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源始の国

あらゆる原子には等しく世界があり、そこには精霊達が生きていて、エーテルを与えてくれるという伝説があります。


ぽん「エーテルって何?」


エーテルは、目に見えない、エネルギーのひとつです。

土、水、風、火の四大精霊によって、万物を巡り育むと云われています。


ぽん「ふーん。精霊はウンチにもいるの?」


レディがお下品ですよ。


なのり「なのり」


ぽん「僕はまだガールだから」


それでもいけません。


ぽん「それでいるの?」


空想の国生まれならご存じでしょう。


ぽん「わかんない」


ぴょん「もしかして、空想の国には精霊がいるのか」セタップ


ぽん「いるよ」


ぴょん「すごいな」


ぽん「いたずらっ子ばかりだから、あんまりだよ」


いつかお姉ちゃんがぼやいていました。

妹は精霊と一丸となって、ひどい悪戯をすると。


ぽん「よくサラマンドラさんに優しく怒られました」えへへ


サラマンドラは火の大精霊ですね。

まさか知り合いとは驚きです。


ぽん「じゃあ、あれ四大精霊の一匹だったんだ」


伝説の四大精霊を、あれ呼ばわりして一匹と数えるとは……。


ぽん「だって見た目が焼きトカゲだし」


ぴょん「なにがなんだか」


おや、見えてきましたよ。

あの透き通った海中に見えるトロピカルな島が源始の国です。


ぴょん「伝説の島がこんなに簡単に見つかるなんて」


空想の国生まれのぽんちゃんとスワンボートのおかげ、とでも言えば都合が良いでしょう。


ぽん「都合のいい女だから頼ってね!」どやあ!


それは人前で二度と言ってはいけないと、前に教えましたでしょう。


ぽん「あれもいけない、これもいけないって、いっーつも!ぷちうざなんですけど!」


あなたを想ってのことです。


ぽん「ぷちありがた迷惑です!」ぷんぷくー!


きいやー!災いが再びー!終わりの時よー!


ぴょん「山が一つ半分になってしまった……」


ぽん「柔らかい山だね」ふみふみ


ぴょん「…………」


ここは世界で最も自然豊かな国で、精霊を含め、様々な種の故郷と云われています。


ぽん「ほーん」


ぴょん「不思議なところだ。まるで、シャボン玉の中にいるみたいだ」


ぽん「ソニックブームでも弾けないなんてすごいね」


ぴょん「弾けなくて良かった」


はんぺん「しゃー!」ぴゅー


ぽん「あぶない!」ぺち!


はんぺん「しゃーく!」ずしゃあ!


ぴょん「はんぺん!」ががーん!


ぽん「なんだ、はんぺんさんか。ごめんちゃい」ぺろ


はんぺん「十六回目だよぅ……」しくしく


ぴょん「大丈夫か?」よしよし


はんぺん「しゃー」


ぴょん「そろそろ怒るぞ」


ぽん「気をつけます」しゃきっ!


ぴょん「まったく……」


えるたそ「こんにちは。はるばるようこそ」


ぽん「がおっしゅ!」がおー


はんぺん「しゃーく!」しゃー


えるたそ「私はエルフの一人。あなた方をお待ちしていました」


ぽん「どゆこと?」くびかしげ


えるたそ「その子はここの生まれ」


はんぺん「しゃーしゃー!」ぴちぴち


ぴょん「ここは君の故郷なのか」


はんぺん「なつかしぃ」るんるん


えるたそ「その子にお願いして、あなた方にここへ来てもらったの」


ぴょん「どゆこと?」くびかしげ


はんぺん「もうしょうたいへん」


えるたそ「エルフの村で詳しくお話しします。おいでください」


一行は山の麓にあるエルフの村へ。

丸い大きな草のひとつひとつが彼らのお家となっております。


ぽん「おもしろー」ちょんちょん


転がそうとか考えないように。


ぽん「はーい」


長老「ようこそ来なすった」


野次エルフを必死に掻き分けて、この村の村長さんが快く歓迎してくれました。


ぽん「耳長っ!」びっくり!


長老「あ、これ飾りです」かぽ


ぽん「そうなんだ」


長老「男にとってエルフの耳は長いほど素晴らしいこって」


ぽん「じゃあ見栄っ張りなんだね」


長老「違います」真顔


ぽん「こういうの見栄っ張りって言うんだよね」


こほん。

それよりも、事情を聞かせてください。


長老「あいあい。最近人間がここに来なすってな。それは構わないんじゃが、彼は悪いものにとりつかれておって、四大精霊を汚してしまってそれがまあ大変なこって」


えるたそ「よく景色をご覧ください」


辺りをよく観察してみますと、奇怪な植物があちらこちらに生えていました。


えるたそ「あのように。冥土の花が咲き、死が滴る果実が実り、そこら辺の森はすっかり支配されてしまいました」


ぽん「ふーん」しゃくしゃく


えるたそ「いずれはこの島の全土に、あ」


ぽん「?」しゃりしゃり


村長「それこそ死の果実!」びくびく


ぽん「ごっくん……ここに来る途中見つけて、美味しそうだったから」ぺろり


ぴょん「どうしたらいいですか!」


村長「吐けえ!吐いて吐いて吐いちまうこって!」


ぽん「げろろー!」どしゃあ!


体も好都合で命助かる。


えるたそ「うおえっ!」


村人貰いゲロ。


ぴょん「うっ!」


ぴょんちゃんも耐えきれず茂みにぴょん。


はんぺん「げぼしゃあく!」


そして酷すぎるので次の場面へ。

そこは削れた山の中腹にある大精霊の祠。


村長「人間の起こした問題は人間に解決してほしいこって」


えるたそ「でも安心して。ディーヴァ様がきっとお力を貸してくれます」


ぽん「ディーヴァ様?」


光と愛を司るかもな輝かしい存在です。

奇跡そのものという逸話もあります。


ぽん「へえ」


長老「じゃ、後はよろしくってこって」


えるたそ「洗濯物乾かさなきゃいけないから先に帰ります。お気をつけて」


ぽん「はーめんど」ためいき


ぴょん「おい」


ぽん「また変なの相手しなきゃいけないんでしょう」ぶーぶー


ぴょん「油断したら大変なことになるぞ」


ぽん「そう。それで、ディーヴァさんはどこにいるの?」


ディーヴァ「あなたの心の中にいますよ」


ぽん「出てって」


ディーヴァ「はい」


ぴょん「ナレーションさん……とは違う?」


ディーヴァ「違いますよ」


ぴょん「そうか」


ディーヴァ「私にはディーヴァ、デーヴァ、出っ歯と様々な呼び名があります。好きに呼んで頂いて構いませんよ」


ぽん「デブさん」


ディーヴァ「はい」


ぽん「なんだかぷち大変らしいから助けてください」


ディーヴァ「では、心を開いて、自然に身をゆだねてください」


ぴょん「え、どうすれば」


ぽん「すぴぃー……」すや…


ぴょん「そうか!」


違います。


ディーヴァ「まあよいでしょう」


ぴょん「いいのか」


ディーヴァ「あ、そうそう。先に言っておきますが、私は、ぽんちゃんにだけ力をお貸しします」


ぽん「僕だけ?」


ディーヴァ「ぴょんちゃんは、今ネガティブなので力をお貸し出来ないのです」


ぴょん「それなら……仕方ないな」


ディーヴァ「では、ぽんちゃん。きらめく愛と優しさをもつあなたを、今ここに『愛咲かす者』として私が認めます」


ぽん「わーい!」


淡い桃色のきらきらに、はんなりと包まれて、ぽんちゃんの空想科学服の赤いラインと胸のランプと髪は、すっかり桜色に染まりました。


ぽん「かわいいー!」きゃっきゃっ


ぴょん「いいな……」ぼそっ


ディーヴァ「さあ、ここから出て右へとお行きください。その先に妄想がおります」


ぽん「がんばるぞー!」たたっ!


ディーヴァ「本当の愛とは何か。あなたは気づいていると信じています」


ぽんちゃん達は勢いよく祠から飛び出ると左へ向かい、意気消沈しながら遠回りして、大きな滝のある開けた広場へと辿り着きました。


ぽん「ぷち疲れた……」くたくた


コレクター「誰であろうかな」むっ


ティーシャツに短パンの角刈り男が二人を睨みます。


ぽん「がおっしゅ!ぽんちゃんです!」がおー


コレクター「何の用かね」


ぽん「あなたさんをやっつけにきました!」


コレクター「やっつけにきました……ねえ」


コレクターさんが、なんとサラマンドラさんに!


ぽん「えー!」びっくり!


どうやら、四大精霊をあの身に宿しているようです。

子供にとって大変で危険なことが起きています。


ぴょん「ここはいったん退こう」


ぽん「逃げちゃだめ!」


ぴょん「ぽん太」


ぽん「ぽんちゃんです」


サラマンドラ「ぽんちゃん!やっつけるだなんて、今日はさすがにお仕置きしてやろうかあ!」くわっ!


ぽん「ごめんなさい!」ひっ!


サラマンドラ「彼は求めているだけだ!」


ぽん「え?」


サラマンドラ「愛する我が国を救うため、熱心に精霊を研究していた!ワシはそれを手伝った!しかしだ、彼は妄執に駆られて恐ろしい妄獣となってしまった!ただ救いたいだけなのに!」


サラマンドラに熱い翼が生え、燃えよドラゴンとなりました。


ぽん「あわわ、どうしたら」ぷるぷる


ぴょん「救いたいだけ……妄想……」


ぽん「ねねね、どうしたらいい?」ととんとん


ぴょん「わからない。オレにはわからない!!」


ぽん「ぴょんちゃん……?」


サラマンドラ「ぽんちゃん逃げろお!四大精霊が焼いて冷やして刻んで土に埋めてしまうぞお!」


どうやら辛うじで意思と理性があるようです。

いったん退くなら今のうちですよ。


ぽん「だから、困ってる人がいるのに逃げちゃだめでしょう!」


なんとまあ立派なこと。

ぷち感動しました。


ぽん「……そうだ!お姉ちゃんはいつも愛をプレゼントしてた!」


ぴょん「愛を?」


ぽん「そう!僕の知らないところで死んじゃうくらいに愛をたくさんプレゼントしてた!」


ぴょん「そうだ……オレにもプレゼントしてくれた」


ぽん「そしたら、笑顔になれたでしょう。僕が巡った国にはたくさんの笑顔があった!きっと、全部じゃないかもだけど、お姉ちゃんのおかげなんだよ!」


ぴょん「しかし……そんなことで……」


ぽん「プレゼントは……大切なのは気持ち!」


ぴょん「気持ちなんかで、どうにかなるものか!」


ぽん「なる!」


ぴょん「ならない!」


ぽん「僕は都合のいい女なんです!ばっちり任せなさい!」うぃんく!


ぴょん「…………」


ぽん「大丈夫だよ!」にこっ!


ぴょん「信じるよ」


ぽん「うん!」


燃えよドラゴン「ほおわちゃあああ!!」


突然、燃えよドラゴンが強火の焔を噴き、それは二人を一気に囲みました。

盛る炎は少しずつドーム状に集束し、このままでは……。


ぽん「あなたさんの理想が叶いますように」


これは!

ぽんちゃんが空にうんと伸ばした右お手々に、淡い桃色のきらきらが降りそそいで、桜形の光輪になりました!


ぽん「僕の愛を、ぷちおすそわけ」


それを一気に降り下ろして投げ撃つ!


ぽん「さくらが!」


燃えよドラゴンに命中すると同時に、光が美しく散りました!

すると荒れる炎が鎮まり、散った光はさあっと広がって、それが周囲の植物に触れると!


ぽん「ぽん!」


満開の桜が咲きました!

これぞあっぱれ、さくらがぽん!


コレクター「……ああ。求めるだけじゃない。与えるだけでもない。分かち合うことこそが答えなのね」めもめも


サラマンドラ「いい答えだ。そうして空想も、誰かと分かち合うことで満ちてゆく」


コレクター「その小さな波紋はいくつも重なるように同調し、やがて大きな波紋となって世界に広がる、と」めもめも


サラマンドラ「ワシらはゆくぞ。達者でな」


コレクター「ありがとうございました!みなさん!」


サラマンドラ「うむ。して、ぽんちゃん」


ぽん「はい」


サラマンドラ「もうこれからはワシが叱ってやる必要はないようだ」


ぽん「それって、ぷち寂しいかも。もしかしてお別れなの?」


サラマンドラ「また会えるよ。今日は本当にありがとう」


ぽん「またね」にこっ


サラマンドラさんは、ろうそくの火のように、ふっと消えました。


コレクター「私からもありがとうね」


ぽん「あなたさん、もしかして空想の国の人?どこかで見たことある」


コレクター「うん。ぽんちゃんのお姉さんの仕事仲間だよ。サラマンドラさんのことも、ぼんさんから聞いたのね」


ぽん「そういうことかあ」


コレクター「じゃ、私は帰るよ。またね」


ぽん「うん!またね!」てをふりふり


はんぺん「ぴょんちゃん」すいー


ぴょん「オレは駄目だな。どうにかしたいと思って頑張ってきたけど、意味なかったみたいだ」


はんぺん「しょんなことにゃい。はんぺんはしってるよ。ちゃんとわかってるよ」すりすりみ


ぴょん「はんぺん」ぎゅ


ディーヴァ「その子の言葉のままです」


ぴょん「!」ぴくっ


ディーヴァ「しっー。あなたにだけお話したいことがあります」


ぴょん「何だ?」


ディーヴァ「あなたは、まっすぐな勇気と正しさをもっています。あとは自信を抱きなさい」


ぴょん「自信」


ディーヴァ「そう。あなたの行ってきた努力を信じ、本当に叶えたい願いを叶えるのです」


ぴょん「オレの叶えたい願い……それは」


ディーヴァ「仕返しなどではないはずです。そうでしょう」


ぽん「さっきから何言ってるの?」


ぴょん「ううん。なんでもない」


ディーヴァ「じゃ、ばいびー」


ぴょん「ばいびー!?」


ぽん「あ!もしかしてディーヴァさんとお話してるの!何話してるの!」


ぴょん「ばいびー、だってさ」


ぽん「は?それだけ?」


ぴょん「うん」


ぽん「ふーん」じとー


ぴょん「本当だよ。さあ、次の国へ向かおう」


ぽん「ほーい」じとー


ぴょん「はんぺん。頼んだ」


はんぺん「しゃーく!」ひゅー


奇怪な植物もさっぱり消えました。

これにて一件落着です。


ぽん「ということで」ちら


ぴょん「…………」ふい


村がー!転がるー!祠が崩れたー!


ぴょん「あーあ」


ぽん「れりーごー!」

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