蛾と春夏秋と冬女王
冬の童話2017参加作品です。途中まではかなり揺れましたが、
結局中身は稲村皮革道具商店でした(笑)力業ですごめんなさい。
迷うような道ではないのだけど。
一人の女の子はまだ霜柱の消えない道をあるいてた。
とおいとおいある国に、四人の女王様がいて、不思議なことにそれぞれ四人が春夏秋冬といわれてる。
そしていつものように、冬になって年も明け、春のおとずれ近づくはずの今日になり、ぜんぜん雪もとけません。
そんなことがあるのでしょうか?
でも娘ははその話をきいて、いてもたっても居られなくなって、仲間の元をとびだした。
きっと冬の女王さまは、春や夏や秋と替わりたくなくて、塔から出たくなくなったんだ!
でもやさしい仲間の三人は、いっておいでと見送る時に、みっつの道具をもたせていたのでした。
いくつもの山を越え、川を渡って綺麗な湖に着きました。
そこにはその国のお城があり、きれいな湖のほとりには三人の女王がおわす館がありました。
もちろんただの娘がお城はおろか、館に入ることも許されるはずがありません。
でも、娘にはひとつだけ、ないしょにしていた「とっておき」がありました。
娘は真夜中になってから、湖のつめたい夜空にうかぶ月のひかりをあびて、「とっておき」のまほうをはじめました。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
月のひかりがきぃんとさしこむと、娘のからだもきぃんと鳴りました。
娘は月夜の夜にだけ、夜に羽ばたくちょうちょ、そう、みんなが嫌う大きなガになるのです。
きらわれものの大きなガになって、ふわりと羽ばたき空をまい、いねむりしてる衛兵さんも、つめたく高いしろかべも、みんなヒラリと見下ろして、館のまどまでとびました。
こんこんこん、まどをたたくのだれですか?
春の女王はまだ早い、ねるには早い夜のなか、まどべに立った大きなガにびっくり。
あなたはいったいだれですか?
「わたしはきらわれもののガです。冬の女王をつれてくる、それをこれからはじめます」
春の女王はこまります。
わたしにあるのはあたたかさ。
こんなわたしがむかっても、きっと冬は出てこない。
なにか手伝えないかしら?
娘はみぎてに持っていた、袋をそっと手わたします。
「あなたのこころのあたたかい、やさしい陽射しをかしてくださいな」
春の女王はほほえんで、袋に、ほぅ、とあたたかい、やさしい陽射しをふきこみました。
夜もふけて寝静まり、みんな寝どこに入るころ。
こんこんこん、だれかしら?
みんな静かに寝てる夜に
まどべに立ってるあなたはだあれ?
夏の女王は立ち上がり、どろぼう来たかとみがまえて、
置いた短剣とりだすと、
「いったいどこのこそ泥だ!おまえの居場所は知れてるぞ!」
夏の女王のいきおいに、娘はおもわずとびあがる!
ぜったいぜつめい!その時に、ポロリと何かがおっこちた。
夏の女王は用心しながら、落ちてる何かを拾ったら、
きれいな銀の手かがみに、こわい自分がうつってた。
「これはいけない!私は勇ましすぎて、いつもみんなをおどろかす!」
これでは冬の女王も、こわくて塔から出てこない。
すこし悲しくなったとき、むすめがそっといいました。
「夏の女王のそのきもち、きっとわかってくれましょう。かならず私がつたえます。なにかことづてないですか?」
さすがは夏の女王さま、そのひとことで輝いた!
「そなたに一つたのみたい!冬の女王に手わたして、おしえてほしいと言ってくれ!」
夏の女王がくれたのは、真っ赤な毛糸のまりでした。
毛糸にまけないくらいに真っ赤になって、夏の女王はいいました。
「いつかあなたに好きな人、できたらおしえてあげようと、編み物、冬の
女王は、とくいだから…!」
勇ましいけどいじましい、夏の女王は真っ赤になって、ベッドにふわりととびこんだ。
秋の女王は夜更かしで、いつも一番おそくねる。
みんなが寝てるそのよるも、月にさそわれ外に出た。
そんな秋の女王のもとへ、ふわりと何かがとんできた。
すこしびっくりしたけれど、一番年上おちついて、いつも静かな秋の女王。
本でみたことありますわ。
あなたは夜のちょうちょうね?
娘はおもわずとびあがる!
じぶんが誰だかわかるんだ!
娘はしずかにひざまずき、さいごの道具をとりだした。
「これをつかってみなさまの、だいじな言葉、とどけます!」
それは真っ白しろいゆき?いえいえきれいなしろい紙。
「この本なにもかいてない、きれいな雪のノートです。」
娘は最後の女王に、ひとつのおねがいいたします。
「春、夏、秋、みんなの気持ちをつたえれば、冬の女王もわかるはず。みんなの気持ちがわかるはず。」
しずかににっこりほほえんで、秋の女王はいいました。
「あなたのすてきな思いつき、かならず女王にとどくでしょう!」
秋の女王はさらさらと、使いなれてるペンつかい、きれいな音で書きあげた。
ふと目をあげた女王には、娘のはねが気になった。
「あなたのはねのその辺り、しろい色が消えている、もしやこの本、あなたの羽根?」
娘はそっとうつむいて、女王にむかってはなします。
「わたしは嫌われもののガです。きっとみんなにきらわれる。だから役にたちたいと、本のページをふやしたの…」
それから娘は羽ばたいて、最後の塔にむかいます。
はらはらはらり、はらはらり。
雪がまいちる塔のうえ、冬の女王は泣いていた。
ほろほろぽろり、かなしくて、みんなにあわす顔がない…
わがままいって困らせて、春になっても出られない。
じぶんのまいた種だけど、冬には雪がとかせない。
じぶんがはらせた氷でも、冬の間はとかせない。
はらはら涙は下に落ち、雪のひとひら、おちていく。
「だめだめ冬の女王さま!!こんな寒さじゃ春来ない!!」
くるくるぎゅーん!ぼんどかん!
空から何かがとんできた!
「私は冬もとべるガだよ!ほらみてキレイな毛皮だよ!」
そうですたとえ雪の日も、平気で空とぶガなんです!!
いきおいつけて飛んできて、ちょっぴりいきおいつけすぎて!!
塔のまなかに立っていた、冬の女王にぶつかった!!
「いたーい!…たいへん!女王さま~!?」
二人はごろごろころがって、やっと止まったその周り!
毛糸に鏡にしろい本、いろんなものがちらばって、二人はあわててごあいさつ!
「あなたはだぁれ?ここは冬、さむーい冬よだいじょうぶ?」
「わたしは寒さに強いガだよ!こんな寒さはへっちゃらよ!」
二人はなんだかおかしくて、くすくすわははと笑いだす!
「こんなに笑うのひさしぶり!なんだか気持ちがスッとした!!」
冬の女王はほほえんで、でもちょっと困り顔。
「せっかく気持ちは晴れたけど、ゆきも氷もとかせない…」
「心配ごむようおまかせを!こちらにあるは不思議な袋、今から春がちょっと来る!」
袋の口をほどいたら、すごいとっぷう!春一番!!!
びゅごーびゅーびゅー、ずごごごご!
勢いまして吹き出した!
風に舞ってくあれやこれ、赤い毛糸も飛んでいく!
するとあらあらまあ不思議!毛糸は氷やゆき飛ばし、真夏の陽射しを連れてきた!
「あらあら不思議!でも素敵!けれどもこれじゃ暑すぎる…。」
冬の女王は暑さによわい!これでは冬がとけおちる!!
とうとう困った二人して、何かないかと本開けた!
最後に一番ほしいもの!
それは柔らか、秋の夜。
落ち着く陽射し、やわらいで、やっとこ静かになりました。
それから二人、本開き、みんなの気持ちをたしかめた。
衛兵庭師、侍女家臣、王様それに女王さま。
みんなが四人を慕ってる。
「ほんとにどうも!ありがとう!」
夜のとばりがおりる頃、娘は帰ることにした。
きっと夜明けが過ぎたなら、すっきり春になるでしょう。
「王様、女王がお帰りです!」
みんなが待ったご登場!
拍手にお花、紙吹雪!!
しっかり戻った足取りに、みんなはホッと一安心。
娘はひとつ、願いをたてた。
「森の奥底、暗いもり、わたしら四人、嫌われもの。だから!王様!御願いです!みんなといっしょに仲良くしたい!」
それからそのあとどうなった?
君の読んでるその本の、
裏側読んでみたまえよ?
娘の名前、
続きはまたのその時に!
けれどもきっと、書いてある、
春夏秋冬飛び越えて、話も飛び越す!ガの娘!
およそ二時間で突貫工事で建設した不思議ハウスです。景色がぐるぐる廻ったりしますが、よろしく御願いいたします。