第四話 外堀などすでに無い
「あ、あわわわわわ……」
ユキツネさんの悪行が家族にばれて、修行追加決定でござる、の巻。
もはや半泣きのユキちゃん。
……だいぶ気まずい場面に居合わせたけど、ぶっちゃけ俺も当事者である。
ここはひとつ、ダメ元でフォローしておこう。
「ま、まあまあ。ここは一つ、私の顔を立てて、お手柔らかに」
「大志さん……」
ご家族に向かい、なだめてみる。ユキちゃんは感謝しているのか、お目々キラキラだ。
ただ、俺は修行の追加をやめてあげて、とは一言も言っていない。高度な政治的案件だからね。
言葉で身を守るのは、保身――おっと危機管理の一つなのだ。
「そうさね。大志さんも来ていることだから、この話はまた後で」
「そうだな」
「まあ……しょうがないわね」
「後回しにしとくか」
おばあちゃんとお父さんお母さん、おじいちゃんも、ひとまずは追求を収めてくれた。
ほっと一安心だね。
「大志さん、ありがとうございます……」
ユキちゃんも心底安心した感じで、すすすっと俺の腕にしがみついてくる。
耳しっぽはぺたんと下がって、ほんと怖かったようだ。
俺としては、ふわふわ耳しっぽで超しあわせ! 役得だね!
「はふ~。助かりました」
ああいや、そこのおキツネさん。君は助かったわけじゃ無いでござるよ。
みんなは「後で」と言っているかそれに同意しているわけだ。
ただ先延ばしにしただけであって、後は自力でなんとかするしかないですよっと。
ちなみにそこを指摘しないのも政治家の仕事だ。玉虫カラーでごまかす!
「ユキちゃん、ガンバってね」
「はえ?」
いまいち事態を飲み込めていないキツネさんは置いといて、挨拶しよう。
俺は今、初めて加茂井家の面々と相対しているのだ。
これは入守家始まって以来の出来事なわけで、しっかりしないと。
「ちょいと失礼します」
「え? どちらへ」
「あれです、こういうこともあろうかと」
実は、ユキちゃんちに向かうということで色々準備してきたのだよ。
もしかしてご挨拶することになるかもねって。
元々こっちの都合で、お宅訪問を先延ばしにしていたのは俺の方だ。地味に対策はしておいた。
ということで、廊下にて一瞬でお着替えする。
俺は着替え速度には自信があるんだ。
「そんなわけで、改めてご挨拶をば」
「あら! フォーマルですね!」
「ほほう、パリっとしてますな!」
すちゃっとスーツに着替えを済ませ、リビングにリターン。
いきなりフォーマルになった俺を見て、ご両親びっくりだね。ヘアスタイルもシャキッと固めたからガチフォーマル仕様だもの。
そのまま畳みかける感じで、かっこよく挨拶するよ!
「初めまして。私は入守大志と申します。加茂井家には我が一族が長年お世話になっておりまして、感謝すること一頻りで御座います」
深くお辞儀しながら、一族を代表して感謝の意を伝える。
数千年続いている歴史の中で初の出来事だ、心の底からの感謝をお伝えしたい。
「ちなみにこれは、お礼の山吹色風味なお菓子です」
さらに爽やかスマイルにて、お土産をお渡しする。こっちもちゃんと準備してきたのだ。
備えあれば憂いナッシングだよ。ははははは。
「是非とも悪代官風でお願い致します」
「越後屋、そちも悪のよう」
「あらあら、うふふ」
そしてお土産の山吹色設定のお菓子を渡しながら演技をお願いすると、ユキちゃんのご両親がノリノリで悪代官役をしてくれた。
とっつきやすくて助かる!
「さっそくみんなで食べましょうか」
悪代官と越後屋ごっこをしたところで、ユキちゃんのお母さんが受け取った箱を開ける。
どうやら菓子折かと思っているらしい。
しかしこの俺が、お世話になった加茂井家に、菓子折だけで済ますわけが無いですよ。
「あら? これって……」
そしてお母さん、中身を見て固まる。
渡した箱の中身は、妖精さんにこねてもらった――大型増幅石セットである。
時価総額一千万円くらい。ごく普通の賄賂だね!
山吹色というか琥珀色のやつだけど。
「うっ! これマジもんのやつ」
「きゃあああ!」
「やべえ。ネタ混じりにこれを渡しちゃうのがさらにやべえ」
この中身を見たお父さんとお母さんはドン引き。むろん、お爺さんも顔が引きつっている。
ふふふ、俺はやるときはホントに、ガチな賄賂を渡す男なのだよ。
「お菓子かと思ってたんだろうけど、入守家はズレてるからねえ」
「大志さん、これはちょっと……」
うちと直で付き合いのあるおばあちゃんとユキちゃんは、耐性が出来てるね。
入守家渾身のガチ山吹色スィーツにも、多少引いたくらいで済んでいる。
でもまあ、これでユキちゃんを格安でこきつかってきた事に対するお礼は、まあそれなりに出来たかもだ。
「雪恵さんに今までご協力頂いた分も含めてですので、遠慮なさらず。どうぞ、どうぞどうぞ!」
「お、おおう」
「ユキちゃんもこれでお小遣い増えるかもよ」
「わーい!」
さて、ひとまずご挨拶は出来た。
あとはのんびりトークとかしながら、親睦を深めよう。
「まあ積もる話もあるかと思いますので、ゆっくり話しましょう」
「そ、そうね」
「お、落ち着こう」
高額賄賂で若干キョドってるご両親だけど、ひとまず腰を落ち着けるようだ。
というか自分ちだからね。
「お茶を淹れてきますね!」
そしてお小遣いが増えそうなユキちゃん、ご機嫌で部屋を出て行った。
その後に残された俺、よそのお家で初対面のご両親と向かい合うも、若干気まずい雰囲気が漂う。
ひとん家にお邪魔したときの、あるあるだね。
「あ~、まあ……あれです。入守家には、ウチの方がお世話になっている次第でして……」
「逆に申し訳ない感がすごいわ」
そして気まずさに負けたお父さん、若干おろおろしながらも話しかけてきた。
お母さんはそれなりに落ち着いたのか、申し訳なさそうな感じ。
しかし人一人を年単位で雇うのは、それくらいお金が出ていくもので。
俺としては、ごくごくの報酬かと思う。
「人件費として考えると相場通りなので、どうぞご遠慮なく」
「ま、まあそうおっしゃるなら……」
その辺は理解頂けたようで、若干申し訳なさが和らいだかな。
というか人件費をケチっても、良いことは何一つ起きない。だんだん経営が行き詰まるだけだ。
人がいなきゃ事業は動かないんだから、当たり前のことである。
ユキちゃんは欠かせない人材なので、大事にしますよって意味もこもっているので、受け取ってもらえるとこっちも一安心だ。
「あ、そういえば私たちの挨拶がまだでしたね。私はあの娘の父親です」
「私は母です。こっちは祖父ですね」
「大志君、よろしく」
こちらの気持ちが伝わったのか、みなさんも落ち着いたようだ。
柔らかい雰囲気の中、ご両親とお爺さんから改めて挨拶を頂いた。
そしてぺこりと頭を下げる三人だけど……。
――お母さんはキツネしっぽが、お父さんとお爺さんからは黒い羽根が、うっすらと見えてしまっている。
お母さんが白耳しっぽなので、モロに母親似ということまで分かってしまったぞ。
あれか、ユキちゃんがうかつなのは遺伝なのか。家族揃ってうかつ権現である。
というか俺が見鬼の力を持っているという話、伝わってないのかな?
「……」
あ、おばあちゃんが怖い顔して三人を見ている。
これ、残りの三人も修行追加じゃない?
しかしおばあちゃんも、ユキちゃんの耳しっぽ完全実体化中なのスルーだし。
どうあがいてもうかつなご家庭である。正体隠す気が本当にあるのだろうか……。
お父さん心配だよ。
◇
「きれいに除雪してもらって、ありがたいことです」
「ほんとにこの娘は……」
「ごめんなさい」
その後お茶を飲みながら、和やかに談笑していく。
ユキちゃんはちくちく言われてちっちゃくなってるけど、耳しっぽは出っぱなしだ。
やっぱりうかつ。そしてご両親もうっすら正体が見えている。
気にしないことにしよう。そもそも、ばれているとかそういう次元の話ではない。
最初から分かっているお話であり、何も驚きが無いのが逆にびっくりだよ!
「そう言えばお父さんの車、ミーティングで大人気なんですよ」
「おお! そうそう! いやはや、良い人を紹介してもらいました」
権現様の家族構成に思いを馳せていると、ユキちゃんが追求を交わすためさらりと話題変更を行った。
お父さんもレオーネの話が出たとあれば、上機嫌だ。さっくり娘に誘導されるチョロい父親である。
俺もユキちゃんの話題そらしに協力しましょうかね。
「今ではなかなか貴重なお車を維持していらっしゃるようで、素直に凄いなって思います」
「当時、一目見て気に入りまして。まあ……そもそもあの時代、この辺を走るにはレオーネでないと無理だったのもありますが」
「確かに昔は、自家用車で四駆がほぼ無かったと聞きます」
「そうなんですよ! もうほんと苦労してまして」
昔はこの辺でも、FRでなんとかしてたと聞く。
いちばん雪道に向かないやつだけど、スパイクタイヤがあってギリギリだったらしい。
そう考えると、ずいぶん技術は発達したなあ。
……しかしこの家まで、どうやって車で移動するのだろうか?
ユキちゃんが開けた『裏道』では、車の移動は不可能だ。
これは、まだまだ通用口が隠されてるな。
雪道で苦労したとも話しているから、この領域はそもそも車での移動を想定されていない基本設計かと思われる。
近代になって自家用車が登場し、急遽対応したって感。
古代からの領域持ちあるある話だね。うちも大変だったから、なんとなく親近感を覚えるよ。
この家の建築様式が新旧まぜこぜなのも、あとからリフォームしたとかだな。
旧くから続く家は、時代に振り回された痕跡が所々に残る物だ。
興味は尽きないが、そのへんを話題にするとやぶ蛇だから黙っておこう。
「あそうそう、車と言えば娘の免許取得に多大なご助力を頂きまして、もうほんと感謝です」
「いえいえ、必要な事ですので」
車の話題が出たところで、ユキちゃんの免許取得の方にも話が飛ぶ。
まあそれは、彼女が通勤しやすいようにっていう、ウチの都合の方が大きい。
そこは遠慮無しで行こう。
「雪恵さんが村に気軽に通勤できるのは、私どもとしても重要ですので」
「もうほんと、頭が上がりません」
おっと、お父さんがなんかちっちゃくなっちゃった。
一家の長として、色々思うところはあるんだろう。そこは触れないでおくか。
この後に本題も切り出す必要があるので、これくらいで収めよう。
ちょうど業務の話が出たので、頃合いだ。
「それより、うちの業務に関してちょっとご相談がありまして」
「ご相談ですか?」
「ええ、雪恵さんのことなのですが」
「――はい! はいはい! 実印と印鑑証明はありますよ!」
ユキちゃんのことを切り出したら、しゅばっとホワイトキツネさんが。
お目々キラッキラで、印鑑を構えている。
ちょうどいいな、じゃあお話しよう。
「えっとですね、実は雪恵さんを――」
「い、いよいよ!」
「――うちの秘書として、正式に雇用契約をしようと考えてまして」
「……はえ?」
すかさず仕舞っちゃう空間から、雇用契約書を取り出す。
弁護士さんや社労士さんと相談して、きっちりしたやつを作ってあるのだ。
親父に確認してもらったら、なんかのメモを見ながら項目の順番を並び替えてたけど。
まあ順番が変わっても契約内容は変わらないので、気にしないことにした。
それはそれとして、話を続けよう。
「月給制で、基本給はこれくらい。残業手当はこれで――」
「ほほう」
「ユキ、良い条件じゃないの」
「はえ?」
書面をご両親にお見せして、雇用条件を説明していく。見た感じ、乗り気なようだね。
……ただ、ユキちゃんはぽかんとしていて、反応が薄い。
あれ? 感触あんまり良くない? ただもう後戻り出来ないので、説明を続けよう。
「彼女も成人ですので、定職に就いて定収入を得た方が良いと思いまして」
「まあ……人の世で活動するなら、確かにそうですね」
お父さんも俺の話に、うんうんと頷く。
ただし、「人の世」とか言っちゃうあたり、この人も相当うかつさんである。
正体隠す気あるの?
「はえ? てっきりこの書類かと……」
「雪恵や、それはまだ早いよ」
「ええ……?」
なんかユキちゃんが紙を持っているけど、おばあちゃんがしゅぴっと後ろに隠した。
何の用紙なのだろうか。
「ま、まあ親としては文句なしです。あとは娘次第かと」
「そ……そうね。ユキ、ちゃんと確認しなさい」
「え、ええまあ」
ご両親はなんかどもっているけど、ユキちゃんに判断を任せるみたいだね。
あとなんか大混乱中の白キツネさんだけど、ご両親に言われてふらふらと雇用契約書を確認し始めた。
さてさて、請けてくれるかな?
「……ユキ、ここできっちりしとくのが大事なの」
「はえ? 就職が?」
書類確認中、お母さんがユキちゃんに何か耳打ちしている。
頭の上のふわふわ耳へ、ひそひそ話だ。
「これで契約関係を作って、霊的に囲い込んで……」
「はあ」
「それからこの契約書文言をこうしてああして、縦読みした後ユキに作らせてたアレをそうすると……」
「――! お母さんこれ!」
さらに何かをささやいたようで、ユキちゃんの耳がピンとした。
あとメモを取り出して、なんかフローチャートみたいなの書いてる。
文字は梵字というかサンスクリット語で書いているので、さっぱり読めないけど。
「ふふふ、そうなのよ。そうなるの。志郎さんにも協力を仰いだわ」
「これなら完璧……」
「ええ、ユキのもってる役所の書類が及ぶ効力は、あくまで人の世限定だから。後からで良いの」
「なるほどなるほど」
そしてユキ先生は、しっぽをご機嫌でふあっさふあっさ振り始める。
……乗り気になってくれたかな?
「ちなみにこの段階で、役所のやつにハンコが押せるわ」
「あ、ここまでいくにはもっと修行が……」
「そうなの。あちらが良くてもこちらの準備ができないから、修行が必要なの」
「わかった! 修行がんばるね!」
五分ほどひそひそやったところで、ユキちゃん納得したようだ。
相変わらずメモ書きの文言は読めないけど、鎖みたいな図形が不思議だね。
……まあ、話はまとまったかな?
「はいはい! 就職します! 秘書はお任せ下さい!」
よかったよかった。ユキちゃん我が社に就職決定だ。
これでちゃんと、法的にちゃんとした状態で、お給料を払えるよ。
契約社会は、手順と決めごとが大事だからね。
「ほら、早くハンコ押しちゃいなさい」
「そうだぞ。サクッと決めるのが良きかな」
「おやまあ」
「おし! 行くのだ!」
乗り気になったユキちゃんを、ご家族みんなで煽る煽る。
一気に賑やかになった。
「はい、ハンコ押しました。決まりです!」
そしてユキちゃん、ぽむっと押印を済ませる。
よし、これで雇用契約成立だね!
「ユキちゃんありがとう。これからもよろしくね」
「はい!」
もうご機嫌キツネさんだけど、就職出来たのはやっぱり嬉しいよね。
喜んでもらえてこっちも嬉しいけど、責任重大でもある。
雇用者としてきっちりやっていこう。
「いや~、今日はめでたいですな」
「そうそう、お祝いしましょうよ」
「お、良いね」
大はしゃぎのユキちゃんだけど、ご家族もなんだか盛り上がっている。
今日は就職祝いだね。
さて、一仕事終えたので、これからどうしようかな――と、スマホがぷるぷるした。
お電話の着信だけど……ハナちゃんか。
「ちょっと失礼します。電話が入りましたもので」
「はい」
みんなに断りを入れて、ハナちゃんコールに出る。
「ハナちゃんこんばんは」
『こんばんわです~』
電話に出ると、のんびりとしたハナちゃんの声が聞こえる。
緊急連絡じゃないっぽいね。
「それでハナちゃん、今日はどうしたの?」
『タイシ、きょうはむらにかえってくるです?』
「あ、そう言えばもう良い時間か~」
『ですです~』
ハナちゃんからのお問い合わせは、今日の予定についてだね。
さて、どうしよう。
と、考えたところで――両肩を掴まれる。
「大志さん、今日は是非とも我が家に宿泊頂いて、一緒に祝って頂ければと」
「娘の記念日ですもの、よろしくお願いします」
おおう、ユキちゃんのご両親がいつの間にか両脇に。
そしてなんとしても泊まっていって欲しいオーラが出ております。
これを断るのは、正直無理かな?
『タイシ、どうしたです?』
「あ~、今日はユキちゃんちにお邪魔して、明日村に行くことにするよ」
『……だいじょぶです?』
「恐らく」
ハナちゃんがなぜか心配してくれたけど、恐らくとしか言い様がない。
なんせここは、どこぞの権現様がおわしまする、神秘の領域だからね。
何が起こるか正直わからんのですよ。
『タイシ、きをつけるですよ~』
「うん。気をつけるよ」
『ほんとにほんとに、きをつけるです~』
やけに念を押すハナちゃんである。どうしたのだろう?
◇
ハナちゃんコールにて気をつけてねと念を押された後、まあまあ雑談して通話を終える。
そして気づくと、リビングには宴の準備が完了していた。
――いつの間に! もう泊まるしかなくなった!
「ではでは、大志さんどうぞ。どうぞどうぞ!」
「え、ええまあ」
すかさずお父さんがコップを渡してきて、お酒をどばばと注ぎ始める。
もうなんか、ユキちゃん就職祝いの会が始まっちゃう感じだ。
ご家族のみなさん、全員すでにグラスを構えているし。
「では、大志さんのお言葉を頂きましょう」
「え?」
さらに開始の言葉を振られた。
あれだ、いつの間にか俺が主賓になってる感があるぞ。
ユキちゃんのお祝い会なはずだけど……まあ、振られたからには応じましょう!
「え、ええと……この度は、雪恵さんがめでたく我が社に就職致しました。今までの実績もあり、これからの彼女のご活躍は間違い無しです」
そもそも業務内容は今までとほぼ変わらない。正社員になってもらい、給与を出すようになるだけだね。
社会的地位は変わるから、そこから色々変化はあるだろうけど。
「それではお祝いとして、今日は思いっきり雪恵さんをヨイショしましょう。かんぱーい!」
「かんぱい!」
「かんぱーい!」
そうして始まるどんちゃん騒ぎ。
まあ、俺がこの家に来た時点で、こうなることは決まっていた感がある。
長らくお宅訪問が出来なかった負い目もあるので、償いの意味も込めて一緒に騒ごうかな!
「これでやっとこ、ユキも安定するか!」
「ユキ、がんばるのよ!」
「がんばる!」
ご両親やユキちゃんも、わははわははとご機嫌だ。
「まあ、良い方向に転がると良いな」
「そうだねえ。ぼちぼちやっていくのが良いさね」
お爺さんとお婆ちゃんも、安心した様子で日本酒をちびちびやっているね。
責任重大だけど、俺も無理せずやっていきたい。
――ちなみに。
「私が若い頃、自動車教習の坂道発進でホイルスピンしまして!」
「あっはっは!」
「あとシミュレーターって意地悪設定かと思ったら、あれでも公道の理不尽さより百倍マシだったという」
「あるある!」
「あそうそう、昔のこの人よくインキーしたのですけど、もはや芸でしたよ」
「お父さんスペアキーもインするとか、なぜ出来るのか不思議よね。何のためのスペアなの?」
「おっふ」
その後お酒が回ってきたご両親が持ちネタトークを披露してくれたけど、ノリすぎてバッチリしっぽや黒い羽根を実体化させておりました。
やっぱりうかつなのは遺伝だったよ……。
神秘の大盤振る舞いだね!




