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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第四章  エルフと動物達
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第九話 案の定

 仕事の合間に、村にちょっと顔をだしたら変な動物が居た。

 あのフクロイヌという動物は、とても人懐っこくで可愛かったけど、まさか有袋類とは……。

 あっちの世界では、どういう生態系なのかはよくわからないけど、興味深い点ではある。

 エルフ達もあの動物を可愛がっているみたいだし、それ自体は特に問題には感じなかった。


 問題は――追加でお客さんが来たかもしれない点だ。

 念のため、数日かけて親父と一緒に過去の記録を調べてみたけど、どこにも見当たらない。


「親父、やっぱり後から追加で来た記録って、無いよな?」

「ああ、無いな。基本的には、やってきた初日に出会うので全員だ」

「だよね……。あの『種』だって、エルフ達は存在を認識してた」


 お客さん全員がその存在を認識しておらず、かつ一か月後に新顔追加なんて事例は、どこにもなかった。

 ……エルフ達の後をトテトテついてきたけど、そのまま山の中で潜んでいた、とも考えられるけど……。

 まあ、それならそれで、いつものパターンか。

 春先でろくに食料がない山の中で、あの「のほほん」とした生き物が、一ヶ月以上も耐えられるかどうかは怪しいけど。

 とりあえず「実は最初からいたよ」パターンはこれ以上考える必要は無いな。

 ようこそいらっしゃい! で終わる話だ。


 では次に「後から来たよ。よろしくね」パターンだ。

 まずは、追加で来た場合「どうやって来たか」が重要になるな。

 基本は洞窟をくぐってくるはずだ。そして全員が村に到達したら「門」は閉じる。

 今まで異世界とつながっていたそこは普通の洞窟にもどり、行き来が出来なくなる。

 ……そういえば「門」って確認したかな?


「なあ親父、洞窟の『門』って閉じてたっけ?」

「そういや確認してないな」


 今までのパターンに慣れ過ぎていて、確認を忘れてたな。今度確認しておこう。

 外からでも中の行き止まりが見えているならば、「門」は閉じていて普通の洞窟に戻っていると判断できる。ちょっと行ってみてくるだけなので簡単なお仕事だ。


「じゃあ俺が確認しておくよ」

「頼んだ」


 さて「門」が開きっぱなしだったら、それはそれで解決だ。そこから来たんだろうしな。

 ても、開きっぱなし、というのは凄くまずいな……。


 何が来るか、いつ来るか全くわからないから、計画が上手くたてられなくなるよな。

 ようやく、なんとかエルフ自立計画に目途がついたのに、ここで追加のお客さんが来てしまったら……。

 来てしまったら……。


 ――あれ? 楽しそうだな、それ。


 常にドタバタしてて、もっと村がにぎやかになるよねこれ。

 今でさえすごく楽しいのに、もっと楽しくなるとか、素敵。

 開きっぱなしでも問題なかった。


 よし! これで問題解決。……したのかな?

 

 ……まあ、俺一人の手では余るかもしれないから、助っ人でも頼もう。そして困ったら泣きつこう。

 なんなら、手伝ってくれる人に丸投げする外道技も使っちゃおう。


 とりあえず助っ人として思い浮かぶのは――元お客さん達だ。

 こっちの世界に残った元お客さん達なら、割と良く手を貸してくれる。

 今や頼れる仲間になったあの人たちに、助っ人をお願いしよう。


 とりあえずは、近所からあたろう。まずは高橋(たかはし)さんだな。

 高橋さんには俺から電話するとして、他は親父にツテをあたってもらえばいいかな。

 とりあえず提案しとくか。


「なあ親父。助っ人頼もうぜ」

「そんなにヤバい状況なのか?」

「別にヤバくはないけど、人手は居るかもしれない」


 それに、せっかく面白くなりそうなのに、仲間外れは良くないよな。遠慮なく巻き込むつもりだ。


「ヤバくないのに助っ人頼むのか?」

「逆に『こんな面白い事、黙ってるなんてひどい』って言われると思うよ」


 皆面白いこと大好きだからな。たぶん率先して巻き込まれに来ると思う。

 親父はそれを聞いて、納得したような顔で言った。


「……確かにそうだな。じゃあいいか」


 なんせ俺より付き合い長いから、良くわかってらっしゃる。これで親父の許可も出た。

 親父には、まず高橋さんに話を通す考えでいることを告げとこう。


「さしあたっては高橋さんに電話するよ。家近いし」

「じゃあ高橋さんは大志に任せた。俺もいくつか当ってみるから」


 いくつかか。いつも手伝ってくれる加茂井(かもい)さんちとかかな?

 ……加茂井さんちは何か謎なんだよな。魔法みたいなことを普通に実行して、問題解決する。ある意味、ド◯えもんみたいな家だ。

 そのほとんどは無償で協力してくれるけど、たまに条件がついてきたりする。その基準が良くわからない。

 そもそも連絡先も知らない。何処に住んでいるんだろうか? 聞いてみるかな。


「いくつかって加茂井さんちとか?」

「ああ、さしあたってはそうだな」

「加茂井さんってどこに住んでるの?」

「しらん」


 親父も知らないのかよ! それで連絡つけられるの?


「じゃどうやって連絡つけてるの?」

「電話だけど」


 電話はあるんだ。いや、なんで電話番号知ってるのに住所は知らないのか。


「なんで住所はわからないの?」

「携帯電話の番号だしな。あと住所は教えてくれないんだよ。昔っからだな」


 意味がわからないな。……まあ、良くわからない家ってことか。うちも人の事は言えないけど。


「そのうち大志がドラえ――おっと! 加茂井さんとのお付き合いを引き継ぐんだから、今の内に慣れとけ」


 今ド◯えもんって言いかけた! 親父も似たような印象もってる!

 ……まあ、そういう家だと思っておけば良いか。もう考えるのはやめよう。


「……いまさら考えてもしょうがないか」

「ああ、俺も考えるのはやめてる。大志もそうしとけ」


 付き合いが長いのに、住んでいる場所が分からない。いまいち不安になるけど、昔からそうならもう、そういうものなんだろうと思うしかないな。

 よくわからないドラ……加茂井さんは親父に任せて、俺は高橋さんに連絡しよう。


「じゃ、俺は高橋さんに電話するわ」

「あいよ」


 加茂井さん云々は考えないことにしよう。さて、高橋さんは家にいるかな?


『お、大志。どうした?』


 ……数コールで出た。家にいたか。今日は休みの日だったのかな?


「あ、高橋さん? 今時間あるかな」

『いいぜ。ちょうど暇してたところだ』


 暇してるなら、遠慮はいらないな。早速切り出そう。


「今さ、村にお客さんが来てるんだ。その手伝いをしてほしくて」

『お! とうとう来たんだな。で、俺は何を手伝えば良いんだ』


 もう既にノリノリな高橋さん、手伝う気満々だ。しかし、具体的に何がっていうのはまだ決まっていない。そのまま伝えよう。


「今の所特にはないんだけど、話だけは通しておきたかったんだ」

『わかった。何かあったら駆けつけるよ』

「ありがたい。お願いできるかな」

『任せとけ』


 心強い返事を貰えて、一安心だ。これで高橋さんは大丈夫だな。


「じゃあまた電話する」

『待ってるぜ』


 高橋さんとの通話を終えたので、やることが無くなった。次は何しようかな。

 ……そういえば、記録を調べるのに忙しくて、しばらく村に顔を出してなかったな。

 ちょっと様子を見てくるか。


「親父。俺、ちょと村の様子をみてくる」

「そうだな。最近顔だしてなかったしな。あちらさんも寂しがってるんじゃないか?」


 そういえば、ハナちゃんは寂しそうだったな。俺もハナちゃんの顔、見たくなってきた。


「そうかもね。俺もエルフ達の顔、久々に見てくるよ」

「そうしてやれ」

「じゃ、行ってくる」

「気を付けてな」


 さて、村に向かうとするか。今の時間なら、道も空いていて早く着けるだろう。



 ◇



 道が空いていたので、四十分程で村に着いた。

 着いたのだけど……。


 広場に入ると、エルフ達がごめんなさいをしていた。

 ……もうこの時点で嫌な予感メーターが最大値を示している。

 嫌な予感というか、既に見えているというか……。

 とりあえず、ヤナさんに事情を説明してもらおう。


「ヤナさん、これは一体……」

「もうしわけないです……」

「「「ごめんなさい~」」」


 ヤナさんと一緒にエルフ達もごめんなさいをする。


「とりあえず、何があったか教えて貰えます?」

「はい。すうじつまえからの、はなしになるんですが……」


 ヤナさんが、この状態になった事情の説明を始めた。


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