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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第四章  エルフと動物達
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第五話 ついてきちゃったです~


 お肉祭りの翌日になりました。

 何とか起きてきたエルフ達は、若干胃もたれしてるご様子。


 そんなエルフ達と大志親子は、朝風呂を堪能した後、朝食兼昼食を食べます。

 ひとっ風呂浴びて調子が出てきたエルフ達は、モリモリ食べて元気いっぱいになりました。

 なかなか回復の早い方々です。


 もう大丈夫と判断した大志は、これからの事を相談することにしました。


「わたしたち、これからちょっとしごとがたてこんでいまして」

「タイシさんのお仕事ですか?」


 仕事が立て込んでいると聞いて、ヤナさんが反応します。


「のうさぎょうがありまして、しばらくはいそがしいんですね」


 これから田植えの本格的な時期に入ります。大志もそちらに専念しなければいけませんでした。


「農作業ですか」

「ええ。ですので、しばらくはちょいちょいとかおをだすくらいになります」

「分かりました」


 顔を出すくらいしかできなくなるので、しばらくのあいだ、大掛かりな援助は無さそうですね。

 色々計画しているものは、農作業がひと段落ついてからになりそうです。

 そして大志がこれから忙しくなると聞いたハナちゃん、やっぱり寂しそうです。

 一緒に居られる時間は減ってしまいますが、どうしようもありません。

 それがわかっているハナちゃんは、ぐっと我慢をしました。


「タイシ、お仕事頑張ってくださいです~」

「うん。なるべくはやくかたづけるから、まっていてね」

「あい」


 そうして、車に向かう大志とお父さん。途中で、大志が何かを思い出しました。


「あ……そういえば、なんかきかなきゃいけないことあったな……なんだっけ……」


 しかしいまいち思い出せません。やがて思い出すのをあきらめた大志は「まあいいか」と特に気にしないことにします。

 そして車に乗った大志は、皆に挨拶をしました。


「それではみなさん、またこんど」

「今回も有難うございました。お待ちしています」

「待ってるです~」


 小さくなっていく車に向かって、手を振るエルフ達。

 こうして、エルフ達の生活を大きく改善させた、大志とお父さん。おうちに帰っていきました。

 また、エルフ達だけの生活が始まります。


 はてさて、今度こそ平穏無事に過ごせるかな?



 ◇



 数日後。


 狩猟でお肉が手に入るようになってから、エルフ達はおやつに干し肉が食べられるようになりました。

 ちょっと小腹が減ったときに、さっと食べられて大変便利です。

 携帯食として、皆干し肉を持つようになりました。


 そんなある日、ハナちゃんが農作業を終えた後、森で息抜き兼休憩をしているときの事です。

 

「おやつ、食べるですか」


 森で休憩していると、小腹が減ってきました。結構な大きさの干し肉を取り出したハナちゃんは、美味しそうに干し肉をかじかじしました。おやつが食べられるようになったのは、良いことです。

 そうしてしばらく干し肉を食べていると――ふと、後ろから変な音が聞こえて来ました。


 きゅるるるる。

 きゅるる。


「……あえ?」


 どこかで聞いた音。あわよくば自分がいつも出していたその音の方に、おそるおそる振り返るハナちゃん。

 そこには――黒い獣がいました。


「ギニャ~……」

「ニャ~……」


 黒い毛がふっさふさとした、イヌのような、ネコのような、クマのような……奇妙な生き物です。たとえて言うなら、ビントロングに似ているでしょうか。

 一匹は中型犬くらいの大きさ、もう一匹はそれより二回り小さい感じです。

 そんな二匹が、ハナちゃんの干し肉を食べたそうに見ています。よだれがダラダラです。

 それを見たハナちゃん、びっくり顔で言いました。


「あや~! フクロイヌがいるです~!」

「ギニャ~…」

「ニャ~…」


 ハナちゃんのびっくり声にお返事するかのように、フクロイヌも鳴きました。しかしなんだか元気がありません。どうしたのでしょうか?


 きゅるるるる。

 きゅるきゅる。


 フクロイヌから変な音が聞こえてきます。これは腹の虫が鳴っているようですね。

 それを聞いたハナちゃん、フクロイヌに問いかけます。


「おなか空いてるですか?」

「ギニャ……」


 力なく返事をするフクロイヌ。しっぽはしなしな、耳もへなへなしています。これはだいぶおなかを空かせている様子。

 そんなフクロイヌを見たハナちゃんは、干し肉をあげることにしました。


「ほら、これ食べるですよ~」

「ギニャッ!」

「ニャッ!」


 すぐさま干し肉にかじりつくフクロイヌ達。ふわふわのしっぽをふりふり、凄い勢いで干し肉を食べていきます。


「沢山食べるです~」


 追加で干し肉をあげるハナちゃん。今日のおやつは全部あげちゃいました。

 自分もおなかが空いて困ったことがあるだけに、おなかを空かせたフクロイヌを見過ごせなかったのです。

 こうして、フクロイヌが干し肉を食べる姿を、しばらく見守りました。


 しばらくして、干し肉は全てフクロイヌが平らげました。おなかが膨れてご機嫌のフクロイヌ、ハナちゃんの前に並んで、しっぽをふりふりしています。


「おなか一杯になったですか?」

「ギニャ~ン」

「ニャ~ン」


 ハナちゃんが声をかけると、ありがとうとお礼を言うようにフクロイヌも返事をしました。

 もう大丈夫そうですね。最初見た時より、元気があるように見えます。

 フクロイヌが元気になった様子をみて安心したハナちゃん、このヘンテコな生き物を見て思いました。


「このフクロイヌ、どっから来たですか?」


 この生き物、あっちの森では割と良く集落に出没し、エルフ達とさんざん遊んでいくという変わった生き物なのでした。

 あっちの森にしかいなかったこの獣が、こっちに出没したのです。

 一体どうやって、ここまでたどり着いたのでしょうか。


「……考えてもわかんないです」


 すぐさま思考放棄するハナちゃんでした。考えるのは諦めて、フクロイヌと遊ぶことにしました。

 なでなで、こちょこちょ。フクロイヌとじゃれあいます。


「ギニャッ、ギニャッ」

「ニャニャ~ン」


 フクロイヌは遊んでもらえて大喜びです。ハナちゃんと二匹は、楽しく遊んだのでした。

 

 そうして一時間くらい経った頃でしょうか。

 フクロイヌと遊んでいたハナちゃんは、ぴょこっと立ち上がって言いました。


「そろそろ、おうち帰るです」


 そろそろ帰らないと、おうちの人が心配します。

 ハナちゃんはしっぽをふりふりしているフクロイヌ達に背を向け、おうちに向かってぽてぽて歩いていきました。


 ぽてぽて。トテテテ。


「……あえ?」


 後ろを振り返ると、フクロイヌ達がしっぽふりふり、ハナちゃんの後についてきています。


「ついてきちゃだめですよ?」

「ギニャ」

「ニャ」


 ついてこないようにフクロイヌに言い、またおうちに向かってぽてぽて歩きます。


 ぽてぽて。トテテテテ。


「あえ?」

「ギニャ~」

「ニャ~」


 フクロイヌはやっぱり後をついてきます。ぽてぽて、トテテテ。ハナちゃんがちょっと歩くと、フクロイヌもちょっと歩きます。


「あ、あえ~。ついてきちゃだめですよ~」

「ギニャ~」

「ニャ~」


 困るハナちゃんと、しっぽふりふりのフクロイヌ。

 しばらくそんなことを繰り返しているうちに――とうとうおうちに着いてしまいました。


「あえ~……おうちまでついてきちゃったです。どうしようです~」


 おうちの前で「あえ~、あえ~」とわたわたするハナちゃん。フクロイヌもハナちゃんの後に続いて、右に左にトテテテ、トテテテ。

 ハナちゃんに遊んでもらっていると思っているのか、フクロイヌはとっても楽しそう。

 そうしておうちの前でわたわたトテテテしていると、騒ぎを聞きつけたのかヤナさんがおうちから出てきました。


「ハナ、どうしたんだい?」

「おとうさ~ん! これどうしたらいいです~」

「ん? これって?」


 ハナちゃんの後ろを見るヤナさん。そこには、二匹のフクロイヌがしっぽをふりふりしていました。

 それを見たヤナさん――愕然。


「な、何故ここにフクロイヌが……」


 ヤナさんがぷるぷる震えはじめました。それもそのはず、フクロイヌは、ヤナさんがある意味最も恐れる獣だったのです。

 フクロイヌ達は、ヤナさんを見るや否や飛びかかりました!


「ギニャッ!」

「ニャッ!」

「う、うわー!」


 ヤナさんぴんち! フクロイヌにのしかかられて尻もちをついてしまいました!


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