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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十三章 雪の恵み
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第七話 だいえっと大作戦

 妖精さんが増量により、飛行できなくなったでござる。

 この突発的事態に対して、緊急だいえっと会議を開催だ。


「ということで、会議を始めます」

「「「きゃ~い」」」


 妖精さんたちを集会場に集め、どうしたら良いか相談することにした。

 まあ数千人を全員は無理なので、代表者を集めてだけど。


「やせないといけませんね! やせないと!」

「おかあさん、がんばろうね! がんばろうね!」


 モルフォさんと娘のサクラちゃんも、やる気十分だね。

 お互いおなかのお肉をつんつんしながら、仲睦まじくも無残である。

 それは見なかったことにして、会議を始めましょう!


「まず始めに、こういうことって良くあるの?」

「たまにだね。たま~に」

「いつもとんでるから、ふつうはそんなにふえないよ! ふえないよ!」

「うごかないとね! うごかないと!」


 なるほど、普段は飛行で運動しているから、そんなに増量しないって感じかな。

 というか増量しすぎると離陸できなくなるわけで、飛んでる間は大丈夫という話でもある。

 快適な妖精タワマンで、食っちゃ寝していたのがあかんのだ。


「じゃあ運動すれば、元にもどるって事かな?」

「そうだね! そうだね!」

「からだをうごかすよ! うんどうするよ!」


 結局の所、運動不足で増量ってお話であり、おもきし普通の話だった。

 それなら妖精さんたちの言うとおり、運動してもらおう。


「みんな、かくしごとしてるよ。してるよ……」

「きゃ、きゃい~……」


 しかし話がまとまりかけたところで、仄暗い笑みを浮かべたイトカワちゃんが登場だ。

 どうやらまだ、隠し事があるらしい。


「おかしをたべるりょう、へらせばいいんだよ……いいんだよ……」

「きびしい~」

「いきるたのしみだよ! たのしみだよ!」

「きゅうきょくの、せんたく~」


 イトカワちゃんが言うには、お菓子の量を減らせば良いと。

 ……確かに、妖精さんたちはそこにまったく触れなかった。

 あれだ、お菓子を食べる量、減らす気ゼロという事だね。


「わたしはどりょくしたんだよ~。おかしをがまんしたんだよ~」

「きゃ~い」

「きゃきゃ~い」


 そしてイトカワちゃん、おもむろにサクラちゃんとアゲハちゃんの脇腹をつかむ。

 あれですね、それなりに余っておられる。

 掴まれた二人は、きゃ~いきゃいと顔を隠して恥ずかしがっておりますな。

 やっぱり女子としては、由々しき事態というわけか。


「まあひとまず、運動しましょうか」

「そうする! そうする!」

「おどっちゃうね! おどっちゃうよ!」

「きゃい~」


 そんなわけで、妖精さんだいえっと大作戦が始まる。

 まだまだ冬もまっただ中だけど、また空を飛べる日を目指してがんばろう!



 ◇



 ここはとある世界の、とある集会場。

 なんだか今日は、とってもにぎやか!


「一緒に踊ろうね! 踊ろうね!」

「痩せちゃうね! これは痩せちゃう!」

「きゃい~」


 それもそのはず、妖精さんたちが踊りの練習をしていたのでした。

 減量するため、きゃいっきゃいでダンシングですね。


「こうやって踊るんだね! 参考になるね!」

「こうかな? こうかな?」


 彼女たちの教材は、大志が用意したダンス練習の映像です。

 プロのダンサーがわかりやすく教えてくれる、良い感じの教材ですね。

 そこに凝る理由は、いまいちわかりませんが……。

 せっかくだから、高度なやつを用意したって感じ?


「足運びが重要なんだね! 足運び!」

「かっこよく踊れるね! かっこよく!」


 その映像を参考にしている妖精さんたち、めきめきと踊りが上手になっていきます。

 数人で連携して踊るとか、なかなか高度な技術を身につけ始めていますね。


「ちょっと疲れたね! 休憩だよ! 休憩!」

「きゃい~」


 ……あ、休憩中にお菓子を食べてますよこれ。

 それ、意味が無いのでは……。むしろ逆に増えてしまうのでは?

 ま、まあ……あんまり禁欲的にしても、続かないですからね。

 それくらいで、良いのかも? そういうことにしておきましょう。


「あら~、可愛いわね! 動く写真撮っちゃうから!」

「きゃい~」


 お菓子をなかなか我慢できない子たちはさておき、妖精さんたちが踊るその愛らしさに、カナさん大喜びで映像撮影中。

 ガンガン妖精さんダンス映像が溜まっていきますね。


「あや~、賑やかですね~」

「痩せるためだからね! がんばってるよ!」

「効果はまだでてないけどね! まだまだだね!」


 ハナちゃんもお付き合いして、妖精さんの踊りを見守っております。

 今日は大豆っぽいやつ栽培実験、お休みですね。

 ちっちちゃんたちも、今日は光るやつがもってかれないか、心配しなくて良いかも。

 夜中はよりいっそう、賑やかになりそうですね。

 とまあ、それはそれとして。


 そんな賑やかな集会場ですが、静かな一角もありました。

 なぜか神輿が、みんなのために置いてある本を、ちまちまと読んでいるのです。

 どうやら日本語辞書とか教科書を見て、お勉強しているようですね。

 学習意欲に目覚めたのでしょうか?


「あや~、神様お勉強中です? お供え物、いるです?」


 妖精さんのダンシングにお付き合いする傍ら、ハナちゃんは神輿も気を遣っていますね。

 お菓子をお供えしたり、お茶を出したりとお世話しております。

 神輿も嬉しいのか、ほよほよ光ってお礼ですね。

 ほのぼのする光景です。


「あえ? 使いやすいようにしてるです? 何をです?」


 おや、お勉強をしているかと思っていましたが、ちょっと違うようですね。

 ただまあ神輿が何を考えているのかは、良く分かりません。

 何をしているのでしょうかね?


 とまあそんなこんなで、やっぱり今日も村は平和ですね。

 そんな賑やかな集会場ですが、午後過ぎたあたりのことです。


「うーい、見回り終了じゃん」

「温泉回り、もちっと雪かきしといた方が良いな」

「じゃあじゃあ、僕がやっとくよ」

「ありがたいのだ」


 マイスターとマッチョさん、メカ好きさんにおっちゃんエルフがもそもそと集会場にやってまいりました。

 どうやら消防団活動、見回りをしていたようですね。

 彼らのコツコツとしたお仕事のおかげで、村の平和が保たれているのです。

 これからも、がんばってくださいね。


「お、なんだか賑やかじゃん?」


 そんな消防団の面々ですが、マイスターがダンシング妖精さんたちに声をかけました。

 あったかいお茶をグビグビ飲みながら、キラキラエリアに近づいていきます。


「痩せないといけないからね! 痩せないと!」

「成果はあんまりでてないよ! あんまり!」

「――それだけお菓子を食べていたら、変わらないのも当然である。当然である」

「き、きゃい~……」


 マイスターの問いかけに対して、妖精さんたちはきゃいっきゃいで返答ですね。

 イトカワちゃんは、やっぱりいつもと違う口調でズビシと指摘ですが。

 だいえっとには真剣な、彼女なのでした。

 それはそれとして。


「あや~、あんまり成果、でてないです?」

「お菓子が美味しくて! 美味しくて!」

「体を動かすと、特にね! 特に!」

「うちのお母さんと、似たような感じですね~」


 横で神輿とのんびりしていたハナちゃん、だいえっとの成果が芳しくないと聞いて会話に参加してまいりました。

 体を動かすとおなかが減る、だから食べちゃうというのは、納得ですね。

 カナさんもそうやって増量しているので、ハナちゃんも良く分かっているようです。


「でもこのまんまだと、困るです?」

「結構不便だね! 不便!」

「どうしましょ~」


 不便と言いながらも、チョコレートをもむもむと食べ始める、サクラちゃんとアゲハちゃんですね。

 これ、「明日だいえっとする」ループに陥っているような……。


 ただ妖精さんたちは飛行できないと、とっても不便。なんとかしないといけませんが……。

 放電すればなんとかなる女子エルフとは違い、妖精さんたちはそれが出来ません。

 運動で地道に減量するしか、ないのでした。


「食べ過ぎが問題なんだよ。食べ過ぎだよ!」

「きゃ~い」

「きゃきゃきゃ~い」


 チョコレートをかじりはじめた二人を見て、イトカワちゃんがまた脇腹をむににっとつかみました。

 サクラちゃんとアゲハちゃん、またまた顔を隠してきゃ~いきゃいです。

 でも、イトカワちゃんにつっこみを貰って、けっこう嬉しそうですね。

 この子たち、増量もネタにするたくましさがあるようです。

 さすが、いつでも明るい妖精さんですね!


「あや~、確かにそうかもですね~」

「こっちのお菓子、美味しいからね! 美味しいから!」

「とまんない~」

「ほらまた食べ過ぎ! 食べ過ぎ!」

「きゃきゃ~い」

「きゃいきゃ~い」


 またもやチョコを食べ始めて、お肉を掴まれる二人ですね。

 ネタのためなら増量もいとわない、その芸人魂は見習いたいところです。


「なんとかしないとですね~。むむむ、むむ~」


 妖精さん三人娘のネタはおいといて、ハナちゃん何やら考え始めましたね。

 よい提案、思い浮かぶかな?


「むむむ~。あや! アレがあるです~!」


 しばらく考えていたハナちゃん、何かを思いついたようです。

 さてさて、どうするのかな?



 ◇



「これだけ食べてもいいんだ! いいんだ!」

「お腹いっぱいになるね! なるね!」

「きゃい~」


 翌日、集会場では妖精さんたちが、とっても大喜びしていました。


「この木の実を粉にして混ぜれば、ふくらむです~」

「ふわふわおかしにつかうのが、おすすめですよ」

「いくつかお菓子の作り方、考えてきたの」


 きゃいっきゃいで喜ぶ妖精さんたちをみてニコニコしているのは、ハナちゃんとユキちゃん、そしてナノさんですね。

 どうやら女子エルフたちのだいえっとに貢献してい……まあまあしているかもの、あの膨らましちゃう粉をつかったみたい。

 それを使えば、摂取カロリーは実質的に減らせちゃいます。


「ありがと! ありがと!」

「これと踊りで、がんばるね! がんばるね!」

「痩せましょ~」


 妖精さんたちも、お腹を減らしながらだいえっとせずに済みそうで、大喜び!

 無理して食事を我慢しても、減量は続きません。

 これでようやく、彼女たちも戦う準備ができたというものです。


「あとは、踊ってなんとかするです~」

「「「きゃ~い」」」


 こうして、妖精さんたちはもっともっと元気にダンシング!

 集会場はよりいっそう物理的にキラキラ状態です。


「あら可愛いわね~。沢山動く写真、とっておくわ!」

「かわいいって! かわいいって!」

「きゃい~!」

「もっと踊っちゃうから! 踊っちゃうよ!」


 愛らしく踊る妖精さんたちに、やっぱりカナさんめろめろ。

 今日も今日とて、絵描きならではの抜群のカメラワークにて、妖精さんのダンシング映像を撮りためます。

 妖精さんたちも、可愛いと言われて大はしゃぎですね。


「うーい、またなんか賑やかじゃん?」

「あや、お仕事お疲れ様です~」

「今日も、特に何も無かったな」

「そだね」


 そうして集会場がキラキラ粒子で溢れるなか、またまた消防団の一行がやってまいりました。

 平和な村ですので、特に何も事件はなく見回りを終えたようです。

 それが一番ですね。


「お、今日はイノシシ汁があるじゃん」

「ついでに、みんなで作っといたです~」

「ありがてえ」

「あったかいな~」


 女子三人は、妖精さんにふくらましお菓子を作ってあげるついでに、消防団のためにイノシシ汁も用意していたようです。

 これにはマイスターたちもにっこり。

 早速ずぞぞとあったか~いイノシシ汁を食べて、ほっこり笑顔ですね。

 こうしたささやかな支え合いで、村が運営されていくのでした。


「……あえ?」

「あらハナちゃん、どうしたの?」

「ユキ~、いまなんか、キラキラが変だったです?」


 そんなときのことでした。ハナちゃんがこてっと首をかしげます。

 何かがあったのでしょうか?


「むむむ~? 確かになんか、変だったですけど……」

「そうなの?」

「あい~」


 キラキラ粒子が変だったと言われると、ちょっと心配になってしまいます。

 ただ、具体的に何がというのは、ハナちゃんにはわかりませんでした。


「むむ~……これはタイシに、そうだんしたほうがいいかもです~」

「そうね、あのひとなら、なにかきづくかも」

「あい~。ちょっと、お電話してみるです~」


 これ以上足踏みしていてもしょうがないので、ここは大志に相談するようですね。

 さて、一体何が起きているのか。

 問題がなければ、良いのですが……。



 ◇



 ハナちゃんから電話があり、妖精さんのキラキラ粒子について、ひっかかる点があったと連絡が来た。

 ちょうどカナさんが映像を撮影していたということなので、まずはそれを確認だ。


「ユキちゃんありがとうね。わざわざデータ持ってきてもらっちゃって」

「いえいえ、これくらいなら、なんてこと無いですよ」


 今回は親父が村から帰るとき、一緒にユキちゃんも俺んちに来てくれ、カナさん撮影の映像データを手渡してくれた。

 ほんとはすぐさま調査のため、村に行きたかった。しかし、データ解析には自宅の設備が必要である。

 各種機材もそうだし、AIちゃんの力を借りるにはここでないとダメなのだ。

 しかたなしに、俺は家でじりじりと待っていた。


「これから分析に入るけど、夜遅くなっちゃうからユキちゃんはここまでで良いよ」

「いえいえ、せっかくですので、お手伝いします」

「……大丈夫?」

「ええ、実家には連絡してありますので」


 うら若き娘さんを、遅くまで仕事に付き合わせるのはあれかなと思ったけど、ユキちゃん的には良いらしい。

 ご家族の許可も得ていると言うことで、ここは甘えておこう。


「フフフ……二人きりの部屋で、共同作業。フッフッフッフ」

「ユキちゃんどうしたの?」

「ああいえ、二人でお仕事って、良い響きですね」

「そうかな?」


 なんか突如として黒キツネさんになったけど、AIちゃんもいるので二人きりじゃないよ?

 三人で手分けしてお仕事だからね。


「ピポピポ」


 ほら、AIちゃんも、「お手伝いするよ!」て元気にお返事しているし。


「ピポ」

「ピピピ」


 ……ん? なんかコンソールに知らないタスクがあるな。

 AIちゃん、別タスクでも起動したのだろうか?

 まあ、電子知性体が何やっているか、正直わかんないんだよね。

 この辺はもう自由にさせておくしかない。


「それでは大志さん、始めましょうか」

「あ、うん」


 不審なタスクに首をかしげていると、ユキちゃんから分析開始の催促が来た。

 そうだね、まずはハナちゃんが違和感を覚えた粒子について、検証しよう。


「あら、妖精さんたちのダンス、異常に上手くなってますね」

「ほぼプロだよね、これ」


 さっそくカナさん撮影のダンシング動画を再生すると、妖精さんたちがキメッキメで踊る様子が画面に映し出される。

 なんちゅうステップの技術、カメラ目線も忘れない。

 プロじゃんこれ。


「こっちの子たち、グループで見事に連携してますね」

「もはや一つのショーとなっている……」

「ピポ」


 固定カメラの位置を意識して、やはりキメッキメで踊る妖精さんたちグループも。

 これもうダイエット目的じゃなくて、可愛く見せることを狙っておるわ。

 さすが妖精さんたちだね!


「ま、まあ分析を続けよう」


 きゃいきゃいと可愛く踊る妖精さん動画を見つめ、異変が無いかを確認していく。


「あ、この辺です。ここでハナちゃんが、違和感あるって言ってました」


 やがて、問題の部分にさしかかる。

 どうやらここら当たりで、ハナちゃんが引っかかったようだ。

 その映像とは――。


『うーい、またなんか賑やかじゃん?』


 ――マイスターが登場した時の、その瞬間だった。


 あれ……なんだか妖精さんキラキラ粒子が、変な動きをしたぞ?

 なんぞこれ?


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― 新着の感想 ―
[良い点] やめられない♪とまらない と言う訳で、全ての元凶である大志が責任を取って鬼軍曹となり地獄のブートキャンプが始まりました。嘘ですごめんなさい。 いつも通り要請王は動く写真に丸投げして姿を眩…
[一言] えぇ…マイスターのびっくり人間っぷりが止まらないw でもまぁマイスターゆえ致し方無し AIちゃんなんか増えてない…? もう一人増えたら入守家のお部屋足りるのかしら
[一言] ある芸人さんの写真を見ると、痛みが無くなるとかのヤツですかな? マイスター成分が何かに反応するとかかな? この先の展開は楽しみですね、もしかして世界中に蔓延りまくる、ダイエット戦士達の希望に…
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