第三話 いろいろ大丈夫ではない
キツネさんから助けてメールが届いた。
一体どんな事態になっているかと思い、メール本文を見てみると――。
“豪雪でお家から出られなくなりました! お恥ずかしながら、助けて頂けると・・・”
……という、どうしようも無い理由でござった。
ただこれ、こっちの地方ではたまに起こる事態でもある。豪雪恐るべしだね。
ほんじゃキツネさんを救助に行きますか。
「タイシタイシ、どうしたです?」
お助けメールの内容を見て救助を決定していると、ハナちゃんがぴょこっとスマホの画面をのぞき込んできた。
事情を説明しておこう。
「えっとね、ユキちゃんちが豪雪で埋もれて、外に出られなくなっちゃったんだって」
「あや! たいへんです~!」
説明すると、ハナちゃんお耳がぴこーんとなってびっくり状態だね。
この村のみんなも毎日の雪かきの大変さと、埋もれたときの面倒さを知っているので、気持ちは良く分かるだろう。
「ということで、ちょっと雪かきに行ってくるね」
「タイシ、ハナたちもおてつだいするですよ?」
「そうそう、雪かきはとにかく人手が必要かと思います」
すぐさま出発しようとしたら、ハナちゃんとヤナさんからお手伝いの提案が来た。
しかしまあ……あの領域は秘密の多い場所で、出入りは承認なり資格が必要である。
ひとまずは俺一人で出向こう。そう言う意図もあって、俺だけにメールしたのだろうし。
「ユキちゃんちは色々と防御が凄くて、今のところ私しか行けないのです。なので、とりあえず一人で行ってみます」
「そうですか~」
「一人でダメだった場合は、いつでもお声がけ下さい」
「わかりました。そのときは村のみんなに頼っちゃいます」
事情を軽く話すと、ハナちゃんとヤナさんは残念そうな表情になった。力になりたかったんだろうなとは思うので、申し訳ないと思う。
気持ちはちゃんと受け取って、救助に参加しようとしてくれたことは、ユキちゃんに伝えておこう。
「では、ちょっと行ってきます」
「いってらっしゃいです~」
「何かご用がございましたら、連絡下さい」
「ふがふが~」
「あらあら」
そんなわけで、ハナちゃん一家のお見送りを受けながら村を出発することになった。
さてさて、色々準備しよう。まずはお花畑だね。
すぐさま移動して、妖精さんにお願いだ。
「こういうのって、出来るかな?」
「きゃい? もちろんだよ! もちろん!」
「おまかせ! おまかせ!」
「こねましょ~」
妖精さんにお願いしたら、きゃいっきゃいで承ってくれた。
ありがたい。
「お礼にお酒を使ったお菓子、沢山もってくるね」
「きゃい~!」
「おさけのおかしだね! おさけのおかし!」
「たのしみ! たのしみ!」
大喜びの妖精さんが、キラッキラと粒子を散布だ。
さて、ほかにも色々準備しよう。除雪機とか装備とか。
◇
――現在地、ユキちゃんちの領域前。
何処までも続くあの謎の石段が、もっさりと雪に埋もれていた。
出だしからすでに難所である。
「無理な気がしてきた」
そもそもの話、この状況でユキちゃんちに行ける気がしない。
永遠に続くかと思われる石段なのに、腰まで積もっているとおぼしき豪雪をかき分けて上る必要があるわけだ。
無理ではないだろうか。
諦めが支配する世界だけど、ひとまず電話してみよう。
「ユキちゃんこんにちは。いま石段の所まで来たよ」
『ホントですか! 助かります!』
電話をかけると、元気なユキちゃんのお声が。健康状態に問題は無いようだ。
あとはどうするか指示を仰ごう。
「それで、自分はこれからどうしたら良いかな? 石段は登れなそうだけど……」
『裏道を開けます。三段目まで除雪して頂ければ、なんとか出来ますので』
「裏道?」
『ええまあ』
裏道とな。それ、外部の人間に教えて良いのだろうか。
明らかにここ、ゴッドエリアだよね。ごくごく平凡で、どこにでもいる標準的なちたま人の俺(当社調べ)が、踏み入っても大丈夫なの?
「それって大丈夫なの?」
『恐らく』
――「大丈夫です」という保証は得られなかったでござる。玉虫色だね!
でもまあ、ユキちゃんにいつもお世話になっているというか、ほとんど助けられてばかりの俺だ。
ここらでいっちょ、恩返しのためにもがんばらないと。
まあなんとかなると思うから、前進あるのみ!
「それじゃ、まずは三段目まで除雪してみるよ」
『申し訳ないです……』
「電話から通話アプリに切り替えて、つなぎっぱなしにしようか」
『そうしましょう』
とりあえず連携できるよう、通話アプリに切り替えだ。
Bluetoothワイヤレスヘッドセットを接続し、耳に装着。
これでハンズフリーかつ長時間通話ができる。
「じゃ開始するね。そぉい!」
『はい』
ママさんダンプを持ち上げて、力業で積雪をなんとかする。
三段分の除雪だから、あっという間だね。
「三段目まで除雪できたよ」
『え? まだ一分くらいですよ?』
「あの量ならそんなもんかな?」
『ええ……?』
電話の向こうから困惑したような声が聞こえるけど、うちじゃ雪かきはだいたいこんなんだ。
驚くことは何も無いよね?
『ま、まあ大志さんですからね……。では、今から裏道を開きます』
何を驚くのだろうと思っていると、何かを諦めた感じのキツネさんから返答が来た。
いよいよ裏道オープンか。なんかピカピカって光ったら、かっこいいかも!
そう思ってわくわくしていると――。
『はい! 繋げました!』
という宣言と共に、石段の右側に――小道が現れていた。演出は無い感じ。
前兆現象とかなんもなしに、気づいたらあった感。しかしこれはこれで、逆に凄い。
さすがキツネさんだね!
……あと、神秘大暴露中だけど大丈夫かな? こんなこと出来るのは、明らかにゴッドな感じするんだけど。
まあ、気にしないことにしよう。そもそも正体は完璧バレてるし。
「なるほどなるほど。それじゃこの脇道に入るね」
『はい!』
ということで、脇道に入るんだけどやっぱりここも積雪してる。
ママさんダンプで除雪しながら、えっちらおっちら前進だ。
二メートルほど積もった雪をガンガン除雪して、進んでいく。
十分くらいした頃だろうか、突如として木々が開け――家が見えた。
あれが……ユキちゃんの実家か。
見た感じ大きな平屋建ての一軒家で、お金持ちな感じするね。
武家屋敷みたいな感じだよ。意外!
もっとこう、神社みたいなやつかと思ってた。
「なんだか武家屋敷みたいなのが見えたけど、ユキちゃんち?」
『はい。そこが私のお家です』
「でかいね。そして埋まってるね」
『はい……』
ユキちゃんちの周辺は見事に埋もれており、たしかにこれは厳しい。
さくっと家の周辺を除雪しちゃいましょうかね!
まずは正面からか。
「正門前から除雪するね」
『お願いします。内開きですので、中の方は私が担当します』
「わかった」
ユキちゃんは内部から攻めていくようだ。敷地内も埋まってるというお話だな。
中に入れて貰ったら、そこも除雪のお手伝いをしよう。
じゃあ始めるか。まずは……仕舞ってある除雪機を取りだそう。
今や俺の持つ仕舞っちゃう異空間は、地味に成長を続け……トラック一台分が仕舞えるのだ!
エルフの血統ありがとう! そぉい!
『あの……エンジン音が聞こえますが、外で何かされてます?』
「除雪機を持ってきたよ」
『え?』
ひょいっと除雪機を取り出し運用していると、ヌシであるキツネさんからお問い合わせが。
隠すこともないのでそのまんまを伝える。
『除雪機って結構大きいですよね。担いで持ってきたのですか?』
「異空間に仕舞ってきたよ。もうそれくらいなら出来るようになったんだ」
『はえ~。……大志さん、ますます人間離れしてきましたね』
「ぼくはちたま人だよ」
突っ込みを頂いたが、ごくごく普通のちたま人(当社比)であることはアピールしておく。
というかそれを言うなら、ユキちゃんは毛並み美しいキツネさんである。
お互いダメージを受けるネタを遠慮無くぶっこむあたり、正体バレしているという自覚の無いユキ先生だね。
そのうかつさがまた良い。
こんな感じでネタを交わしながら、楽しく作業を続ける。
門の向こう側では、ユキちゃんの除雪する音が聞こえ、たまに「うひー」という感じの声も。
あっちはあっちで、大変な作業だものね。お互いがんばろう。
まあ、俺の方は機械でやってるからユキちゃんほど重労働ではなかったりする。
ははは、これは準備の差なのだ。
そのへんもうかつなキツネさんだね!
こうして二時間ほど作業を行い、家の周りはきれいに除雪できた。
あとは敷地内を手伝おう。
「ユキちゃん、外は大体終わったよ。これから敷地内も手伝う?」
『そうして頂けると助かります! 今、門を開けますので少々お待ちを』
連絡すると、門の向こうでタタタっと走る音が聞こえる。
ユキちゃん自ら、開門してくれるようだ。
『今開けますね!』
ほどなくして、木製の重厚な扉が開かれる。
そこには――。
「ようこそお越し頂きました。大志さん!」
なぜか巫女服でキメッキメの、耳しっぽ全開のキツネさんが!
雰囲気あるわ~。完璧実体化してるわ~。油断しすぎだわ~。
あと寒そう。
「ユキちゃん素敵な和装だね。雰囲気バッチリだよ」
「そ、そうですか? ふふふふ……」
こんなときでもミッションを忘れない俺は、きちんとお姿を褒めるわけですよ。
若干「その雰囲気で正体ばれてますよ」感を匂わせたけど、キツネさんは上機嫌で気づかない。
それでこそユキちゃんだよ。
「ちなみに寒くないの?」
「これが一番安定するものでして」
「なるほどなるほど」
安定しすぎていろんな秘密が暴露されてるけど、本人がそれでいいならよしとしよう。
――あ、影もちゃんと出てるよ。なるほど確かに、領域内できちんとキメると安定するんだね。
まあ、観察はほどほどにして、敷地内も除雪しないと。
「それじゃユキちゃん、こっちも除雪しようか」
「はい!」
そんなわけで、ふわふわ耳しっぽを堪能しながら除雪を開始する。
「ふふふ……共同作業」
「なるほどなるほど」
ご機嫌に揺れる白い毛並みは、やっぱりもふもふで素晴らしいね!
◇
程なくして、除雪作業は完了。雪に埋もれていた家と敷地内はきれいになった。
「これくらいで大丈夫かな?」
「十分です! 今日は本当に、ありがとうございます!」
笑顔でペコリと頭を下げるキツネさんだけど、力になれて良かった。
それじゃお仕事も終わったことだし、帰ろうかな。
「じゃあ作業終了と言うことで、自分はこれで」
「――おっとお待ちください!」
帰り支度を始めようとしたら、キツネさんがぐわっしと腕をつかんで引き留める。
すっごい力!
「ここでおもてなしもせずに帰らせたとあっては、沽券に関わります。是非とも我が家でおくつろぎください」
そう言うユキちゃんからは、「絶対このまま帰さない」オーラが出ております。
俺はもうゴッド様の領域に足を踏み入れてしまったわけで、ここは従うのが吉だね。
お礼をしたいという気持ちも分かるので、言うとおりにしよう。
けっして、俺は祟りが怖いからじゃあない。そのはずだ。
「じ、じゃあ……お邪魔しようかな」
「どうぞ! どうぞどうぞ!」
お招きを受諾すると、スキップしながら先導するキツネさんである。
これから俺は、なんたら権現様の本拠地へと潜入するのだ!
ただまあ、さっき雪かきして色々見たからね。
武家屋敷風の大きな平屋だけど、玄関はなんかよくあるご家庭のドア式だった。
その辺特にこだわりは無いのだろう。
「お、お邪魔しま~す……」
「ようこそ!」
そしてまさにその玄関をくぐり、神秘の領域へと足を踏み入れる。
うん、屋内もごくごく普通のフローリングですね。
緊張して損した。
「リビングまで案内しますね。こちらです」
ただ、廊下を歩いてリビングまで向かう途中、その辺に置いてある物体を見て色々察する。
金剛杵が、無造作にあるんだよね。
まあいわゆる、ヴァジュラだ。これ、その辺に置いといて良い武具じゃないと思う。
「なるほどなるほど」
「はえ?」
「ああ、こっちの話」
「そうですか」
どうやらこのキツネさんは武闘派ではないようで、その辺に転がってるヴァジュラのヤバさには無頓着である。
現地にいた頃は必要だったのだろうけど、我が島国ではそんな事態は無かったようだ。
もう使わないんだろうね。
「おっとこれは。なるほどなるほど」
「はえ?」
「これもこれも、なるほどなるほど」
「はええ?」
あとはウチが納品した硬化純金の仏具が飾ってあったり、神道で使う道具があったり。
まさに神仏習合って歴史を感じさせる。
地域や時の権力者の都合に合わせて、それなりに付き合ってあげたって感がすごい。
けっこう人間の要望を聞いてくれる、良い神――おっと人たちだね。
「こちらがリビングです。お茶をお持ちしますので、少々お待ちください」
そんな秘密大暴露の道のりを経て、無事リビングに到着した。ここは普通だね。
でっかいテレビも置いてあって、今風である。
……そう言えば、ユキちゃんの家族はどうしているのだろうか。
ここに来るまで神――おっと人の気配は特になかった。
「お待たせしました、粗茶ですが、どうぞ」
「これはこれは、ご丁寧に」
なんか人がいないな~と考えていると、ユキちゃんがお茶をもってやってきた。
ちょっと聞いてみよう。
「ユキちゃん、ご家族はどちらに?」
「今は私だけですね。みんな用事で外出しておりまして、お留守番してたんです」
「そうなんだ」
どうやら、今はユキちゃん一人らしい。まあ、家の人たちがいたら雪かきヘルプしてこないよね。
「それでこたつにあたっていたら、うとうとしてしまいまして……気づいたらこれです」
「気持ち分かる」
キツネさんもこたつで丸くなるって訳だね。こたつはフォックスさんもダメにする魔の暖房器具なのだ。
そしてこれで、まあ色々腑に落ちた。
――この領域は、神秘的な存在が暮らすところである。
普通なら、神通――おっと不思議な力で結界なりで防御するはず。しかしなぜか、豪雪で埋もれてしまった。
実はそこが不思議だったのだけど……。
ユキちゃん一人でお留守番していて、油断したんだなこれ。
つまり、修行が足りないというお話である。
「なるほどなるほど」
「?」
自分のことにはとことんうかつなこのキツネさん、守ってあげたい。
あと毛並みが素晴らしいね。領域内だからかな?
「それで家族が帰ってくる前に、なんとかしなきゃって焦った次第でして……」
「なるほどなるほど」
この領域に気軽に来れる、ごくごく標準的なちたま人は、俺くらいだものね。
唯一頼れる人にヘルプしたって顛末だ。
家族にサボったのがバレないよう処理できるのも、俺だけか。
「大志さん、このお礼は、必ずしますので……」
「こっちもユキちゃんにはいつもお世話になっているのだから、むしろこれでもお返し出来てないのはこっちだよ」
ペコペコ頭を下げるキツネさんだけど、正直こっちが恩返ししなきゃってレベルだ。
それとふわふわ揺れる耳しっぽが眼福過ぎて、もうそれでご褒美もらった感がある。
めったに見られない完全実体耳しっぽだからね!
「あ、これは良い雰囲気。もしかして、もしかしてがあるかも……ふふふふふふ」
「ユキちゃんどうしたの?」
「ふふふふ」
耳しっぽを堪能していると、突如キツネさんがダーク化した。
しかし俺の危機管理センサーが告げるのだ。「そこに触れてはならない」と。
これでも危機管理には自信があるからね。直感に従おう。
「このままお風呂を勧めて、それからそれから……ふふふふ」
ユキちゃんがブツブツつぶやきながら、なぜかお札を取り出す。
ぼくそれ知ってる、結界張るやつだ。
加茂井さんのおばあちゃんから、買ったことあるもん。お値段は、一枚で八万円成り。
とってもリーズナブルなお品だね。
「そのあと書類にハンコを……」
ああそうそう、俺も書類持ってきたんだよね。
ウチの会社の秘書になってねって契約書だ。それも話しておかないと。
「そうそうユキちゃん、今日は書類も持ってきたんだ」
「はえ!?」
「ユキちゃん次第なんだけど、是非ともハンコを押して欲しいかなって」
「キター!」
あ、白キツネさんに戻った。なぜだか知らないけど、浄化された感がある。
よかったよかった。
「そ、それじゃあ式の日程もお話しましょう!」
「式?」
入社式かな? まあそれも必要かもしれない。
家族経営だから、そういうのやったこと無いんだよな。良い機会かも。
しかし不思議だな、なぜか俺の危機管理センサーが警鐘をならすんだ。
なんでだろ?
◇
ここはとある世界のとある村。
大志がユキちゃんちに救助に向かった後、ハナちゃんたちはおうちでのんびりしていました。
しかし、ハナちゃんの耳が突如としてぴこーん! と反応します。
「……あえ? なんかタイシが危ない気がするです?」
「そうなの?」
「気のせいですかね~?」
虫の知らせを受けた感のあるハナちゃんですが、こてんと首をかしげちゃいましたね。
しかし、大志が危機に陥る事ってあるのかな? 恐ろしいほど頑丈なのに。
ユキちゃんちでお仕事をしているのが、関係しているのかな?
それは私もちょっと気になるけど、あの領域は防御が堅くて見守れないのですよね。
まあ、大志のことだからなんとかするでしょう。
……大丈夫ですよね?
◇
「実印持ってきましたよ! 印鑑証明もあります!」
「お、おおう」
書類とハンコの話をしたら、ユキちゃんすっごく前のめり。
妙にテンション高いキツネさんだけど、何があったのだろうか?
そんな感じで、リビングが謎の盛り上がりを迎えていたときのことだ。
「降雪を防ぐの忘れてお家が埋もれたのは焦りましたが、まさかこんな展開になるなんて! ふふふ!」
「――なるほどなるほど」
「はえ?」
……俺はこのとき、一言も発していない。
リビングのドアの向こうから、「なるほどなるほど」と、別の誰かの声が聞こえてきたのだ。
そして――。
「――雪恵や、お前は仕事をさぼったあげく、『ここに』男を連れ込んだのかね? なるほどなるほど」
「……はえ?」
ギギギギィとドアが開いたそこには、結構お怒りのおばあちゃんがおりました。
「なるほど、修行追加決定だな」
「そうね。なるほどこれは修行が足りないわ」
「は、はえ……?」
さらにその後ろには、やっぱりお怒り顔の……ご両親と思われる男女が。
「じゃあ、まずはなるほど納得の、滝行から始めようか」
またもや追加で、ユキちゃんのおじいちゃんぽい方も。
あれだね、家族全員におサボりキツネさんの悪行がばれた感あります。
こんなとこでも、なるほどうかつなお嬢さんだね!
ハンコを持ってくるあの時間で、結界を張る時間を逸したわけだよ。
残念、間に合わなかった。
「あ、あわわわ……」
この現実に、ぷるぷる震えるうかつフォックスさんだ。
しかし、小刻みに揺れる毛並みはやっぱり美しい。
「た、大志さん……どうしましょう……」
助けを求めるように俺を見上げる白キツネさんでござる。
しかしさすがに自分も……これは助けられないよ。正直俺だって気まずい。
というか、この状況をどう収めれば良いのだろうか。
――だれか助けて!