第十話 後ろにいるんですが
おひい様が村にやってきた翌日に、お供さん救助作戦の相談をすることにした。
なんかこう権力者視点からの良い作戦とか、あるかなあって言う期待からだね。
「現状は人員を大勢動員して、しらみつぶし作戦を考えています」
「なるほど」
作戦概要を聞いたおひい様は、ふむふむと頷く。ちなみに朝風呂に入ったらしく、つやつやほかほかしていた。思ったより早く村に溶け込んでいる雰囲気である。
なんというか、肝が据わっているのかもしれない。
「捜索範囲がとても広く、しかも海底が含まれているのを考えると……これはかなり厳しいですね」
「ええ、なので何か良い手がありましたら、提案して頂けると助かります」
「そうですね……」
それはさておき、作戦概要を聞いたおひい様は、ある程度土地鑑があるからか考え込んでしまった。
おっしゃるとおり、このままだとかなり長期的作戦になってしまう。
まあ見つかりさえすればこっちの物なので、作戦期間はある程度容認してはいるのだけど。
「あまり長期になると、そちらのご負担もかなり……」
ただドラゴンさん側としては、長期にわたって負担をかけるのは忍びない、という雰囲気が見て取れる。
ある程度頭の中で、どれほどのコストがかかるか概算したのだろう。今のところ期間が読めないので、かかるお金が青天井なのは確かだ。
ざくっと計算すると、今動員出来る人数で一月活動した場合、千五百万円位は飛んでいく。
捜索に時間がかかればかかるほど、お金がかかるという当たり前かつ世知辛いお話になっていくわけだ。
「なんとか、場所の当たりさえつけば良いのですが……」
結局の所、お供さんたちの探知手段が無いのが根本原因である。ドワーフちゃんの場合は、妖精さんが探査してくれたからあの程度で済んだ、というお話だね。
「……ひとつ、試せることはございますね」
「試せることですか?」
「儀式をして、神託を頂くのがよろしいかと」
「ほほう」
ダメ元で聞いてみたら、試せることはあるらしい。神託か……。
そういや、おひい様ってなんかすごいシャーマンぽい話は聞いていたな。
奈良に出たドラゴンさんたちも、占いで色々な局面を切り抜けてきたらしいし。
ここは一つ、お願いしてみるか。
「よろしければ、実行して頂けますでしょうか」
「もちろんやで。まかせとき」
「まかせとき?」
「何でもございません」
得意分野なのか、おひい様がくねくねしながら自信満々に請けてくれた。
どうなるかは分からないけど、試してみよう。
「ただ儀式には準備が必要ですので、お時間はかかります。そこはご了承下さい」
「承知しました。必要な物がございましたら、言って頂ければ揃えます」
「ご負担をおかけするのは忍びないですが、そうも言ってはいられませんね。では、これとそれとあれを――」
こうして、良く分からないが儀式をすることになった。
しっかり準備して、いっちょやってみよう!
――そして午後ちょっと過ぎ、準備が整う。
祭壇はドラゴンさん手持ちの物があり、結構豪華な仕様である。その真ん中に、おひい様が持っていた水晶玉がちまっと鎮座していた。
こちらが用意したのは、村人たちと、それなりの量のお料理くらいである。
おひい様によれば、お供え物を用意し、どんちゃん騒ぎをして神様を呼び出すらしい。
騒ぐのは巫女さんたちが実行するので、俺たちは集まるだけで良いみたいだ。
「なんかはじまるん?」
「ぎしきするんだって」
「なんのぎしきじゃん?」
「わからん」
しかしなんか聞いたことあるんだよなあ、この儀式のやりかた。
「ハナもがんばるですよ~」
おまけにだ、踊りの上手な子がいたら一緒に踊ってと来た。当然実績のあるハナちゃんが抜擢されたわけであるが……。
「うふ~」
「あらー! 聞きしに勝る、見事な踊りですね!」
「うふふ~」
ウォーミングアップなのか、ハナちゃんがくねくね踊り出すとおひい様大喜びである。
褒められたハナちゃんは、もうなんかご機嫌だね。
「うっ……」
「こわわ」
「まがらない、そこはまがらない」
なおエルフたちはぷるぷるしていた。まだ慣れないらしい。
それはさておき、とりあえず準備は整ったので、早速儀式をして頂こう。
「では、お願い出来ますか」
「わかりました。それではみなさん、お願いします」
「「「はーい」」」
お願いすると、おひい様がしゃらんと背筋を伸ばし、他のドラゴンさんたちに号令をかけた。
集まった龍さんたちはしゅるるっとおひい様の後ろに陣取り、なんだか神聖な雰囲気が漂う。
「始めます」
「あい~」
そしてしばしの静寂の後、おひい様とハナちゃんがくねくね踊り始める。それに合わせて、ドラゴンさんたちがドンシャラドンシャラとなんかの道具を鳴らし始めた。
俺たちはそれを見守っていれば良いらしく、良く分からないサバトを楽しく観覧だね。
お祭りの催しみたいな感じで、見ている分には結構楽しい。
「良い感じですね! あとちょっとかもですよ!」
「うふ~」
やがて、祭壇の水晶玉が淡く明滅しだす。あとちょっとらしい。
そのまま見ていると、どんどん光が強くなり――。
(よんだ?)
どこからか、謎の声が聞こえた!
……というか、神輿がほよよって飛んできた訳だが。
「あっなんか、こえきこえたじゃん」
「なつかしいかんじ」
「あれだよな」
そしてエルフたちも、神輿の方を見上げるわけだ。お呼ばれしたのって、うちの子だよねこれ。
「神様! ちょっと相談がございまして!」
(そうなの?)
「私の仲間がこうしてああして、居場所がわかったらなあって」
(たいへんだね~)
ただドラゴンさんたちは後ろにいる神輿に気づかないようで、水晶玉に向かって声をかけている。
みなさん、すぐうしろに、いるんだよお。
「何か方法とか、ありますか?」
(これをああして、そうすればいいんじゃない? ざっくりとはわかるかな?)
「なるほど」
俺たちを置いてきぼりにしたまま、おひい様が色々とアドバイスを受けているな。
ただお告げがふわっとしすぎていて、正直良く分からない。
「あや~、かみさまこんなおしごと、してたですか~」
(そうなの~)
「どして、よばれないとでてこないです?」
(およばれしないと、なんかきこえないみたい)
「めんどいですね~」
(めんどいの~)
そんな様子を見て、ハナちゃんが神様のお仕事についてコメントだね。ただその会話は、他の人たちには聞こえていないようだ。誰も反応していない。
普通の人に聞こえる謎の声と、そうでない声があるのはなぜだろう?
聞くところによるとお呼ばれする必要があるらしいけど、なんか規則でもあるのだろうか。
神様お願い! という感じで大騒ぎして来て貰い、そのお声を聞こうという気持ちが大事なのかな?
「? 神様ありがとうございました。また何かございましたら、お願い致します」
(それほどでも~)
色々考えているうちにおひい様は目的を達成したのか、儀式はこれにて終了するようだ。
後ろを向いて何かと会話するハナちゃんを横目に、不思議そうな顔をしながらしゃんしゃんと水晶玉に手を合わせている。
謎の声の主っぽいのが、すぐそこにいるかもだぞお。
「では、お礼のお供え物をお受け取り下さい」
(おそなえもの~)
そうしているうちに、お供え物がぴかっと光って消えた。もちろん食器ごとである。
当然ドラゴンさんたちの後ろにいる神輿も、嬉しそうに光っていた。
「以上をもちまして、神託の義を終了致します」
(おいし~)
志むら――おっとおひい様うしろ~。
「なあ、これなんかみたことあるよな」
「むかしはよくやってた」
「いまは、しゅうかいじょうにいくとあえるから、やってなかったな」
「だべ」
当然エルフたちも、ツッコミを入れたくてうずうずしているんだなあ。
なんというか、あれだね。
「ぜはー……ぜはー……。というわけで……ご神託を頂けました。なんとかなりそうですよ……」
「あっはい」
無事儀式を終えたドラゴンさんたちが振り向くのだけど、俺たちは微妙な表情である。まさかエルフの神様が、ドラゴンさんたちにふわっとアドバイスをしていたとは……。
あとおひい様はダンスで相当疲れたのか、息を切らしているけど大丈夫かな? だから負担軽減のために、踊り手を一人増やした感じがするよ。
「だいじょぶです?」
「ぜはー……ぜはー……し、少々お待ちください……」
だいぶお疲れのおひい様を、ハナちゃんも心配そうな顔で見ているね。体力無さ過ぎ案件である。
なおハナちゃんは元気いっぱいなので、こどもに体力負ける事件ですよこれ。
それはさておき、あの意味不明な神託で何かわかったのだろうか。
「して、ご神託の方はアレで大丈夫でしょうか」
「概ね大丈夫ですね。ちょっと私たちで検証しますが、なんとかなるでしょう」
「検証ですか」
「言葉の解釈が必要ですので、しばしお待ちを。他のみなさんが聞いたお言葉も調査して、齟齬が無いか確かめます」
「さようで」
儀式は終わったけど、神託の分析作業があるっぽい。そりゃあ、あれほどふわっとしたお告げだからね。正直俺には未だに、何をすれば良いかわからないし。
あとギャラリーを集めたのは、聞き間違い防止のためだったようだ。念を入れているな。
ともあれここはプロに任せよう。
「では、解釈のほうお願い致します」
「そこはまかせとき」
「まかせとき?」
「何でもございませんから」
こうして良く分からないような、色々分かってしまった儀式は終わった。
しばらくの間ギャラリーからお言葉の内容を聞いてメモしたドラゴンさんたちが、仕事をするためおひい様のお住まいへ入っていく。
さて、俺は俺で、そこのほよほよ神輿ちゃんにお礼をしておこう。
「なんだか神様は、色々お仕事をされているようで。ありがとうございます」
「ありがとです~」
(それほどでも~)
俺やハナちゃんがお礼をすると、嬉しそうに神輿が光る。
「やっぱかみさますげえな」
「ありがたや~」
「ひさびさに、こえきいた」
(ひさびさだったね~)
エルフたちも、神輿にありがたやってしている。
しかし、世の中狭い物だ。うちの子が、ドラゴンさんたちに神託を授けていたとはね。エルフの神様という存在は、どうやら思っているより幅広い仕事をしているようだ。
というか、この子は「エルフィン惑星系の神」とでも言うのかもしれない。お袋が細かく聞き取り調査をすれば、それぞれの星でうちの子の逸話が出てくるかも。これはこれでロマンがあるな。
オレンジちゃんやブルーちゃんとかも、そういった仕事をしているかもしれないし。もしかして担当区域とかあったりしてね。
まあこちらはこちらで、神様ありがとう会でもやろう。
「それじゃあ集会場で、神様ありがとう会でもしようか。もんじゃ食べようよ」
「あい~」
(わーい!)
今回ドラゴンさんたちに授けたお告げの意味はまだ分からないけど、そこはプロにお任せだ。
俺たちは、神様ともんじゃパーティーでもしようじゃないか。
(おそなえもの~)
ほよほよと後をついてくる神輿ではあるが、まだまだ謎多き存在だね。
にしてもさっきお供え物沢山貰ったのに、食欲あるなあ。
おふと――は大丈夫なのだろうか。
◇
「あや~、かみさま、ハナたちのところたんとうだったですか~」
(そうだよ~)
じゅわじゅわとソースの香りが広がる中、神様ありがとう会は楽しく進む。
ハナちゃんが色々聞いてくれているようで、やっぱり担当区域があったっぽい。
(わたしはあっちだよ!)
(……そっちらへんはわたし)
オレンジちゃんとブルーちゃんも神棚の神社から出てきて、もんじゃを器用に食べている。エネルギー体なのにヘラが使えるのか……。
それはさておき、エルフィンは森ごとに神様がいて、他の星にも神託を届けている形跡があるな。ドラゴンさんたちは、ほよほよ神輿が自分たちの崇める神と同一、とは気づいていない感じがするけど。まあ、後で教えてあげよう。
「かみさまも、わかんないことあるです?」
(だいたいわかんない)
「よのなか、むつかしいですね~」
(むずかしいね~)
と言うか、神様も世の中のこと、だいたいわかんないらしいぞ。それでお告げを授けるというお仕事をしていて、大丈夫なのだろうか。
「わかんないときは、どうするです?」
(わかるひとに、こたえてもらうかな)
「タイシみたいに、まるなげです?」
(まるなげだね~)
おっと、俺に流れ弾が来た。でも、お仕事丸投げは正義だから……。
しかし神様も、時には相談を丸投げするようだ。でも、一体誰に? お友達の神様とかかな?
「ハナちゃんが空飛ぶ神輿と会話するのを見ていると、パソコンと会話する大志さんと重なりますね」
おおう、また流れ弾が来たけど、ユキちゃんがハナちゃんを見る目は可愛いお子さんを微笑ましく見つめている感じである。
だが俺がAIちゃんと会話するときは、みんな危ない人を見る感じなのだが。なぜなのだ。
やっていることは同じであろう。そのはず。
「タイシタイシ、なんかおちこんでるです?」
「今自分は、世の中の不条理について考えているんだ」
「あんまし、きにすることないですよ~」
「そうかな」
さらにずっと年下のお子さんに励まされるという、大人としてどうなのイベントも勃発した。
なんだろう、今日は自分を見つめ直す日なのであろうか。
でもまあ、気にしないことにしよう。考えても俺がダメなことが明らかになるだけだからね!
「大志さん、検証が終わりました」
「なんとかなりそうですよ」
「やってみないと分からないけどね。何もしないよりはマシだね」
「試してみるんだよ~」
自分を見つめ直す事を放棄していると、ドラゴンさんたちが集会場へやってきた。
どうやら検証が終わったようで、何か手がありそうな感じだ。みなさんの表情も悪くは無いので、期待は出来そうだね。
それじゃあ、ちょっと話を聞いてみよう。
「何か上手い方法が見つかりました?」
「はい、お告げを解析した結果『便利なやつにあの術をかけると、迷子の居場所はまあまあ分かるかも』だそうです」
「さようで」
「はい」
何をどう解析したら、あのふわっとしたお告げをそう解釈出来るのであろうか。俺には全く分からない。
「あや~、まあまあです?」
(あのまるいの、わたしもよくわかんないやつだもん)
「わかんないです?」
(あけるときも、じつはてきとうなの~)
「それであいちゃうですか~」
(あいちゃうよ~。めんどいけど)
ハナちゃんも良く分からなかったのか、お告げのご本人に問い合わせている。しかし、神様も良く分からない代物とな。
まるいのって、卵のことだよね? あれそんな謎のブツなのか。開け方は適当でも良いらしいけど、その適当が俺たちにはわかんないよ!
……でもまあ、神様に聞けば何でも解決! となるほどエルフィン惑星系は甘くないらしい。
まあそうだよな、神様ですら灰化にやられて、ちたまへ避難してくるほどだ。いや? 避難と言うか、信者が全員移動しちゃったらそっちについていくしかなかったのかな?
「またおねがいするです~」
(おまかせ~)
しかしハナちゃんともんじゃを食べながら、キャッキャするこの神様だけど……。これほどの神秘的存在ですら対抗出来ない、もっと不思議な「何か」があの星系にはあるような気がする。
果たして、それを解明出来るか自信は無い。そして、明らかにする必要があるのかも、今はまだ分からない。
「私たちは『あの術』の資料を探しますので、準備が整ったらお車を出して頂きたく思います」
「と言うと、あの荒野を探査するのですか?」
「はい、迷子に近づくと音が鳴るようにしますので」
「そ、そうですか」
おっと、話の途中だったな。おひい様から要望が来た。
分からないことはひとまず置いといて、今は迷子捜しの準備だね。
なんか音が鳴るようにも出来るらしいけど、そこはプロにお任せだ。俺はランクルで荒野を走り回る準備はしておこう。
「では、私は資料探しを始めます。何かございましたら、おうちにご連絡ください」
「わかりました」
そんなわけで、ふわふわとしたお告げによって、ふわふわとした迷子捜しが可能となりそうである。
まずは試してみて、捜索計画を詰めていこう!
◇
「あっ! この近くですね」
現在リューンの荒野を、ランクルで走っている。おひい様の持つ水晶玉から、だいぶ大きなサイン波のような音がしているが、確かに近づくと音が大きくなるようだ。
「では、車を停めて歩いて探しましょう」
「はい」
「さがすです~」
今回のメンバーはおひい様とシカ角さん、あとハナちゃんとユキちゃんが参加している。お試し捜索だからね。卵が見つかったときのために、神輿もお越し頂いている。
というわけで適当な所で車を停めて、みんなで外に出て歩き回ろう!
「ん~、これくらいが限界ですか」
「位置は、大まかくらいの精度ですよね?」
「そうなります」
「であれば、後は人員を投入して周辺を集中捜索、という作戦が良いかもしれません」
「ですね」
(おてつだい~)
音の大きさ、という曖昧な基準と、さらに位置は大まかなわけだ。残りのアバウトな部分は、やっぱりローラー作戦で埋めるしか無い。
ただ範囲がある程度絞れたのはとても有り難く、計画がぐっと立てやすくなった。
「海底の方も、同じやり方で出来そうですか?」
「試してみないことには断言は出来ませんが、結構良い感じに絞れそうな感触はありますね」
「それは有り難い。ひとまず卵が見つかるか検証して、上手く行ったら海上でも試してみましょう」
「それが良いですね」
こうしてとりあえず、荒野を探して試してみる。念のため、場所がすぐに分かるよう赤く塗ったコンクリブロックを置いておく。
とりあえずの探査範囲も、手っ取り早く地面にスプレーしてマーキングしておこう。こうすれば、どこを探せばよいかはわかりやすいのではないかな?
本格的に捜索する時は、白線引けるアレでも用意しておこうか。そっちの方が効率が良いよね。
「じゃあ、軽く探しましょう」
「「「おー!」」」
色々準備をしたのち、みんなで棒を持って地面をドスドスと突いていく。なんかあったら、感触や音で分かるかなと。
「こちらは終わりました」
「こっちもです~」
「じゃあ、新しい範囲を決めるね」
「あい~」
しかし探せど探せど、まあ見つからない。横一列にならんでローラー作戦をするが、いかんせん人数が少なくて時間がかかるな。
お試しとは言え、ちょっと人を絞りすぎたか?
「あや~、これはたいへんですね~」
「ハナちゃんは休んでいても良いよ。無理しないようにね」
「あい~」
一時間ほど探したところで、ハナちゃん汗をふきふきしながらお疲れ顔だ。
ちょっと休憩した方が良いな。
「ぜ、ぜはー……ぜはー……。わ、私もちょっと休んでよいですか……」
「ど、どうぞどうぞ」
おひい様も頑張ったとは言え、もうぐでんぐでんであるし。
本当は捜索にかり出したくは無かったのだけど、どうしてもと言うので加わって貰っている。
お供さんたちを探したい気持ちは、彼女が一番大きいのだろう。その気持ちは無碍には出来ないし、お供さんたちもおひい様が探してくれたと聞いたら、嬉しかろうと思う。
そうしてちまちま休憩しながら、半径百メートルばかしの地面をつついた時――。
「あ! なんか手応えあった!」
棒に伝わる感触が、なんかちょっと違う部分を見つけた!
早速ほじくり返してみよう。
「見つけた!」
「タイシ、ほんとです!?」
「ほら、卵があるよ」
「たしかに、あるです~!」
スコップで軽く地面を掘ってみると、そこにはどぎつい模様の卵がちょこっと頭を出した。
よっしよっし! 迷子探知が有効だとこれで証明できたぞ!
とりあえず全部掘り出してから、神様にお願いしよう。
「では、神様お願いします」
(ほーい)
そんなわけで早速ほじくり出して、神様による開封の儀式だ。
(ぽちぽちとな)
「あやや~、たしかにめんどいですね~」
(でしょ~)
さっそくぽちぽちと何かやっているけど、それ適当操作なんだよね? どれだけ観察しても、何をどうしているのか全く分からない。神様基準の適当、なのだろうか。
ハナちゃんはエルフ耳をぴこんと立てて、興味深そうに見ているけど、俺には何が面倒なのかすらわからん。とにかく謎である。
(あいたよ~)
「さすがです~」
(それほどでも~)
結局何をしているのか不明なまま、卵はオープンした。ハナちゃんに褒められて、神輿てれってれである。
まあ和やかな二人は置いといて、今度はどんなドラゴンさんか見てみよう。
「大成功ですね! お供の人また見つかりました!」
「やったです~!」
果たして卵の中には、期待したとおり新たなお供ドラゴンさんが眠っていた。
しかし裾がめくれておへそが出ているのだが。寝相の悪い人なのかな?
見た感じ、肩下くらいの黒髪を編み込んだふわふわアレンジヘアをしていて、ちょっとおしゃれな感じである。角はマーコールのようなねじれ角で、しっぽの模様は白地に黒の虎柄かな?
唐装をゆるく着崩していて、その辺もおしゃれさを意識している雰囲気だね。
「では、私が起こしますね」
まじまじとおしゃれ虎柄さんを見ていると、さっそくおひい様が近寄り、ゆさゆさと起こしにかかった。
「これこれ、起きなさい。朝ですよ」
「もう朝なの……? あら? おひい様が先に起きている……。これは夢ね」
「あ! こら寝ちゃダメですよ! 夢ではありませんから!」
「はいはい明晰夢明晰夢」
……おひい様が起こしにかかったのがまずかったのか、お供さんは夢だと言い張って、まるで相手にしてくれない。二度寝を貪ろうとしておる。
「ここは私が」
「お、お任せします……」
見かねたシカ角さんが代わりに起こしてくれるようだ。見守ろう。
だって絶対めんどうだからね。
「ほら、起きなさい。もう昼よ」
「えっ! お昼!? 寝坊した!」
一発で起きよった。シカ角さん上手い!
慣れてきたとも言う。
「……あれ? なんで外にいるの?」
「今説明するわね」
「それよりそこの謎生物は何かしら?」
「まとめて説明するわ」
トラ柄さんが俺を見て謎の生物扱いしているけど、今しゃべるとハッピーセットになるので、黙っているよ。もう面倒なのが明らかだからね。
「あや~、こんどはすんなりいきそうですね~」
「あら、可愛い子供じゃない。こんにちは」
「こんにちわです~」
おーい! 俺がしゃべるとみんなびっくりするのに、なんでハナちゃんだと和やかなの!?
俺か? 俺が悪いのか!?