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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十四章 赤い星
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第十二話 集まる人々


 四月末に近づき、とうとう遺跡の桜が満開に近づく。

 これで催事の予定が確定できた。AIちゃんの予想通りである。


「もう大丈夫だね」

「そうだな、日程を確定させよう」

「子猫亭にも予約しておくわね」


 親父たちが準備を手伝ってくれるので、とても助かる。

 爺ちゃんたちも、そろそろ里帰りするはずだ。

 あとはユキちゃんとも、打ち合わせしないとだね。


 こうして慌ただしく動き始めたわけだけど、久々のお祭りである。

 すっごい盛り上がるだろうから、今から楽しみだ。



 ◇



「よお大志、帰ってきたぜ」

「久しぶりねえ」

「あ~にゃ」


 予定されたとおり、爺ちゃんたちが村に訪れた。

 住人が加わったりと変わった所もあるので、まずは報告会だね。

 湖畔リゾートにあるリザードマン経営のカフェテラスにて、お話だ。


「まずは報告なんだけど、村に住人が増えたよ」

「また増えたんか」

「どんな種族かしら?」


 始めに村人? が増えた事を報告すると、爺ちゃん婆ちゃんがまたびっくりしていた。

 こんなに短期間に人? が増えるのは俺の代で初めてだからね。


「二人ほど増えたんだけど……今紹介するね。お二人とも、どうぞ!」

「~」

「――」


 声をかけると、バックヤードからふよよと、二人のオバケさんが出てきた。

 なんだかペコペコしていて、腰が低い。


「大志、これはなんだ?」

「ほんものオバケだよ」


 爺ちゃんがぽかんとして聞いてきたけど、オバケさんなんだなあ。

 それ以外は分からないのだが。


「大志ちゃん、これオバケなの?」

「そうらしい」


 婆ちゃんもこれには驚きらしく、目をぱちくりさせている。

 さすがにオバケが住人になるとは、予想不可能だよね。


「あにゃ~、オバケ~。ヨロシク! オバケヨロシク!」


 一緒に紹介を受けたシャムちゃんは、元気によろしくの挨拶だ。

 この子もオバケ怖くないんだな。

 うちの村では、オバケを怖がる人が少数派である。何かがおかしい。


「――!」

「!!!」


 そしてオバケたちは、シャムちゃんを見てめっちゃ驚いているようだ。

 ちたまには存在しない種族だけに、妖精さんと同じく衝撃的だったかな?


「~!」

「??」


 と思っていたら、めっちゃはしゃぎだしたぞ。

 あれか、アイ○ルーが実在しているようなもんだから、嬉しくなっちゃったかもだ。


「あにゃにゃ~」

「~」

「――」


 もうなんか大はしゃぎで、シャムちゃんと戯れ始めたね。

 このオバケたち、可愛い存在に目が無い感じがするよ。

 ともかく、平和的に紹介はできたかな。


「もうあれだな、細かいことは気にするの止めよう」

「そうねえ」


 この光景に、爺ちゃん婆ちゃんは何かを諦めたようだ。

 でも賑やかなのは良いことだよね! オバケが来たって、ええじゃないかと。

 それに俺はもうとっくの昔に、細かいことを気にするのは止めてるからね。

 慣れたとも言う。


「みんな、おちゃをもってきたですよ~」

「ハナちゃんありがとう」

「えへへ」


 一通り紹介を終えた頃、ハナちゃんがお茶とかお菓子を用意してくれた。

 いつも気が利く娘さんである。


「~」

「――」


 オバケたちもハナちゃんにペコリとお辞儀をして、お茶とかお菓子を食べ始めたね。

 この人たち、オバケなのに食事するんだよな。いつ見ても不思議だ。


「大志さ、オバケがバリボリ茶菓子食ってるんだが」

「そういうものなの?」

「わかんない」


 爺ちゃん婆ちゃんもこの光景は不思議なようで、二人して突っ込みをしてきた。

 でも俺もわかんないんだよ。オバケの専門家ではないので。


「大志は神経太いなあ」

「まあ大志ちゃんだから」

「タイシですからね~」


 良く分かっていないオバケと普通に過ごす様子を見て、祖父母からそんな評価を頂いてしまった。というかハナちゃんまで……。

 俺としては、結構繊細な方だと思うのだが。そんなに神経は太くないはず。


(おそなえもの~)

(あそびにきたよ!)


 とまあ和やかに過ごしていると、神様たちも遊びにやってきた。

 お供え物の気配を感じるとやってくる、食いしん坊さんたちだね。


「……そういや、神様も来てるんだったな」

「いまさらってことねえ」


 神様たちを見て、爺ちゃん婆ちゃんは納得した感じだ。

 そうそう、超自然的な神秘さんは、最初っからお客さんだったわけでね。

 ある日オバケさんが増えても、今更なのだ。

 エルフたちが訪れた時点で、すでに常識は破壊され尽くしておる。気にするだけ無駄ですな。


「まいにちにぎやかで、たのしいですね~」

「そうだね。楽しいね」

「あい~」


 ちなみにハナちゃんもオバケに慣れきったので、もう賑やかで良いねって感じで落ち着いておられる。

 ハナちゃんもなかなか、神経太い子ではと思うのだが。

 たくましさは指折りではないかな。


「うふふ~」

「あにゃ~」


 とまあそんな感じで、湖畔リゾートにてのんびり再会を楽しんでいた時のことだ。


(……はじめまして)


 突然、青い光の球がほよよよっと飛んできた。

 謎の声は「はじめまして」とか言っているけど……。


「あえ? はじめましてです?」

(……あそびにきました)

「あそびにきたですか~」


 この異常事態に、ハナちゃんナチュラルに対応している。

 なんか遊びに来たとか言っているけど……。


(おともだち~!)

(ひさしぶりだね!)

(……ひさしぶり)


 とか思っていたら、うちの子たちがキャッキャとはしゃいでおる。

 お友達?


「おともだちですか~」

(そうなの~)

(そとにでてくるのは、めずらしいね!)

(……せっかくなので)


 良く分からないけど、せっかくなので遊びに来たと。

 まさか、この青い光の球ちゃんは……神様なの?


「やあやあ、おひさしぶりです」

「あそびにきたかな~」

「おまつり、まにあいました?」


 と思っていたら、平原のお三方がやってきた。

 お祭りに間に合ったかと確認しているので、催事目当てで来たっぽいね。


「わたしもきたんだよねえ。おまつりがあるってきいてさ」


 あと一緒に、平原の族長さんもリアカーに乗っていた。

 この人も、催事目当てなんだな。


(……つれてきてもらった)

「あ、かみさまみっけ」

「とんでっちゃったから、あせったかな~」


 そして平原の人たちが集まったら、こんな会話が聞こえてきた。

 謎の声によると、連れてきて貰ったとな。

 と言うことはだよ、この青い光の球ちゃんは……平原の人たちの森にいる、神様なのかな?


「まさかですが、青い方は……そちらの神様ですか?」

「そうらしいです」

「めったにみつけられないかな~」

「おそなえものがあると、ひっそりともっていくねえ」

(……ぶきようですから)


 確認すると、やっぱり平原の人たちの神様らしい。

 どうにも引っ込み思案なゴッドぽいけど、謎の声によると不器用らしい。

 口下手ってことなのかな?


「ほ~らまた増えた」

「油断するとこれねえ」

「あにゃにゃ~」


 この様子を見ていた爺ちゃんたち、一層あきれた顔で俺を見るわけだ。

 しかし俺が原因ではないわけですよ。

 隠し村を観光地にしたのは俺だけど、それとは関係が無いはずだ。多分。

 まあ何にせよ、観光客の神様いらっしゃいだね!


「ようこそいらっしゃいました。存分に楽しんで言って下さい」

「いらっしゃいです~」

(……おせわになります)


 静かな感じのブルーちゃんだけど、遠くからようこそだね。

 お友達同士、楽しく過ごして頂きたいものだ。


「さっそくですけど、おそなえものですよ~」

(……おそなえもの!)


 しかし食いしん坊なのはうちの子たちと同じようで、ハナちゃんがお菓子をお供えするとものすごい早さでやってきた。


(……おいしい)

「たくさんあるですよ~」


 ブルーちゃんは静かだけど、食いしん坊さではなかなかだな。

 今後のもてなし方が、分かった気がするよ。



 ◇



「ということで、催事が間もなく開催となります」

「「「わー!」」」


 催事があと数日後となり、いったん村人と打ち合わせをすることになった。

 こぢんまりと一族だけでやっていたのだが、いつの間にか大きな祭りになっているからね。

 認識会わせは必要だってことで、大雑把だけど話し合いだ。

 二百人を超える規模のお祭りになるからね。

 ブルーちゃんが来た翌日、あっちの森とかきのこが美味しい森の人たちとかもやってきて、もう大騒ぎになっている。

 今年の祭りは過去最大級なのだ。


「出来合のお料理も用意しますが、みんなでお腹いっぱいの量は無理ですね」


 まずユキちゃんがお料理について、方針を説明してくれた。

 子猫亭にオードブルをお願いするけど、流石に全員分お腹いっぱいは無理である。

 おつまみ程度って感じだな。でないと、大将たちがパンクしてしまう。


「そこはハナたちが、あっちでおりょうりするです~」

「ひさびさにうでをならすわよ~」

「おかあさん、いまケガしたよね」


 でも村には心強いお料理自慢がおられるので、みなさんにお願いだね。

 腕グキさんは、祭り当日までにケガを治しておいて頂きたい。


「うちらも、おりょうりてつだうさ~」

「ケガしないように、うでをならすさ~」

「おさかな、たくさんやくさ~」


 ドワーフちゃんのお料理自慢も、参戦を表明だね。

 主にお魚料理やじゃがいも料理になりそうで、それはそれで楽しみだ。


「わたしたちも、おだんごつくるね! おだんご!」

「たんまりこねるよ! こねちゃうね!」

「まかせてください。まかせてください」


 妖精さんたちも、やる気十分だね。でも今量産する必要はないですよ。

 現時点でみるみるお団子が増えていくけど、お祭りは数日後だからね。


「演し物がある場合は、遠慮無くお祭りの最中にいきなり始めて良いです」

「わかったさ~」

「みんなで、きょうりょくするさ~」

「いきなりでいいんだね! いいんだね!」

「なんかやろうね! なんか!」


 お祭りを盛り上げる演し物は、特に予定は決めず好きなタイミングでどうぞだ。

 こちらは祝詞(のりと)を読み上げて貰い、お供え物が出来れば儀式は完了だからね。

 そのあとはもう、フリーダムフェスティバルで問題ない。

 一歩間違うとサバトになるけど、それはそれで面白いかな。


「おれらも、なんかやる?」

「つっても……じみなのしかないじゃん?」

「そんなハデなのは、にがてよね~」

「みんなじみとか、ふるえる」


 エルフたちも、何か演し物をしようかとひそひそ話を始めた。

 しかし微妙に地味な物しかないらしく、難航している感じだよ。

 まあド派手なのは、メカ好きさんの離脱と、電きのこ勇者向け試食会位なのは確かだ。

 色々考えてみて下さいって事で。


「……ちょうど良いな」

「あえ? おとうさんどうしたです?」

「いや、何でも無いよ」

「おとうさん、わるいかお、してるです~」


 おや? なんだかヤナさんがニヤリとしているけど……。

 なんかあるのかな?


「大志さん、お酒の方は大丈夫ですか?」

「え? ああお酒ね。みんな量産してるって聞いてはいるよ」


 怪しげなヤナさんに気を取られていると、ユキちゃんからお酒について確認された。

 うねうねちゃんとタッグを組んで、沢山作っているとは聞いている。

 念のため、改めて確認しておこう。


「みなさん、お酒はほぼ自前で作った物をアテにしてますが、量は大丈夫ですか?」

「そりゃあもう、たくさんつくってるじゃん」

「おびただしいりょうに、なってるのだ」

「うちらも、しこんでるさ~」

「のみごろのやつ、たんまりあるさ~」

「こっちもだいじょうぶだよ! だいじょうぶすぎるよ!」

「あびるほど~」


 確認してみると、みなさん自信たっぷりな感じである。

 むしろ、どれほど大量に製造しているかと不安になるレベルだ。

 おびただしいとか、たんまりとか、あびるほどとか不穏ワードがいくつもある。


「まあ、大丈夫そうって事で」

「ですかね」


 色々不安だけど、お酒のこととなるとみなさん止まらない。

 なるようにな~れと。


「ひとまず、催事に関しては以上ですかね。何か要望や問題がある場合は、ご相談下さい」

「「「はーい」」」


 こうして催事に向けて、村ぐるみで準備が始まった。

 当日は楽しいお祭りにしましょうだね!



 ◇



「おれらも、おまつりさんかするべ~」

「やきものの、しさくひんももってきました」

「だいぶじょうずに、やけるようになったあああああ」

「やきもの、いいかんじなんですよ!」

「これは、あたらしいまじょっこのいしょうなの」


 さらに参加者が増えたけど、平原の焼き物五人衆だね。

 村の温度が若干上がった気がする。


「そちらはやきものですか。ぼくはもっこうがしゅみでしてああああ」

「おたがい、うちこめるものがあるのは、いいことですなあああああ」


 特に二人が暑い。熱気みなぎるよ。

 まあこの職人たちはおいといて、あにめさんのコスプレが新しいキュアのやつになっている。

 別の意味での職人になっている気がするのだが。


「わたしも、おやすみをいただきまして」


 そこに、エステさんが加わる。この人もエステマニアであり、熱く漲る向上心があるわけでね。

 もう村は真夏のような暑――おっと熱気だ。

 みんな、ちょっと落ち着きましょうね。


「大志さん、あのサロン、数日お休みなのですよ」

「そうなんだ」

「魔女さんから購入した感応石を、なんかに使うための研究期間とか、検証するためらしいです」

「技術開発するのかな?」

「多分そうじゃ無いかと思います。魔女さんが、技術指導のバイトをするって言ってましたから」


 ユキちゃんから情報が入ってきたけど、エステサロンがお休みなんだね。

 だからエステさんも、数日村で過ごせる訳か。

 いずれは通勤出来るように考えないといけないけど、それはまた後でかな。


「にしても、普通のエステサロンって、あんな高度な魔術触媒が必要になるの? 魔女さんの力を借りてまで」

「凄腕ですから!」


 おっと、ユキちゃんの目が虚ろになった。

 あの触媒を用いて、さらなる美容向上能力を手に入れたサロンを、幻視しているかもだよ。

 まあその辺の情報は、エステさんやユキちゃんから入ってくるよね。

 定期的に確認するようにしておこう。

 変なことに使わないと思いたいけど、念のためね。

 まあ魔女さんが指導するらしいから、そうヤバいことにはならないだろうけど。


「ユキ、ハナたちとおりょうりのれんしゅう、するです~」

「そうね、作りやすくて美味しい献立、みんなで考えようね」

「あい~」

「わきゃ~ん、うちもさんかするさ~」

「わたしたちもだね! わたしたちも!」


 何はともあれ、催事の準備は着々と進んでいく。

 あと数日で、ドでかい祭り(当社比)の開催だ。

 盛り上がっていこう!


「大志さん、お祭り楽しみですね」

「ああヤナさん、そうですね、楽しみです」


 お料理練習に向かうハナちゃんたちを見送っていると、ヤナさんが話しかけてきた。

 微妙に悪い顔をしているけど、まあ言うとおりお祭りは楽しみだ。


「もうすぐだよ」

「しゃっしゃ~」


 でもなんでヤナさんは、うねうねちゃんの入った瓶を持ち歩いているのだろう。

 仲良しなのかな?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 祭事だョ!全員集合 と言う訳で祭だと伝えたら、わらわらと集まって来る皆さんですね。 ちなみに大志とユキちゃん以外は、いつもやってる飲み食いとと変わらない模様。 キャパシティー?なにそれ…
[一言] すっかり日常になってしまった、お化けちゃん達、 たまに帰って来たら、なんか普通にいる! 家では、前に居たワンコが居なくなり、かってのお気に入りの場所を見ては、号泣していました、やっぱりワン…
[一言] いよいよ楽しい催事の始まりですね。しかし、祖父母やアイ〇ルーちゃんも戻ってきたうえ、新しい神様も参加ですか。神様増えますねぇ。後何柱いらっさるのかしら(笑) 後2柱いれば、ゴッドファイブとし…
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