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茶の国

もこ「おそい……」ねむー


ぽん「こんな畑の真ん中で、お茶してたの?」


もこ「ちょっち……ふあー……」ねむねむ


ここは、ティー通集まる茶の国。

緑に染まった土地に点々と映える、かやぶき屋根が絶景かな風情生きるところです。


ヒゲマール「ようこそ、お待ちしておりました。私はこの茶畑の主、ヒゲマールと申しますじゃ」


ぽん「知らないおじいさんと二人で楽しかった?」


もこ「全然」


ぽん「だよね」


もこ「おまったちは三時間も待たすし、そもそも妄想は来んし最悪」むすー


ぽん「それはなによりです」


ヒゲマール「さ、あなた方もお茶しましょう」ぐいぐい


ぽんぴょん、色褪せて化け物と化したキャラクターがあしらわれた、くたびれ放題のレジャーシートに無理やり座らされる。


ぽん「帰ります」


ヒゲマール「なぜでしょう」


ぽん「別にお茶いらないし」


ヒゲマール「そう言わずに、ほら、小さいけどテーブルも用意しましたよ」よいせ


ぽん「いいです」のんのん


もこ「おちも帰ります」


ぴょん「待て」セタップ


ぽん「どうしたの?」


ぴょん「ここは、ミント畑じゃないか」髪ぴこぴこ!


ヒゲマール「おっしゃる通りでございます」


ぴょん「いただきます」ばっちぐー


ぽん「えー帰ろうよ」ぶーぶー


もこ「ぐっすり寝たし、やることないし、おちは帰っちや」すくっ


ぴょん「もったいない」はしっ


もこ「なくない。離して」じとー


ぴょん「ミントティーだけでも頂こう」


ぽん「ミント好きだね」


ヒゲマール「嬉しい限りです。それでは、さっそく準備致しますじゃ」


ヒゲマール、ティーポットにティーバックを装着。


ぽん「おパンティなんですけど」


もこ「おえー!そんなもん飲まされたっちや!」がーん!


ヒゲマール「どうかご安心を。これはティーバックそっくりなティーパックですじゃ」


もこ「できるかー!」


実際、抗議の声がこだましています。


ぽん「僕もやだ」


ぴょん「あれはティーバックじゃない。ティーパックだから大丈夫だ」


ぽん「ぴょんちゃん、おかしくなった?」


ヒゲマール「ささ、できましたぞ。まずは、グリーンティーとウーロンティーとソルティーをどうぞ」


おちょこで味わってください。


ぽん「どうする?」ひそ


もこ「飲む気?」ひそ


ぴょん「オレはウーロンティーにする」


ぽん「あ、ずるっ!僕はグリーンティーね!」


もこ「ソルティーてなに?」じとー


ヒゲマール「どうぞ一口」にこにこ


うわあ……へえ……よく飲めるなあ。


もこ「ぶべはあっ!」


ヒゲマール「いかがです。海を思い起こす塩味でしょう。ここは山に抱かれておりますからマジョリティーなんですじゃ」


ぽん「せーふ」ほっ


ぴょん「マジョリティーて?」くびかしげ


多数派、人気ということです。


もこ「けほっこほっ。どうして、おちがこんな目に……」涙目


ぽん「ハズレだ」くすくす


もこ「くやっち!くやっち!」おててぱたぱた!


ぽん「次は?」


ヒゲマール「ウンティー、オベンティー、マタニティーをどうぞ」


ぽん「やばすぎー」どんびきー


もこ「マタニティーもらった!」


ぴょん「くっ……!やられた!」


ぽん「どっちもあれだよね」ひそ


ぴょん「だろうな」ひそ


ぽん「今度こそ帰ろう」


ヒゲマール「親切にもてなされて帰ろうと言うのかな」


ぽん「言います」真顔


ヒゲマール「飲みなさい!」


ぽん「んぐっ!」


ぽんちゃん、ウンティーを流し込まれる。


ぽん「ぷちうま……?」くびかしげ


ヒゲマール「それは運の湧き出るティーにございまして、山奥の秘境で汲んだ炭酸水にレモンで香り付けしたものにごさいますじゃ」


ぽん「ウンティー大好き!」るんるん


運より誤解を招きます。

そういう感想は心にしまっておきなさい。


もこ「おちのは、パインティーやったよ!」にこにこ


なのり「オベンティーは海苔の味なのり!」にこにこ


ヒゲマール「パイナップルは栄養が良くて妊婦にマジョリティー、オベンティーはお弁当代わりにと思いましたが、残念なことにマイノリティーですじゃ」


ぴょん「マイノリティーて?」


少数派、人気がないということです。


ヒゲマール「続きましては特選ハーブの」


ぽん「楽しみだね」わくわく


もこ「はあ?」


ぽんちゃん、すっかり楽しんじゃってます。


ヒゲマール「アビリティー、アクティビティー、オシャンティーをどうぞ」


ぽん「オシャンティー!」


もこ「やられた!なら、えーと、アクティビティー!」


ぴょん「残るはアビリティーか」


ヒゲマール「どうぞ」


ぽん「はっ!」


もこ「これは!」


ぴょん「?」


ぽんちゃん、はじめての厚化粧。

もこちゃん、なんどめの握手会。


ヒゲマール「おお!オシャンティーでお洒落に!アクティビティーにはこれほどの効果があるとは!」


もこ「なんだかやらなきゃいけん気がすっち」


ぽん「化粧ってどうやるの?」


ぴょん「恐ろしいくらいめちゃくちゃだぞ」


ぴょんちゃんのおかげで、ぽんちゃん、可愛くなる。


ヒゲマール「これは、アビリティーの効果か!」


ファン達「あっちの方が可愛いぞお!」どどど!


ぽん「あらまあ」てれてれ


もこ「ああ!おちのファン達が!」がーん!


ぽん「アイドルじゃないけど、ぷちいい気分かも」


もこ「ぴょんぴょん!おちにも化粧して!」


ぴょん「しなくても可愛いよ」


もこ「そやろ!じゃ、どうして!あれ!」


ぴょん「あれはティーの影響だ。それに」


もこ「じゃあ、ヒゲマールさん!」


ヒゲマール「くっくっくっ。いいでしょう。このまま私の人類うっかり改心計画に付き合ってもらいますじゃ」にやり


なんと!

ヒゲマールさんは妄想にとりつかれていたようです!


ぴょん「それと、あのファン達は、もこちが生み出した妄想だ」


ぽん「妄想でもいいかも。人気者になれたから」あくしゅ


もこ「もっと!もっと!もっーと!誰よりもおちを人気者にして!」おててぱたぱた


ぴょん「このままじゃいけない」


ええ。このままでは二人が妄想にドはまりしてしまいます。

ぴょんちゃん、お願いできますか。


ぴょん「ああ。オレに任せておけ」


ヒゲマール「あなたには、極上のギルティーとダーティーのフィフティフィフティーを差し上げましょう」くくく!


ぽん「!」くんくん


ヒゲマール「ほらほら、いいミントを使いましたよ。ミントが大好きなあなたのためにじゃ」にやにや


ぴょんちゃんの好物を利用するとは。

なんて卑怯な。


ぴょん「体の自由が……!」ぷるぷる


ぴょんちゃん、負けてはいけません。


ぴょん「そうだ。オレは負けるわけにはいかない!」ぐっ!


ヒゲマール「ええい、焦れったい。私が直に飲ませてやろう」


ぴょん「ぴょんぴょん返し!」くるりんぱ


ぴょんちゃん、罪悪のフィフティフィフティーを手早くひっくり返す。


ヒゲマール「なんということじゃ!」


ぴょん「この世に笑顔がある限り、オレは決して悪に負けたりはしない!」


ぽん「かっこいなー!」きらきら


もこ「おちは、なんしてたっちや」ぱちくり


ぴょん「少し夢を見ていただけだ」かたぽん


もこ「そう……」


ぽん「もこちゃんの夢ひどかったよ」くすくす


いいところで茶化さないの。


ヒゲマール「はあ……どうしたらみんな満足してくれるのじゃ」


こちらも妄想の浄水完了です。


ぴょん「何があった」


ヒゲマール「私は茶畑の主であり、喫茶店を営んでもおるのですが。近頃は紅茶よりも果物のスムージーが美味しいとか。ホットケーキよりもパンケーキが美味しいとか。ナポリタンよりもカルボナーラが美味しいとかで、まったく誰も来ませんのじゃ」


ぽん「そんなことよりティーバックがバツだと思います」ぶぶー


もこ「だっちや」うん


ぴょん「そう言えばそうだな」うんうん


ヒゲマール「原因はそこでしたか!」なるほど!


ぽん「馬鹿じゃないの」


もこ「アホやよ」


ぴょん「まあまあ」


ヒゲマール「あなた方に、ひとつお礼をしましょう」


十二分四十七秒後。


ヒゲマール「当店自慢のスパベッティーにごさいます」こと


ぽん「これスープなんですけど」


もこ「スープスパやよ」ずず…


ぽん「ほんとだ」


ぴょん「これはナポリタンといえるのか……?」


ぽん「ぷちうま」ぺろり


ヒゲマール「お口が汚れていますじゃ。さ、ウエッティをどうぞ」


ぽん「これからは、きちんとしないとダメだよ」ふきふき


ヒゲマール「はい。きちんとしますじゃ」にこっ


六日後、テレビにて。


ニュースキャスター「こちらが賛否両論で話題のハレンチレストランです。剛毛の店長がティーバック姿でもてなしてくれると、本日も店頭には、今朝早くから変わり者の長い行列ができております」


店長「思いきってレストランに変えて、ティーバックに一途にこだわった甲斐がありましたじゃ」


ぽん「反省してない」


ぴょん「変えるところが間違ってる」セタップ


ぽん「あーあ、お店の外に出たからかな。ついに捕まっちゃった」


ぴょん「妄想はやっぱり危険だ」


ぽん「そっかな。もこちゃんの妄想は危なくなかったよ。きらきらしてた」


ぴょん「……たしかに」


ぽん「悪いも良いも、どっちもあるんじゃない」


ぴょん「どっちも?」


ぽん「空想だってそうだよ。だから、お姉ちゃんは悩んでた」


ぴょん「よく分からなくなってきた」


ぽん「どっちもあるんだし、悩んだって仕方ないよ」ごろごろ


ぴょん「悩まないと、どうにかしないと、悲しむ人がいるんだ」


ぽん「そう」のびー


ぴょん「ぽん太、ポケホを貸してくれ」


ぽん「ぽんちゃんです。あ、お姉ちゃんからメールだ。初めてのオイルマッサージだって」はい


ぴょん「チョコ姉はどうして悪の国に……」


ぽん「お姉ちゃんに直接聞いたら?」


ぴょん「いい。それよりも」


ぴぽぱのぺ。


ぴょん「もしもし?」


もこ「あれ、ぴょんぴょん?」


ぴょん「そう。今話せるかな」


もこ「うん」


ぴょん「もこち、オレ達と一緒に旅をしないか?」


もこ「はあ!?」


ぴょん「君と一緒にいたい」


もこ「いやいや急に意味わからん」


ぴょん「やっぱり忙しいか」


もこ「そやなくて、おちはあやっちの敵やっち」


ぴょん「それだ」


もこ「なんよ」


ぴょん「君が本当に敵か。妄想は本当に敵か。それをよく知りたい」


もこ「敵に決まってっちや。何を今さら」


ぴょん「オレは自分の心で確かめたい」


もこ「ぴょ……ん?」ごおおおおお!


ぴょん「どうした。なんの音だ」


きゃーロボットの襲撃よー!スタジオの屋根はがされたー!何が目的だー!


ぽん「迎えにきたよ」


もこ「なんてことすっちや!」ぷんぷん!


ぽん「後で直すから。あ、お姉ちゃんの愛を返した現在は無理だ」


もこ「じゃ、このスタジオどうしてくれんの!ねえ!」 


ジェノピー「ぷちまかせて」


ぽん「せーふ!」


もこ「アウト!あれやこれやアウトー!」


ぽん「もううるさい。いいからはやく乗って」


ジェノピー「えい」がしっ


もこちゃんがー!誘拐だー!屋根が直りましたありがとー!


もこ「おまったち!めちゃくちゃやよ!」


ぽん「いつものことだよ」


ぴょん「オレは違う」


もこ「あーもう疲れた」ころん


ぽん「これからよろしくね」


もこ「いやいやいやいや、あとで降りますから」


ぴょん「だめ。行かさない」


もこ「はあ!?はあ!?はあー!?」


ぽん「やっぱりうるさい。山に捨てていこう」


もこ「山に捨てる!?」びくっ


ぽん「いらないし」


もこ「やだあ……」うるうる


ぽん「じゃあどうする?」にやにや


もこ「……仕方なっちや。そん代わり、妄想とガチンコになっても知らんよ」ぷい!


ぽん「それじゃ、ぴょんちゃん」


ぴょん「うん!れりごー!」


こうして、もこちゃんが一緒に旅をすることになりましたとさ。

めでたしめでたし。

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