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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十三章 雪の恵み
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第十五話 おすしとは、出会いと別れのドラマである


「わきゃ~ん、このみそラーメン、おいしいさ~」

「ぜいたくさ~」

「ちたま、いいところさ~」


 バッティングセンターでお腹を空かせた後は、お待ちかねのラーメンタイムだ。繁華街まで移動して、美味しいと評判のお店でお昼となった。

 偉い人ちゃんとお供ちゃんたちは、わっきゃわきゃと大喜びで信州みそラーメンを食べている。


「のうこうで、おいしいですね~」

(おかわり~)


 ハナちゃんもにこにこ笑顔でラーメンをちゅるるんと食べている。

 あと神輿は大盛りラーメン三杯も食べたけど、まだ足りない模様だ。

 どしどしお食べください。


「お、こういうアプローチもあるのか」


 俺は俺で、ラーメン屋さんのオーナーなので新商品開発の足しにすべく、観察しながら食べている。

 チャーシューを炙って香ばしくしているのは、なかなか参考になるな。

 あとでラーメン屋さん夫婦に、レポートと写真を送っておこう。


 と、みんなで楽しくラーメンを食べていたときのことだ。スマホがぷるるんと振動した。

 見てみると、ユキちゃんからお電話でござるよ。お迎えかな?


「もしもしユキちゃん、お迎えの時間かな?」

『ああいえ、その事なんですけど……』


 電話に出てお迎えか確認すると、なんだか違う感じだ。

 どうしたのだろう?


「何かあったの?」

『ええとですね、サロンの(かた)から、今日は私もお泊りしてくださいって言われまして』

「え? お泊りになったの?」

「はい」


 話を聞いてみると、ユキちゃんもお泊りのようだ。なんでだろ?

 単なる見学なのだから、そうする必要がわからない。


「それはまたなんで」

『ええまあ……先生によると、体の骨とかアレやコレを色々矯正したほうが良いって』

「……矯正? どこか悪くしてたの?」

『念のためって言ってました』

「そうなんだ……お大事に」


 そういう話を聞くと、ちょっと心配になってくる。よくわからないけど、何かを施術したほうが良いってことだからね。

 なんにせよ、凄腕サロンのご厚意に甘えておいたほうが良いな。

 というかなんたら権現様すら洗脳する腕前だ。信頼して良いだろう。


『私的には、どこも悪くない感覚なんですけどね』

「ひとまず、ご厚意に甘えて受けといたほうが良とは思う」

『そうですね』


 ユキちゃんも特に思うところは無いのか、ご厚意に甘えるようだ。

 まあ、施術の結果をみれば、なにをどうしたかはわかるはずだ。それを確認したのち、俺のほうでもできることがあるならやってみよう。

 それはさておき、お迎えは明日ってことだね。


「それじゃ明日の都合の良い時間教えてくれれば、迎えに行くね」

『お手数お掛けします』

「これくらいはなんでもないよ。思う存分堪能して来てね」

『はい!』


 ということで、ユキちゃんピックアップは明日となってしまった。

 この後どうしよう? 思いっきり遊び倒す?

 ちょっくらみんなに確認してみよう。


「タイシさん、なんかのいたに、はなしかけてるさ~?」

「わきゃ~ん。ちたまのひとたち、よくいたにはなしかけてるさ~」

「それ、だいじょうぶなのさ~?」

「……たぶんだいじょうぶじゃないさ~。りょこうにいったときとか、なんにもないところにむかって、あたまさげたりとかしてるひとたくさんで、ちょっとこわかったさ~」


 おや? お供ちゃんたちと偉い人ちゃん、俺のほうを見てひそひそ話だ。

 ラーメンお代わりの相談でもしているのかな?


「ちたまのひとたち、おつかれかもです。やさしくしてあげるのがよいです?」

(いたわり?)

「なるほどさ~」

「そうするさ~」

「やっぱりちたまのひと、たいへんみたいさ~」


 ひそひそ話にハナちゃんも参加して、なんだか結論がでたっぽいね。

 さて、何ラーメンをご注文かな?



 ◇



「おなかいっぱいさ~」

「たくさんおかわりしちゃったさ~」

「おいしかったさ~」

「おそとでたべるのも、いいですね~」

(はらはちぶんめ~)


 その後ラーメンをお代わりしまくり、みんな満足だね。

 なお謎の声は腹八分目とか言っているが、神輿は十杯も食べていたわけで。どこのフードファイターですかと。

 まあそこは聞かなかったことにして、今度は腹ごなしの遊びをしよう。まだお昼過ぎたところだからね。

 晩御飯も外で食べる予定だから、時間はたっぷりある。


「お腹いっぱいになったところで、次はどこに行きましょうか」

「よくわかんないので、おまかせです~」

「うちらも、ちたまのことわかんないから、おすすめでいいさ~」


 次は何して遊ぼっかと聞いてみると、お任せの依頼だね。

 確かに言うとおり、みなさんちたまの町とか知らないわけで。

 そりゃ当然、俺がお勧めを案内することになる。あたりまえでござった。


「どうしようか……。あれですね、このへん歩いて見て回りましょうか?」

「いいかもです~」

「わきゃ~ん、ちたまけんがく、たのしそうさ~」

「うちらも、それでいいさ~」


 ということで、ノープランで歩き回ることを提案したら、みなさんからオーケーが出た。それじゃあのんびり、町を歩こう。繁華街だから、お店も沢山で見て回るには申し分無い。


「それでは、はぐれないように後に着いてきてください。気になるものがあったら、お声がけを」

「わかったです~」

「まかせるさ~」

(ついてく~)


 そんなわけで、みんなでわいわいと町を歩く。


「あえ? かみさまどこいったです?」

「え? ……確かに姿が見えない」


 そしてすぐさま、神輿をロストした。歩き始めて十数秒でこれである。

 大変だー!!!!!


(おそなえもの~)


 慌てていると、謎の声が聞こえてきたわけだが。まず間違いなく、食べ物系のどっかに飛んでいったと思われる。

 どこかな?


「タイシタイシ、あれっぽいです?」

「あ、確かに」


 ハナちゃんが指差す先には、お寿司屋さんが。その入り口で、神輿がくるくる回っておる。

 さっきお昼食べたばかりでしょ!?


「あ~、神様、お寿司に興味あるのですか?」

(あるある~)

「あるっぽいです~」

「では、夕食にどうですか?」

(いいとも~)


 くるくると二回転して、オーケーを貰えた。さすがにさっき食べたばかりなので、ハナちゃんも偉い人ちゃんたちもまだ食べられないからね。

 もうちょっとお腹をすかせてから来ましょうだ。


「それでは、神様はこちらへ」

(ありがと~)


 肩を指差すと、神輿はほよよっと飛んで右肩にライドオンだ。

 これでどこかに行こうとしたら、すぐわかる。はず?


「じゃあ、引き続き適当に歩きましょうか」

「タイシタイシ、こんどはほかのさんにんが、いないです?」

「なぬ?」


 神輿を発見したと安心していたら、今度は偉い人ちゃんたちをロストした。

 大変だー!!!!!


「あの人たち、声をかけるとほいほいついてっちゃうから危ない」

「あや~! たいへんです~!」

(さがす~!)


 そんなわけで、大慌てで捜索を開始する。

 どこ行っちゃったの?


(みつけた~!)


 五分ほど探していると、謎の声から発見報告だ。上を見上げると、神輿がとある方向に向いてぴこぴこしているね。

 さすが空を飛んでいる存在は違う。

 ということで、神輿が指し示す方向へ行ってみると――。


「わきゃ~ん、このふく、かわいいさ~」

「こまかいしごとが、すてきさ~」

「こっちもいいかんじさ~」


 偉い人ちゃんたちが、お洋服屋さんでわっきゃわきゃしていた。

 レースのカーディガンを羽織ったり、首もとと袖口にファーのついたかわいらしいポンチョコートを見て大はしゃぎしている。

 こういうのはドワーフィンにない生地やデザインなだけに、引き寄せられてしまったようだ。


「お客様、こちら試着をしてみてはいかがでしょうか」

「わきゃん? ためしにきても、いいのさ~?」

「もちろんです。こちらでお着替えください」

「ありがとうさ~」


 そして女性店員さんに案内されて、試着室へ入っていく偉い人ちゃんであった。

 お供ちゃんたちも、わっきゃわきゃで洋服を選んでいる。

 みなさん、無一文なのは忘却の彼方でござるよ。


「あや~、ユキがきているようなふくが、たくさんですね~」

「何を着てもおしゃれになる人でないと……着こなせないやつだね。その辺を忘れると、鏡の前で『おかしい、こんなはずでは』となってしまうんだ」

「なんいど、たかいですね~」


 カタログのモデルさんパワーにだまされると、痛い目をみる系統のやつだね。

 着こなせる人間は、そんなにおらんという恐ろしいジャンルだ。

 一歩間違うと、最終的にザ○ゼルとシンクロする結果となる。


「わきゃ~ん、これはかわいいさ~!」

「うちは、これがいいさ~」

「それなら、うちはこっちにするさ~」


 そうこうしているうちに、偉い人ちゃんたちが試着室から出てきた。

 ファーのついたおしゃれポンチョコートが良く似合っている。

 もともと見た目に気を使っていた方々だけに、きっちり着こなしているね。

 よかった、ザ○ゼルとシンクロせずに済んだようだ。


「あや~、だいじょぶだったみたいですね~」

「ほっとしたよ」


 そのお姿をハナちゃんと眺め、二人でなぜかほっとする。

 というか偉い人ちゃんたちが試着しているお洋服、これ俺が立て替えってことになるのかな?

 まあ接待もかねているので、問題はないのだけど。

 ……せっかくだから、ハナちゃんと神様も選んでもらおうか。


「ハナちゃんと神様も、欲しい服があったら選んで良いよ」

(ほんと! ありがと~)


 ということで、神様は店内にばびゅんと飛んでいった。

 しかし、言ってから気づいたが、神輿に合う服なんてないよね。

 どうしよう……。あれ? ハナちゃんはお店に入らず、俺の隣でにこにこしている。

 お買い物しなくて、いいのかな?


「ハナちゃん行かなくて良いの?」

「ハナは、おとうさんにつくってもらうから、だいじょぶです~」

「お! 確かにヤナさんかわいい服つくるもんね」

「ですです~。てがこんでいて、ハナはおとうさんがつくってくれるふく、だいすきです~」


 ええ子や……。でもまあ、確かにヤナさんはハナちゃんのために気合の入った洋服を作る。

 よくよく考えてみると、それは高水準なオーダーメイドなわけで、下手にお店で買うよりずっと良い服が手に入るんだよね。そりゃ、そっちのほうが良いのも当然だな。

 というか、ちゃんと良いものを自分の考えで選択できている。賢い子だね。

 あとでこのハナちゃんのお言葉、ヤナさんに伝えておこう。きっと喜ぶ。


「あ、タイシさん、これどうさ~?」

「にあってるさ~?」

「おきにいりのやつ、みつけたさ~」


 ハナちゃんのお言葉にほくほくしていると、偉い人ちゃんたちがこちらに気づいたようだ。

 しきりに、試着した結果の感想を求めてくる。緊急ミッション発生だ。

 俺は危機管理が出来ている男だから、こういう場面でもそつなくこなすよ。


「みなさんこちらの服も、綺麗に着こなせてますね。可愛いですよ」

「わきゃ~ん! ありがとうさ~」

「てれちゃうさ~」

「わきゃきゃ~」


 特にひねらず思ったままを述べると、みなさんしっぽをピクピクさせながら、てれってれだね。

 その服も立て替える旨、伝えておこう。


「ちなみにそのお召し物も立て替えますので、ご遠慮なく」

「ありがたいさ~。あとでかならず、はらうさ~」

「そういえば、うちらおかねもってないんだったさ~」

「おてすうおかけしますさ~」


 お金の心配がなくなったので、三人ともぴょんぴょんした。

 やっぱり女子であるだけに、可愛い服が手に入るならうれしいというものだね。

 よかったよかった。


(あ、これほしい~)


 お支払いのためにクレジットカードを用意していると、謎の声が聞こえてきた。

 ……そういえば、神様もお洋服選んでたな。神輿が着られる服って、あるの?


(これこれ~)


 着ぐるみ! 虎さんの着ぐるみが飛んできた! ペット用のやつ!

 虎さん着ぐるみのお口からは、神輿の顔? がこんにちは。

 なんでそんなの売ってるの? このお店は。



 ◇



 神輿は虎さんの着ぐるみを装備した。


(ふわふわ~)


 着心地が良いみたいで、ご機嫌神輿だね。くるくるまわっておられる。


「わきゃ~ん、これあったかいさ~」

「おしゃれでじつようてきなのは、すてきさ~」

「いいおかいもの、したさ~」


 ドワーフちゃんズも、可愛いポンチョコートやレースのカーディガンを纏ってわきゃわきゃしている。

 そんなわけでお買い物を無事終えて、またぼちぼちと町を練り歩く。


「あえ? タイシタイシ、あれなんです?」


 その途中、ハナちゃんが気になるものを見つけたようだ。

 偉い子だね、ちゃんと声をかけてくれたの、ハナちゃんだけだよ。

 それはそれとして、ハナちゃんアンテナに引っかかったのは……アクアリウムショップか。


「あれは、水槽にお魚を飼ったりする趣味のお店だよ」

「すいぞくかんみたいなやつです?」

「そうだね。個人で出来るくらいな規模の、ちいさな水族館だよ」

「おもしろそうです~。みにいっても、いいです?」

「もちろんだよ」


 ちゃんと許可を取るあたり、やっぱりハナちゃんきっちりしているね。

 あとでご褒美にお菓子でも買ってあげよう。

 というわけで、偉い子ハナちゃんのリクエストである、アクアリウムショップへ入店する。


「あや~、これはすごいです~。ちいさなおさかな、たくさんおよいでるです~」

「わきゃ~ん、みたこともないおさかな、たくさんさ~」

「ちたまはおさかなを、ひとのてでそだてるって、ほんとのことだったさ~!」

「すごいさ~!」


 水族館入った事あるよ組のハナちゃんと偉い人ちゃんは、珍しいお魚を見られてニコニコだね。

 実際に行ったことの無いお供ちゃんたちは、びっくりしながら水槽に張り付いている。

 存分に、お楽しみ下さいだね。


「タイシタイシ、このおさかな、きれいですね~」

「この子たちはグッピーっていうお魚で、やっぱり可愛いから人気だよ」

「こっちのおさかな? はふしぎなかたち、してますね~」

「ウーパールーパーだね。根強い人気があるよ」


 ハナちゃんは好奇心いっぱいの目で、水槽で泳ぐ色とりどりの小さなお魚たちを見つめている。

 エルフ耳もぴこぴこ動いて、かわいらしいね。


「わきゃきゃ~ん、あかくてきらきらなおさかな、うつくしいさ~」

「こんなきれいなおさかながいるなんて、うそみたいさ~」

「ほうせきみたいさ~」


 偉い人ちゃんたちは、金魚に首っ丈になっている。たしかにフナの突然変異を人為選択して生み出した種なので、珍しいだろうな。

 尾の形も特殊なお魚なので、泳いでいるのを見るのも楽しい。世界的に親しまれている、身近な観賞魚だね。


「ちたまは、いろんなおみせがあるですね~」

「めずらしいものたくさんで、めうつりするさ~」

「いちにち、あそべるさ~」

「おもしろい、せかいさ~」


 みんなこのミニ水族館を堪能しているようで、楽しそうにお魚鑑賞を続ける。


(こっちはおさかな、いるかな~?)


 もちろん神輿も楽しんでいて、着ぐるみを着たままほよほよ飛び回っている。

 あ、なんかの水槽前で止まったね。そっちにも、珍しいお魚いるのかな?


「かみさま、そっちなんかあるです?」

(あるにはあるかも?)

「あえ?」


 それを見たハナちゃんは、神輿が見ている水槽のほうへぽてぽてと歩いていった。


「あえ? このすいそうのこれは……むむ? むむむ?」


 そのまま、水槽を見つめたままなにやら考え事を始める。

 そんなに珍しいお魚がいるの?


「どれどれ……なんもいない」

「むむむ?」


 しかし、ハナちゃんと神輿が覗いていた水槽は、お魚がいなかった。

 こぽこぽと空気の泡だけが送られているだけである。

 これがどうしたんだろう?


「むむ? むむむむ~」


 しばらくの間、ハナちゃんはその水槽を、じっと見つめていたのだった。



 ◇



「わきゃ~ん! おすし! おすしおいしいさ~!」

「なんか、くるくるまわってるさ~」

「ふしぎなおりょうりさ~」

(おいし~)


 楽しい町歩きをしているうちに、いい時間になったのでお寿司となった。神輿リクエストだからね。

 長野生まれの河童なお寿司屋さんは、とってもなじみがあるのも良い。

 だいたい一皿百円なので、リーズナブルだからどしどしお食べ下さいだ。


「わきゃっ! とりにがしたさ~!」


 ちなみに偉い人ちゃんはぶきっちょなので、三回に一回はお皿を取り逃がす。

 食べたいお寿司は、注文して新幹線に運んでもらおうね。

 というか色々注文いれちゃおう。ぽちぽちとな。


「あわきゃ~! なんかすっとんできたさ~!」

「あや~! おすしがのっかってるです~!」

「まわるだけじゃ、なかったさ~!」

「おすしは、こうそくいどうするたべものだったさ~!」


 なお、お寿司を乗せた新幹線が到着したところ、大騒ぎになった。

 そうなんです、お寿司は高速移動するんですよお。

 ちなみにお金持ちになると動体視力が上がるのか、お寿司が止まって見えるらしい。

 俺は大量に食べるので、そういうお店には行けないんだよな。一度は行ってみたいものだ。


(おそなえもの~)


 ちなみに、虎さん着ぐるみ神輿は狙った獲物を逃さない。見事にお皿をゲットしている。

 ただお茶もなしにもぐもぐと大量のお寿司を食べているので、のど乾かないかな?

 何か汁物でも頼もうか。


「ここではお味噌汁とかも頼めますよ。どうですか?」

「ハナ、おみそしるのみたいです~」

「うちもさ~」

(わたしも~)


 結局全員お味噌汁が飲みたいようなので、タッチパネルをぽちぽち弄る。

 こういうのは早いので、すぐさま店員さんが持ってきてくれた。

 ではでは、お味噌汁を飲もうじゃないか。


「あや~、おみそしるのかおり、ほっとするですね~」

「ちたまのたべもの、ごうかですごいさ~」

「たまらんさ~」

「ぜいたくざんまいさ~」


 みんなにお味噌汁を配布すると、うっとりとしながらすすすっと飲み始める。

 ドワーフちゃんはさておき、ハナちゃんすっかりちたまにっぽんじん化しておられる。毎日お味噌汁飲んでるから、もはやソウルフードか。


「あや、あのまいてあるやつ、おいしいやつです~」


 お味噌汁を味わっていたハナちゃんだけど、次のターゲットを見定めたようだ。

 視線の先には、サラダ軍艦が我々の胃袋を侵略すべく、お寿司レーンを航行中だね。

 ここ長野県じゃほかの寿司ネタを抑えて、ぶっちぎりの人気ナンバーワンのやつなわけで、我々長野県民はマグロよりこいつをたくさん食べている。

 というかこれに目をつけるあたり、ハナちゃん順調に長野県民化してきている気がしてならない。


「サラダ軍艦だね。ここら辺だと大人気なお寿司で、自分もそれ大好きだよ。おいしいよね」

「ですです~」


 そうしているうちに、サラダ軍艦が領海内に入ってきた。

 すかさず手を伸ばして、獲物の軍艦ちゃんを航空から攻略しようとするハナちゃんであるが――。


「あや~、のがしたです~」


 回転寿司慣れしていないハナちゃん、サラダ軍艦に逃げられてしまう。

 ちたまでは、タイミングを誤るとお寿司が逃げるのだ。世知辛いね。


「頼むか待っていれば、また来るよ」

「のんびり、まつですかね~」


 お寿司に逃げられたハナちゃん、のんびりと狩りをするようだ。

 楽しそうな顔で、エルフ耳をぴこぴこさせながら流れ行くお寿司を眺めている。

 ほら、もうちょっとでサラダ軍艦が射程圏内に入るよ。


「きたです~! ……あえ? むむ? むむむ?」


 しかしハナちゃん、突然考え事を始めた。その間に、サラダ軍艦が射程圏外に去ってしまう。また彼に会えるのは、いつになるだろうか……。


「むむ? むむむむ~?」


 お寿司との出会いと別れのドラマを描いている間にも、ハナちゃんは考え中だ。どうしたのだろう?

 まあ、しばらく見守ってあげよう。というか注文すればすっ飛んでくるからね。

 慌てる必要はないのだ。


「あや! そうです~! いいことおもいついたです~!」


 やがて、ハナちゃんのエルフ耳がぴこっと立ち上がった!

 何かを思いついたのかな?


「あした、ためしてみるです~!」


 そういいながら、しゅぱっとお寿司をゲットするハナちゃんであった。

 

ユキちゃんはおすしを食べ逸れた!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ちいさい散歩 と言う訳で、ユキちゃんが何故かエステにあぶだくしょんされてしまったので、その辺をぷらぷらぷら~りおさんぽの旅が始まりました。 しかし子供エルフに低身長ドワーフ、あとミニチュ…
[一言] アクアリウムは良いですよね。 自宅では、すっかり生き物と触れ合う機会はありませんが、病院の待合室やスーパー等にあるアクアリウム、あの世界の中に色んな出来事があるので、ずーっと見てしまいます。…
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