箸休め ダイヤモンドは砕けモース③ サルーインには捧げません!
番外編です。
今回は宝石の蘊蓄を垂れています。
鉱物の傷付きにくさを示す尺度、モース硬度を紹介している今回の箸休め。最終回となる今回は硬度6の鉱物から硬度9の鉱物まで、そして身近なもののモース硬度を取り上げたいと思います。硬度10のダイヤモンドに付いては、第一回目をご覧下さい。
硬度6の正長石は長石の一種で、地球上の岩石を構成する主要な鉱物です。正長石を含まない岩石を見付けるほうが難しいほどで、隕石や月面からも発見されています。色は透明な石から白、クリーム色のものまで存在し、ガラス質の光沢を持ちます。
長石とはアルミノケイ酸塩と言う物質を主成分にするグループで、20種類以上の鉱物が属しています。カリウムを主成分にするカリ長石類と、ナトリウムやカルシウムを主成分にする斜長石類に大別され、正長石は前者に分類されます。ちなみに宝石として使われるムーンストーンは、正長石と斜長石類の曹長石で形作られています。
硬度7の石英はいわゆる水晶で、地球の地殻の二割を占める鉱物です。世間一般的にはパワーストーンとして認知されていますが、ガラスの原料やクォーツ時計にも使われています。
紫色の水晶であるアメジストは、2月の誕生石としても知られています。
「アメジスト」と言う名前は、ギリシア語で「酒に酔わない」を意味する「アメタストス」に由来します。当時の人々はアメジストに悪酔いを防ぐ力があると信じており、粉末にして服用したそうです。
硬度8のトパーズは宝石として有名な鉱物で、11月の誕生石としても知られています。ギリシア語で「探し求める」を意味する「トパゾス」や、サンスクリット語で「火」を指す「トパス」がその名の由来になったと伝えられています。
「トパゾス」とは元々、紅海にある島の名前で、現在のセント・ジョーンズ島を指すと考えられています。深い霧に覆われ、見付けにくかったことが、その名の由来になったと言います。
ただし肝心のセント・ジョーンズ島に、トパーズの鉱脈は存在しません。このことから古代の人々が言う「トパーズ」とは、セント・ジョーンズ島で採れるペリドットを指すと考えられています。ペリドットはエメラルドに似た緑色の鉱物で、8月の誕生石としても知られています。
硬度9のコランダムは酸化アルミニウムを主成分にする鉱物で、和名では「鋼玉」と呼ばれています。コランダムと言う名前には聞き覚えがなくても、ルビーやサファイアと言えばお判り頂けるのではないでしょうか。
二つの宝石は共に酸化アルミニウムを主成分にしていますが、不純物の違いによって異なる色を見せています。専門的には宝石として価値があり、赤いものをルビー、それ以外の色をサファイアと呼ぶそうです。そのため、イエローサファイアやピンクサファイアは宝石店で見掛けますが、レッドサファイアは存在しません。
真っ赤な彩りが目を引くルビーは、7月の誕生石としても知られています。その名はラテン語で赤を意味する「ルーベル」に由来し、古くは血を止める作用があると信じられていました。アメジストと同じく粉末状に加工し、服用することもあったと言います。
一方のサファイアは9月の誕生石で、その名はギリシア語で「青」を指す「サフィロス」に由来すると言われています。一般的には青いイメージの強い宝石ですが、先述の通り黄色やピンクのものも存在します。
概して宝石類は傷が付きにくく、5月の誕生石であるエメラルドは7.5から8、1月の誕生石であるガーネットは7前後の硬度を誇ります。玉こと翡翠も硬い宝石で、モース硬度は7前後に達します。
宝石として使われる第一条件が、見た目の美しさにあることは疑いようもありません。しかし同時に傷の付きにくさもまた、日常的に身に着けるにあたって重要な条件になったのではないでしょうか。
人間の爪のモース硬度は2.5で、硬度2の石膏にまで傷を付けられます。またガラスは5.5、一般的なナイフは6前後の硬度を持つと言われています。
意外なことに、銅製の10円玉は3.5ほどの硬度しか持っていません。硬いように思える釘も、モース硬度は5.5程度です。
反面、金属は衝撃に強く、落とした程度で割れることはありません。また思い通りの形に作り替えられる柔軟性を持ち、金箔のように限りなく薄くすることも可能です。
参考資料:ダイヤモンドの科学 美しさと硬さの秘密
松原聰著 (株)講談社刊
徹底図解 鉱物・宝石のしくみ
宮脇律郎監修 (株)新星出版社刊




