第二十三話 キツネさんの嫁入り事情
「おとうさん、うごいたです~」
「……二人がかりは、さすがに息が続かなかったよ」
「こっそりおさけのんじゃ、だめよ。のみかいくらいなら、かくさなくていいんだから」
「はい。ごめんなさい」
ヤナさんくすぐられ過ぎで動かなくなった事件はあれど、無事復活して再起動した。
これでようやく、お疲れ会を開催できるよ。
まあ急遽決めたので、夕食をちょっと豪華にってくらいなのだけど。
「それにしてもユキちゃん、牛鍋のレシピも知ってるんだね」
「は、花嫁修業してますから!」
今回はごきげんユキちゃんからの提案で、牛鍋をチョイスした。
主賓の偉い人ちゃんたちが喜ぶメニューを、考えてくれたというわけだ。
しかもタレから調合する本格派で、けっこう気合入ってる。
「赤味噌に酒粕と甘酒でタレになるんだ」
「おばあちゃんが言うには、老舗のレシピがこれだそうです。お砂糖を使わず甘く出来るのですよ」
「なるほどなるほど。あと椎茸と春菊も入れるんだね。長ネギは知ってたけど、これは知らなかった」
「これはその老舗独自らしいですけどね」
こっちじゃ家庭料理で味噌味での牛鍋は出て来ないので、正直びっくりだよ。花嫁修業というか料理人修業ではないのかと思うほどだ。
お嫁さんになるとは、そんなに高スキルを求められるのだろうか……。
なんにせよ、これはユキちゃんをよいしょしないといけない。
「さすがユキちゃんだよ。これ普通知らないよね」
「ふ、ふふふふふふ」
素直に褒めると、キツネさんご機嫌だね。耳しっぽもぽわわんと出てきて眼福だよ。
というか視線を気にしなくて済むのも良いね。思う存分鑑賞できる。
「ユキ、おみそは、こんなかんじでいいです?」
「酒粕と甘酒の分量は……はい、大丈夫よ。ハナちゃんもお料理上手ね」
「うふふ~」
さらにハナちゃんに調合を伝授しているのも、また偉い。この村のお料理が充実しているのは、ユキちゃんが地道に教えているのもあるんだろうな。
というか……エルフたちが長野県民化しつつある原因のひとつは、これか。
ま、まあ気にしないでおこう。
「ハナちゃんも調味料調合できるとか、何気にすごいね」
「わーい! ほめられたです~」
「ふふふ」
細かいことは気にせず、がんばっているハナちゃんも褒めると大喜びだ。
それを見ているユキちゃんも、にこにこしている。和やかで良いね。
そうして準備が整ったところで、ぐつぐつと煮込みを開始する。
「いいかおりです~」
「これは美味しそうだね」
「あい~」
(おそなえもの~)
当然ハナちゃんが点火役だけど、いい感じの火力だね。そして煮込まれるにつれ、室内に良い香りが漂う。
これには神輿も思わずほよっと飛び上がり、お鍋の上でくるくる回りだす。神様元気で何よりです。
「わわわきゃ~ん、すてきなおりょうりさ~」
「これはごうかさ~」
「なんというごちそうさ~」
そうして煮込まれているステキ牛鍋だけど、偉い人ちゃんたちがしっぽをぱたぱた振り、お目々キラキラで鍋を覗き込んでいる。
彼女たちにとってご馳走の味噌と、あっちじゃ食べられない牛肉という構成は、とんでもないご馳走に見えている感じだよ。
「うふふ~。おゆうしょく、ごちそうです~」
「おいしそうだわ」
「お肉が沢山で、良いですね」
「ふがふが」
「腹減ってきた」
「あらあら」
それはハナちゃん一家も同じようで、やっぱりお目々キラッキラだね。
みんなでうきうきしながら、完成を今か今かと待つ。
「はい、出来ましたよ。みなさんお召し上がりください」
「「「はーい!」」」
(はーい!)
やがて牛鍋は食べごろとなり、ユキちゃんの号令とともに宴の始まりだ。
「神様はこちらをどうぞ」
(ありがと~)
「はい、大志さんもどうぞ」
「ユキちゃんありがとう」
「みんなも、どうぞです~」
ユキちゃんやハナちゃんが取り分けてくれて、いざ実食!
甘酒によって濃厚な赤味噌は塩辛くなく、ちょうど良い甘辛さで食べやすい。お砂糖を使わず、ここまで甘く出来るんだ。
あとは椎茸の出汁も良い仕事をしていて、濃厚な味の中に深みを与えている。
さらにブロックの牛肉は酒粕によって臭みが消え、これまた食べやすい。煮込み具合も絶妙で、ローストビーフのような火の通り方だ。
春菊のほのかな苦味も良いアクセントとなっており、味噌と牛肉の味を引き立てているな。
そしてブロック肉であるから、食べ応えもなかなかのもの。良く火の通った長ネギと一緒に食べると、これまた格別である。
食べてみると良くわかるけど、なるほど牛肉の癖を見事に旨さへと繋げている。たしかにこれなら、お肉を食べなれていない明治の人も、美味しく頂けただろう。
まさに文明開化の味がする、だね。
「これは美味しい。ほんと老舗の味って感じがするよ。ユキちゃんとハナちゃんすごいね」
「というか、老舗のレシピそのまんまですからね。ふふふ」
「しにせってやつはよくわからないですけど、よかったです~」
美味しいお料理を褒めたけど、確かにユキちゃんの言うとおりである。だけどまあ、お料理はタイミングとか分量が重要だからね。それを再現できる時点ですごいのだ。
でも、老舗のレシピそのまんまとは言うものの、キツネさんはまんざらでもない感じである。
ハナちゃんは老舗って言葉の意味が良くわかってないけど、褒められて嬉しそうだ。
まあお料理上手が身近に居てくれると、ありがたいことこの上ないね。
「あわきゃ~、おなべをつつきながらおさけをのむのは、たまらんさ~」
「のうこうなあじに、やわらかおにく、ごちそうさ~」
「うち、もうここにすむさ~」
このステキ牛鍋だけど、大好きなお味噌を使ったお料理だけに、偉い人ちゃんたちもうっとりである。冷やした清酒をお猪口でちびちび飲みながら、牛鍋を楽しんでおられるね。
しっぽがだいぶピクピクしているので、もう上機嫌な感じだ。
約一名定住したがっているけど、たぶんあっちの湖に連れ戻されるのは確定である。お仕事から逃げられないかもだよお。
「うふふ~、おいしいですね~。ごはんがすすむです~」
(おいち~)
もちろんハナちゃんもご機嫌で、とろ~んとした表情をしながらもバクバク食べている。エルフ耳もてろんと垂れて、幸せそうだ。
隣では神輿も器用に箸を使って、ハナちゃんと同じくらいの分量を食べている。箸使い上手だけど、指もないのにどうやって……?
ま、まあ気にしないようにしよう。きっとこれは、哲学の問題だ。
「これは、日本酒が合いますね」
「おいしいわ」
「たまらんな~」
「あらあら」
「ふがふが」
ヤナさん初めハナちゃんのご家族も、うっとり顔で牛鍋を堪能だ。こういうお料理は今までなかっただけに、新鮮さもあるかな?
なんにせよ、楽しいお疲れ会兼夕食会だね。
「ふ、ふふふふ」
あと俺の隣でご機嫌なユキちゃんだけど、わりときわどいレベルまで耳しっぽが顕現している。
たぶん普通の人でも、精神集中したら視えるぞこれ。内緒にしたいわりに、隠す努力はあまりしていないキツネさんだね。そこがまた良い。
「今日は良い日だわ。明日はもっと良い日になるかも。ふふふふ……」
とまあこんな感じで、今日のユキちゃんはずっとご機嫌だった。
秘密を共有する人間ができたので、嬉しいのかな?
◇
翌日になり、いったんご機嫌キツネさんを家に帰し、準備が完了したのち迎えに行く。
お出かけなので、おしゃれしたいだろうからね。
「大志さん! お待たせしました!」
そして石段の前で待っていたキツネさんは、予想以上に気合が入った服装をしておられるわけで。
スカートもなんだかいつもより短いし、単なる町遊びなのに頑張りがすごい。
しかしこれはミッションであると判断したため、任務は遂行しておこう。
「そ、その服良く似合ってるよ。大人な雰囲気が素敵だね」
「ふ、ふふふふふ」
あと耳しっぽすごい全開なので、しまっておきましょうね。
こんな感じで出だしからかっ飛ばしているキツネさんだけど、今日はきちんと接待しよう。
息抜きが目的だからね。
「というわけで、まずどこで遊ぼうか」
「最初に軽くショッピングと行きましょう」
「承知しました」
プランはユキちゃんまかせなので、仰せのままに町へと車を走らせ、無事到着だ。
前にハナちゃんたちと来たところなので、おんなじ感じでぶらり練り歩くって感じで行こう。
「春物をそろそろ新調したかったので、お洋服を見てもよろしいですか?」
「もちろん大丈夫だよ」
「では、行きましょう!」
車を停めて繁華街に足を踏み入れると、まずはお洋服をショッピングとなった。
確かにもうすぐ春だから、ちょうどいいね。ついでに自分の服も見てみよう。
そんなわけで、お洋服屋さんに足を運ぶ。しかし俺には難易度の高いお店であった。
「こういうの着こなせるって、なんだかすごいね」
「あ~、試着すればだいたい回避できますよ」
「そうなの?」
「鏡を見て『コレジャナイ』というのはわかりますから」
「確かに」
通販は便利だけど、お店に足を運ぶってのも大事だね。
こうしてアドバイスを受けながら、しばし二人で洋服を選ぶ。
「大志さん……これとこれ、どっちがよろしいですか?」
そんな中、超高難度ミッションが発生した!
右手には淡い青色のワンピース、左手にはワイン色のオフショルダーフリルブラウスがあった。
どちらも似合うと思うのだが、ここで「どっちも似合うよ」と回答するとバッドエンドになる罠である。
彼女の中ではどちらにするか決まっているのだが、しかし相手はこういうのも好きなのではないだろうかという思いもあり、保険をかけているのだ。
お袋が力説していたから、たぶんそう。というか、親父に対してやってた。
なお、このパターンでのわが父のミッション成功率は五割を下回る。コイントスと同レベルで難しい。
「そうだね……」
ここで慌ててもその時点でゲームオーバーのため、さも考えるふりをして時間を引き延ばす。
我ら男は生物学的に色彩の識別能力が女性に比べて低いので、彼女たちの見えている世界と俺らが認識する色は異なっている。
なので色ベースで判断すると危険だ、と親父が力説していた。それはほぼ失敗する道なのだと。
そういう場合は開き直り、自分の好みにしといたほうがいくぶんかマシな結果が得られるとも。
なので、俺は耳しっぽが映える方向で選ぶ!
「こっちの、肩の出るほうがかわいいと思うよ。ワインレッドの色は、ユキちゃんのその白い耳としっぽが良く映えると思うんだ」
「ですよね! こっちにします!」
よっし! 上手くいった!
ですよねってことは、ユキちゃん個人としてはこっちにしようと決めていたということなのだ。
良かった~。最初からミッション失敗とか、幸先悪いからね。
こうして辛くも危機を乗り越えた俺だが、続けざまに危機が訪れる。
「一緒に、大志さんの春物も見ましょうよ」
こんな提案がごきげんキツネさんから出されたのだ。
しかしこの辺は、一歩間違うとザゼ〇ルとシンクロする洋服屋さんばかりなのだ。
俺が下手に手を出すと、黒歴史が待ち受けている。
どうやって乗り切るか……。おし、いつものあれでいこう!
「じ、自分はデカいので、この辺で売っている洋服は合うサイズがないんだ」
「あ、確かにそうですね」
俺のガタイに合う服がないという言い訳をすると、ユキちゃんがするっと納得してくれた。
これは実際にそうなので、無事黒歴史を回避できたとも言う。
「だから、だいたいジーンズとTシャツってなっちゃうね」
「背が高いのも、いろいろ大変ですね」
「そうなんだよ」
お袋が買ってくるわりとデザインがキツい謎の服とかを回避するにも、この言い訳はとても便利だ。
というか世間の母親は、どこであのような服を買ってくるのだろうか。そこがまずミステリーだ。
「それでは大志さん、次に行きましょうか」
世のお母さんが買ってくる服の謎について考えていると、ユキちゃんから次の相談が来た。
こういう場合ものすごい時間がかかるものだと覚悟していたけど、なんか買い物早いな。
うちのお袋とかは、たっぷり三時間くらいかけるのだが。
「もう良いの? 自分はもっと時間かけると思ってたけど」
「女子同士ならそれでいいかもですけど、男性をそこまでつき合わせるのは申し訳ないですよ」
ユキちゃんはこのへんしっかりしているようで、まさしく気を遣ってもらった感がある。
ほんとはもっといろいろ物色したいんだろうな。
ただ言う通り、男はこういう場では手持無沙汰なのだ。とっても助かるので、乗っておこう。
「気を遣ってくれたんだ。ありがとう」
「いえいえ」
こうして接待だけど気を遣ってもらいつつ、二人で街を練り歩いていく。
いろんなお店をのぞき込んで、のんびりウィンドウショッピングだね。
「あ、かわいいアクセサリがありますね」
「どれどれ?」
宝飾店に寄ったときは、キツネさんが銀のアクセサリを好むという情報が手に入った。
でも手入れ大変じゃない?
なお、なぜか指輪のサイズを猛烈にアピールされた。
「お昼はこちらにしましょう」
「おしゃれなパスタ屋さんだね」
「一人では入れないフィールドがありますので、今まで躊躇してたんです」
「ほほう」
昼食はシャレオツパスタ屋さんで、軽く済ませる。
ユキちゃんの言う通り、もう店内カップルしかおらん。確かに一人では入れない雰囲気だ。
ここに単独で突入するのは、一人焼肉レベルで難易度が高いな。
しかし人気だけあって、量はともかく味はとてもよろしかった。
「あ、やられた。連コインしてやる!」
「マネーパワーでゴリ押しですね!」
次は腹ごなしにアミューズメントスポットへ行ったが、なぜか二人でぞんびを撃つガンシューティングの攻略を開始する。
俺はお金の力で突き進むが、隣のキツネさんはワンコインである。この娘さんけっこうなゲーマーだね。
ちなみに俺がゲームオーバーになりまくるのは、ミニスカなのにしっぽをピンと立てるキツネさんが原因である。
そのたびに後方をブロックして隠さねばならぬのだ。お父さんは我が子を守るよ!
「あ~、やっぱりサラダ軍艦が鉄板ですね」
「サラダ軍艦は最高だねえ……でも、回らないお寿司じゃなくて良かったの?」
「行ってみたいとは思いますが、お父さんとお母さんに『時価って書いてあったら、気が気じゃなくて二人とも無言でお寿司を食べる羽目になるぞ』とアドバイスされまして」
「重い歴史を聞いてしまった……」
「そういえば、回らないお寿司にサラダ軍艦ってあるのですかね?」
「時価のサラダ軍艦とかすごそう」
夕食は楽しく会話しながらお寿司となったけど、我々二人とも長野ケンミンであるからして、サラダ軍艦ばかり食べる大変に偏ったお食事となった。
会話とテーブルの上はもうサラダ軍艦だらけで、ゲシュタルト崩壊だよ。
とまあこんな感じで、職場の立場は抜きにして友達のように二人で遊びまわった。
個人的には、良い感じで接待できたのではないかと思う。
「今日は楽しかったです!」
「また機会があったら、一緒に遊ぼう」
「はい!」
こうしてささやかな息抜きは終わり、車でユキちゃんちまで送り届ける。
ご機嫌キツネさんは、もう耳しっぽがぽわんと全開だね。毛並みもツヤに磨きがかかっており、大変よござんす。
「あ、あの……今度は、『二人っきり』の時にブラッシングもお願いします」
俺の視線に気づいたのか、ユキちゃんがお見事なしっぽを抱えて、ブラッシングの予約をしてきた。
願ったりかなったりなので、快諾しておこう。
「その際はぜひともお願い致します。自分はブラッシングに自信があるもので」
「ふ、ふふふふ……これはもう確定」
「確定だね」
「ふふふふ!」
予約が取れたことに安心したのか、ユキちゃんすっごい嬉しそうだ。
というか、正体を知っているのは俺だけなので、どうあがいても二人っきりのときじゃないとブラッシングは出来ないよね。
ようやく情報保全を意識するようになって、お父さん安心だよ。
やっぱり危機管理は大事だよね。
◇
ここはとある世界の、とあるユキちゃんち。
大志とおデートしてご機嫌なキツネさんが、スキップしながら帰宅です。
「ふ、ふふふふ。毛づくろいは親愛の証! もう何も怖くない!」
嫌なフラグが立つセリフをつぶやきながら歩いていくユキちゃんですが、大志はそこのところまったく気づいていませんよ。
むしろ男女の仲から、だんだん離れている気がするのですが。
気のせいか、大志は娘を甘やかすお父さんポジションで接しているような……。
「ただいまー!」
そうこうしているうちに、ユキちゃんおうちに到着ですね。
元気にただいまの挨拶です。
「おかえり。今日はどうだったね?」
玄関ではなぜかおばあちゃんが待ち構えていて、ユキちゃんをお出迎えですね。
さっそく今日の出来事を確認しております。
「言われた通り、健全なデートしてきたよ! でも、毛づくろいまでは良いよね?」
「まあ、そのへんがギリギリだね。結婚したあとなら、何も言わないさ」
なるほど、今日とっても健全だったのは、おばあちゃんがストップをかけていたからですか。
まあそのせいで、ユキちゃんの暴走がまた一段と加速したと思うのですが。
おキツネさん系って、どうしてもそういうのあるみたい。思い込みが激しい種族のようです。
情が深いというか、愛が重いというか。良妻になるのは間違いないのですが……。
「ふふふ。明日もがんばらなきゃ!」
周囲の心配をよそに、ユキちゃんはもうご機嫌ですね。
しかし――。
「今日はゆっくり休みな。明日から修行だからね」
「はえ?」
ご機嫌キツネさんに、お婆ちゃんがそう言いました。明日から修行ですか。
「な、なぜ。オフの日では」
「ユキが妖狐化したのは、わかっているんだからね」
「……」
うかつキツネさん、暗黒フォックス化したのがバレております。
あれほどダークオーラを発していれば、そりゃ検知されますよね。
「こ、この寒い中滝行ですか?」
「それだけじゃなくて、フルコースだよ」
「あ、あわわわわ……」
よく見たら、お婆ちゃん静かに怒ってますね。
怒られているユキちゃん、耳はぺたんこ、しっぽは恐怖で丸まっております。
でもまあ、しょうがないかもですね。あれだけ豪語していて、あの有様なのですから。
「……まあ、修行を頑張っただけ、安定して下界に降りられるんだ。それのおかげで、大志さんと居られる時間も増える。だからがんばるんだよ」
「うん」
あ、お婆ちゃんフォローも忘れませんね。孫の弱点を良く突いております。
この辺は家族ならではですか。
「初代さんとの約束だもんね。良かったら、子孫をお嫁さんに頂戴ねって」
「まあね。……しかし、約束を抜きにしても、ユキと大志君は巡り合っていたとは思うさね」
「私もそう思う。でも、きっかけをくれた初代さんに、感謝だね」
「まったくさね」
え? そんな約束してましたっけ? 昔の事すぎてよくわからないのですが。
……ま、まあ気にしないことにしましょう。
管理されない危機




