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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十二章 冬への備えは
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第七話 急転直下


 ここはとある世界の、とある村。

 さわやかな朝、見事な秋晴れでとっても良い気分。


 私も昨日たくさんお供え物を取ってきて、朝から飲み放題食べ放題ですね!

 念願のムニエルも食べられて、満足満足。

 さ~て、今日は一日お仕事さぼって、のんびりすごしましょ――。


「うわわわわきゃ~!」


 あらら? なんだか、だれかの叫び声が聞こえてきました。

 村の中を、うわきゃ! と走っておりますね。


「たた、タイシさん、大変さ~!」


 大騒ぎしているのは、偉い人ちゃんみたい。

 彼女は大志たちが寝泊まりしている空き家に向かって、一直線にむかっております。


 まだ誰も起きていない、静かな村。

 そんな中、偉い人ちゃんだけ、大慌て。


「わわわわきゃ~!」


 彼女の目は、涙でいっぱい。今にもこぼれそうです。

 一体偉い人ちゃん、どうしたのでしょうか――。



 ◇



 早朝のやや肌寒い中、俺はあったかふわふわ布団の中でうとうとしていた。

 高橋さんと親父は天幕で寝ていて、今は拠点に俺一人。

 まだ起きるには早い時間なので、二度寝しちゃおうかな~と思っていたときのこと。


「うわわっきゃ~!」


 ――突然、ズドムと扉の開く音がして、誰かが部屋に飛び込んできた。

 この声は……偉い人ちゃん?

 どうしたの?


「……あ~、おはようございます」


 寝ぼけた頭をなんとか回転させ、とりあえずおはようの挨拶をする。

 ゆっくりと体を起こそうとしたところで、ガバっと肩をつかまれた。


「たたたたタイシさん、たいへんさ~!」


 おわあああああ! なんだかガクガクと揺さぶられている!

 めっちゃ慌てて居るみたいだけど、ほんとどうしたの?

 いきなりの事態に慌てて、頭が急速に覚醒していく。


「ど、どうされました?」

「それがそれが、これをみてほしいさ~!」


 覚醒した頭で、ようやく偉い人ちゃんのことをはっきり認識できた。

 なぜか彼女は、目に涙をためてうるうるだ。

 そして――。


「しっぽが、しっぽが……あおくなっちゃったさ~!」


 偉い人ちゃんのしっぽや腕、そのほかのウロコが――青く、なっていたのだった。


「――!」


 それを確認した瞬間……自分の体から、温度が消え体が痺れたような錯覚が起きた。

 時間の感覚も失われ、周囲の何もかもが遠ざかっていき、耳鳴りのような音だけが残される。

 これは――「ゾっとした」時に起こるアレだ……。


「あ……」


 うまく、声が出せない。なんだこれは? なぜ青い?

 今はいつなんだ? 彼女はどうしてここにいる?

 いきなりの事態に、頭が上手く回らない。


「うわきゃ~! わきゃ~!」


 そうして動揺しているうちに、だんだん周囲の音と自分の体温が戻ってきた。

 この事態に、俺の体は「早く対処しろ!」と、強制的に喝を入れてくる。

 ――そうだ! 呆けている場合じゃ無い!


「か……体に痺れやだるさ、妙な寒気などは感じますか?」


 出来るだけ優しく、危険な状態ではないかを問いかける。


「だ、だいじょうぶさ~……で、でも、こわいさ~」


 意識はハッキリしていて、手を握ったところ、ちゃんと体温もある。

 今すぐどうにかなる、ということはなさそうだ。

 それを確認して、だんだん冷静さが戻ってきた。


「わきゃ~……」


 しかし偉い人ちゃんは、パニックになってえぐえぐと泣き始めてしまった。

 その姿を何度見ても……青しっぽだ。

 ――なぜだ、どうして。

 今まで、じわじわと回復していたのに……。


「ううう、ウチ、どうなっちゃうさ~……」


 偉い人ちゃんは体に起きた異変に、不安で押しつぶされそうになっている。

 回復してきたと思ったところで、奈落の底に突き落とされたようなものだ。

 そりゃあ、ショックだろう。

 はやく、なんとかしてあげないと。


 ……ひとまず、温泉に入って体を温めてもらおう。


「まずは、温泉で体を温めてみましょうか」

「わ、わかったさ~」


 それが正しいことかはわからないけど、ひとまず温泉に入れば多少は落ちつくはずだ。

 その間に、俺は院長先生に連絡を取っておこう。


「ささ、温泉まで送ります」

「い、いくさ~」


 そうして偉い人ちゃんを温泉まで送り、彼女が入浴している間に次の行動へと移る。

 ユキちゃんを起こして、病院へ付き添いのお願いだ。

 今は、とにかく行動あるのみ!


 そして三十分後――。


「わきゃ~……かわらないさ~……」


 温泉に入っても……しっぽは青いままだった。

 じゃあ、次の行動に移ろう。

 と、思ったときのこと。


「う、うう……タイシさん、どうされました?」

「あたま……あたまいたいのだ……」

「きのう、のみすぎたかな……」

「みんな、なんかたいへんそうじゃん?」


 おや? 朝から大騒ぎしているの聞きつけたのか、ヤナさん率いる消防団の面々が、ふらふらとやってきた。

 みんなかなりの二日酔いみたいだけど、無理して動員したっぽいね。

 マイスターだけは平気そうだけど……。

 まあひとまず、偉い人ちゃんの現状を伝えよう。


「あ、みなさん。実は彼女のしっぽが……」

「――え? 青くなってるじゃないですか!?」

「そうなんです。なので、今から病院に行くところでして」

「わかりました。何かありましたら、電話下さい」

「はい」


 ヤナさんは事態を認識したのか、キリっとした顔になった。

 こういうとき、話が早いのは助かるね。


「消防団のみんなも二日酔いですが、集まって備えておきます。何か動いて欲しいことがあったら、ご連絡を」

「むらのことは、まかせるじゃん」

「ちからになるのだ」

「みなさん、ご協力ありがとうございます」


 こうして消防団の心強い言葉を受け、安心して病院に行ける。

 その後ユキちゃんとも合流し、いざ出発だ。

 みんなに見送られながら、車を動かし村を出た。


「あわわきゃ~……」

「もうすぐ着きますので、しばしお待ちを」

「わきゃ~……」


 体に起きた良くない変化で、偉い人ちゃんの精神状態もかなり不安定だ。

 後部座席に座った彼女の隣で、ユキちゃんが賢明に励ましている。

 そうして緊迫した雰囲気の中、病院へ到着し、院長先生の診断を受けることに。


「朝早くから申し訳ございません」

「いやいや、医者ってのはこういうのよくあるので、慣れていますよ」


 まだ七時前というのに、院長先生は快く診断を受け付けてくれた。

 ほんとうに、申し訳ない。


「ユキちゃん、付き添いお願いします」

「わかりました。お任せ下さい」


 普段は柔和な表情のユキちゃんだけど、今日は緊張の面持ちだ。

 おそらく俺の顔も、こわばっているだろう。

 診察室の前で待つのだけど、時間が長く感じられる。


 なぜ、どうして、いつのまに。何が原因? どんな問題がある?

 これから彼女はどうなってしまう?

 そんな風に思考はループし続けるが、いっこうに答えは出てこない。

 ジリジリと焦りが増し、ジワジワと……不安が押し寄せてくる。

 ただ今は院長先生にお任せするしかないのが、苦しいところだ……。


 そうして、とても長く感じる時間の中、待ち続け――。


「――タイシさん、診察終わりました。御入室下さい」

「わかりました」


 診察が終わり、ユキちゃんがドアを開けて入室を促す。

 一緒に話を聞いて、現状を把握しよう。

 緊張の中診察室へ入り、イスに腰掛ける。


「わきゃ~……」


 偉い人ちゃんの様子をうかがうと、さっきよりは多少落ち着いたようだ。

 ただ、青しっぽは力なく垂れ下がっている。

 ほんとう、心配でならない。


「先生、それで彼女は今どのような状態ですか?」

「結論から申しますと、精密検査時とほぼ状態は変わりません」

「……特に変わった点は見当たらない、と?」

「はい。血圧、脈拍、意識ともに問題は見受けられませんでした」


 先生の言葉に、少し安心する。ただ、少しだ。

 今のところ、医学的所見では、容体が悪化しているという話ではなようだ。

 ただ、今後どうなるかはわからない。


「血液検査もしておりますが、それはもうちょっと時間がかかります」

「はい」

「その結果によっては、また見えてくることもあるかと」

「わかりました」


 次は血液検査待ちとなるけど、時間はかかるようだ。

 いま緊急で、色々やってくれているのだろう。

 技師さんフル活動だと思われる。


「念のため、お嬢さんは今日一日入院して頂いて、様子を見ましょう」

「はい、お願い致します」

「わきゃ~……」


 偉い人ちゃんは入院となってしまったけど、体調自体は普通。

 しかし、心は不安でいっぱいだろう。

 付き添ってあげて、心細さを和らげないとね。


 ――こうして、今日が始まった。



 ◇



「血液検査でも、特に異常は見受けられませんね……」

「そうですか……」

「まあ、葉酸値が低いのは気になりますが、前回もそうでした」

「はい」


 やがて血液検査の結果もでたけど、それも特に異常なしとのことだった。

 しかし、明確に体に異変は出ている。


「これ以上の検査については、緊急でドック入は出来ます。検査しておきますか?」

「う~ん……」

「わきゃ~……」


 今偉い人ちゃんは、めっちゃへこんでいるわけで。

 その状態できっつい人間ドックは、追い打ちをかけるようでためらわれる。

 しかし、高精度な検査も必要かもしれず……。

 なかなか結論が出せないまま、しばし沈黙する。


「……そう言えば、昨日はたくさん飲酒をされたのですよね?」

「し、しましたさ~」

「……」


 沈黙する俺たちに、院長先生が昨日の飲酒について聞いてきた。

 偉い人ちゃんが正直に答えると、先生もまた沈黙する。


「かなり飲んだと思われますが、検査ではアルコールが検出されませんでした」

「ウチらは、よくじつにおさけがのこること、ないですさ~……」

「そうなのですか」

「はいですさ~」


 ……ん? あんなに飲んでも、二日酔いにならないのか。

 そこはドワーフちゃんの体質というか、能力ってやつなんだろうな。

 検査でもアルコールの検出が無いというのは、もう代謝されてしまっているということなのだから。


「私としましては、アルコールが原因の可能性が高いかも、と考え始めてます」

「タイミングとしては、そうですよね」

「ただ、それによる医学的な影響は見受けられず、なんとも難しいところでして」


 そう、アルコールの摂取が怪しいと思っていても、証拠が見つからない。

 なにより、今までもお酒は飲んでいたのだ。

 どうして急にこうなったかは、謎のまま、調査も困難という。

 今この場でどうこうできる話ではないことは、確かだった。


「聞くところによると、体質改善のきっかけがあったのですよね」

「そうですね。神秘の術です」


 続けて院長さんが質問してきたけど、そういやキジムナー火の浄化効能が効いたんだよね。

 それがきっかけで、じわじわ改善していった実績がある。


「であれば、それを試すのも一つの手かもしれません」

「……確かに、そうですね」

「わきゃ! たしかにさ~!」

「大志さん、キジムナー火、試す価値はありますね」


 院長さんの言うとおり、上手くいった実績がある方法を試すのは、良いかもだ。

 さっそく連絡して、配送して貰おう!



 ◇



 二日後、ニライカナイから空輸でキジムナー火真空パックが届いた。

 すぐさま村に赴き、偉い人ちゃんのもとへと向かう。


「タイシタイシ~、おかえりです~。こっちはじゅんびできてるですよ~」

「わきゃ~、ウチもさ~」

「ギニャニャ~」


 村に到着すると、ハナちゃんと偉い人ちゃん、そしてフクロイヌが出迎えてくれた。

 偉い人ちゃんは厚着してもらっていて、襟巻きとしてフクロイヌが巻き付いている。

 あったかふわふわな彼に、偉い人ちゃんを暖めて貰っているのだ。


「ハナちゃんありがとね。本当に助かるよ」

「えへへ」

「うちも、たすかってるさ~」

「ギニャ~」


 この二日間、ハナちゃんは偉い人ちゃんに付き添って、色々お世話をしてくれた。

 俺やユキちゃんでは、ずっと付き添っては居られないからね。

 フクロイヌ襟巻も、ハナちゃん発案だ。

 おかげで十一月の肌寒い中、偉い人ちゃんは体を冷やさずに過ごせている。


「あったかくて、かわいいさ~」

「ギニャギニャ」


 偉い人ちゃんもフクロイヌに感謝しているのか、頭を撫でてかわいがっているね。

 持ちつ持たれつ、助け合いだ。

 こうして、今のところ偉い人ちゃんは普通に生活できている。


 ただ――ギリギリなのは変わりが無い。

 現在は十一月になってまもなくだけど、もうすぐ初雪が降る。

 この地方は、それから一気に気温が下がるのだ。油断して良い状況ではない。

 急いで、キジムナー火にて改善出来るか試さないと。


「それでは、まずはキジムナー火食事会をしましょう」

「わかったさ~」

「ハナがおりょうりするですよ~」

「私も味付けしますので、美味しく作りましょう」

「あまいものは、わたしたちだね! わたしたち!」


 というわけで、ハナちゃんちでキジムナーファイアクッキングとなった。

 カナさんや妖精さんも参加して、仲良くお料理である。


「おいしくするですよ~」

「ハナ、しおこしょうする?」

「あい~」

「私はキジムナー火サラダをつくりますね」

「しょくざいがもえたね! みごとにもえてるね!」


 ……キッチンから、なにやら不穏な会話が聞こえてきた。

 あれ? そのまんま食べるんじゃないの?

 そういやさっきスルーしてたけど、お料理するって言ってたな……。

 じゅわじゅわと「何か」を炒める音が聞こえてくるけど、大丈夫なの?


「……タイシさん、ウチ、ふあんになってきたさ~」

「だ、大丈夫ですよ。彼女たち、お料理上手ですから」


 不安いっぱいの偉い人ちゃんがぷるぷるする横で、俺は心にも無いことを言う。

 時には嘘も必要なのだ。必要なのだ……。


 そうして二人で震える中、とうとう――審判の時が訪れる。


「ふたりとも~、おいしくできたです~」

「おめしあがりください」

「結構普通に料理できましたよ、これ」

「あまいものは、このあとだよ! あとだよ!」


 三人がコトコトと、ちゃぶ台の上に出来たてお料理を並べてくれた。

 うん、燃えてますね。

 本日の献立は、炎上サラダに炎上回鍋肉、炎上お味噌汁に普通のご飯でございます。

 おまけに、甘い物がさらにあるらしい。

 どうしてこうなった?


「タイシさん、やけにもえてるさ~……」

「そ、それだけ力がこもっていると言うことで……」


 俺と偉い人ちゃん、なぜか正座になる。

 これからこの炎上シリーズを、食べるのだ。


「どうぞです~」


 ハナちゃん満面の笑顔ですね。

 上手に出来たっぽい。

 ……では、俺から行ってみましょう!


 ――あ、ほのかな海の香りがする。



 ◇



「たくさんたべたさ~」

「ハナも、おなかいっぱいです~」

「キジムナー火、マヨネーズにもよく合いますね」


 美味しくキジムナー火食事会を終え、いまはまったりした雰囲気が漂っている。

 ほんとびっくり、いろんなお料理の具材に使えたよ。

 出汁濃いめの野菜たっぷりお味噌汁に入れたら、ほのかな塩味が良いアクセントになって、歯ごたえも面白かった。

 ハナちゃん作成の炎上回鍋肉は、醤がよく効いていてご飯が進む。

 野菜はシャキシャキ、お肉代わりのキジムナー火はふんわり食感だった。

 ユキちゃんが作った炎上サラダも、マヨネーズの酸味が炎によく合い新鮮な味わい。

 まあとにかく、なかなかのお食事だったわけだ。


「このおやつも、おいしいさ~」

「塩キャラメルパフェみたいで、深みがありますね」

「おいしいです~」


 無事食事も終え、妖精さん渾身の炎上パフェもなかなかのものだ。

 ただビジュアルは激しい。ちなみにイトカワちゃん作成である。

 この禍々しい見た目とは裏腹に「味は」満点のスイーツ、彼女にしか作れない。


「このあとは、しおサウナさ~?」

「そうですね。でも満腹時は良くないので、落ち着いてからにしましょう」

「わかったさ~」


 ということで、偉い人ちゃんは食休みをしてもらう。

 俺は俺で、葉っぱハウスのスチームサウナを準備しておこう。


「では、ちょっと準備してきますね」

「なにからなにまで、ありがたいさ~」

「ハナたちは、あとからいくですよ~」


 みんなに見送られて、ハナちゃんちから出て温泉施設へ向かう。

 現地では、親父と高橋さんやエルフたちが作業していた。


「おう大志、水源引いてきたぜ」

「これなら、水の確保も楽だろ」


 現場では、水道工事が完了していた。

 前に掘った、斜面から湧き出す水をサウナエリアまで引いてきたのである。

 これで水風呂も作れるし、スチームサウナ用の水を確保するのも楽ちんだ。

 急遽今日に間に合わせるため、突貫工事で進めてくれた。感謝だね。


「じゃあ、室内を暖め始めますか」

「おゆを、わかすさ~」

「うちもてつだうさ~」


 準備が整ったところで、サウナ室を蒸気で充満させる作業に移る。

 これは熱操作大得意の、ドワーフちゃんたちが担当してくれた。

 今この村では、みんなで協力して、偉い人ちゃんをなんとかするためにがんばっている。

 彼らの頑張りに、感謝することひとしおだ。


 そうして準備を進めて、偉い人ちゃんのおなかも良い感じになったところで。

 いよいよ、本作戦を実行する。


 ――塩サウナで、おはだぷるぷる大作戦だ!


「は~い、こちらへどうぞ~」

「いまいくさ~」


 良い感じに蒸気が充満した葉っぱサウナへ、偉い人ちゃんを招き入れる。

 室内では、水着姿の女子たちが準備万端で待っていた。


「はじめましょうか」

「では、お塩で揉みますよ」

「ありがとうさ~」

(わたしもてつだうよ~)

(せっかくだから、わたしも!)


 水着姿のユキちゃんも参加し、みんなで偉い人ちゃんをお塩でもみもみだ。

 神輿とオレンジちゃんも、なぜか参加。

 でもまあ沖縄ではこれらのコンボが効いたので、わらにもすがる思いである。


「これは美容に良いお塩とハーブなので、お肌もぷるぷるです」

「――それ詳しく」

「びようにいいの?」

「おはだぷるぷる?」


 そしてユキちゃん自爆。うかつな情報を漏らしたため、女子エルフたちに囲まれた。

 みなさん、後でね、後で。

 そのお塩、百グラムで千円する高級品なのだから。



 ◇



「わきゃ~ん」


 成功しました。あっさり!


 キジムナー火とサウナ、効き過ぎでしょ。

 偉い人ちゃんは、真っ黒な汗を沢山流して、最終的につやつやお姫様へと変身なされた。

 大成功だね!


「うまくいったです~!」

「やっぱり、キジムナー火凄いですね」


 つやつやお姫様になった偉い人ちゃんを見て、俺たちもにっこりだよ。

 しっぽは黄緑色に戻り、ほっと一安心。これで冬が来ても、なんとかなる……。

 念のため、キジムナー火は常にストックしておこう。

 追加発注、しとかないとな。


「おはだ……おはだぷるぷる……しかし」

「げきてきな、こうか……ただし」

「このおしお、めちゃくちゃたかいとか、ふるえる……」

「美しくなるためとは言え、あまりに高いわ……」


 ちなみに女子エルフたちも、今はお肌ぷるぷるである。

 お手伝い頂いた報酬として、偉い人ちゃんに使ったお塩を贈呈。

 大喜びでスチーム塩サウナを満喫し、念願のお肌を手に入れた。

 ……ただし最後に塩の値段を告げたら、別の意味でぷるぷるし始めた。

 これ、あのなんとかするエステサロンで販売してるらしく、ユキちゃんが購入してきた。

 すごいよねあのお店。


 ということで、割とマネーパワーでなんとかしたけど、ほんと良かった。

 偉い人ちゃんの青しっぽ騒動が収まり、一時の平和が戻ってきたのだ。


 ――そう、一時の平和である。

 これは、警告だ。


 油断してはならないという、アラームなのである。

 偉い人ちゃんの体質は、薄氷の上を歩いているようなものだった。

 今回は事なきを得たけど、一歩間違えれば……という話だったと俺は考える。

 実際、もっと寒い時期に今回の事態が起きていたらと考えたら――寒気がする。

 なぜこうなったか、早急に解明しなければならないし、季節的に猶予はそれほど無い。


「わきゃきゃ~ん、みんな、ありがとうさ~!」


 ただまあ、今だけは。

 体質が改善された喜びを、分かち合おう。

 


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