ハムスターの国
スワンボートは星の子を乗せて、無限の彼方へさあ行くぞ。
ぽん「プライベートジェットは宇宙には行けないって」
ぴょん「そう」セタップ
ぽん「もこちゃん変なの連れてくるだろうから、これで良かったと思うよ」
ぴょん「それでも会えないのは残念だ」
ぽん「なんで?一回しか会ってないのに」
ぴょん「あの日に、な、仲良くなれそ……なんでもない」ごにょにょ
ぽん「仲良くなりたいなら、素直にお喋りすれば」はい
もこ「もしも」
ぴょん「!」ぴっ
ぽん「あーあ。急に電話切ったら、後でまたうるさいよ」じとー
ぴょん「びっくりした。そういうのやめてくれ」
ぽん「うん。じゃあ、電話こないようにする」
どうしてそうなるのでしょう。
ぽん「あ!みえてきた!」
あの綺麗な星形の星はハムスターの国。
ぽん「やったー!」うきうき
強い妄想があるとの小耳です。
素直に喜んでいていいのでしょうか。
ぽん「いいのです!」
ちぃー!ちちぃー!ちちちぃー!
ぽん「到着」
ハムレット「はむはー……」ふら…
ぽん「がおっしゅ!」がおー
ハムレット「がお……」ふらふら
ぴょん「大丈夫か?」
ハムレット「突然すごい風が吹いてさ、回し車がぴゅーん!それから飛ばされて……」くらくら
ぽん「ふーん」
ハムレット「僕らはね、その回し車で星を作っているのさ」
ぽん「ぷちすごー」もふもふ
ハムレット「見る?」
ぽん「みちゃいます」なでなで
ぴょん「そうしよう」すりすり
二人はハムスターに乗って、風さらしの山幸パン工場へとやって来ました。
そこにはハムスターがうじゃうじゃといて、整然と並ぶ回し車には、それぞれ一匹ずつハムスターがおります。
ぽん「ハムスターがいっぱいだー!」やんやん!
ぴょん「くっ……!」がくっ
ぽん「どうしたの!?」
ぴょん「なんて可愛いんだ!」
ぽん「うんうん」かたぽん
ハムレット「おーい」
伊藤「お、ハムレット!無事だったか!」
ハムレット「なんとか無事さ」
伊藤「やあ、そちらはお客さんだね」
ぽん「はじめまして、ぽんちゃんです」むぎゅー
ぴょん「ぴょんちゃ、ぴょんぴょんです」こしこし
伊藤「僕は伊藤。よろしく。よし、今から僕らの仕事を見せてあげよう」
ぽん「お願いします」ぺこりん
伊藤「まずは、この回し車の下を見てごらん」
ぽん「何この板」
伊藤「それはこの星でしか採れない鉱石、キヌゲネズチウムだよ」
ハムレット「それに回し車で摩擦を与えると」
伊藤「離れてて」
ぴょん「はい」すすっ
伊藤「んあああああ!!」しゃー!
ぽん「おおー!」
高速回転からの摩擦によって、板からこの星のように綺麗なお星さまが飛び出しました。
ぽんちゃんの腕の長さほどの厚さで、なんと一年もの間、ずっと得ることができます。
ぽん「きれー」せっせせっせ
とってはいけません。
ぽん「そ」
ハムレット「少しくらいならいいさ」
ぽん「やった」
ぴょん「この板についてるホースは?」
伊藤「よく気付いたね。実はさっきの摩擦で、星といっしょに、ビックパンというエネルギーも生まれるんだよ」
ぽん「パン?パンなの?」
ハムレット「色々あって、こうしたパンになるのさ」はい
ぽん「しょっぱうま」もむもむ
ハムレット「僕らはそのパンでハムサンドを作っていて、どこかの国に贈ったりもするのさ」
ぴょん「ハムサンド」もむもむ
ハムレット「それはそれはジュ~シィなお肉が挟まっているのさ」
ぽん「あ……」ぴた
ぴょん「お肉……」ぴくっ
伊藤「美味しいよ。ハムレット、彼女たちを案内してあげて」
ぽん「いいいいいいです!」いやいや!
ぴょん「オレもいいいい!」ぶんぶん!
ハムレット「遠慮しなくていいさ」
と案内されたのは、小川が奏でるせせらぎの調べが風となり、鮮やかな芳香を広げる立派な花園でした。
ぽん「ここハムスターのお墓かな」ひそ
ぴょん「よせよ」ひそ
ハムレット「ここは、ローズミート。別名ジャストミートとも呼ばれる花肉植物の庭園さ」
ぽん「かにくしょくぶつ?」
花弁が、動物性タンパク質のお肉という珍しい植物です。
花びらがお肉なのです。
ぽん「本当だ」ぷにつん
ぴょん「でも匂いは花だ」くんくん
なのり「甘い香りなのり」うっとり
ハムレット「君たちにとっては不思議だよね」
モルモッティ「やっほー!持ってきたよ、ハムサンド!」ととっ!
ハムサンド「ありが、君は誰さ」
モルモッティ「田舎からきた新人です。よろちっす!」
ぽん「ぷぷっぷふー!」
ハムレット「え?」
ぴょん「ぺっぺぺっ!」
ハムレット「口に合わなかった?」
ぽん「毛がいっぱい!」ぷんぷん
モルモッティ「あ、ごめん。生え変わり期で」
ぽん「気をつけてよね!」おこだよ!
ぴょん「?」ぐいっ
モルモッティ「あ」ずるっ
ポリエチレンの毛皮が取れて中からモグラさんがやっほ。
モグラ「明るい生活に憧れていたんです!悪気はないんです!」あせあせ
ハムレット「僕の毛、少しあげる」ぶちぃ!
ぽん「ふぇ……」びくびく
ハムレット「これでよし」ぺたぺた
モルモッティ「なんとかなった。ありがとうございます!」
ハムレット「うん。これからよろしくってことさ」
ポリエチレンは妄想だったようです。
すっかり造花にリサイクルされました。
ぽん「よかったね。おめでとう」はい
それをモルモッティさんへプレゼントです。
ぽんちゃん優しいね。
ぽん「えへへ」てれぺろ
ぴょん「ハムサンド、あまじょっぱくて美味しかったよ」
モルモッティ「実はそれ、私がこしらえたんです」
ぽん「よくできました」ぱちぱち
モルモッティ「そうそう、あなたにはこれを」
ハムレット「おお!」
ぽん「さっきの星だ」
ハムレット「きれいにしたら、僕らにとってはごちそうさ!」かりっ!
星を食むから、彼らはハムスターなのです。
ぽん「か……かたっ!」
ハムレット「汚れているだろうし、そもそも鉱石に変わりないから口にしない方がいいよ」
ぽん「じゃ、瓶にでも入れて飾りますか」
ぴょん「このハムサンド、少し貰ってもいいかな?」
ぽん「お気に召しだね」
ぴょん「もこちに届けたいと思って」
ぽん「そう。じゃ、このお星さまも分けてあげよう」
あら、いいんですか?
ぽん「宇宙に行きたいって言ってたし、ほんのり気持ちだけど」
ほんの気持ちで十分です。
思いやりのある子に育ってくれて、私は親のように嬉しいです。
ぽん「今日だけだからね!」つん!
またねー!はげたんですがー!トゲ刺さったー!
ぽん「さ、次の国へ向かって」ちら
ぴょん「…………」
ぽん「向かってー」ちらちら
ぴょん「れりごー」ぼそっ
ぽん「もっと大きな声で!」
れりごー!!