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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十四章 赤い星
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第十一話 進行する計画


「わきゃ~、むらさきのやつ、あつめたさ~」

「これでフネがかえるってきいたさ~」

「あこがれのフネさ~」


 エルフィンに船を見学に来るドワーフちゃんが、例の感応石を持ってくるようになった。

 噂が広まるのは早い。


「割と集まりましたね」

「それなりです~」


 感応石を集めるための川底浚いで、同時に砂金やら貴金属も集まる。

 ほかにもドワーフちゃんの金属加工製品などもあり、彼女たちの船調達資金集めに幅が出来て何よりだ。


「とはいえ砂みたいなのを集めるので、ドサっとまとめてって感じでは無いですね」

「ちまちまと、やってるさ~」

「てつをあつめるのと、おんなじさ~」

「がんばるさ~」


 鉱脈として採掘しているのではなく、川砂をふるいにかけて探しているから、そこはしょうがない。

 でもかけた労力に見合う収入は得られるので、輸出資源としては上々だね。

 砂みたいな感応石はお手頃価格でお求め易く、魔女業界で需要も多い。


「大志さん、魔女さんから大型の感応石は無いですかと連絡が来ました」


 ただ研究所とかは、大型のものを欲しがる傾向はある。

 大は小を兼ねるって感じだろうな。大きな鉱石を使わないと出来ない実験もあるのだろう。


 ――とくれば、だ。


「妖精さんにこねこねしてもらおう」

「ですね」


 我が村には貴重な鉱石を一体化出来る、凄い方々がいらっしゃる。

 きゃきゃ~いとこねて貰えば、すぐさま調達可能だ。


「じゃあお花畑にお願いに行こう」

「ですね」

「ハナもいくです~」

「うちらもいくさ~」


 ということで、みんなで妖精さんのお花畑へ向かう。


「おうさまこんにちは! こんにちは! おだんごだよ! おだんご!」

「おだんごたべるよね! おだんごどうぞ!」

「たんとおたべ~」


 現着すると、早速妖精さんたちが歓迎のお出迎えだ。

 まずお団子食べて爆撃に晒され、キロ単位でおやつを貰ってしまった。


「~」

「?」


 妖精タワマンに入り浸っているオバケたちも、賑やかさにつられて出てきたね。

 今日ものんびり過ごしているようで、何よりだ。


「あや~、おだんごおいしくなってるですね~」

「おかあさんきてから、もっとおいしくなってるよ! おいしくなってるよ!」

「おしえてますから、おしえてますから」


 ともあれ早速おやつを頂くと、ハナちゃんの言うとおり味が向上しておられる。

 どうやらサクラちゃんのお母さんである、モルフォさんが技術指導しているらしい。


「おだんごおしえてもらいに、あそびにくるこもいるよ! いるよ!」

「しょくにんわざだからね! でしいりだよ! でしいり!」

「みんなにおしえますよ、おしえますよ」

「きゃい~」

「きゃい~きゃい~」


 続けてサクラちゃんとアゲハちゃんが説明してくれたが、弟子入りとな。

 モルフォさんの後ろにいる子たちが、お弟子さんなのかな?

 また人口が増えている気がするのだけど、制御は不可能である。

 楽しいから良いのでは無いかな。


「……」

「???」


 なぜかオバケたちも、モルフォさんの後ろでふよふよ漂っている。

 まさか、この二人も弟子なの……?


「わたしもでしなんだよ! おだんごしゅぎょうしてるよ!」


 オバケが弟子になっている疑惑はさておき、イトカワちゃんもモルフォさんの弟子らしい。

 しかしその手に持っているのは……小惑星型ごま団子でござる。

 フリーダムなお弟子さんだね。


「タイシさん、しっぱいしたやつどうぞ! どうぞ!」

「い、頂きます」


 そして失敗作ということを隠そうともせず、おすすめだね。

 お味の方は……たこ焼きであった。


「まさかたこ焼きの味とは……」

「そのまんまたこやきだからね! たこやきだよ!」

「なぬ?」


 お団子では無く、まさにたこ焼きそのまんまであった。

 と言うか逆に、たこ焼きをこの形にするのが難しいのでは……。


「あや~、これはこれでおいしいですね~」

「ホントにたこ焼きですね」

「うけちゃった! まあたこやきだからね! たこやき!」


 興味を持ったハナちゃんとユキちゃんも試食して、やっぱり好評だ。

 まあ……言うとおり、たこ焼きだからね!

 どこでその技術を身につけたかは、謎なのだが。

 そしてたこ焼きにチャレンジした理由もミステリーである。

 イトカワちゃんは、ミステリアス妖精さんなんだね!

 人はそれを、不思議ちゃんと呼ぶ。


「――!」

「!!!」


 なお、オバケたちもイトカワちゃんのたこ焼きを食べて、衝撃を受けている。

 見た感じ小惑星ごま団子だけど、味はたこ焼きだからね。そりゃ驚くと思う。

 とまあ盛大に脱線しているけど、そろそろ本題に行こう。


「そうそう、今日はお願いがあって来たんだ。また石をこねこねして、大きくしてほしいなって」

「おしごとだね! おまかせ! おまかせ!」

「まあるくしあげるよ! ま~るく!」

「がんばるね! がんばるね!」


 感応石の砂が入った袋を見せると、おだんご自慢妖精さんたちが集まってきた。

 ではでは、お願いしよう。


「おだんごこねこね~」

「まとめておっきくしようね! しようね!」

「さいしょは、こつぶにまとめようね! こつぶ!」


 早速砂を手に取り、こねこねを始める妖精さんたちだ。

 綺麗なちょうちょの羽根がキラキラと光り、まずは砂を小石くらいにまとめ始める。


「!」

「――!」


 その様子を見ていたオバケたちも、なんかすごい驚いているな。

 ちたまオバケだと、こういう神秘は知らないだろうから無理も無い。


「おつぎはぜんぶまとめるよ! まとめるよ!」

「おかあさんおねがい! おねがい!」

「まかせなさい、まかせなさい」


 数名の妖精さんがまとめた感応小石は、モルフォさんがさらにまとめて仕上げだね。

 体が大きいので、成果物も大きくまとめられるというわけか。


「こねますよ、こねますよ」

「おてつだいするよ! おてつだい!」

「おいしくな~れ! おいしくな~れっ!」

「あまさばいぞうだね! あまさばいぞう!」


 モルフォさんがこねてまとめ始めると、サクラちゃんとアゲハちゃん、そしてイトカワちゃんもサポートに入った。

 みんなで協力して、羽根を光らせている。

 だがしかし、美味しくな~れとか甘さ倍増とかする必要はあるのだろうか?

 ま、まあ気にしないでおこう。


「できました! できました!」

「きゃい~! おかあさんやったね! やったね!」

「みごとなできばえだね! おみごと!」

「まねできない、まんまるさ~」


 やがてモルフォさんの仕上げが終わり、見事なまん丸の大きな感応石が出来上がる。

 流石職人だけあって、良い仕事ですな。


「……?」

「???」


 この一部始終を見ていたオバケたち、ぽかんとしている。

 まさか妖精さんたちが、こんな特技を持っているとは知らなかったんだろうな。

 たまにしか依頼しないからね。


「おだんごどうぞ、どうぞ」

「ありがとうございます」


 それはさておき、モルフォさんが仕上がったブツを手渡してくれた。

 手に取ってみると、素晴らしい出来である。高精度な球なので、これは実験室でも使いやすいだろう。


「しかし見事な出来映えですね、さすが職人技です」

「ほめられてしまいました! ほめられてしまいました!」

「きゃい~」

「きゃきゃきゃい~」

「おいしくなったよ! おいしく!」


 お仕事を褒めると、モルフォさんてれってれだね。

 お手伝いをした三人娘も、きゃいきゃいと喜んでいる。

 でも美味しくなったかどうかは、食べられない鉱石なので分からないでござるよ。

 まあ気にしないことにしよう。


「みんなありがとうね。お礼をしたいから、ご要望とかあるかな?」

「チョコがほしいよ! チョコだね!」

「おいしいやつ~」

「チョコとまんない~」

「あまいやつ~」


 お礼について確認すると、満場一致でチョコが良いとのことだ。

 アゲハちゃんとサクラちゃんとかは、どさくさまぎれに恍惚とした表情で板チョコをかじり始めたよ。


「ゆだんたいてきですよ、たいてきですよ」

「きゃ~い」

「そうなんだよ! たいてきなんだよ!」

「きゃきゃ~い」


 そしてモルフォさんはサクラちゃんのお肉をつまみ、イトカワちゃんはアゲハちゃんのお肉をつまむ。

 油断するとまたリバウンドするから、しょうがないよね。


「……?」

「?」


 お肉をつまみ合う微笑ましい光景を見ていると、俺の方にオバケたちが近づいてきた。

 出来上がった球形感応石に、興味があるのかな?

 と思っていたら――石の色が変わった!


「あや、いろがかわったです?」

「オバケさんに、反応してますね」

「~」

「――」


 この石って、オバケにも反応するんだ。凄く高感度なんだな。

 なんだか魔女さんの言うとおり、確かにいろんな現象を検知出来そうだ。

 上手く実用化出来たら、装置を購入させて貰うのも良いかもだな。


 ――ちなみに。

 今回仕上げた大型の球体感応石は、研究で使うにあたって極めて便利だったそうだ。

 球形のためどこから魔力を照射しても、ムラ無く数値が安定するとのこと。

 魔女さん業界大喜びの案件であった。

 ただし研究所の資金もあるので、今後はそうバンバン大口案件は難しいと思う。

 ぼちぼちと資金を稼いで、焦らずやっていきたいものである。



 ◇



 四月も中盤を過ぎ、エルフ重工もなかなか順調だ。

 資金が手に入ったのでそこそこ増員も出来て、量産が捗る。


「方針としては、とりあえず五百隻ほど標準船を作りまくり、在庫します」

「たんいがやべえ」

「ごひゃくとか」

「もっこうああああああ!」


 本当は受注生産が良いのだけど、今回は偉い人ちゃんから需要をまとめて貰っている。

 三千隻くらいだって計算結果が出ているので、まあ五百くらい在庫しても大丈夫だと判断しての方針だ。

 現在の所、出来たそばからハケていくので、在庫を持てるかどうかが怪しいレベルではあるのだが。


「ひとまず、ぼちぼち船を作ってじわじわと在庫を増やしましょう」

「「「おー!」」」


 ドワーフィンはそろそろ夜の時期に入るため、その期間中には在庫を増やせるはずだ。

 そうなればドワーフちゃんたちは冬眠に入るが、夜の時期しか出来ないこともある。

 色々計画していこう。


「タイシさん、タイシさん」


 気合いみなぎるエルフ木工部隊を湖畔で見ていると、偉い人ちゃんが話しかけてきた。

 何かご用かな?


「どうされました?」

「うちらのこも、ふねのつくりかた、べんきょうしたいってのがいるさ~」

「造船技術ですか」

「そうさ~。フネづくりがしたいってこも、いるさ~。こっちのフネをみて、ぎじゅつにびっくりしてたさ~」


 話を聞いてみると、ドワーフちゃんの中にも船大工になりたい子がいるようだ。

 彼女たちは金属加工も出来るから、造船に参加してもらえれば、また何か変わったことが出来るかもだな。


「それであれば、数名ですが受け入れは可能ですよ」

「それはありがたいさ~。こんどおはなしして、つれてくるさ~」

「お願いします」


 いずれはドワーフちゃんたちがインフラを整え、自力造船する時代も来るだろう。

 そのために今から種を撒くのは、無駄にはならないと思う。


「じっくりあせらず、やっていきましょう」

「わきゃ~ん、それがいいさ~」


 ということで、製造業の方はおおむね軌道に乗った感がある。

 こちらは慎重に手綱を握って、操業していこう。


「タイシタイシ~! じゆうにうごかせるようになったです~!」

「ぎゃう~」


 偉い人ちゃんとお話していると、今度はハナちゃんと海竜ちゃんの声が聞こえてきた。

 どんどんこっちに近づいてくる。


「これ、たのしいですね~!」

「ぎゃうぎゃ~う」


 やがてハナちゃんが、湖をすすすーっと移動してこちらの方へ近づいてきた。

 海竜ちゃんも随伴して、同じくやってくる。


「わきゃ~ん、あの『ハンザ』ってやつ、すごいさ~!」


 そう、研究開発事業として、まず小型ヨットである「ハンザ」の実用化を目指しているのだ。

 いまハナちゃんが乗っているのが、試作一号機だね。

 子供でも操船出来て、安全なのを売りにしようと考えている。


「まあ実物があるので、マネしただけですが」


 実際にちたまで実用化された参考例があるので、設計自体はそれほどでも無かった。

 ただ製造は別で、大きなキールの製造が割と難航したけど。


「つなぎあわせるの、だいとくいあああああ!」


 その難航した部分は、ああああ言っている木工エルフさんが、なんとかしてしまった。

 彼は高度な合板技術を持っており、大きな木を使って削り出しをせずとも、キールを作ってしまったのだ。


「エルフの木工技術、地味に凄い」


 ほんと地味なんだけど、職人技が光るんだよな。

 造船業は埋もれていた技術を掘り起こす、意外な効果が出ているね。


「うふふ~、それじゃつぎは、あっちにいってくるです~!」

「ぎゃうぎゃ~う」


 それはともかく、ライフジャケットを身につけたハナちゃんは、ハンザを操船するのが楽しいようだ。キャッキャと滑るように湖を移動している。

 海竜ちゃんも随伴しながら見守っているので、しばらく楽しんで貰おう。


「あれができあがれば、きがるにこっちにこれるさ~」

「たのしみさ~」

「べんりそうさ~」


 その様子を見ていたのか、ドワーフちゃんたちも集まってきた。

 いずれこの子たちにも試して貰い、ちまちま改良していこう。


「あやや~、かぜがふかなくなったです~」

「ぎゃ~う」


 まあ風が無いと、自力で漕がなくちゃいけないんだけどね。

 ちょうど凪になったらしく、ハナちゃんあややと立ち往生してしまった。


「ぎゃう~」

「ありがとです~」


 そう言う場合に備えて、試験では海竜ちゃんが引っ張って戻ってくる手はずにはなっている。

 また風が吹くまで、休憩しようね。


「ただいまです~」

「ぎゃうぎゃう~」


 やがてハナちゃんが帰還し、海竜ちゃんと一緒にぽてぽてとやってきた。

 ハンザが楽しかったらしく、満足そうなお顔である。


「ハナちゃんどうだった? 改善点とかあったら聞かせて欲しい」

「ちょこっとふあんていなかんじがしたです? あたまがおもいみたいな」

「あ~、重心の問題かな」

「かもです~」


 さっそく改善点があるらしく、不安定とのことだ。

 これは重心の問題か、トップヘビーなのかだな。またAIちゃんたちに検証してもらおう。


「あとあと、それなりにはやいから、ひとがいるところだとあぶないかもです?」

「それはあるね、人がいるところでは帆走(はんそう)を禁止するとか、考えよう」

「あい~」


 ハナちゃんは遊んでいたようで、しっかり改善点や懸念点を考えていてくれた。

 偉い子でとっても助かる。


「ハナちゃんえらいね~、これからも頼りにしちゃうよ」

「えへへ」


 頭を撫でて褒めてあげると、ハナちゃんとっても嬉しそうだ。

 まあお仕事はこれくらいにして、あとはのんびりして貰おう。


「それじゃあ、休憩しようね」

「あい~」

「うちらは、このフネをけんがくしていくさ~」

「きょうみあるさ~」

「おもしろいフネさ~」


 ドワーフちゃんたちはハンザに群がり、わきゃきゃと見学を始めた。

 俺とハナちゃんは、事務所で一服だ。


「おじゃましますです~」


 ガララと引き戸を開けて、ハナちゃんが事務所に入っていった。

 俺も後に続こう。


「あ、ハナちゃんとタイシさん、こんにちは」

「こんにちはじゃん」


 事務所にはマッチョさんとマイスターがいて、お茶をずびびと飲んでいた。

 おっちゃんエルフは現場監督中なので、交代で休んでいるぽいね。

 マイスターは、単に遊びに来ただけのようだけど。


「おちゃをいれるです~」


 事務所に入ると、ハナちゃんはもう勝手知ったる様子だ。

 お茶を淹れるために、魔法瓶の置いてある場所までぽてぽてと歩いて行った。

 その間に、俺はちょっと話をしておこう。さっきのハンザについてだ。


「ちょっとよろしいですか? あのハンザについて改善点が見つかりまして」

「どんなぶぶん?」

「どうも頭が重いみたいで、それが不安定さに繋がっているようです」

「なるほど~」


 マッチョさんに説明すると、ノートにひらがなでメモをしている。

 意外と字が綺麗なのがびっくりだよ。


「おれら、ああいうフネをはじめてつくったからな~」

「かぜのちからですすむのは、いろいろふくざつじゃん」


 彼らが言うとおり、エルフたちはカヌーは大得意だけど、帆を立てる構造はちたま流なので当然未経験なわけだ。

 重心バランスや、トップヘビーを避けるというノウハウはそれほど無い。

 これはちたま技術でサポートが必要だね。


「こちらで図面に修正を加えますので、また試作してみましょう」

「そうしよう」

「そんときはおれもなんか、てつだうじゃん」


 軽く話をまとめて、今後の予定を立てておく。

 話を通しておくだけでも、後々違うからね。


「みんな、おちゃをいれたですよ~」

「ありがとじゃん」

「ちいさいのに、えらいな~」


 そうしているうちに、ハナちゃんがみんなにお茶を淹れてくれた。

 とっても気が利いていて、マッチョさんの言うとおり小さいのに偉い子だ。


「ハナちゃんありがと」

「えへへ」


 また褒めてあげると、ニコニコしながらぽてっと俺の膝の上に座った。

 ちなみにさっきまでハンザで試験をしていたため、ハナちゃんは水着姿である。

 つまり俺のズボンに、水が染みてくる事件が起きているわけだ。


「タイシタイシ、なんのおはなししてたです?」


 水染みてるよ事件はともかく、ハナちゃんも俺たちの話に興味があるようだ。

 もっかい説明しよう。


「ほらほら、ハナちゃんが言ってた不安定だなってやつだよ」

「あれですね~」

「まあ、高いところに重い物を乗っけると、しょうがないんだけど」

「なるほどです~」


 ついでにトップヘビーはどうしても不安定になると、付け加えておく。

 ごくごく当たり前の物理現象であり、ハナちゃんも納得だね。


「あのハンザってやつだと、帆とそれを支える構造物を低くするか、軽くすれば解決できそうかなって思っているんだ」

「たしかに、かぜをうけるあのぬの、おもいですからね~」


 現状はハンザの帆を、麻布みたいなので作っている。それがまあまあ重いんだよな。

 まずはその辺の軽量化を試みて、ダメなら構造物再設計と行こうか。


「タイシタイシ、ぬのをかるくしたいなら、いいのがあるですよ~」

「良いのがあるの?」

「あい~」


 色々考えていたら、ハナちゃんから良いのがあると情報が入った。

 何か知っているのだろうか。


「それって何かな?」

「これですこれ~」


 聞いてみると、ハナちゃんが自分が着ている水着をつまんだ。

 ……ヤナさん謹製のやつだけど、もしかしてその素材かな?


「ハナちゃんの水着に使っている布かな?」

「ですです~。これ、クモさんにつくってもらった、ぬのですよ~」

「え? そうなの!?」

「あい~」


 俺の知らないうちに、クモさんから布の提供を受けていたらしい。

 そういやあの子たちは、自作で布を作ったりしてたな。

 ヤナさんはその素材に目を付けたのか。だから水着とか作れたんだな。


「これ、かるくてがんじょうだって、おとうさんいってたです~」

「そうなんだ。それじゃあ、今度クモさんに頼んで、検証してみよう」

「それがいいです~」

「ハナちゃん、良い情報教えてくれて、ありがとね」

「うふふ~」


 思わぬ所から布素材が手に入りそうだけど、エルフたちは放っておくと面白い事をするな。

 俺の知らぬ間に、色々試して実用化していたりと、たくましい方々である。

 やっぱり、ある程度好きにさせるのが良いんだろうな。

 まあ言わなくても、けっこう好き勝手に自由研究している気配はあるのだが……。


「ハナも、あのぬので、うらごしとかしておりょうりつくってるですよ~」

「そうなんだ」

「ようせいさんたちがつくってる、あのおだんごのこしあんとか、それですよ~」

「自分が知らない間に、技術が発展している……」

「みんな、そういうのすきですからね~」


 というか早速応用例が出てくるあたり、ほんとたくましい。

 でもまっとうな例でほっと一安心だ。

 いつの間にか変なの作ってるからね。特にヤナさんが油断ならない。

 あの人、失敗作を台所の棚に隠すクセがあるみたいだし。

 ……今度、カナさんとチェックしておこう。



 ◇



 ここはとある世界の、とあるハナちゃんちの台所。

 ヤナさんがこそこそと、何かの瓶を棚にしまっておりますね。 

 その瓶の中身は……ぽこぽこと、泡立っておりますよこれ。


「また、凄いお酒が出来てしまった……」


 なんだか満足げな顔をしているヤナさんですが、それお酒なんですかね?


「しゃっしゃしゃ~」

「協力ありがとね」

「しゃ~」


 どうやらうねうねちゃんとの合作のようで、怪しい液体を精製したようですが……。

 見た目ヤバくないですかね。真っ赤でドロっとした液体が、ぽこぽこ泡立っているわけでして。

 ほのかに光ってもいるみたいで、かなり見た目は危険ですよこれ。


「これ、今度の催事で出すよ。それまで秘密だよ」

「しゃ~」


 それをお祭りでお披露目するのですか?

 バイオハザードが起きそうな気がするのですが。


 やがてヤナさんは台所から出て行き、うねうねちゃんはタンクに戻っておねむです。

 さっきヤナさんが隠したやつ、あれはお酒なんですよね?


 ……ちょっとだけ、ちょっとだけ味見してみましょう。

 なんだか凄いお酒らしいので、見た目はともかく食品ではあるようですから。

 それでは、ちょっとだけ頂きまーす!


 ――!!!!

好奇心は、ほどほどに

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― 新着の感想 ―
[一言] モルフォさんが出てくる度に、考えてしまいます モルフォさんにCVがつくたとしたら、誰かなぁ、と 能登麻美子さんか井上喜久子さん辺りが、はまりそうだなぁ、なんて妄想しています ……最近の声…
[良い点] 逆襲のしゃっしゃー と言う訳で、赤くて通常の三倍くらいヤバそうなやつも製造されていましたが、触手も大志もいつものお仕事ですね。 かつてかのあみりか大陸で人々が一攫千金を夢見たというゴール…
[良い点] まんまるおっきい鉱石はなん億万円になったのでしょう。第一次ドワーフィンにお船ばらまき作戦の予算はあっというまに達成できそうですねぇ。お船が行き渡って、食糧に余裕ができたら一気に発展しそうで…
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