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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第七章  エルフ交通
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第三話 洞窟ぬけたら


 子供達と駄菓子祭りをして居る最中(さなか)、親父が装備一式を持って戻ってきた。


「賑やかだな」

「おやつを調達してたら、なんかこうなった」


 駄菓子をほおばったりおもちゃで遊ぶ子供達を見て、親父もにっこりしている。

 駄菓子祭りは親父に引き継いで貰って、俺は装備の確認と準備をしようかな。


「俺は装備を確認して準備を始めるから、親父は子供達を見ていて欲しい」

「あいよ。じゃ俺も子供らにごちそうしようかね」

「喜ぶと思うよ」

「そんじゃ、行ってくるわ」


 小銭を財布から出しながら、親父がお店の方に歩いて行った。

 追加でおやつが食べられるからか、子供達もまたキャーキャー言って喜んでいるみたいだ。

 あっちは親父に任せて、俺は装備を確認して、リアカーに積み込むとするか。


「タイシさん、おてつだいしますよ」

「わたしも、おてつだいします」

「ハナもおてつだいするです~」

「おれらもてつだうぞ」


 ハナちゃん一家と、何名かの大人エルフ達が手伝ってくれるみたいだ。

 特にヤナさんとカナさんは、どんな装備を持って行くのか確認したいって点もあるだろうな。

 それにキャンプ道具とかは、向こうの環境でも使えるか確認できるから、ありがたいかな。


 とりあえず、安全確保のための装備から確認してもらおう。まずは帰還手段かな。

 これが一番気になるだろうし、真っ先に説明すべきことだよね。

 この迷子像を見てくれれば……まあ帰還手段については納得してくれると思う。

 緑と赤が対になっている、なんかの宝石で出来た……なんとなく猫っぽいかわいらしい石像だ。


「この緑と赤の石像が、一つ目の帰還手段となります」

「これは、なんだかきれいないしでできてますね」

「この石は宝石らしいです。ただどんな石かは実は知らないのですが、まあ綺麗ですよね」

「かわいいかたちしてるです~」


 なんかの宝石で出来た十センチくらいの石像だけど、この石像は地球産じゃないそうだ。

 大昔に来たお客さんから、お礼の品として貰ったと記録にはある。

 科学分析とかもしてないから、なんで出来ているのかは、全くわからない。


「これでかえってこられるの?」

「きれいないしのぞうとか、すてき」

「おれのじまんのきぼりにんぎょうは、ただのそれっぽいもくへんだったのだ……」


 綺麗な石像をみて、お手伝いに来てくれた方々も興味深そうに見ている。

 おっちゃんエルフは、自慢の木彫り人形を出してヘコんで居るけど……。

 ……まあ、その人形は出来が良いですけど、やっぱり夜中に動き出しそうです。


「これ、どうやってつかうのですか?」


 ヤナさんが石像を手にとって、しげしげと見ている。

 使い方は超簡単だ。手に持って歩けば良いだけ。


「この赤の石像を持っていると、どんなに適当に歩こうが……緑の石像のある場所にいつの間にかたどり着いてしまうんです」

「そんなこと、あるのでしょうか」

「実際やってみましょう。じゃあこの赤い石像を持って、田んぼに向かって下さい」

「わかりました」


 ヤナさんが赤い石像を手に持って、田んぼの方へスタスタ歩いていく。


「……あれ?」

「あや! おとうさんいつのまにです!」

「うしろからきた!」

「えええええ?」

「いや、たしかにたんぼのほうにむかったはずなのですが……!」


 ヤナさんを見送ったと思ったら、いつの間にか反対側から帰ってきた。

 これには皆さんもビックリしている。

 ヤナさん自身もなにが起こったのか理解しておらず、おろおろしていた。


「不思議でしょう?」

「ふしぎです~」

「……なにがなんだか、わかりません……」

「すごすぎて、なんもいえねえ……」

「ふるえる」

「おれのじまんの、とかいってるばあいじゃなかった……」


 その気持ちはわかる。気づいたら戻って来てるんだから。

 持ってる人間も、それを見ている人間もいつそれが発動したか全くわからない。

 謎すぎるアイテムだ。

 手に持っていないと発動しないみたいだけど、手に持っていると発動しまくって大混乱を招く、要注意アイテムでもある。


「私も良くわかってませんね。元々は迷子にならないようにする装備だったそうです」

「そうなんですか」

「らしいです。それがたまたま、べつの世界同士でも使えることが判明しまして」


 この石像を贈ってくれたお客さんが、元の世界に帰ったときに判明したとかなんとか。

 別れを惜しみながら異世界に戻るのを大々的に見送ったのに、数分後にまたこっちの世界に戻ってきちゃって……お互い気まずかった、とか記録にある。

 石像には対があって、間違えて渡したのが原因らしいけど。

 逆に言えば対を間違わなければ、凄く使えるわけだ。


「この石像の底に記号がありまして、この記号が同じ物と対になるそうです」

「なるほど」

「緑の石像をこちらに置いていけば、あちらの世界に行ってもいつでも帰ってこられるわけです」

「かえりたいとおもえば、すぐですか?」

「そうですね。実際、あちらでやることが済んだら、すぐさまこれで帰るつもりです」

「なるほど」


 村で二泊したら、この像を手に持って歩いて……すぐさま帰還する予定だ。

 これほど便利な物は無い。

 帰り道を気にする必要がないんだもんな。


 そして実際に像の不思議な効果を目にした皆さんも、納得したのかうんうんと頷いている。

 これで帰還方法その一は良いかな。

 じゃあその二を説明しよう。


「帰還方法はもう一つありまして、これです」

「とうめいでまんまるですね」

「これはきれいです~」

「はわ」


 直径五センチの水晶玉みたいな奴をみて、皆さん目をキラキラさせている。

 まあ確かに、見た目はとっても綺麗だ。傷一つ無い。


「これは使い捨てでして、こいつを割ると拠点に転送されるそうです」

「きょてん?」

「私の家に拠点がありまして、そこに転送されますね」

「タイシのおうちです?」

「うん。なので、この村に戻ってくるわけじゃないんだ」


 拠点はでかい石碑なので、庭に置いておくしかないし、気軽に持って来れない。

 あくまで緊急手段だし、こっちに帰ってこられるだけで御の字だと思えば良いかな。


 実はこれ、使い捨てで勿体ないので、俺自身は使ったことが無いんだよな。

 この道具が本当に機能するかどうかは、実地検証してないわけだ。

 ただまあ……ここは、これをくれた加茂井さんを信用しよう。

 高橋さんの世界で橋かけのお手伝いをするとき、加茂井さんが好意で作ってくれた品だ。

 親父は一回この道具の世話になったそうだから、まあ大丈夫だと思うけど。


「とりあえず帰還手段は以上ですかね」

「……まあ、かくじつにかえってこれそうですね」

「このせきぞう、すごいです~」

「あんしんしました」

「こっちって、こんなのがあるんだ~」

「ふしぎ~」


 帰還手段については安心してもらえたようだ。

 一部の方々は、こっちの世界では普通にある物だと思ってるぽいけど……。

 まあ、そこらへん説明すると彼らはこんがらがるだろうから、置いておこう。

 帰還手段はこれくらいにして、次は食料やらキャンプ装備を見てもらおうかな。


「次に、食料と寝泊まりする道具を確認しましょう」

「これ、たべものなんですか?」

「ぴかぴかしてる」

「かたそう」


 エルフ達はレトルト食品と缶詰を、不思議そうに見ている。

 カップ麺は駄菓子屋でも見てるし実際に食べても居るから、特に疑問は無いようだ。

 ただレトルト食品は箱から出してかさばらないようにしているので、パッケージ写真とかの情報がない。

 だから、これだけ見たらただの銀色の何かにしか見えないよね。


「これはどちらも、保存食品です。中には食べ物が入っています」

「ほほう」

「なかみがたべものなんだ」

「どういうたべものか、そうぞうもつかない」


 保存食と聞いて興味を持ったのか、ヤナさんが上から下からレトルト食品を見ている。

 ……いくら角度を変えてみても、中身は見えないので……。

 まあ、レトルトの食べ方を説明しようかな。


「今ヤナさんが持っている方は、お湯で温める物ですね」

「おゆですか?」

「そうです。これをお湯で沸かすと、ほかほかのカレーとかがすぐに食べられます」

「「「カレー!」」」


 カレーと聞いた皆さん、レトルトカレーを各々手にとって右から左から見始めた。

 うん、いくら見ても、中身はわかりませんよ……。


「タイシタイシ、このごはんもそうです?」


 お、ハナちゃんがアルファ化米のパッケージを持ってきた。

 これはお湯で温めるのではなく、お湯を注ぐやつだけど。


「これはお湯を注いでちょっと待つと、ほかほかごはんになるやつだよ。お店で売ってるラーメンと同じような物だね」

「そんなものが……」

「すごいです~! ごはんがラーメンみたいにたべられるです!」

「こっちのほぞんしょく、すごい……」

「あのかっちかちのおコメから、そんなんつくれるのか……」

「うまそう」


 皆さん、今度はアルファ化米を手にとってキャッキャし始めた。

 ごはんは炊くのが若干面倒だから、即席麺みたいに食べられるなら驚くかもな。

 まあその分高いんだけど……。加工に手間がかかるからね。


「ということは、これもおゆをつかうのですか?」

「それ、きになってた」

「かたそう」

「かたそうというか、じっさいかたいぞこれ」

「このえにかいてあるやつが、なかにはいってるのかな?」


 ヤナさんが缶詰を指さしている。

 これはまあ、暖めれば美味しいけど、そのまんま食べても良い奴だな。

 他のエルフ達は、缶詰を手にとって固さを確かめたり、パッケージ写真を見ている。


「これはそのままです。封を切ればすぐに食べられるものですね」


 缶詰はすぐに食べられるので、試しに一個開けて見せよう。

 このとり・たまごと大根煮の奴が良いかな?


「中身はこうなってます。これは卵と鶏肉と大根の料理ですね」

「おいしそうです~!」

「たまご!」

「こんなものが……」

「たまごがはいってるとか、すてき」

「たべたい」


 卵に首ったけになった皆さん、じゅるりとしながら缶詰をのぞき込んでいる。

 ……ちょっと味見をしてもらおうか。

 ものすごい食べたそうにしているし……。


「どうぞ、味見をしてみて下さい。美味しいですよ」

「よろしいので?」

「ええ。どうぞ」

「たべるです~!」


 どこからかスプーンみたいな食器を取り出して、ちまちまと缶詰を食べ始める。

 一個しか開けてないので、ほんの一口程度だね。


「たまご、おいしいです~」

「こんなのがあるんですね……」

「これらの保存食ですが、二周(にねん)位は保存できます」

「なるほど、これならたべものもだいじょうぶそうですね」

「これはいいな~」

「たまごがいつでもたべられるんだもんな~」


 食料も納得して頂けたようだ。

 もうちょっと卵を食べたそうな顔をしているけど、そこは我慢して頂きたい。

 あっちの世界で食べる食料なんだから、ここで食べちゃうと後で困るので……。

 ここはさっさと、キャンプ装備を説明して気を逸らそう。


「最後に調理や寝泊まりする道具です。これがテントで……」


 その後、実際にテントを幕営して見せたり、調理器具を見せたりとキャンプ道具の説明もして問題ないことを確認してもらった。

 用意したキャンプ装備について、あっちの世界でも通用する事がわかったので一安心だ。


 キャンプ装備については、テントとマット、それに寝袋の評判が良かった。

 これがあったなら、村から洞窟への移動ももっと捗ったかも、みたいな事を言っていた。


 確かに、これがあれば休憩でも睡眠でも、体力の回復が違う。

 たったこれだけの装備でも、あると無いとじゃ野宿での快適さが段違いだしな。

 もうエルフ達は野宿する必要が無いとはいえ、大変な思いを経験したので、こう言うキャンプ装備に興味深々だった。


 ……中でも、マイスターが一番キャンプ道具に反応していた。

 明らかに、森で泊まり込みをするときに使うだろうな。

 ただ、彼にこれを渡したら、ほとんど森で過ごすようになる懸念があるな……。

 あの人、泊まり込み観察が好きみたいだし……。

 すごい欲しそうな顔をしていたけど、ここは様子を見よう。

 せっかく家があるのに、家に帰らず森で暮らす仙人マイスターになる危険性があるからね。


 ……まあ、色々あったけどこれで準備は完了だ。

 あとはいよいよ異世界に行くのみ!


 ――明日の朝、旅立とう。


 ハナちゃんと一緒に、いよいよ異世界へと行くんだ。



 ◇



 ――翌朝、いよいよ出発の日。


 皆で洞窟に行き、見送ってもらう。


「それでは、行って来ます」

「いってくるです~!」

「ハナ、きをつけるんだよ」

「いってらっしゃい」

「がんばって~」

「ぶじかえってきてくれよ」


 皆に手を振りながら、洞窟に入った。

 ハナちゃんを肩車して、さらにリアカーをゴロゴロと引きながら洞窟を歩いていく。

 ヘッドランプを付けているので、洞窟内でもそこそこ視界は確保できているかな?

 ハナちゃんにもヘッドランプを付けて貰っているから、ハナちゃんがどこを見ているかすぐに分かるな。

 結構キョロキョロしているけど、大丈夫だろうか?


「ハナちゃん、大丈夫?」

「だいじょうぶです~」

「何か気づいたことがあったら、言ってね」

「あい~!」


 洞窟の中で声が反響する中、お互いを確認し合いながら慎重に進んでいく。

 そうしているうち、ふと……特徴的な匂いがしてきた。


「……確かに砂の匂いみたいなのがするね。これがその匂い?」

「あい。かれたもりのにおいです~」


 洞窟を進んで行くに従って、砂みたいな匂いが強くなってきた。

 なるほど、結構特徴的な匂いだから……勘違いという線はほぼ無いな。

 つまりは――洞窟の先はエルフ達の世界につながっていると見て、良いんじゃ無いかな?


「ハナちゃん達の居たところに、つながってるぽいね」

「それっぽいです~」


 お互い確信を強めながらも、やっぱり慎重に歩いていく。

 洞窟内はひんやりとしていて、過ごしやすいから疲れも無い。

 若干の緊張があるだけ。ちょっとドキドキだ。

 そして、ハナちゃんもドキドキしているのが伝わってくる。


 そうしてしばらく歩いていると――先の方に光が見えた。


「あっ! でぐちがみえたです!」

「ほんとだ、あと少しだね」

「あい~! あとすこしです~」


 二人でドッキドキしながら出口に向かう。もうお互い無言だ。

 洞窟内には、リアカーの荷物がゴトゴトしている音だけが反響する。


 あとちょっと……あと数メートル……。


 ――そして、出口をくぐり抜けた!


「出た!」

「でたです~!」


 暗い洞窟から明るい場所に出たので、まぶしさで一瞬目がくらむ。

 そして、すぐさま目が光になれて、異世界の風景をとらえた。


「タイシ! ここはハナたちがいたところです~!」


 洞窟を抜けた先、ハナちゃん達が居た場所で確定だ。

 そしてハナちゃんは久々の故郷だからなのか、かなり興奮している。

 足をぱたぱたさせて、故郷の森に見入っているようだ。


 ――枯れてしまった、かつての森を。


「これが……枯れた森なんだね?」

「あい。もりがかれて、こうなったです……」


 洞窟を抜けた先、ハナちゃん達が住んでいた森。

 ある日突然枯れ始めたというそこは、全てが灰色だった。


 木々や植物が、その形を残したまま――灰色に、なっていた。



 ◇



 ……しばらく二人で枯れた森を眺めていたけど、なんでこうなったのか全く分からないな。

 森が枯れる前とかはどうだったのか、ちょっと聞いてみよう。


「森が枯れる前はこうじゃ無かったんだよね?」

「あい。むらにあるもりと、おなじだったです」


 村にある森でさえ、豊かな植生と緑があふれていた。

 こっちの森はその何百何千倍という規模なのに、ごく短い期間でこうなっちゃったのか……。


 ……こんな所を抜けて、良く村にたどり着いたな。

 心細かったろうに。


「……ハナちゃんや他の皆は、凄く頑張ったんだね」

「あい~! がんばったです~!」


 エルフ達があの村にたどり着けて、ほんとに良かった。

 一目見ればわかる。ここに人は住めない。

 生き物も皆どこかに行ってしまったのか、かつて森だったそこは、静けさに満ちていた。

 森が枯れたと言うから、地球での枯れた森を想像していた。

 でもこれは違うな。

 植物が枯れるというより――灰色に固まった、と言うべきか。


「こっちの木が枯れると、こうなるの?」

「きがかれても、こんなふうにはならなかったです」

「こうなったのは初めて?」

「あい。はじめてです~」


 灰色になって枯れるなんて、初めてだってことか。

 じゃあなんで今回はこうなったかといえば……うん、まったくわからないな。


 まあ……エルフ達にもわからなかったことを、俺が今ちょっと話を聞いただけで解明できるわけもないか。

 ここは地道にやるしかない。サンプルを採取して、それを分析していこう。


「それじゃハナちゃん、ちょっとお仕事をするよ」

「あい! おしごとするです~」


 ハナちゃんに肩車から降りてもらって、とりあえずはサンプル採取のお仕事をしよう。

 大気採取カプセルは……と、これか。


「タイシ、なにするです?」

「これから、このあたりにある空気や枯れた木なんかを集めるんだよ」

「あつめてどうするです?」

「あっちに帰ってから、じっくりと調べるんだ」

「しらべるですか。なんだかすごそうです~」


 ハナちゃんは、いろんな採取キットを珍しそうに見ている。

 まあ、これはマニュアルを読まないと使い方がわからないから、俺がやるしか無い。

 ハナちゃんには見ていて貰って、ちゃっちゃとサンプル採取を終わらせよう。

 一時間ほどかかるから、その間はおやつでも食べて待ってて貰おうかな。


「それじゃハナちゃん、ちょっと時間がかかるから、おやつでも食べて待っててね」

「おやつ! たべていいです!?」

「うん。計画的に食べるんだよ」

「あい~!」


 ハナちゃんはいそいそとおやつを取り出して、おいしそうにはむはむと食べ始めた。

 ……計画的に食べてね。計画的にね。



 ◇



 一時間ほど作業をして、とりあえず目標のサンプルは採取できた。

 またべつの場所でもサンプル採取はするけど、ここではこれ位で良いだろう。

 ここでやることはもうないから、村に向かうとするか。

 俺の方は準備ができているけど、ハナちゃんはどうかな? 移動はできるだろうか。


「お仕事が終わったから、村に向かおうと思うけど大丈夫?」

「だいじょうぶです~!」


 おやつを食べて元気いっぱいだな。それじゃあ、道案内してもらおうか。


「じゃあハナちゃん、道案内お願いね」

「あい~! タイシかたぐるまするです~!」

「うん。ほらおいで」


 かがむまでも無く、ハナちゃんはひょいっと登ってきて肩車体勢になった。

 このまま走って行くわけだけど、なるべく揺らさないようにして走ろうか。

 しがみついているのも、体力は要るだろうしな。


「それじゃ走って行くけど、まずはどっちに向かえば良いかな?」

「そこにみちがあるです。みちがなくなるまでそのままいけばいいです」


 道がある……あれか。獣道みたいだけど、まあまあ幅もあるしリアカーを引いたまま走って行けそうだな。


「こっちの方向で良いのかな?」

「いいです~」


 よし、方角もわかった。じゃあ、走りますかね。


「それじゃ走るけど、疲れたらすぐに言ってね。休憩するから」

「あい。きをつけるです」

「じゃ行くよ~!」

「あい~!」


 ハナちゃんが進む先を指さしている。

 なるべく揺らさないようにして、なおかつそれなりの速度で走ろう。


「あや! ぜんぜんゆれないです!」

「乗り心地はどうかな?」

「かいてきです~! しかもはやいです~!」


 とりあえず時速十五キロ程度かな? それくらいの速さで走ってみた。

 舗装路じゃ無いしリアカーがあるから、これくらいが限界かな?

 ハナちゃんも今のところは乗り心地に問題ないらしく、楽しそうにしている。


「大丈夫そうだから、このまま行くよ!」

「あい~。これなら、すぐにむらにつくです~」


 そんなに急ぐ事も無いけど、休憩含めて三時間もあれば村に到着するかな?

 村に着いたら、テントを張ってのんびりしよう。

 水も食料も沢山あるし、かつてのエルフ達の村を見て回ろう。

 ……森は灰色に枯れちゃってるけど、村はまだ残っているはずだ。


 なにか面白いもの、あると良いな。



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― 新着の感想 ―
[一言] 荒れた道でも、ハナちゃんをリヤカーに乗せ、リヤカーを押すほうが安定して走れます。曳いていては積み荷の状態に気付かない時がある。
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