第十二話 わきゃわきゃドワーフ隊
荒野の卵はなんとかしたので、お次は海底に沈むお宝探しの番である。
「カニってやつが、たべられるみたいさ~」
「たのしみさ~」
「フネがてにはいるかもさ~」
「わきゃ~」
ただ百人募集したのだが、結局二百人くらい集まってもうた。
「つれてきたさ~」
「フネがおやすくなるっていったら、ドバっとあつまったさ~」
「みんなフネがほしいのさ~」
偉い人ちゃんたちにお願いしていた人たちは、おっしゃるとおりドバっと集まったわけで、みなさんもうわっきゃわきゃである。
「あ~、この人数だと、用意した船には八人で乗ることになりますが……」
「それくらい、なんでもないさ~」
「がんばるさ~」
「おさがしするさ~」
百人を想定して、船は二十五隻を用意してあった。四人乗りで現地に向かう想定だったのだが……まあ言うとおり、八人乗れることは乗れる。
ただ、休憩時間にのんびり船の上で過ごすってのは厳しい。そこは、時間をずらすなりして対応しよう。
みんなで一斉に休憩しなければ良いのである。物資輸送は手持ちのゴムボートだけでは足りないので、イカダでも組むかな。
「とりあえず五日もお仕事して頂ければ、船は半額近いお値段でお譲り出来ますので」
「そのおねだんなら、うちらもフネがかえるさ~」
「たのしみさ~」
「わきゃきゃ~」
というわけで、日当分は船購入代金の補填で補うというシステムだ。食糧持ち込みの場合は、その分も加味される。
というか現地で海産物の調達が出来るため、みなさんほとんど現地調達するおつもりである。たくましい。
こちらは飲料水やら船上で食べるインスタント食品をほどほどに、という感じだね。
ドワーフちゃんがいれば、水を凍らせて悪くさせないまま運べたり、船の上でお湯も沸かせたりするので、大変に便利ではある。
その分のお仕事代金も船購入費用の補填に使うので、今回のお仕事で憧れのマイシップを購入出来る子は大勢出るだろう。
「ひとまず初日は私たちも参加しますので、よろしくお願いします」
「ハナたちも、いくですよ~」
高橋さん率いるリザードマンチームが指揮をしてくれるとは言え、最初から丸投げは良くないと思い、初日だけはいつものメンバーも参加だ。
おひい様とお供さんたちも海岸ベースキャンプで、お食事の準備やら海の監視やらネコちゃん便を用いた村との連絡やらを担当してくれる。
とりあえずフルメンバーで初日はお試しして、問題点があれば都度改善ってところだ。
「それでは、明日からお仕事です。みんなで力をあわせましょう!」
「「「おー!」」」
さあ、いよいよ大詰めだ!
◇
翌日、マイクロバスを使ったりフクロオオカミ便をフル運用したりで、なんとか海岸に到着する。
「うみ! これがうみなのさ~!?」
「すごいさ~!」
「どこまでも、つづいているさ~!」
「わきゃっきゃきゃ~!」
動員した探査ドワーフちゃんたちは、リューンの海を見てしっぽをぷるぷるとさせている。初めて目にした大海原に、感動しているようだ。
「わきゃ~ん、おちついたら、フネをよういするさ~」
「うちらがひきいるさ~」
「おまかせさ~」
捜索隊が水平線を堪能する様子を見て、偉い人ちゃんたちも準備は急かさず、しばらくは感動に浸らせてあげるようだ。
この感動がお仕事の原動力になってくれれば、俺としても幸いかな。
「それじゃ拠点の準備すっか」
「そうだね、さくっとやっちゃおう」
俺や高橋さんは、その間にちゃっちゃとベースキャンプ設営を行う。前にやったから、もう慣れた物だね。
「わきゃ~ん、こっちのじゅんびができたさ~」
「あとは、こぎだすだけさ~」
「ばっちりなのさ~」
ベースキャンプを設置している間に、ドワーフちゃんたちも準備は終えたようだ。海岸にぷかぷかと船が浮かんでいて、いつでもオーケーな状態だね。
「それでは、みなさん船に乗り込んで行きましょうか」
「「「おー!」」」
こうしてスムースに準備を終えて、俺たちは大海原に乗り出す。と言えばかっこいいけど、探すのはほぼ沿岸域だ。そんなに沖に出るわけでも無い。
「わきゃ~! これはよいフネさ~!」
「やねつきってのが、たまらんさ~」
「あこがれのフネさ~!」
海竜ちゃんチームに引っ張られる船上では、ドワーフちゃんたちがもう大はしゃぎだ。このフネと同じモデルが、いずれ半額で購入できるからかな?
まあ製造は間に合っていないので、しばらくお待たせすることにはなるけど。
でもちょうどドワーフィンは夜の時期なので、昼になる前に数を揃えれば良いね。時間的猶予があって助かった。
「こっちだよ! こっちだよ!」
「もうすぐだよ! もうすぐ!」
「きゃい~」
捜索ポイントまでは、妖精さんがきゃいっと案内してくれるので、迷うことも無い。
キラキラ光って目立つため、追跡も簡単だ。
「ここが、たんとうはんいさ~」
「うちらは、ここをさがすのさ~?」
「そうさ~」
そうしているうちに、早くも第一ポイントへと到着した。ブイがぷかぷかと浮いており、偉い人ちゃんの指揮にて一チームが捜索活動に移る。
「おっし、お前らはここを護衛な」
「わかりました」
「ぎゃう~」
高橋さんも早速指揮をして、護衛リザードマンと海竜ちゃんに指示を出す。
一回目はこうして順番にポイントを目指し、偉い人ちゃんや高橋さんの指揮にてそれぞれの担当範囲を指定だ。
次からは、そのリザードマンがチームリーダーとなり、自ら担当ポイントにドワーフちゃんを引き連れ向かって貰うことになる。
「じゃ、次の場所に向かおう」
「いくです~」
こうして次々に担当エリアを割り当て、捜索活動を始めて貰う。ドワーフちゃんは想定していた人数の倍を投入しているため、負担も少ないだろう。
あとはおまかせで、俺たちはひとまず海上にてパトロールのお仕事が始まる。
「こちらアルファ、全部隊が担当範囲の捜索を開始した。どうぞ」
『こちらブラボー、了解した。どうぞ』
無線で連絡すると、親父が応答だ。それぞれのチームに無線は支給してあり、チームリーダーリザードマンが通信担当となっている。何かあれば、連絡が入ってくるだろう。
「それじゃ、自分たちは巡回のお仕事を始めよう」
「あい~」
「まずは、ここのチームですね」
さっそく巡回のお仕事を開始だけど、ユキちゃんの言うとおりまずは目の前で捜索するチームを見守ろう。一番最後にポイントを割り当てられた部隊だ。
ここでしばらくお仕事した後は、近い順にそれぞれのチームを見回る。
ほんとは待機しているだけで良いのだけど、俺たちには護衛リザードマンと海竜ちゃんが直掩していないため、どこかの捜索ポイント上にはいないと海に入れないのだ。何がいるかわかんないからね。
「海底を半径数百メートル探すのは、大変そうですね」
「大勢での作業ですが、統率が取れてます」
「良い感じだね。ありがたいね」
「けっこうな早さだよ~」
魔女さんとドラゴン三人娘は、早速シュノーケルで海中を覗いているようだ。ドワーフちゃんたちのお仕事ぶりを見て、色々な感想を述べている。
でもなんだかんだで楽しいのか、ドラゴンさんたちはくねくねしているね。
「ハナちゃんたちも、海を堪能してて良いよ」
「そうするです~」
(わたしも~)
「では、お言葉に甘えます」
特にやることも無いというか、海底探査はお任せなので船上チームはシュノーケリングで水中に目を光らせて貰い、俺は無線があるので待機だ。
一時間くらいしたら、別のポイントへ移動しようかな。
「あや~、でっかいおさかな、いたですね~」
(のんびり~)
ハナちゃんは神輿と一緒にぷかぷか浮きながら、ボートの近くでのんびりとしていた。
「あ、そっちに行ったらダメですよ」
「あら」
ユキちゃんは流されるドラゴンさんの肩を掴んで、護衛範囲外に出ないよう制御してくれている。こういう所とか、良く気が利くんだよね。ありがたやありがたや。
こうしてシュノーケリングしたりポイントを変えたりして、色々巡回していく。
「わきゃ~、なんかぼうに、こんなんくいついたさ~」
「あっらー! これも美味しいやつですよ」
「みためはエグいけど、おいしいのさ~?」
「焼くとふわっふわになって、淡泊で美味ですよ」
「それはよさそうさ~」
たまに新たな食材が調達出来たりもする。なんだかウツボみたいなやつが食いついたようで、シカ角さんによると美味らしい。今日の夕食に一品増えた瞬間だった。
「こちらアルファ、現状成果無し、天候はどうか。どうぞ」
『こちらブラボー、天候問題なし。どうぞ』
ベースキャンプと通信しながら、午前の部は成果無しで終了だ。とりあえず他チームと無線で連絡を取り合い、いったんベースキャンプに戻って昼食を摂る。
今日のお昼は焼きそばだったが、ドワーフちゃんたちにオオウケだった。
『こちらでるた、たまごみつけました。どうぞ』
そして午後、護衛リザードマンから無線通信が入る。どうやら、卵を見つけたようだ。
「こちらアルファ、引き揚げ船は三番海域へ向かってくれ。どうぞ」
『こちらチャーリー、了解した。どうぞ』
すぐさま無線で指示を出し、チャーリーチームの高橋さんに引き揚げ要請を行う。
玉掛けの資格を持っている高橋さんが、サルベージチームリーダーなのだ。
こんな感じで初日の作業を粛々と行い、その結果は――。
「今日は一個発見出来ました! 初日でこれは上々ですよ!」
「わきゃ~、そういってもらえると、うれしいさ~」
「おやくにたてたさ~」
「なんとかなりそうさ~」
捜索初日に見つかるとは、幸先が良いとも言えた。ここぞとばかりに、捜索ドワーフちゃんたちを褒めまくる。
まあ、見つからなくても良い仕事してたって感じで褒めるつもりだったのだけど。
「タイシタイシ、このたまごはどうするです?」
「とりあえずそのままにしておくよ」
「そのままです?」
「ちょっとね」
というのも、運んだ感触で「これはカラかな」って感じがするのだ。せっかく成果を上げたドワーフちゃんたちも、中身がからっぽだとガックリしてしまう気がする。なので数が集まったらシャッフルし、誰がいつ見つけた卵なのかを曖昧にしてしまおうと思う。
四人のお供さんには申し訳ないのだけど、数が集まるまで開けないつもりだ。
「――というわけなんだ」
「なるほどです~」
「確かに、そうした方が良いですね」
ハナちゃんたちにこしょこしょと方針を伝えると、納得してもらえた。
中身があっても無くても成果なのだけど、色々考えてしまうことはあるだろう。そうして無意識に成果の上下を付けてしまいかねないし、「ここには無いことがわかった」と言うのも大きな実績だと考えられるまで、割り切るのは難しい。
俺たちは散々手探りでやってきてそらもう壁にぶち当たりまくったし、最初の捜索で海に阻まれたときは、全員投げやりになったからね。
あれを経験していないと、絞り込める事は大きな成果、とまでは考えられないかなと思う。
「そうですね、集まってからにしましょう」
「それが良いです」
「気配りは大事だね」
「良いことだよ~」
おひい様やドラゴンさんたちにも同意を貰い、方針は承認された。特にドラゴン三人娘さんは、同じ投げやり感を共有したからね。気持ちは同じなのだ。
「と言うわけで幸先が良い事ですし、カニ祭りしましょう!」
「「「わーい!」」」
こうして色々うやむやにし、みんなしてカニパーティーで盛り上がる。
偶然漁獲できたウツボみたいなのも、焼くと穴子みたいにふわっふわで美味だった。
この海は現地で食糧調達し放題なのが素晴らしい。
――そして二日目。
「ミュミューン」
「あや~、きょうはなんもみつからなかったですね~」
「でも確実に捜索範囲は狭まったので、これは一つの成果だね」
「わきゃ~ん、たしかにそうさ~」
この日は残念ながら、成果はゼロであった。
俺たちは村で農作業をしており、現地のおひい様やシカ角さんが飛ばしてくるネコちゃん便にて報告を受けただけだが、高橋さんの指揮にて捜索は上手く回っているらしい。
報告によれば捜索範囲はさらに狭まったので、この調子で続ければ卵には確実に近づいている。
あと残念会として、赤身のお魚をお刺身にしてやけ酒パーティーを催したそうだ。味はマグロっぽかったらしい。
「ミューン」
「今日は二つも見つかったみたいだよ!」
「やりましたね!」
「いいかんじです~」
三日目は二つを発見し大盛り上がりとなり、エビパーティーを催したそうだ。
昨日もパーティーしてなかったかな?
「ミュ」
「今日は三つもだって!」
「これはじゅんちょうです~」
「予定通りに、終わりそうですね」
四日目は三つも見つかったそうで、着々と効率が上がっているのが実感できた。
当然大漁パーティーを開いたようで、手っとりっばやく漁獲できるカニで色々創作料理を試したそうだ。
この人たち毎日宴会やってんな。
――そして五日目、最終日だ。
「あと三つですけど、この分だと今日イケますね」
残り三地点のため、一つの捜索範囲につき六十六人は投入出来る計算となる。もうこの人数でやれば、今日の作業で全部見つかるはずだ。
そんなわけで、最終日は俺やハナちゃんたちもベースキャンプにて待機し、その時に備える。卵オープンの儀式があるので、見守りたいなっていう考えからだ。
決して、俺たちも宴会に参加したいからでは無い――とも言えない。
それはともかく、キラキラ輝く妖精さんの軌跡を海岸から見守りながら、報告を待つ。
『こちらえこー、はっけんしました。どうぞ』
『こちら――』
やがて、午後になってから次々に発見の無線が入電する。チャーリーチームの高橋さんは大忙しだ。
そして夕方に差し掛かる頃――すべての卵が発見された!
「みなさんのおかげで、計画日内ですべて見つかりました!」
「「「わーい!」」」
夕日が照らす海外にて、お宝の卵ちゃんを並べ、みんなで成果を祝う。
あまった時間を使ってエビとカニも沢山漁獲しており、もうどんちゃん騒ぎする準備まで整っていたりするのは流石かな?
ともあれ、これにてすべてのお供さん救助は叶った――はずである。
はず、というのは、まだ開けてないから断定は出来ないからなのだけど。
……もう、開けちゃって良いかな?
「とりあえず、卵を開けちゃいますか」
「それが良いですね」
「一緒に無事を祝いたいですし」
「そうしようよ~」
「せっかくだからね」
おひい様と三人娘の同意も得られたので、開けちゃおう。
「神様、ちょっと数が多いのですが、大丈夫ですか?」
(いいとも~)
九個もあるので大変かもしれないけど、神様にお願いするしかない。快く引き受けてくれたけど、あとでちゃんとお礼はしないとね。
(ぽちぽちとな)
「あや~、たいへんそうです?」
(いっぱいあるからね~)
ぽちぽちと作業する神輿を見て、ハナちゃんも大変そうと感じたようだ。でも、こればっかりは――。
「じゃあじゃあ、ハナもおてつだいするです~」
(おねがい~)
――なぬ?
「ここをこうして、これがそれで、あれがそっちです?」
と思っているうちに、ハナちゃんが卵の横でぽちぽち始めた。なにしてはるん?
「あいたです~」
(じょうずだね~)
しかも開けちゃうとか。お父さんびっくり!?
ハナちゃんすごい!
「……ハナちゃん、なんでこれ、開けられるの?」
「わかんないです?」
ひとまず聞いてみたけど、この回答である。
わかんないのに開けられるの? お父さんそれが不思議でしょうがないよ。
「まあ、ハナちゃんだから」
「そうですね、ハナちゃんだもの」
「ハナちゃんすごいさ~」
「えへへ」
ハナちゃんと付き合いの長い俺とユキちゃんと偉い人ちゃんは、とりあえずこの謎現象を「ハナちゃんだから」で片付けた。
だってハナちゃんなのだから。
褒められた? ハナちゃんはエルフ耳をてろんと垂らして、てれってれだね。かわいい。
「こんなかんじで、てわけするです~」
(ありがと~)
良く分からない出来事が分からないままに進行していくけど、二人がかりで卵がどんどんオープンしていく。
こっちはカラ、こっちはすやすやお供さん入、そっちは――という感じで、ぽんぽん開いていくね。
最後の方なんて、ハナちゃん大体十秒くらいで開けてた。熟練職人ですかね?
「ハナちゃん凄いね! あと神様もありがとうございます」
「うふ~」
(それほどでも~)
最後の卵をオープンしたハナちゃんと神輿の頭を撫でながら、色々な出来事を飲み込む。
だってハナちゃんなのだから。
「まあ良く分かりませんが、全部卵が開きました」
「大志さん、今のは……」
「ハナちゃんですので」
「ええ……?」
おひい様がぽかんとして聞いてきたが、ハナちゃんだからでごまかす。ごまかすというか、俺もハナちゃんも誰も分かっていないのである。回答は不可能だった。
わかんないのである。
「ともかく、お供さんを起こしましょう」
「あ、はい」
シカ角さんもぽかんとしていたけど、ゴリ押しするよ。
というわけで、面白面倒フェーズに突入だ。
「みんな夕食の時間よ。早く起きないと、みんなの分は私が食べちゃうからね」
「まって! 食べるから!」
「夕食ね! 今行く!」
「お腹ペコペコなのよ!」
「待ってましたあ!」
四人を一発で起こすこの芸当、マネできない。シカ角さんは完全にたたき起こしマスターとなっていた。
必要性に駆られた結果のこの技術であり、面白すぎる。
「あれ? ここどこ?」
「まずは説明するわね。これがそうなってああでそのうえ――」
説明も、有無を言わさず基礎知識を叩き込んでいく。
お目覚めお供さんたちは、口をパクパクさせながらシカ角さんチュートリアルにて、現状認識を強制インストールされた。
何回も説明しているから、もう淀みないお仕事である。流石シカ角さん!
「――と、言うわけなのよ。あの人が大志さんで、しゃべるわよ」
「なるほど、これは論文ね」
「あれが男と」
「まずは観察を」
「それより、その可愛い服は」
「後にしなさい」
わいわいと騒ぎ出したお供さんだが、シカ角さんはぴしゃりと静かにさせた。つよい。
ともあれ、これで無事に全員が救助された。
今日はみんなで、お祝いしよう!
「はいしゃべりますよ。今日は全員が無事助かったお祝いに、カニとかエビとかで大騒ぎしましょう!」
「「「わーい!」」」
もう色々面倒なので、お祝いしようって感じでうやむやにするぞ。
お酒飲んでどんちゃんやれば、まあなんとかなるだろう。
「さっそく、カニをゆでるです~」
「それなら、うちらにおまかせさ~」
「おゆをわかすさ~」
こうして、海底探査は無事完了した。
一時はどうなることかと思われた捜索活動だけど、大体はおひい様とシカ角さんの持つ、便利なやつのおかげでなんとかなったと思う。
ともあれ二年に渡って続いたシカ角さんたちの苦労は、ここでようやく報われたのだ。
これからは彼女たちの身の振り方や、お世話になった人への報告などをしていこう。
「タイシタイシ、そっちにいると、あぶないです?」
「え? 危ないって?」
と色々考えていたら、ハナちゃんが何らかの危険を察知した。
しかし、危ないって何が?
「ほら、ねらわれてるです?」
そしてハナちゃんが指さす先には、巻物と筆を持った論文ドラゴンさんたちが、俺を学者の目で見ていた。というか、今にもこっちに来て観察されそうなのだが。しかも合計十二人がそれなのである。シカ角さんとヤギ角ちゃん以外、みんなそうなんだぜ……。
「あの人たち、どうしようね」
「わかんないです?」
こうして面白ドラゴンさんが増えたのだけど、みんなどうして俺を論文の題材にしたがるのだろうか。
「はいはい、邪な方々は明日一日食事抜きの刑に処しますよ」
「「「キャー!」」」
このカオスな状況は、キツネさんが一撃でなんとかしてくれた。
ユキちゃんもなんだかんだで、面白ドラゴンさんの扱いが分かってきているようだ。
もう俺の手に負えなくなったら、ユキちゃんかシカ角さんに丸投げしよう、そうしよう!
むしろ海岸で宴会しない日が無い