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いかのぼりの国

美しい水平線に綿雲と並んで浮かんでいるのは、いかのぼりの国。


ぽん「どこにのぼるの?」


空です。


ぽん「えー!イカさんて飛ぶの!」


そうじゃありません。

ほら、外を見てごらん。


ぽん「ちょっと待って。もこちゃんが今テレビに出てるから」


なにー!とつぜーん!あーれー!


ぴょん「何かたくさん飛んでいったぞ」


いかのぼりの国の国民です。

スワンボートが飛び回ることで、少しずつ飛び散っています。


ぴょん「なら、はやく止めないと」


ぽん「ははは!なんかびよんびよんしてるー!」けらけら


あれは、いかのぼりの国そのものです。

いかのぼりの国は、雲隠れの国の蜘蛛の協力と、天才の国の知恵と超越の国の技術によって作られた、超凄糸を編んで出来ています。

家も家具までほぼ全て。


ぴょん「ちょうすごいいと」


それは感じることのできない軽さと、究極のお餅と例えられるほどの弾力と伸縮性と味があり。


ぽん「たのしー!もっともっとー!」


さらに、天災を屁とする強度と絶火絶水なのです。

また、ああして浮いていられるのは、この熱すぎる気候によって海面から立ち上る上昇気流のおかげです。


ぽん「それそれー!」


と、長々と説明している間に国民は約一割となりました。


ぴょん「もうよせ」セタップ


ぽん「見て!びよんびよんびよんびよん、はっはっはっ!ひっーひっひっ!」ころげまわり


ぴょん「……ふっ」


笑っている場合ではありません。

真面目によしなさい。


ぽん「はいはい」


ぴょん「飛び降りよう」


ということで、ぴょん。


ぽん「わわわ!まだすすごいゆゆゆれ」ぶるるる!


ぴょん「とと、ととめ、とま、あ、ああ」ぷるるる!


一時間三分十六秒後。


ケセラン「いやあ」ひぃひぃ


ぽん「がおえっ……しゅふー……」ひぃひぃ


ぴょん「う、うう……」ぱたり


ケセラン「僕はケセラン」ひぃひぃ


ぽん「ケセランパセリンだ」ひぃひぃ


正しくはケサランパサランです。


ぽん「そう」ひぃひぃ


ケセラン「名前はケセランパセリンで合ってるよ。それにしても、すごい風だったね」ひぃひぃ


ぽん「よく飛ばなかったね」ひぃひぃ


ケセラン「急いで屋内に避難したから」ひぃひぃ


ぽん「この国のことだよ」ひぃひぃ


ケセラン「それは全ての土地で、一本一本、糸を海底に繋げているおかげだよ。潮風が半端なくても、さっきみたいな暴風がきても、ここはいつでもへっちゃらさ」ひぃひぃ


ぽん「ふーん」ひぃひぃ


ぴょん「ここに、悪い蜘蛛はいるか」ふら…


ケセラン「いないよ、今日も平和さ。それに蜘蛛さんは皆いいやつらだよ」ひぃひぃ


ぴょん「なら良かった」ひぃひぃ


ぽん「あ、なんかいっぱい空に」ひぃひぃ


あれが、いかのぼりの国という国名のゆえんです。

ああして、屋根の上からイカを揚げて楽しむのです。


ぽん「いかじゃなくて、たこあげでしょう」ひぃひぃ


この国では、いか、と呼ぶのです。


ぽん「ややこしなー」ひぃひぃ


ケセラン「君らも上げる?」ひぃひぃ


ぽん「いかもたこもありません」ひぃひぃ


ケセラン「じゃあ」ひぃひぃ 


ぽん「捕まえよう」ひぃひぃ


ケセラン「あれは生き物じゃなくてさ」ひぃひぃ


ぽん「とう!」ぴょん!


ぽんちゃん、ありえない高さから海へぴょん。


ぴょん「不思議な感じだ」すいー


お馴染みの空想科学適応灯なら海中も安心です。


ぽん「SF式電磁漁獲網!」ててーん!


それは過去、深海の国でお魚さん達を捕まえて食べようとした時の道具ですね。


ぴょん「なんてことしたんだ!」


ぽん「もうしないから許して」かくし


今すぐ使用しようとしています。


ぽん「えい!」びー!


トビイカ「あべべべ!」びりびり!


ぴょん「命は大切に!」


ぽん「ちょっとビリビリするだけだよ」


トビイカ「ケンカは、よしこちゃん。イカはいかがしていいので」


ぽん「優しいイカさん」


ぴょん「イカさんがそう言うなら。ただし、それは」


ぽん「えい!」びー!


カサガニ「きくうううん!」びりびり!


ぴょん「それは使っちゃいけない!」


ぽん「はーい」


カサガニ「あーびっくり。何用よ。あたし暇なの」


ぽん「このカニ、ぴょんちゃんのイカね」


カサガニ「カニですけど」


いかのぼりの国へ戻り、アーチ状の橋をいくつか渡って、パセランさんのお家へ。


トビイカ「飛べるかしら」


ぽん「見て」


ヤモリとカエルがヘビから逃げています。

飛んで飛んで。


トビイカ「よーし」ふわー


ケセラン「揚がるんだなあ……」ひぃひぃ


カサガニ「意外と楽しそうじゃない」


ぴょん「いいのか?」


カサガニ「ええ。あたしに夢を見せてちょうだい」


ぴょん「それなら」


カサガニ「いいじゃんいいじゃん」ふわー


ぽん「たのしー!」るんるん


ぴょん「うん」


ぽん「どっちが高く揚げられるか勝負ね!」


ぴょん「望むところだ」


トビイカ「これが自由というものかしら」ふわー


カサガニ「きっとね。それより、記念写真とらない?」ふわー


トビイカ「おっけー農場」


カサガニ「いぇーい!」かしゃ!


さて、そうしてしばらく楽しんでいるところへ夜の訪れです。

ということで、夜のオノボリさんが現れました。


ぽん「誰?」


ケセラン「国家認定一流揚げ師の方をオノボリさんと呼ぶんだよ。彼らのお仕事は、朝は日を、夜は月を揚げることさ」ひぃひぃ


大きいので大勢でのお仕事になります。


ぽん「楽そうなお仕事」


ケセラン「楽そうに見えるけど、半日、いかを安定して揚げるのは難しいことなんだよ」ひぃひぃ


トビイカ「あららー」ひゅー


イカ、ありえない高さから海へ。


ケセラン「ああして、いかは落ちることもあるからさ」ひぃひぃ


ぽん「なるほど」


なのり「なのり」


ぴょん「どうしよう。届かない」


カサガニ「安心なさい。あたしは今やカモメよ」ふわー


カニです。


カサガニ「さようなら。今日は楽しかったわ」ひゅー


と、一枚のチェキがひらひらと空から降ってきました。


ぽん「お?」ぱしっ


ぴょん「これは、二匹の楽しそうな記念写真だ」


ぽん「いらない」ぽい


ぴょん「あーあ」


二人の思い出は南風に乗ってれりごー。

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