フェスの国
スワンボートは仲睦まじい姉妹を乗せて、今日も青空を渡ります。
ぼん「はやくはやく!」
ぽん「まだ眠いよぅ……」ふぇぇ
ぼん「ええい!飛び降りるよ!」
ぽん「え!?」
やがて見えてきた、人でごった返しの大舞台はフェスの国。
毎日、世界各国が共同で何かしらの野外フェスを行う国です。
ぼん「しゅわっち!」ぴょん
ぽん「うわー!」ひゅー
いやー!きゃー!人が落ちてきたぞ―!
ぼん「お騒がせしてすみません」ぱんぱん
ぽん「おはようございます」
フエラムネ「ふぇっふぇっふぇっ!」
ぽん「ガリガリの変な人だ!だって目にフエラムネつけてるもん!」
ぼん「こら!この方は今日の国王、美炭酸の国のソーダ村からいらしたフエラムネさんだよ」
フェスの国には決まった統治者や国民はおらず、こうして毎回、クジ引きやジャンケンで各国代表者のうち一人が国王となり、その他スタッフは国民となるのです。
ぽん「ふーん」
ぼん「きちんとご挨拶なさい」
ぽん「おはようございます。ぽんぽんです」ぺこりん
ぼん「おはようございます。ぼんぼん・チョコラティエです。遅れてすみません」ぺこりん
フエラムネ「ふぇっふぇっふぇっ!構わないから、さあ、一緒に準備しましょ」
ぼん「じゃ、あとでね」なでなで
ぽん「うん!行ってらっしゃい!」
さて、一人になったぽんちゃんは森のような人混みを抜けて、お花がたくさん咲いている原っぱへとやって来ました。
ぽん「お姉ちゃんがスタッフさんかあ」
可愛い女の子がたくさん出演する『萌える歌姫フェス』と聞いて、すぐに応募しました。
ぽん「ええ……」
推し姫は、もこちゃん、というアイドルらしいです。
ぽん「僕と同い年のあの子ね」ぷに
もこ「なに?」むっ
ぽん「なんでもないよ」
人の頬をいきなり突いて、なんでもないよ、はないでしょう。
もこ「うっとっちい。あっち行って」
ぽん「サインください」
もこ「やだっち」
ぽん「ぷちひどー」
もこ「は?」じとー
ぽん「まいいや」くるり
もこ「え、いらんの?」
ぽん「くれないんでしょ」
もこ「まあ……だってや……」
ぽん「それにあっち行ってって言うから」
もこ「はあ……もう……今日だけしょうがな……あれっ!?」きょろきょろ
ぽんちゃんは、あっという間に砂の山を三つとタンポポの峠を一つ越えました。
もこ「さっきから誰?」びくびく
怖がらせてごめんなさい。
私はナレーションの国のものです。
もこ「おばけ?」ぷるぷる
いいえ。
もとから体がないだけです。
なのり「そういうノリなのり」
もこ「…………」じとー
友達ですか?
もこ「ふん!」たたっ!
おやおやこれはこれは。
ぽん「ナレーションさん?いないの?」
すみません、もこちゃんと少しお話していました。
ぽん「ここどこ?」
ずいぶん遠くまで来ましたね。
歩いて二十六分はかかりますよ。
ぽん「戻るの面倒だし、ここでお昼寝しようかな」ねころびー
そろそろライブが始まりますよ最前列ですよ座れますよそうそう特別熱々ゲストであの三代目Pはやーっ!!
ぽん「ひぃひぃ……三代目P(プロテイン)MuscleBrothersいるならはやく言ってよ……」くたー
ぼん「あら、どうしてそんなにくたーとしてるの?」ひょこ
ぽん「お姉ちゃん、スタッフさんのお仕事は?」
ぼん「フエラムネさんが、あなたさんと一緒に楽しんでいいって許可をくれたの」
ぽん「それポップコーン?」
フエラムネです。
ぽん「ぷちいらね」ぷいっ
ぼん「ぽんちゃん」とんとん
ぽん「ん?」
ぼん「ふぇっふぇっふぇっ!」ラムネメガネ
ぽん「はっはっはっ!ひっーひっひっ!」けらけら
フエラムネ「あの」
ぼん「はい」ラムネ隠し
ぽん「ラムネ美味しいです」真顔
フエラムネ「間違えてラムネ渡しちゃった、ごめんね。はい、ポップコーンと、こっちは頑張ってくれたご褒美にレモネード」
ぼん「嬉しいです!ありがとうございます!」
ぽん「ありがとうございます!おじさん優しいね!」
ぼん「女性だから!」ひそひそ!
たまにいらっしゃいますよね、判断難しい人。
フエラムネ「気にしなくていいよ、じゃね」
ぼん「僕も三十八回、おじさんって呼んじゃったけど気をつけてね」
ぽん「間違え過ぎー」つんつん
わたあめ「こーんにーち?」
観客「わったあっめちゃーん!」
わたあめ「はーい!わたあめちゃんだよー!」らぶゆー!
観客「ぐはあああ!!」ずぎゅるはあ!
わたあめ「今日も元気にはじけちゃおー!」
観客「うおおおおお!!」
さあ、いよいよフェスの始まりです!
ぼん「わたあめちゃん可愛いー!きゃー!こっち見てー!」きゅんきゅん!
ぽん「うるさー」みみふさぎ
お姉ちゃんはとても萌えています。
ぽんちゃんも一緒に。
ぽん「ふにゅーぴー……」すや…
よく眠れますね。
ぼん「もったいないよ!」ぷんぷん!
それから幾人かのアイドルが歌い終わり。
もこ「アーイ!」
観客「マーイ!」
みんなで「もこー!」
ぼん「アイマイ・もこちゃん可愛いなー」でれへへ
確かお母さんが元アイドルの、アイマイ・みい、という方で注目されているんですよね。
ぼん「お母さんがなれなかったトップアイドルの夢を、代わりに自分が叶えるんだって」
いい子ですね。
ぼん「そうだけど、僕はぷち複雑かな。自分らしく」
もこ「あー!あやっちはさっきの!」
ぽんちゃん、大人気のアイドルからご指名ですよ。
ぽん「そ……」むにゃむにゃ
もこ「起きい!もこちゃんやよ!」
観客「悪魔のように魅力的で天使のように優しい!」
ぼん「心を地獄のように熱くする愛のように甘い歌声をもつ!」
もこ「もこちゃんやよ!」ふふん!
ぽん「ふふんふーん」白目
もこ「くやっち!くやっち!」おててぱたぱた
観客「悔しがるもこちゃんも可愛いー」でれますなー
ぽん「もこぴー……」すやすや
ぼん「ぽんちゃん。ブギウギ体も心も踊る楽しい子供向けのお歌が始まるよ」
ぽん「それって……」ぱち…
ぼん「そう。あなたさんがいつも」
なのり「ノリノリなノリ」
ぼん「で歌って踊ってる大大大好きな」
ぽん「みみももめむま!」しゃきーん!
覚醒したぽんちゃんはステージに飛び上がり、もこちゃんの隣へ。
もこ「ちょっち」
ぽん「一緒に歌お!」きらきら!
もこ「やだっち!」ぷい!
ぽん「じゃ帰って寝ます」
もこ「え」
ぽん「ふぁ……ねむー」すたすた
もこ「かまっち!かまっち!」おててぱたぱた
観客「でたー!もこちゃんの構って攻撃ー!」
ぼん「ご飯を食べさせたいしお風呂に入れたいし着替えさせたいし歯磨きもしてあげたいし子守唄も歌ってあげたい……!」
ありがた迷惑のフルセットですね。
ぽん「もう、めんどくさいなー」
もこ「ふん!」ぷい!
ぽん「どっちかはっきりして!」
ここで気を利かせたフエラムネさんが音楽をかける。
ぽん「みんなー!ぷっち楽しんじゃおー!」
観客「うおおおおおっほい!!」あげぽよ!
なのり「ノリノリなノリでいくなのりー!」
ぼん「いええええええええええい!!」空前絶後のテンション
もこ「みみももめむまー!」ぴょん!
この物理的に爆発した盛り上がりは、会場を瞬く間に視界が歪むほどの熱気で包み込み、筋トレに励んでいた三代目P(プロテイン)MuscleBrothersを救急搬送させた。
ぼん「今日は楽しかった?」
ぽん「三代目P(プロテイン)MuscleBrothersに会いたかった」しくしく
ぼん「打ち上げにはくるって。ポケホに今メールきたよ」
ぽん「やっーーーほいっ!」ぴょいん!
それでは打ち上げ会場に向かって。
ぽん「れりごー!」
明日もあるのにー!ふぇふぇー!片付けがー!
もこ「ライブだけやなく、会場まで滅茶苦茶にして許さん……!」ぐぬぬ!
ぽん「後でうるさそうだし、メールで謝っておくかな」めんどー
ぼん「僕にも、もこちゃんの連絡先教えて」
ぽん「やだ」即答