表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

蛾と春夏秋と冬女王

作者: 稲村皮革道具商店

冬の童話2017参加作品です。途中まではかなり揺れましたが、

結局中身は稲村皮革道具商店でした(笑)力業ですごめんなさい。

 迷うような道ではないのだけど。


 一人の女の子はまだ霜柱の消えない道をあるいてた。



 とおいとおいある国に、四人の女王様がいて、不思議なことにそれぞれ四人が春夏秋冬といわれてる。


 そしていつものように、冬になって年も明け、春のおとずれ近づくはずの今日になり、ぜんぜん雪もとけません。



 そんなことがあるのでしょうか?


 でも娘ははその話をきいて、いてもたっても居られなくなって、仲間の元をとびだした。


 きっと冬の女王さまは、春や夏や秋と替わりたくなくて、塔から出たくなくなったんだ!




 でもやさしい仲間の三人は、いっておいでと見送る時に、みっつの道具をもたせていたのでした。






 いくつもの山を越え、川を渡って綺麗な湖に着きました。


 そこにはその国のお城があり、きれいな湖のほとりには三人の女王がおわす館がありました。


 もちろんただの娘がお城はおろか、館に入ることも許されるはずがありません。




 でも、娘にはひとつだけ、ないしょにしていた「とっておき」がありました。


 娘は真夜中になってから、湖のつめたい夜空にうかぶ月のひかりをあびて、「とっておき」のまほうをはじめました。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 月のひかりがきぃんとさしこむと、娘のからだもきぃんと鳴りました。


 娘は月夜の夜にだけ、夜に羽ばたくちょうちょ、そう、みんなが嫌う大きなガになるのです。

 


 きらわれものの大きなガになって、ふわりと羽ばたき空をまい、いねむりしてる衛兵さんも、つめたく高いしろかべも、みんなヒラリと見下ろして、館のまどまでとびました。




 こんこんこん、まどをたたくのだれですか?


 春の女王はまだ早い、ねるには早い夜のなか、まどべに立った大きなガにびっくり。


 あなたはいったいだれですか?




「わたしはきらわれもののガです。冬の女王をつれてくる、それをこれからはじめます」


 春の女王はこまります。


 わたしにあるのはあたたかさ。


 こんなわたしがむかっても、きっと冬は出てこない。


 なにか手伝えないかしら?




 娘はみぎてに持っていた、袋をそっと手わたします。


「あなたのこころのあたたかい、やさしい陽射しをかしてくださいな」



 春の女王はほほえんで、袋に、ほぅ、とあたたかい、やさしい陽射しをふきこみました。






 夜もふけて寝静まり、みんな寝どこに入るころ。




 こんこんこん、だれかしら?


 みんな静かに寝てる夜に


 まどべに立ってるあなたはだあれ?



 夏の女王は立ち上がり、どろぼう来たかとみがまえて、


 置いた短剣とりだすと、


「いったいどこのこそ泥だ!おまえの居場所は知れてるぞ!」


 夏の女王のいきおいに、娘はおもわずとびあがる!



 ぜったいぜつめい!その時に、ポロリと何かがおっこちた。


 夏の女王は用心しながら、落ちてる何かを拾ったら、


 きれいな銀の手かがみに、こわい自分がうつってた。




「これはいけない!私は勇ましすぎて、いつもみんなをおどろかす!」


 これでは冬の女王も、こわくて塔から出てこない。


 すこし悲しくなったとき、むすめがそっといいました。


「夏の女王のそのきもち、きっとわかってくれましょう。かならず私がつたえます。なにかことづてないですか?」



 さすがは夏の女王さま、そのひとことで輝いた!


「そなたに一つたのみたい!冬の女王に手わたして、おしえてほしいと言ってくれ!」


 夏の女王がくれたのは、真っ赤な毛糸のまりでした。


 毛糸にまけないくらいに真っ赤になって、夏の女王はいいました。


「いつかあなたに好きな人、できたらおしえてあげようと、編み物、冬の

 女王は、とくいだから…!」



 勇ましいけどいじましい、夏の女王は真っ赤になって、ベッドにふわりととびこんだ。





 秋の女王は夜更かしで、いつも一番おそくねる。


 みんなが寝てるそのよるも、月にさそわれ外に出た。



 そんな秋の女王のもとへ、ふわりと何かがとんできた。



 すこしびっくりしたけれど、一番年上おちついて、いつも静かな秋の女王。


 本でみたことありますわ。


 あなたは夜のちょうちょうね?



 娘はおもわずとびあがる!


 じぶんが誰だかわかるんだ!




 娘はしずかにひざまずき、さいごの道具をとりだした。


「これをつかってみなさまの、だいじな言葉、とどけます!」



 それは真っ白しろいゆき?いえいえきれいなしろい紙。


「この本なにもかいてない、きれいな雪のノートです。」


 娘は最後の女王に、ひとつのおねがいいたします。




「春、夏、秋、みんなの気持ちをつたえれば、冬の女王もわかるはず。みんなの気持ちがわかるはず。」


 しずかににっこりほほえんで、秋の女王はいいました。



「あなたのすてきな思いつき、かならず女王にとどくでしょう!」


 秋の女王はさらさらと、使いなれてるペンつかい、きれいな音で書きあげた。


 ふと目をあげた女王には、娘のはねが気になった。



「あなたのはねのその辺り、しろい色が消えている、もしやこの本、あなたの羽根?」



 娘はそっとうつむいて、女王にむかってはなします。



「わたしは嫌われもののガです。きっとみんなにきらわれる。だから役にたちたいと、本のページをふやしたの…」




 それから娘は羽ばたいて、最後の塔にむかいます。




 はらはらはらり、はらはらり。


 雪がまいちる塔のうえ、冬の女王は泣いていた。



 ほろほろぽろり、かなしくて、みんなにあわす顔がない…


 わがままいって困らせて、春になっても出られない。


 じぶんのまいた種だけど、冬には雪がとかせない。


 じぶんがはらせた氷でも、冬の間はとかせない。




 はらはら涙は下に落ち、雪のひとひら、おちていく。





「だめだめ冬の女王さま!!こんな寒さじゃ春来ない!!」


 くるくるぎゅーん!ぼんどかん!


 空から何かがとんできた!


「私は冬もとべるガだよ!ほらみてキレイな毛皮だよ!」


 そうですたとえ雪の日も、平気で空とぶガなんです!!




 いきおいつけて飛んできて、ちょっぴりいきおいつけすぎて!!


 塔のまなかに立っていた、冬の女王にぶつかった!!



「いたーい!…たいへん!女王さま~!?」


 二人はごろごろころがって、やっと止まったその周り!


 毛糸に鏡にしろい本、いろんなものがちらばって、二人はあわててごあいさつ!



「あなたはだぁれ?ここは冬、さむーい冬よだいじょうぶ?」


「わたしは寒さに強いガだよ!こんな寒さはへっちゃらよ!」



 二人はなんだかおかしくて、くすくすわははと笑いだす!


「こんなに笑うのひさしぶり!なんだか気持ちがスッとした!!」


 冬の女王はほほえんで、でもちょっと困り顔。



「せっかく気持ちは晴れたけど、ゆきも氷もとかせない…」


「心配ごむようおまかせを!こちらにあるは不思議な袋、今から春がちょっと来る!」


 袋の口をほどいたら、すごいとっぷう!春一番!!!



 びゅごーびゅーびゅー、ずごごごご!


 勢いまして吹き出した!



 風に舞ってくあれやこれ、赤い毛糸も飛んでいく!


 するとあらあらまあ不思議!毛糸は氷やゆき飛ばし、真夏の陽射しを連れてきた!



「あらあら不思議!でも素敵!けれどもこれじゃ暑すぎる…。」


 冬の女王は暑さによわい!これでは冬がとけおちる!!


 とうとう困った二人して、何かないかと本開けた!


 最後に一番ほしいもの!



 それは柔らか、秋の夜。


 落ち着く陽射し、やわらいで、やっとこ静かになりました。


 それから二人、本開き、みんなの気持ちをたしかめた。



 衛兵庭師、侍女家臣、王様それに女王さま。


 みんなが四人を慕ってる。




「ほんとにどうも!ありがとう!」


 夜のとばりがおりる頃、娘は帰ることにした。




 きっと夜明けが過ぎたなら、すっきり春になるでしょう。




「王様、女王がお帰りです!」


 みんなが待ったご登場!


 拍手にお花、紙吹雪!!


 しっかり戻った足取りに、みんなはホッと一安心。





 娘はひとつ、願いをたてた。


「森の奥底、暗いもり、わたしら四人、嫌われもの。だから!王様!御願いです!みんなといっしょに仲良くしたい!」



 それからそのあとどうなった?


 君の読んでるその本の、


 裏側読んでみたまえよ?




 娘の名前、




 続きはまたのその時に!


 けれどもきっと、書いてある、


 春夏秋冬飛び越えて、話も飛び越す!ガの娘!











およそ二時間で突貫工事で建設した不思議ハウスです。景色がぐるぐる廻ったりしますが、よろしく御願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして、私も「冬の童話祭」の作品を投稿した者です。 ガの娘とは驚きました。 まず良い点として、文章からリズムが感じられるのが快活に感じられました。 最後の締め方も、スッキリして…
2016/12/14 14:32 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ