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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十四章 赤い星
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第十六話 再会


 魔女さんとラミアっぽいひとたちが、わが村に突如訪れた。

 相手方のお願いもあって、この四人を遺跡の祭り会場に案内する事となる。

 現地には無線で状況やおひいさまの事も説明しており、今待機して貰っているところだ。


「わー! なんかお花畑がある!」

「不思議なところだよ~」

「整備がしっかりしているね! 手入れが行き届いてるね!」


 案内途中は、村にある珍しい光景にみなさんお目々キラキラだ。

 あとはこの村について、軽く説明しておかないとな。

 それに伴い、いろんな人がいるんだよっていう事を、事前に認識してもらわないといけない。

 でないとまた大騒ぎになる。


「えっとですね――」


 ひとまず軽く、この村にはいろんな種族が住んでいる事、今はお祭り中なことを伝える。

 もちろん難民保護の役割があり、村人はいろいろあって困った結果ここに避難してきた事も。

 加茂井家が陰からサポートしてくれていて、ユキちゃんは関係者であるともぶっちゃける。


「ユキがそんなことを」


 ユキちゃんの話をすると、魔女さんびっくり仰天だね。


「大変に助かってます」

「ああ、あの若いお稲荷さんの子ですか」

「良い毛並みしてるよね~」

「お得意さんだね!」


 ラミアっぽい人たちも知っているというか、エステさんの研修で色々話したから顔見知りなわけで。

 話しぶりからすると、キツネさんの正体完全にバレてましたな。

 うかつな娘さんであるというか、あれでバレないほうと思う方がどうかしているというか。


「そんなわけで、不思議な人たちや動物たちが、ここで暮らしているのです」

「ある意味、ユキの家もそうですね」

「まあ似たようなものですか」


 魔女さんはこのへん理解はあるか。なにせ、ユキちゃんちを知っているからね。

 あの領域にも不思議な一族が住んでいるし、精霊っぽい存在がわんさかだ。

 ただ異世界とつながっている領域というのは、うちを含めてそんなにあるかはわからない。

 いくらかはあるだろうが。


「ちなみにですが、ここへはどのようにして来られたのですか?」

「レンタカーを借りて、私が運転してきました」

「なるほど」


 隠し村までは、車で来たらしい。魔女さん運転か。

 車が無いと「門」まで来るのはキツい場所なので、当然とも言えるな。


「私も免許はあるのですが、運転しながらこの便利なやつを見るのは無理でして。お願いしたのです」

「そうなんですか」

「私は免許もってないよ~」

「私も年がちょっとね!」


 シカ角お姉さんも免許はあるらしいが、まあナビゲーター役してたってことだな。

 残りの二人は免許取ってないみたいだけど、お姉さんが持っていればなんとかなるって感じか。


「ちなみに車はAT限定ですかね」

「ええまあ。マニュアルだと、クラッチ操作がその……」

「ですよね」


 さらに興味本位で確認してみると、シカ角お姉さんはやっぱりAT限定だった。

 下半身が蛇っぽいから、半クラッチできないもんね。


「WRXとか運転してみたかったのですけど」

「!?」


 そんな雑談もしつつ、順調に遺跡まで進んでいく。


「もうすぐ着きますので」

「はい」

「おひいさまだよ~」

「早く会いたいね!」


 おひいさまに会えるという期待は、微妙な感じがするのだけど。

 ともあれ確認してみないことには始まらずだな。


「あ、見えました。あそこです」


 やがて遺跡に到着し、入り口では数名のエルフたちとハナちゃんが待っていた。

 親父と爺ちゃんもいるね。


「大志、その方たちか」

「そうだよ。一通り説明してある」

「こりゃまた、べっぴんさん揃いだな」


 親父と爺ちゃんは、ラミアっぽい方々を見ても普通の対応だ。

 まあ異世界人というか、ちたま人以外の人間を見慣れているからね。


「タイシタイシ~、おかえりです~」

「ハナちゃんただいま。待機中は大丈夫だったかな?」

「みんなで、にぎやかにやってたですよ~」

「なるほど」


 ハナちゃんも特にびっくりはせず、のんびりした感じだ。

 というか待機中に賑やかにやっていたらしい。


「エ、エルフ……!?」

「そうなんですよ。まあそれっぽい方々が暮らしてまして」


 そして魔女さんはというと、エルフたちをみてぷるぷるしている。

 まさかそういう存在が長野で暮らして、順調に長野県民化しているとは思わないだろうな。

 まあ顔合わせは終わったので、次は本題のハナちゃんを紹介しよう。くねくねマスターだ。


「そんなわけで、この子がくねくねの踊りを極めた凄腕です」

「うふふ~。はじめましてです~。おどりには、じしんがあるですよ~」


 ハナちゃんの隣に移動し、あたまをなでなでしながら紹介してみる。

 すると――。


「ち、違ったわ……」

「ここまできて……」

「はふう~……」


 案の定人違いで、ラミアっぽいひとたちガックシ状態である。

 というかハナちゃんが「はじめまして」とか言っている時点でダメだったのだ。


「あえ? ハナなんかわるいことしたです?」

「いやいや、ハナちゃんは悪くないよ。人違いだったってだけで」

「そうですか~」


 あまりに落ち込む三人を見て、ハナちゃんも心配そうである。

 でも単なる人違いだから、ハナちゃんが何かをしたってわけではない。

 くねくねダンスが見事過ぎただけなのだ。


「みんな、げんきだすですよ~」


 あまりにガックシ状態の三人だけど、ハナちゃん元気づけのためにくねくねと踊り始めた。

 この踊りが発端らしいので、とりあえずアピールかな?


「う、うわ! 見事なくねくね!」

「これはすごいよ~、まねできないよ~」

「憧れのくねくねだね!」


 そしてハナちゃんの踊りを見て、三人がガババっと起き上がり、お目々キラキラになった。

 蛇っぽい下半身なだけに、こういうの好きらしい。

 ただハナちゃんと同じようにくねくねしようとしているが、腕とか上半身とかはマネ出来ないようだ。

 だよね、そこ曲がらないよね。


「でも、ヘビさんとか縁起が良いですね」

「めでたいな~」

「いいことありそうじゃん」


 ちなみに周りで見ていたエルフたちは、なんだかニコニコだ。

 そういや、蛇は縁起がいいって文化だったか。


「あ、あら。友好的だわ」

「縁起が良いらしいよ~」

「そういえば、私たちを怖がらないね、不思議だね」


 このエルフたちの視線を見たり発言を聞いて、ラミアっぽいみなさん意外そうな顔だ。

 まあ姿を偽っていたらしいから、色々あったのだろう。

 というか、普通のちたま人にまじって暮らしていたんだよね?

 そりゃ大変なのもうなずける。怖がられるの間違いなしだし。


「それで大志、これからどうする?」

「あ~、どうしよう」


 一通りの紹介は終わり、ラミアっぽい方々の人探しは人違いという結果となった。

 じゃあこれからどうするかと、親父が聞いてきたわけだが……どうしよう。


「タイシタイシ、げんきだしてもらうために、おまつりにさんかしてもらうですよ~」

「まあ、それが良いか。せっかくだからね」

「あい~! せっかくだからです~」


 目的叶わずで落ち込んじゃった三人だけど、ハナちゃんの踊りでくねくねする元気はある。

 せっかくだからお祭りに参加してもらい、ひとまず励ましを兼ねて、息抜きがてらもっと元気になってもらおうじゃないか。


「ですね」

「それがいいべさ」

「おさけのんで、もりあがろうじゃん」


 エルフたちもそれで良いようで、酒瓶を取り出してわははとにこやかだ。

 俺もお祭り再開したいし、もうそれでいいよね。


「ひとまずですが、私共のお祭りを楽しんで元気を出して頂ければと」

「よろしいのですか?」

「探し物は、あわてても良い結果は出ませんから。ご心配でしょうが、今は英気を養う時ですよ」

「ですかね……」


 落ち込み気味のシカ角お姉さんを言いくるめて、お祭りしようとそそのかす。

 このままさよなら、というのもちょっとアレなので。

 お酒を飲みながら、色々細かい話を聞きたいのもある。


「色々お話を聞かせてください。お酒はイケますか? 飲み放題ですよ」

「お酒は大好きです!」

「飲み放題だって~! 参加するよ~!」

「食べ物も沢山ありますので、無料で食べ放題です」

「食べ放題はいいね! 命の洗濯だね!」


 お酒飲み放題というワードで、シカ角さんとヒツジ角さんがフィッシュ!

 うわばみという言葉があるが、蛇さんなだけに大酒飲みなのかもしれない。

 ヤギ角の元気ちゃんは、食べ放題で釣れた。まあ見た目中学生っぽいから、年齢的にお酒NGなのかもね。


「おねえさんも、どうぞです~」

「良いのかしら?」

「もちろんです~」


 当然魔女さんもお誘いして、ひとまずお祭りを楽しみながら話を聞こう。

 子猫亭のお料理もあることだし、沢山食べてもらいたい。


「では、会場に行きましょうか。今日はお花見をしているんです。桜が奇麗ですよ」

「わあ! 桜ですか。良いですね!」

「風情があって良いよ~。桜を見ながら一杯やるよ~」

「ここはまだ桜が咲いてるんだね! 楽しみだね!」


 お花見と聞いて、ラミアさんっぽい方々も笑顔になった。

 なんだか日本人的だな。まあ花を見ながらお祭りは、何処でもやるか。

 そんなわけで、みんなで祭り会場へと移動する。


「うわわ! すっごい大勢人が!」

「おきゃくさんだね! おだんごどうぞ! おだんご!」

「たくさんあるよ! おだんごたくさん!」

「おびただしいほど~」

「えええええ! フェアリーが! 大志さんフェアリーが!」


 会場入りすると、さっそく妖精さんの哨戒部隊が察知し、お団子を爆撃してくる。

 魔女さんは妖精さんたちを見て取り乱しているが、その間にもお団子はどんどん増えていく。

 物量の勝利だね。


「おだんごどうぞ! どうぞ!」

「あら、ありがとう」

「甘くて美味しいよ~」

「沢山貰っちゃったね!」


 ラミアさんっぽい人は、妖精さんを見てもそれほど驚いていないな。

 そういやハナちゃんやエルフたちを見ても、普通だった気がする。

 まあ自分たちは蛇っぽい下半身をしているうえ、ちたま人に交じって生活していたわけだ。

 いろんな種族がいると、わかっているからなのかな?


「ねえユキ! フェアリーがいるよ! ほかにも不思議な人たちが沢山!」

「ふふふ、驚いたでしょう」

「こんなのを隠していたなんて、ずるいよ」

「お仕事だもの」


 あ、ユキちゃんもこっちに来たね。魔女さんとキャッキャしている。

 でも耳しっぽあるユキちゃんも、不思議な人カテゴリなんだなこれが。

 普通のちたま人である俺からするとだけど。

 まあそれはそれとして、他のみなさんにも紹介を――。


「!?」

「!!!!」

「~!」


 と思っていたら、なんかクモさんたちが飛び上がって驚いている。

 咥えていたキャラメルをぽろっとこぼしたよ。


「ミュ!? ミュミュ~ン!」

「ミュミュミュ!」

「ミュ~!」


 あれ? 羽ネコちゃんたちもだ。慌ててこっちに飛んできた。


「ガア!」

「ガアガア!」


 カモノハシちゃんもだ。みんなどうしたのだろう?

 走ってこっちにやってくるぞ?


「あら! みんな! どうしてここに!?」

「無事だったんだね! 良かったね!」

「心配してたんだよ~!」


 と思っていたら、ラミアさんっぽい三人もクモさんや動物たちの元へと、するるっと移動していく。

 ……知り合い、なのか?


「~」

「この手触り、間違いないわね!」

「ミュ~ン」

「ごめんね、心配かけてごめんね」

「ガア!」

「元気そうで、安心したよ~」


 シカ角お姉さんは、クモさんたちをなでなでして間違いないと言っている。

 ヤギ角元気ちゃんは、羽ネコちゃんに群がられて謝っているな。

 ヒツジ角おっとりさんは、カモノハシちゃんを抱きかかえた。


「あえ? しりあいです?」

「そうなの! この子たちが戻って来なくて、心配してたの!」

「諦めてたよ~」

「奇跡だね!」


 この様子にハナちゃんが知り合いなのと聞いているが、どうやらそうらしい。

 ……一体全体、どう言うことだ?

 この動物たちは、フクロイヌが運んできた子たちなのだけど……。


「……これはこれは、珍しい人たちが現れたねえ」


 頭大混乱をしていると、ユキちゃんのお婆ちゃんがやってきた。

 動物たちと再会を喜ぶ三人を見て、珍しい人とか言っている。

 何か知っているのかな? 聞いてみよう。


「あの、この方々をご存じですか?」

「本人たちとの面識はないけど、種族は知っているよ」

「本当ですか!?」


 どうやらどんな種族かは、ご存じらしい。教えて貰おう。


「して、その種族とは」

「大昔は沢山いたけど、いつの間にか絶滅した……龍の一種族さね」

「龍!?」

「大陸の方じゃ、ナーガとかラミアとか呼ばれてたけどね、もうどこにも居ないよ」


 お婆ちゃんの話を聞くに、龍の一種らしい。こんなドラゴンがいるなんて、俺は知らなかった。

 いや、絶滅したって話だから……かつてはいた、という事だ。

 それがなぜ、現代に存在しているのだ。


「もう、いないはずなのですよね?」

「本来ならね。私もびっくりだよ。大和朝廷が出来上がるころには、もう居なかったはずさね」


 かなりの昔に、いなくなってしまったらしい。

 というか大和朝廷がとか言っているけど、なんでそれ知ってるのかな?

 まあ、このお婆ちゃんは「昔から」うちの世話をしてくれている権現様なわけで、神話の時代もある程度わかるか。


 しかし、と言う事はこのドラゴンさんたちは……一体何者なのだろう?


「キャー! 先生方! ご無沙汰してます!」

「あら、あなたここの住人だったの?」

「そうなんです! ここで日本語とかエステの通信教育勉強してました!」

「それは偉いわね!」


 あ、エステさんもドラゴンさんの所へ駆け寄って、キャッキャしている。

 何者かと考えたが、そういや公的にはエステサロンの経営者で、長野県在住ドラゴンさんか。

 おまけに普通自動車運転免許も持っており、身分保証もバッチリであるわけで……。

 かなり肩書しっかりしてた。あとで名刺交換しておこう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 入守さんちのヘビドラゴン と言う訳でくねくねを極めしハナちゃんと対面したら、案の定人違いだった皆さんですね。 今まで平民として暮らしてたのに実は王家の子孫だったとか、一歩間違えばハナちゃ…
[一言] 新たなるマイスターの誕生です!! いや?! クイーンなのかも? しか~し、他にも、いらっしゃる様です、 くねくね王の座は誰の物に? 爬虫類が好き! と言う方はいっぱいいらっしゃる様ですが、…
[一言] おとうさんにだまs、もといお薦めされてユキちゃんが乗ってそうな気がする。>>WRX 雪道に4WDは必須だからね! マニュアルの方が安心だからね! 仕方ないね!
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