笑顔ごちそうさまです!