それなりの国
ぽん「あ、お姉ちゃんからメールだ」
ぴょん「なんて!」セタップ
ぽん「無事に着いたお城で、今朝はチーズフォンデュを頂きました。だって、ほら」写真付き
ぴょん「…………」
ぽん「いいなー」
あーなるほど、わるくないなー、それなりだわー。
ぽん「到着」
ぴょん「普通なところだ」
ここは、それなりの国。
よいこ「お母様、熟成ラムの赤ワイン煮込みトリュフ添えが食べたいな!」うふふ
お母様「いいわね。食べに行きましょう!」うふふ
爺や「婆さんや。楽しみだね」ふらふら
婆さん「ええ。初めてのロッククライミング、とても楽しみね」よたよた
陶器弟子「やっべ!材料全部使っちゃいました!」てへ☆
鈍器師匠「もう!このがんばりやさん!」こっつん☆
というように。
誰もがそれなりに幸せな国で、どこより安心して暮らせる国と言われています。
ぽん「のほほんとしてる」のびー
ぴょん「とてもおだやか」のびー
瓦屋根の町並みもそれなり。
ここに恐ろしい妄想があるとは、とても思えませんね。
アボカド「ここにいるんだなーそれが」ちっちっ
ぽん「それなりに苦手な味のアボカドだ」
ぴょん「ぬちゃっとした食感が苦手」
アボカド「くらえー」ぽかぽか
ぽん「うっとおしい」どんっ
アボカド「うわー」とてん
なんだか可哀想です。
ぽん「ごめんなさい。大丈夫?」
アボカド「手を差し伸べなくったって、ひとりで立てるもん」ぱたぱた
ぽん「ぷちキモカワかも」
アボカド「だめだあ……」へたー
アボカドという妄想は疲れから浄化され、萎びたピエロが正体を現しました。
ピエロ「好かれ……たかった……」がくっ
ぽん「残念。僕はピエロが苦手です」
ぴょん「行こう」ぐいっ
ぽん「恐いの?」おとと
ぴょん「そんなことない」すたすた
ぽん「ふーん」にやにや
もこ「ちょっと待っち!」ばっ!
ぽん「ねえ、あそこに公園があるよ。散歩しない?」
ぴょん「うん。いいよ」
もこ「手を繋いで仲良し好よしの、そこのお二人さん!」
ぽん「お弁当用意したら良かったなー」
ぴょん「そうだな」
二人とも。
赤い髪に、まるで角のようにぴょこんとはねる二つの癖っ毛と。
もこもこヘッドフォンを首から下げているのが特徴的な、とっても愛らしい女の子。
ぽん「うわー!それなりの湖だ!」きらきら
ぴょん「カモ……それなりにかわいい」髪ぴこぴこ
もこちゃんが。
もこ「かまっち!かまっち!」おててぱたぱた
ぽん「なに?」
もこ「なにって、よくもアボカドをやっつけてくれたっちや!」
ぽん「こういうのなんだっけ。グ、グー、グー?」くびかしげ
グル、と言いたいのですか。
ぽん「それそれ」
ぴょん「なら敵か」ざっ
もこ「痛いのはよくないですよ」うるうる
ぽん「ぴょんちゃん、やめたげなよ」かたぽん
ぴょん「オレも争い事は好きじゃない。大人しく去れ」
もこ「ぴょんぴょんは仕方なっちや、けど、ぽんぽん!」びしっ!
ぽん「はーい!」
もこ「おまたんは邪魔!やから、どっか行って!」
ぽん「えーお姉ちゃんに会わなきゃいけないしー無理っぽーい」ぷりぷり
どうして、ぽんちゃんが邪魔なのでしょう。
もこ「空想は妄想の敵」
ぽん「妄想の味方して、あなたさんは何がしたいの?」
もこ「何が……なんかしなきゃならんち」
ぽん「意味わかんない。それより一緒にお散歩しよう」
もこ「やだっち!」ぷい!
ぽん「じゃ、またね」すたすた
もこ「あー!待っち!」
ぽん「もーうっとおしなー」ぶーぶー
もこ「言うこと聞いてや!」
ぽん「やだ」
もこ「もー!どうしたらいいっちやー!」
高速おててぱたぱた。
もこちゃんお困りです。
ぽん「とりあえず、お散歩しながら考えよう。ね?」
もこ「…………」じっ
ぴょん「それなりのアイディアが浮かぶかも知れない」
もこ「……わかりました」
ぽん「ねえ。お弁当持ってない?」
なのり「あるなのり!」
ぽん「ありがとう!なのりちゃん!」
もこ「…………」じとー
ぴょん「向こうに広場があるみたいだ」
ぽん「いこいこ!」とてて!
もこ「仕方なっちや」やれやれ
なのり「手を繋ぐなのり!」ぎゅ
もこ「やだっち」ぺち
ぴょん「ひどい」
もこ「ふん!」すたすた
ぴょん「オレと繋ごう」ぎゅ
なのり「ありがとうなのり!」にこっ!
こうして四人は湖の畔にある広場へ。
そよそよと風に揺られる芝生の上に、海苔モチーフの緑のレジャーシートを敷いて、さあ楽しいランチタイムです。
ぽん「のり弁だ」
ぴょん「のりづくしだ」
もこ「ちょっち……」ええ…
なのり「わかめとこんぶもあるなのり」ぱかっ
ぽん「佃煮とか色々だね」
ぴょん「でも真っ黒」
もこ「まさに、わけわかめこんぶのり」
ぽん「ふふっ」くすくす
なのり「こっちは山の幸なのり」ぱかっ
ぽん「きゃー!眩しいくらい豪華ー!」
ぴょん「この肉は間違いなく上質だ……!」
もこ「んーふふ!」にっこり
ぽん「あー!僕も食べる!」
ぽんちゃん、今日もいい食べっぷりです。
ぽん「うん!だってね、ご飯はね、笑顔の栄養にもなるんだよ!」もむもむ
もこ「はあ?」
ぽん「お姉ちゃんが教えてくれたの」
もこ「ふーん」あむ
なのり「そのノリ好きなのり」
ぽん「この海苔?」
なのり「うん!そのノリ!」
二人の考えはすれ違っていますが、微笑ましいのでそっとしておきましょう。
さて、それから食後のダルメシアンが転んだを経て、優雅なティータイムです。
ぴょん「ミントティーを用意した」こと
ぽん「ぷちお断り」のんのん
ぴょん「そう」
なのり「美味しいなのり」すす…
ぴょん「もこち」はい
もこ「もこち?」じとー
ぴょん「オレとも、ぽん太とも仲良くしないか」
ぽん「ぽんちゃんです」
もこ「んく……やだっち」
ぴょん「どうして」
もこ「おちには、どうしてもやらなきゃいけんことやっち。やから無理」
ぴょん「そうか……」
ぽん「メールする仲じゃない」このこの
もこ「連絡先を教えたんは、おまったちがどこにおるか知るため」
ぽん「あのとき仲良くしようって言ったのに!あーひっどー!だから昨日どこ行くか聞いてきたんだ!うそつき!」
もこ「これ美味しいね」
なのり「ね」
ぽん「くやっち!くやっち!」おててぱたぱた
もこ「うっとっちい」じとー
ぽん「わかってくれた?」
もこ「はあ!?ひどっ!」
ぽん「ひどいのは先に嘘ついた、もこちゃんでしょう」
もこ「そやけど、そやけどもね!」
ぴょん「まあまあ、それなりに」
それまでにして。
ぴょん「いい天気だし気持ちよく過ごそう」
ぽん「ふにゅぴぃ……」すや…
もこ「また寝た」
ぽん「それなりにぬくぬくだから……」むにゃぽん
なのり「なのり……」すや…
ぴょん「こういう静かな時間が好き」
もこ「うん。いいね」はふー
ぴょん「風が気持ちいいし、いい匂い」
もこ「そう?」くんくん
ぴょん「草花だよ」
もこ「あー」てれ
ぴょん「オレも……少し寝ようかな」ころん
もこ「そうしい」ぽふぽふ
ぴょん「うん……」すや…
もこ「ん……んー!」のびー
なのり「せんぱい……」むぎゅ
もこ「ここにおんよ」なでなで
それなりのところで、今回のお話はおしまい。
これからもそれなりの、いえ、それ以上に仲良くしてくれたらいいな。