第十一話 タイシちょっとやすむです
ここはとあるちたまの、とある農村。
大志たちが変な実験を重ねている中、村は相変わらずの平和な一時でした。
「あや~、タイシ今日来るですよ~」
「さいきん、忙しそうだったさ~?」
「今日もそれ関係の、お仕事らしいです~」
「お仕事しすぎだね! お仕事しすぎ!」
「働きすぎ~」
「きゃい~」
ハナちゃんちのテラスでは、大志の来訪を待つ女子たちがのんびりしておりました。
おひさまに照らされながらのお茶会は、とっても楽しそうですね。
「あや! タイシきたですね~」
「むかえにいくさ~」
「いこうね! いこうね!」
やがて車の音が聞こえたのか、ハナちゃんのエルフ耳がぴこっと起立!
みんなで大志のお出迎えに行きましょうね。
「タ~イシタイシ、たまには休むです~」
「お休みがてら~、うちらと遊ぶのさ~」
「お昼寝しようね! お昼寝~」
「きゃきゃきゃ~い」
ハナちゃんたちは「大志休んでね」のお歌を歌いながら、みんなで広場に向かいました。
ほのぼのソングかと思いきや、割と切実かな?
それはさておき、現地ではちょうど車から大志が降りた所で遭遇ですね。
「タイシタイシ~、おかえりです~」
「ハナちゃんただいま。元気してた?」
「めっちゃ元気です~」
ハナちゃんはぽててっと駆け寄り、大志の脚にぽむっとしがみつきですね。さらに上目遣いで、かまって光線を出しています。
なんだかんだで、ハナちゃんは遊んで欲しいみたいですね。
「あら、みなさんこんにちは」
「こないだぶりだね。こんにちはだね」
「お邪魔しに来たよ~」
ワンボックスからは、続けてドラゴンさんたちが降りてきました。
今日は彼女たちも村に用事があるみたいです。
「こんにちは」
「え、エルフにフェアリーにしっぽのある人に……ファンタジーだわ! こ、こんにちは!」
それとユキちゃんと魔女さんも車から降りてきました。
魔女さんはハナちゃんたちを見て、テンション上がってますね。
それはさておき、今日はなんだか大人数です。
「それでは、ひとまず集会場に行きますか」
「ハナもいくです~」
「よっし、じゃあ肩車しちゃうよ」
「わーい!」
とりあえず集会場に行くみたいですね。みんな揃って、歩き始めました。
「こんなファンタジーエリア、夢みたい……」
そんな中、魔女さんが隠し村を見てうっとりしていますね。
信州産ウィッチですが、こういう幻想的なものに憧れがあるのかな?
しかし、世の中そんなに甘くはありません。
「う~い、畑いくじゃん」
「耕すべ~」
「長ネギ作ろうず」
「種まくべ~」
「だべな」
魔女さんの幻想を打ち砕くかのように、農作業着姿のエルフたちがだべだべ言いながら歩いて行きました。
「し、昭和の農村……?」
ファンタジーさを完全破壊する、ゴム長アンド農作業ツナギ姿のエルフですからね。
そのお姿は、確かに昭和の農村という感じが……。だいたい大志のせいです。
「実際農村ですからね」
「ええ……?」
そこに大志が追い打ち! 魔女さん愕然しちゃいました。
でも言うとおり農村なのでしょうがないです。
主要産業は観光業ですが、それを支えているのはエルフの一次産業なのですから。
「で、でも……フェアリーちゃんたちは、ファンタジーそのものだから!」
しかし魔女さんにはまだ希望があります。
なにせかわいらしい妖精さんは、何をしていてもファンタジーですからね!
「やせるんだよ……やせるんだよ……」
「おなかをひっこめましょう……ひっこめましょう……」
「あきゃ~い……」
あ、あら。妖精さんたちは、ダイエットのためにヘルシーそば団子を暗い顔で食べておりますね。
ごま団子よりカロリー低いやつを、主食としていますよこれ。
甘味ではないため、妖精さんたちにとってはなんだか味気ないお食事って感じかな?
「ふ、フェアリーちゃんたちが、灰色のお団子を暗い顔で……!?」
なんだかディストピアお団子を食べている妖精さんたちを見て、魔女さんまたまた愕然ですね。
でもこのたゆまぬ努力があるからこそ、妖精さんたちは空へと羽ばたけるのです。物理的に。
みんなダイエットがんばってね。
「極めて切実な光景……!」
連続して見せられた現実に、魔女さん打ちひしがれております。
でも大丈夫! あちらをご覧下さい!
「クワックワ~」
「わきゃ~わきゃ~」
そこには、元気にペンギンちゃんと遊ぶミタちゃんが!
ちいさなしっぽドワーフちゃんと、可愛い動物が戯れるあざとい光景がありますよ!
「わ、わわ……癒やされる……」
「わきゃ? お姉さんどうしたさ~」
「クワワ~?」
ようやく見つけたファンタジー風景に、魔女さんようやく癒やされました。
めでたしめでたし?
「耕すキカイ、今日はわたしんちの番よ~」
「がんばって耕すべ~」
「し、昭和の農村がまた……」
しかし後ろには、またもや農民エルフが! 畑でよく見る耕運機を押しています。
容赦なく魔女さんの幻想を破壊しに来る村人なのでした。
そんなドラマはさておき、ようやく集会場に到着です!
それでは、お仕事始めましょう。
「とりあえず素材は沢山ありますので、これでお試し頂ければと」
「こんなに沢山……色々試せそうですね!」
「ありがたいです」
集会場では、さっそく何か始めているようです。
魔女さんとドラゴンさんたちに、素材を提供しているようですね。
「これから先はお任せしますので、必要な素材がありましたら遠慮無くお申し付け下さい」
「助かります」
どうやら各種不思議な石を使って、なんかやるみたいですね。
これから先は魔女さんたちにお任せな感じみたいですが、任された方はやる気十分なようです。
「おだんご使うの? おだんご使う?」
「色々あるよ! 色々!」
「ご遠慮なく~」
「妖精さんたち、ありがとう」
「きゃい~」
ずらずらと石を並べていたら、妖精さんたちも素材を持ち寄ってくれたみたい。
適当にこねた謎物体が追加されました。
「……ユキ、このオーラが見える石って何?」
「緋緋色金かな」
「ヒヒイロ……!?」
「ホントですか!」
「伝説のやつだね。初めて見たね」
「ヤバいのあっさり出てきたよ~」
その中に緋緋色金があったようで、魔女さんとドラゴン三人娘はもうびっくり!
こんなのがほいほい出てくる所、他にはありませんからね。
「こ、これは……色々出来るかもしれないわ!」
「がんばりましょう!」
「やる気出てきたね!」
「論文書かなきゃだよ~!」
特殊素材がふんだんに使えるとあって、みなさんやる気がみなぎったようです。
早速あーでもないこーでもないと、検討を始めるのでした。
「タイシタイシ、お仕事終わったです?」
そんな中、大志の手が空いたっぽい様子を見たハナちゃん、すすすっと近寄ってきました。
上目遣いで、きたいのまなざしですね。
「ここはひとまず、私たちだけでなんとかなりますよ」
「じゃあ、お願いして良いかな?」
「はい、お任せ下さい」
そんな様子を見ていたのか、ユキちゃんは大志をリリースしてくれました。
やっぱり彼女も、大志には休んで欲しいみたいです。
「と言うことで、大丈夫だよ」
「じゃあじゃあ、遊んで欲しいです~」
「もちろん良いよ。何して遊ぶ?」
「のんびり、お散歩するです~」
「良いね、じゃあ行こっか」
「あい~!」
大志の手が空いたので、ハナちゃんうっきうきです。
遊んでもらえるとあって、エルフ耳をぴこぴこさせて、大喜びですね。
「うちらも行くさ~」
「散策も良いものさ~」
「お散歩さ~」
それを見ていた偉い人グループも参加表明です。わっきゃわきゃとしっぽを振っていますね。
「私たちはこねこねのお手伝いしてるね! お手伝い!」
「きゃい~」
「失敗したやつ~」
妖精さんたちは、ユキちゃんたちのお手伝いをするみたい。お団子をこねないといけないという、謎の使命に燃えています。
でもイトカワちゃんがいきなり失敗してますね。
それはさておき、お散歩のはじまりはじまりです!
「では、行ってらっしゃい」
「行って来ます。何かあったら連絡くれれば対応するね」
「わかりました」
「いってくるです~」
なんかの道具を並べ始めたユキちゃんや魔女さんたちに見送られ、大志とハナちゃんたちは集会場を後にしました。
「とりあえず森にでも行こうか」
「ですね~」
「そうするさ~」
外に出た一行は、まずエルフの森を散策するようですね。みんなでワイワイと向かいました。
「あら、いらっしゃい~」
森に到着すると、動物好きの平原の人お姉さんが、相変わらず動物に埋もれておりました。
うふふううふふと、毛繕いをしてあげているようです。
「お姉さん、それ暑くないです?」
「暑いわね」
この様子に思わず聞いたハナちゃんですが、お姉さんの回答は「暑い」とのことです。
でもにっこにこ笑顔なので、問題なしですね!
「キキ?」
「あえ?」
そんな感じで汗だくお姉さんとほのぼの会話をしていると、なんかやってきました。
知らない動物がいますよこれ。
見た目は……ピグミーポッサムみたいなの。ただ毛がふさふさの大きなたれ耳が付いていて、ちたまのやつとはけっこう違いますね。
「タイシタイシ、この動物、居たです?」
「居なかったね」
「キ?」
突如現れた謎の動物に、大志とハナちゃん首を傾げてしまいました。
なんかのたれ耳オポッサムみたいな子は、大志たちを見上げて愛嬌を振りまいております。
「ああこの子は、なんかこのフクロイヌをくすぐったら出てきました」
「ニギャ」
にこやかにお姉さんが説明してくれましたが、フクロイヌも増えてますね。
いつの間に。
「他にもほら、そこにもここにも、なんか増えましたよ」
「……知らない動物、ふえてるですね~」
「増えてるね……」
「フクロイヌがなんか増えたので、くすぐりまくってますよ」
どうやら知らぬ間に、エルフの森には動物が増えていたようです。
このお姉さんがフクロイヌをくすぐりまくるので、いっぱいまろび出たみたい。
動物を増やすお姉さんエルフですね。
「そうか、造船用の木材を調達するために、森を広げたから……」
「動物さんも、増えたです?」
「たぶんね」
エルフ重工が船を量産するために、木材が必要です。その大半は、エルフの森を広げてまかなっているのでした。
木を切っても、灰を撒けば数日で材木に出来るような木が生えてきますからね。
そして森が拡大すると、どこからともなく新たなフクロイヌが……こんにちは!
増えたらお姉さんがくすぐるわけです。そりゃあ動物沢山にもなるという物ですね。
「ああ~可愛いわ~」
「……幸せそうだから、そっとしておこう」
「そうするです~」
こうして動物がどんどん増えていく現象が起きていましたが、まあなるようにしかなりません。
お姉さんが動物を増やすのは放置して、成り行き任せにするようです。
どんどん森が賑やかになっていきますから、良いことですよね!
……おそらく。
「さて、森の散策はこれくらいにして、次はどうしようか」
知らぬ間に森が賑やかになっているのはさておき、まだまだ時間はあります。
この後どうするか、大志はみんなに確認ですね。
「フネを見に行きたいさ~」
「いいですね~」
「じゃあそうしよっか」
すると、偉い人ちゃんから船の見学がリクエストされました。お次は造船所散策ですね。
今度は距離があるので、フクロオオカミ便をチャーターし、のんびり移動です。
「ば~うばう」
「今日は良いお天気で、気持ちいいですね~」
「絶好のお散歩日和さ~」
「わきゃ~」
森で調達した果物を食べながら、フクロオオカミに乗ってゆ~らゆら。
のどかな道のりを経て、造船所に到着です。
「おう大志、どうした?」
「ちょっと休憩でお散歩してるんだ」
「お前働き過ぎだからなあ」
湖畔の造船所では、高橋さんがお手伝いをしておりました。
周囲には木工大好きエルフたちが、えっほえっほとライン作業をしております。
かなりすごい勢いで船が出来ていきますね。
「まだまだ、生産能力足りないかな」
「まあな。バックオーダーが数千だろ?」
しかし、抱えているバックオーダーは膨大です。大志の目にはまだまだなのでした。
高橋さんと一緒にラインの様子を見て、色々考えているようです。
「他の湖と渡りを付けると、さらに数千くらい膨れるさ~」
「みんなフネは欲しいのさ~」
「憧れのフネさ~」
そこ追い打ち! 偉い人ちゃんたちからの、さらなる市場開拓のお話が!
他の湖でも、フネが足りないという社会問題は同じなのですから。
「……まあ、その辺は色々落ち着いてからですね。今は在庫をなるべく増やしますので」
「お願いするさ~」
「ありがたいさ~」
「うちも、そのうち発注するさ~」
ドワーフィンはもう間もなく夜の時期にさしかかりますので、その間に在庫を増やす作戦みたいですね。
あっちの森から工員をもっと呼んで、なんとかしちゃいましょう。
「ただラインは増やせそうだけど、木材が足りなくなるぞ。資材不足になるな」
「う~ん……森を拡張する必要あるかな?」
「あるな」
さっき見てきたエルフの森ですが、拡張したら動物が増えてましたね。
もっと拡張したら、もっと増えるような……。
大志の脳裏にも、ちらっとそれが横切っているようです。
「まあ良いか、森を広げちゃおう」
「わーい! 森がまたおっきくなるです~!」
横切っては居たようですが、まあいいか精神で森の拡張が決定されました。
これにはエルフであるハナちゃんも大喜びです。故郷の森に、どんどん近づいていくからですね。
でも、大丈夫なのかな? ……まあ大丈夫でしょう。なんかあったら、その時考えれば良いのです。多分そう。
「まあまあ、お仕事の話はこれくらいにして、のんびりフネにのるさ~」
「いいですね~」
「お魚釣りもするさ~」
「楽しみさ~」
「……ですね、そうしましょうか」
そうしてついついお仕事を始める大志ですが、今はのんびりお散歩という名目で、働き過ぎの彼をねぎらう時間なのです。
偉い人ちゃんがクルージングの提案をして、大志の暴走を停止させました。
上手いこと制御できてますね。さすが政治家です。
「こちら、試作品となっております。がんばって作りましたああああああ!」
しかし大志はお仕事から逃れられない!
そこにすかさず、木工大好きああああエルフが試作品のテストをねじ込んできました。
二人乗りハンザの試作第二号っぽいですね。
「わわわきゃ~ん! かっこ良くなってるさ~!」
「試したいさ~!」
「凄そうさ~!」
試作品を見た偉い人ちゃんたち、わっきゃわっきゃと群がります。
船を見たら興奮する人たちなのですから。
「じゃあ、かわりばんこに乗って遊びましょう」
「そうするです~」
「それで良いさ~」
こうして新型ハンザのテスト兼船遊びが決まり、かわりばんこに乗るようですね。とっても楽しそうです。
お仕事も兼ねた遊びですから、まあ息抜きにはなるかな?
「大志、それ試作品だから、乗るときは海竜を随伴させとけな」
「わかった」
「ぎゃ~う」
ただしテスト中の試作品なため、安全のために海竜ちゃんは随伴するみたい。
ちょうど良いので、二人乗りのハンザに乗らない人は、海竜ちゃんにライドオンです。
最初は大志とハナちゃんがテストするようですね。
「それじゃあ、進水するよ」
「あい~」
「うちらも、随伴するさ~」
「ぎゃう~」
さわやかな風を捕らえて、するするとハンザが動き始めました。
海竜ちゃんの背中に乗った偉い人ちゃんたちも、併せて進みます。
「お、良い感じだね」
「なんか安定してるですね~」
改良型は、どうやら良い感じみたい。帆に風を受けて、まっすぐ進んでいます。
頭が重い問題も解決したようで、順調にクルージングできている感じかな。
「わきゃ~ん、風の力だけで、こんなに速いのは凄いさ~」
「早く乗りたいさ~」
「楽しみさ~」
「ぎゃうぎゃ~う」
随伴している偉い人ちゃんたちも、滑らかに進む改良型を見てお目々がキラキラですね。
早く乗りたくてうずうずしています。
「一通り安全確認は出来ましたので、交代しましょうか」
「わきゃ~ん! 乗るさ~」
「うちもさ~!」
「うちらなら、三人乗れるさ~」
やがて一通りの確認は終えたようで、今度は偉い人ちゃんたちが乗船です。
ちいさな体のお供ちゃんたちは、一つの座席に二人座っていますね。
まあ体の大きい偉い人ちゃんと、バランス的にはちょうど良さげかも。
「ではでは、出発するさ~!」
「行くさ~」
「わくわくするさ~」
はすはすと興奮しながらも、ドワーフちゃん乗船のハンザが出港!
良い感じで水上を滑るように移動していきます。
「わきゃ~ん! これは滑らかさ~!」
「コレ下さいさ~!」
「うちも発注するさ~!」
「みなさん、それまだ試作品です」
「未完成ですよ~」
「ぎゃう」
はたして、試作二号機は偉い人ちゃんたち大満足のようです。
もうすでに発注かけようとしてますが、大志とハナちゃんに冷静に突っ込みされました。
そうそう、市販するにはもうちょっと検証しましょうね。
「わきゃきゃ~ん! 凄い船出来たさ~! お隣の湖にも、お知らせするさ~」
「きっと驚くさ~!」
「お隣に、わきゃっとイワせてやるのさ~!」
「みなさん、それまだ未完成です」
「出来てないですよ~」
「ぎゃうぎゃう」
ハイテンションでハンザに乗る偉い人ちゃんたちですが、まだ出来てませんからね。
そんな感じで試作二号機テストは順調に進み、ドワーフちゃん大興奮の一時となったのでした。
「あわっきゃ~……腕がぷるぷるさ~」
「うちら、力仕事は苦手さ~」
「書類仕事も楽じゃ無いけど、これはこれで大変さ~……」
そして調子こいた三人は、案の定腕がぷるぷるになりましたとさ。
文官ゆえに運動不足の三人なわけですので、もうちょっと鍛えましょうね。
「船を堪能したところで、そろそろ村に戻ろうか」
こうして楽しい散策と船遊びは終わり、村に帰る時間になりました。
大志も十分な息抜きが出来たようで、みんなも安心ですね。
「そうするです~。お夕食の仕込み、するですよ~」
「流石お料理上手のハナハ先生だね、今日も手料理が楽しみだよ」
「ぐふ~」
最後に大志のうかつな発言により、ハナちゃんぐにゃりました。
腕がぷるぷるドワーフちゃんと、ぐんにゃりハナちゃんを、村まで輸送する任務が発生です。
やっぱり仕事から逃れられない大志なのでした。
「はいはいみなさん、村に帰ろうね~」
「ぐふふ~」
「あわわきゃ~ん、腕が~、腕がぷるぷるさ~……」
「調子こいたさ~……」
「おわったさ~」
「ばうばう」
とまあ自立不可能な四人を連れて、のんびりフクロオオカミ便で村に帰還です。
さてさて、こっちはのんびり出来たようですね。
それじゃあ、あっちのユキちゃんたちはどうなっているかな?
ちょっと覗いてみてみましょう。
「う~ん、この魔術回路ではダメか……」
「じゃあこっちは?」
「ピポポ」
「えっ爆発するの?」
「ピポ」
「危なかったよ~」
「繊細すぎるね。増幅石は難しいね」
……ユキちゃんの持ち込んだノートPCに、AIちゃんが。
キツネさんのパソコンも、乗っ取られてませんかね?
でもなんだか、AIちゃんが画像を表示して意思疎通出来ているみたい。
大志の知らぬ間に、お仕事のお手伝いをしているようです。なんて偉い子なのかしら。
ちなみに妖精さんたちは、テーブルの上でおねむです。色々こねてお疲れかな?
「ピポポピ」
「……この接続は盲点であった」
おや? 今度はなんかの接続図みたいなのが表示されましたね。
魔女さん的には、盲点だった感じの回路っぽいです。
「でも危なくない?」
「ピッピポ」
「なるほど、ここで出力を弱めちゃうんだ」
「ピポー」
ユキちゃんからの指摘には、ピコピコと画像を表示して安全性を証明しています。
これは頼もしいかもしれません。
「ねえ、こんなのどうやって考えたの?」
「ピポ~」
「……ム~の新刊にあったと」
「ピポ」
「それはソースがちょっと……アレかな……。あの雑誌ガチなものは危ないからって、あえて載せないの」
「ピポ~……」
……微妙な雑誌を参考にしたようで、魔女さんに却下されてしまいました。
AIちゃんガックシですね。どんまいですよ。
「まあ、コツコツやりましょう」
「そうですね」
「慌てても、爆発したら嫌ですから」
「慎重にやろうね」
「安全第一だよ~」
「ピポ~」
気を取り直して、検討会の再開ですね。
……でも、そこの娘さんたち、気づいてますかね。みなさん端から見ると、パソコンと会話する怪しい人たちになってますよ。
うしろで、帰ってきた大志がニヤリとしながら見てますからね。