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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第七章  エルフ交通
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第十二話 加茂井さんの助言


「どもー! 加茂井ですー!」


 ハナちゃんと村の入り口に向かうと、ちょうど加茂井さんらしき人物がやってきた。

 マウンテンバイクに乗っている。


「あや! へんなのがきたです!」

「ああ、あれは自転車っていう乗り物だよ」

「のりものです?」

「うん。まあ便利な乗り物なんだ」


 ハナちゃんはマウンテンバイクというか、自転車を見てびっくりしている。

 今までは発動機が付いた物しか見ていないから、人力で「自走」する乗り物は初めて見たわけだ。

 ハナちゃんは加茂井さんより、自転車の方に興味津々になっている。

 けど、ちょっと怖いのか俺の後ろに隠れてしまった。


 そんな事をしているうちに、加茂井さんが到着した。

 自転車を停めて、こちらに歩いてくる。


「あなたが加茂井さんですか」

「そうです。加茂井雪恵(かもいゆきえ)です。初めまして、大志さん」

「雪恵さんですか。初めまして。これからお世話になります」


 村にやってきた加茂井さんは、高校生くらいの女の子だった。

 ショートボブっていうのかな? そんな髪型をしている、今風の可愛らしい子だ。


 ……連絡がホラーだっただけにどんな人が来るかと思っていたら、すっごいまともな感じだ。

 ……よかった~。都市伝説系の人じゃ無くて、よかった~。


「タイシ、このひとだれです?」


 ハナちゃんが好奇心いっぱいの目で、加茂井さんを見ている。

 自転車から降りたので、もう怖がってはいないようだ。

 俺の後ろに隠れていたけど、今はもう警戒もしていない様子で俺の隣に移動している。

 ハナちゃんにも、加茂井さんを紹介しておこう。


「この方は――」

「きゃー! エルフの子供! かわいー!」

「あややや!」


 ハナちゃんを見た加茂井さんが、おもむろにハナちゃんを抱き上げてほおずりほおずりしている。

 ハナちゃんはなす術もなくほおずりされているけど、二人とも可愛いので何ともほのぼのとした感じだ。


「私は加茂井雪恵っていうの、ユキって呼んでね」

「あや~。わたしはハナハっていいますです。ハナってよんでね!」

「わかったわ! ハナちゃんね」

「あい~!」


 いきなりのほおずりにびっくりしながらも、ハナちゃんきちんと自己紹介。偉いなあ。

 まあ、とりあえず他の皆にも紹介して、その後細かい話でもしよう。


「では、集会場に皆を集めて、加茂井さんを紹介します」

「あ、よろしくおねがいします。それと、大志さんは年上ですので、敬語でなくていいですよ」

「それじゃお言葉にあまえて。集会場に行こう」

「いくです~」


 加茂井さんから解放されたハナちゃんが、集会場まで先導してくれるようだ。

 それじゃ、ハナちゃんの後に続きましょうかね。


 ――そしてその道すがら、俺は気づいてしまった。


 加茂井さん……よく見ると影が無い。

 俺とハナちゃんははっきりと地面に影が映っている。

 でも、加茂井さんには……影が――無い。


 ――怖!



 ◇



 加茂井さんに影が無いことは、気にしないことにした。

 ――考えてはいけない。そういう物なのだ。そうなのだ(逃避)。

 

 それはそれとして、集会場に集まった皆で、それぞれ自己紹介をした。


「タイシさんとシロウさんがおっきいので、こっちのひとはみんなそうなのかとおもってました」


 ヤナさんは俺と加茂井さんを見比べて、ふむふむといった感じだ。

 初めて俺と親父以外の地球人、それも女性を見たからか、興味津々といった感じだ。


「この二人は、こっちでも大きい部類ですよ。大体エルフさん達くらいがこっちでも平均ですね」

「そうなんだ~」

「びじんさんなの」

「かみのけとめは、やっぱりくろいのね~」

「ちなみに、エルフってなんぞ?」


 他のエルフ達も興味津々な様子で、加茂井さんと和気藹々と質疑応答をしている。

 加茂井さんの優しげな雰囲気もあってか、すぐに打ち解けている。

 こうしてみると、普通な感じの子なんだよな……。


「……なあ大志、俺この加茂井さん初めて見るんだけど。お婆ちゃんの方は知ってるけどさ」

「親父は何か知ってる?」

「いや、お婆ちゃんのほうしか知らん」


 高橋さんと親父も、加茂井さんといったらお婆ちゃんの方みたいだ。

 今日来てくれた、若い方は知らないようだ。

 この辺りは、本人に聞いた方が早いだろう。


「それで加茂井さん、俺たちが知ってるあのお婆ちゃんとは、どういう関係なの?」

「そのまんま祖母ですよ。私は皆さんがご存じのあのお婆ちゃんの、孫ですね」


 この辺も普通だ。あのお婆ちゃんの孫なんだね。

 今回お婆ちゃんではなく孫が来たのは、何か理由があるんだろうか。


「それで今回加茂井さん……え~っとお婆ちゃんではなく君が来た理由とかあるのかな?」

「加茂井だとお婆ちゃんと混同しちゃいますので、ユキで良いですよ」


 にっこりと愛称呼びを許可されてしまったけど、初対面の女の子をいきなり愛称呼びとか若干照れくさい。

 ……まあ、実際お婆ちゃんの方と区別しづらいので、ここもお言葉に甘えさせて貰おう。


「そう? それじゃ……ユキちゃんが派遣されたのに、何か理由があるのかな?」

「それがまあ……高専卒業してから、家でゴロゴロしていたら……」

「えっ! 高専出てるの!?」

「ええまあ。何とかこの春卒業できまして」


 高専卒業なら二十歳くらいじゃないか。そう考えると、凄い童顔だな。


「……今童顔とか考えましたよね?」

「高校一年くらいにみえたかな?」


 ジト目の追求がきたけど、正直に思ったことを言ってみた。


「ええまあ……はい、童顔デス」


 ユキちゃんはちょっと落ち込んでしまった。

 童顔なの、気にしてるようだ。

 ……まあ、あと十年したらそれが凄い武器になるわけだ。

 気にすることも無いと思うけど……。


「まあそれで、家でゴロゴロしていたら――お婆ちゃんに『暇してるなら家の仕事を手伝えー!』ってカミナリを落とされまして……」

「なるほど」

「さもありなん」

「やくそくされた、けつまつ」


 周りで聞いていたエルフ達も、納得の理由だった。

 そして、ユキちゃんは肩身が狭いのかちっちゃくなっている。

 ……まあ、理由は分かった。

 家の仕事の手伝いにかり出されたのね。


「そういうわけなら、遠慮せずにお仕事頼んじゃうけどいいかな?」

「ええもう! しっかりお仕事しますよ!」


 やる気十分の様子で、鼻息荒く返事が返ってきた。

 ……まあ、頑張ってくれるなら良いかな。

 家としても、加茂井さんに頼りっきりな部分もあるから、持ちつ持たれつで行こう。



 ◇



 集会場での挨拶が終わって会合を解散した後、ユキちゃんに標本を渡す。

 これを持って帰って貰って、成分分析をして貰うわけだ。


「それじゃ、これが各種標本になるかな。分析をお願いします」

「おねがいするです~」

「承りました……おっとと!」


 ユキちゃんに標本の入ったジュラルミンケースを渡したけど、重かったのかよろめいている。

 五キロも無いけど、女の子にはちょっと重かったか。


 ……あれ? 自転車で来たなら、どうやって持って帰るのだろうか。


「それ、どうやって持って帰るの?」

「……あ!」


 しまった! みたいな顔をされても……。

 しょうがない、家の車で送ってあげよう。


「なんなら、家の車で送るけど。貨物用ワゴンだから、自転車も積めるよ」

「……お願いします」


 取りに来てくれるのか~とか思っていたけど、結局自分で渡しに行くのと同じ感じになってしまった。

 まあ、それはそれで良いか。どのみち自分で渡すつもりだったし。

 これで家から頼みたいことは頼んだけど、後はどうするんだろう。


「それじゃ家からの依頼は以上だけど、これからどうする? 送ってく?」

「いえ。村の運営にも力を貸しなさいって言われてまして」

「そこも手伝ってもらえるんだ。ありがたい」

「ちょくちょく顔を出すことになると思います」


 お袋がまだまだ帰って来れないので、女手が不足していたんだよな。

 凄い助かる。


「そりゃあ助かる。正直、男手しかなかったから色々と大雑把になっててさ」

「その辺りはお任せを。女子力あふれる村にしますよ!」

「……そこまでは望んでないから」


 村中女子力あふれるキラキラデコをされても困る。

 生活する上で、女性ならではの悩みとかを解決して行って欲しいわけで。

 そこら辺は、俺や親父じゃちょっと無理だからね。


「タイシ、じょしりょくってなんです?」

「謎の力かな。世の中の女子が求めてやまないけど、空回りすると恐ろしい結果をもたらすんだよ」

「こわいです~!」


 ハナちゃんにいい加減な知識を吹き込んでおく。

 とはいえ、大体あってるはずだ。

 世の中の女子力強化系の話を聞くと、大体空回っている。

 ハナちゃんはそうならないよう、おもいっきり警戒して頂きたい。


「……まあ女子力は置いておいて。エルフの女性の方々が何か困ってないか、聞いて欲しいんだ。男には話しにくいこともあると思うから」

「分かりました。その分野ではお任せあれ」


 それじゃ早速、その辺の聞き取り調査やら村を見回って、不足している物が無いか調べて貰おう。

 ガイドはハナちゃんで良いかな?


「それじゃハナちゃん、ユキちゃんの案内を頼めるかな?」

「あい~! ユキ、あんないするです~」

「ハナちゃんが案内してくれるのね。かわい~!」

「ユキ、いくです~」


 二人はキャッキャしながら、村巡りに行った。

 もうすっかり仲良しさんだな。

 女の子同士だから、色々男じゃ気づかない問題も気づくだろう。

 この辺りはもう、お任せだ。


 それじゃ俺は俺で、平原の人たちとちょっくら話をしよう。

 彼らはお金を持っていないから、この村で過ごすのは不便だろうからね。

 彼らの持ってきた交易品を買い取る等して、いくらかのお金を渡そう。



 ◇



 平原の人はどこかなと探しにでたら、駄菓子屋に家族揃っていた。

 なんだか、物欲しそうな顔で商品を見ている。


「皆さん、どうされました?」

「いや、なんだかすごいものがたくさんあるなって」

「これって、こうかんできないの~?」

「おかね? ってやつがひつようなんですよね?」


 駄菓子屋兼雑貨屋に陳列されている商品に、興味津々のようだ。

 だけどお金がないから、交換できなくてもじもじしているのかな?

 ならちょうど良いな。


「皆さんの交易品を私が買い取って、お金と交換しようと思っているのですが」

「おお! よろしいのですか!?」

「もちろん。見せて頂けます?」

「どうぞどうぞ!」


 三人そろって、どこからかは分からないけど、いろいろな物を取り出し始めた。

 岩塩、工芸品、何かの植物を乾燥させた物、そして綺麗ななんかの石、等々。

 沢山あるな。これは一財産だ。


 しかし、物の値段が判断出来ない。塩一つとっても、いくらで引き取れば良いのかわかんないな……。

 ……食べ物系は子猫亭に丸投げしよう。あっちはプロだから市場適正価格とか分かるだろう。

 その他の物品については、ユキちゃんにも見て貰おう。


 市場価格を調べている間は無一文、と言うのもかわいそうだから、手付金としてある程度のお金を渡しておこう。

 市場価格がわかったなら、その後手付金を引いた額で取引すれば良い。


「これらの価値を調べますので……さしあたっては塩を頂けますか?」

「どうぞどうぞ」

「ひとまず手付金で一万円ほどお渡ししますので、不足していたらまた払います」

「わかりました」


 岩塩をひとかたまり分受け取って、手付金を渡す。

 お金に関する説明は、ヤナさんに丸投げしておこう。


「お金の使い方は、ヤナさんが詳しいです。ヤナさんに聞いてみて下さい」

「これがおかねですか」

「きらきらしてる~」

「これはめずらしいわ」


 硬貨を受け取った平原の人たちは、硬貨それ自体がめずらしいからかキャッキャしている。


「このお金で、お店にある物と交換できますので、よろしかったらどうぞ」

「わかりました」

「どれにしようか、まような~」

「ちなみにおすすめとかあります?」


 お勧めか……。まあ、平原の方のライフスタイルからすると……。

 やっぱり保存が利く食べ物だよな。

 ラーメンが筆頭だけど、駄菓子でも飴玉とかはお勧めかな。


「あっちでも食べたラーメンや、この飴玉がおすすめですね」

「ラーメン! あるのですか!?」

「ええ。百円……このお金一枚で、ラーメン一食と交換できます」

「それはいいですね!」

「ラーメンあれば、たびのしょくじもらくちん~」

「あれはいいわ」


 ラーメンが交換出来ると聞いて、大喜びの皆さんだ。

 しかし、旅の食事も楽ちんと言っている割には、もうじゅるりとしている。

 今食べたいだけなのでは……。


「このラーメンなら、ここで食べられますよ。お湯を沸かして提供もしているので」

「たべます!」

「これください~」

「わーい!」


 やっぱり。



 ◇



「タイシ~。あんないおわったです~」

「あら、もんじゃ焼きがあるのですね」


 平原の人たちとラーメンを食べたり、ついでにもんじゃ焼きもごちそうしたりと間食しまくっていると、ハナちゃんとユキちゃんがやってきた。

 村の案内が終わったそうなので、ちょっくら話を聞こうか。


「二人ともお疲れ。お仕事の報酬としてもんじゃ焼きをごちそうするから、おいでませ」

「わーい! タイシありがとです~」

「それでは、私もごちそうになります」


 歩き回ってお腹も減ってきた頃だろうから、ちょうど良いおやつになるんじゃないかな。


「このもんじゃやきって、おいしいですね」

「たべたことないあじ~」

「おやつにいいわね」


 平原の方々も、美味しそうにちまちまと食べている。

 村のエルフ達も、何組かもんじゃ焼きを食べているので、割と人気メニューになっているな。

 ソースの味がウケているんだろうか。


「それじゃ二人の分はこれね」

「たのしみです~」

「いただきます」


 じゅわじゅわともんじゃを焼き始めると、ソースの良い香りが漂う。


「おれもたべるかな」

「いっしょにたべましょ」

「こっちがあいてるわ~」


 その香りにつられてか、一組、また一組とエルフ達がやってくる。

 コンロと鉄板には限りがあるけど、皆で仲良く共有しあっているようで、それほど順番待ちは出ていないな。


 もんじゃ焼きは上手く運用できているようで、一安心だ。

 じゃあ次は、ユキちゃんに村の感想を聞こうか。


「ユキちゃん、村はどうかな。足りてない物沢山あると思うけど」

「そうですね。さしあたっては、美容品がちょっと……」


 美容品か。そこら辺はあんまり考慮してなかったな。

 ……温泉でお肌つやっつやに喜んでいた女子エルフさん達だ。

 美容を充実させたら、なんかえらいことになりそうな気がするけど……。


「石けん一個で全部済ませるのはどうかと。シャンプーとかリンスとかを置いたらどうでしょうか?」

「ああ、そういえばそうだね。リンスが無いと、髪の毛ゴワゴワするし」

「そうですよ。髪の毛サラサラエルフ、良いじゃ無いですか」

「かみのけ、さらさらするです?」


 今までは石けんだけで何とかしてたから、ハナちゃんの髪の毛もちょとゴワゴワしている。

 衛生面を何とかするのが先だったから、シャンプーやリンスとかはあんまり考えてなかったなあ。


「そのはなしくわしく」

「よりうつくしくなれるのかしら?」

「かみのけさらさらって、きこえたんだけど」


 ……いつの間にか女子エルフさん達に取り囲まれている。

 ずずいと迫ってきていて、かなりの迫力だ。


「そうですよ。こんな髪の毛になります」

「「「キャー!」」」


 ユキちゃんは女子エルフさんたちに迫られても何のその、自分の髪の毛を流し目で、サラァっと流す。

 ショートボブだけど、確かにサラッサラで綺麗な髪の毛だ。

 でも、流し目は必要ないと思います。

 そして女子エルフさん達、髪の毛が綺麗になると聞いてキャーキャー言っている。

 実際に使用後の姿がそこにあるので、見た目で分かり易いからね。


「きれいなかみのけです~」

「こんなんなるの!?」

「かみのけサラッサラとか、すてき」

「もっとうつくしくなれるのね!」


 女子エルフさん達、大興奮だ。そして、ユキちゃんは髪の毛を褒められて嬉しいのか、しきりに髪の毛サラァをしている。

 サラサラさせすぎです。


「……こほん。それと、ブラシや鏡とか、爪切りとかも必要ですよ」


 調子に乗ってサラサラしていたのを見ていると、ちょっと恥ずかしそうな顔をするユキちゃんだ。

 照れ隠しの為か、若干早口で必要な物を列挙してくれた。


「そう言うのも確かに必要だね。あと他にある?」

「水仕事が多いので、ハンドクリームとかも要りますね」


 そうか。男やもめで色々やってきたけど、色々足りてないな。

 鏡とかブラシとか全然気にしてなかった。

 爪切りはド忘れだね。そうだね必要だよそれ。


 あと、ハンドクリームとかは完全に盲点だった。

 確かに、水仕事をすると手が荒れる。

 手が荒れすぎると手作業の効率も落ちてしまう。

 機械任せに出来ないこの村だからこそ、そういう物は必要になるな。


「……やっぱり女性視点から見るのは大事だね」

「お役に立てて、良かったです。他にも色々ありますが、まず必要なのはさっき言った物ですね」

「他にもあるけど、まずはそれ?」

「ええ。お洋服とか靴とかは、すぐに用意出来ないと思いますから。あと、温泉は男湯と女湯を分けたほうがいいかと思います」


 そうだな。服とか靴とかも、計画はあるけどまだ実行はしていない。

 その辺りはおいおいやっていこう。

 温泉の方は……大工事になるからすぐには無理だな。

 このあたりは高橋さんと相談しないと、どうにもならない。


 計画が必要だったり、工事が必要なのはまた考えよう。

 一先ずは、すぐにできることをやろうか。


「じゃあ、明日はそれらを調達しよう」

「はい。……あと、車は出して頂きたいのですが、タイシさんはお買い物には手出し無用です」

「え? 買い物手伝わなくて良いの?」

「……男性に買わせるにはちょっと、というものも有りますので……」

「……ソウデスネ」


 ……うん、そうだね。その辺りは全面的にお任せしよう。

 女手が出来て、良かった……。


「よくわからないけど、すごそうね」

「きれいになるわよ~」

「もっとうつくしく……うふふ、うふふ」


 女子エルフさん達は、美容に関する物が充実するとあって目が虚ろだ。

 虚空を見つめて、うふふうふふ言っている。


「おんなたち、めがこわい……」

「つうかせっけんでよくね?」

「かみのけサラサラとか、よくわからんなあ」


 そして、女性陣の必死さ……おっと、美の探求に理解の無い男性陣が余計な事を言うわけだ。


「なんてこというのよ」

「おめかしをひていするおとこのひとって……」

「これだからおとこは」


 今度は違った意味でキャーキャーと騒ぎになったけど、賑やかではある。

 男女間の認識違いはまあほっとこう。

 というか俺には仲介は不可能だ。皆さんで何とかして下さい。


「それでは、明日よろしくお願いします」

「うん。昼くらいにでようか」

「そうですね」


 ダメな大人達が揉めている横で、俺とユキちゃんは明日の予定を話し合うのだった。


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