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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十二章 冬への備えは
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第五話 収穫祭前半!

 

 収穫祭は、楽しく盛り上がっている。

 一通りお料理も食べたので、ちょっくら挨拶もかねてみんなの様子を確認しておこう。


「自分はこれから、みんなの様子を見て回るよ。挨拶回りかな」

「ハナもいくです~」

「あ、私もお付き合いしますよ」

「ウチもいくさ~」


 挨拶回りに行くと伝えると、ハナちゃんとユキちゃん、偉い人ちゃんも参加を希望した。

 それじゃみんなで行こう。

 まずはお隣で盛り上がっている、あっちの森グループかな。


「じゃあ、まずはあの人たちから」

「あい~」

「おっと、神様も一緒に行きましょう」

(おてすうおかけします~)


 膝の上でぐんにゃりしていた神輿を脇に抱え、いざ出陣。

 みんなで歩いて行き、あっちの森グループが集まっている場所へと赴く。


「みなさん、楽しまれてますか? ご挨拶に参りました」

「こんにちはです~」

「みなさま、こんにちは」

「おやおやタイシさんたち、わざわざすみません」


 声をかけると、あっちの森族長さんが立ち上がってペコペコする。つられて俺もペコペコ。


(ども~)

(ごあいさつ!)


 神輿もぴこぴこ手を振って、オレンジちゃんもほよっと光ってこんにちはだね。

 さて、挨拶も終えたところだし輪に加わろう。


「いや~、たまごりょうりやら、しらないりょうりやらたくさんで、めうつりしますな」

「このエビフライってやつとか、たまりません」

「おさけも、ひえていたりしておいしいですね」


 腰掛けると、族長さんや元族長さんが、お料理を褒めてくれた。

 消防団長さんは、冷えたビールをぐいっと呷って、とろけ顔である。

 みなさんほろ酔い加減で、まあまあできあがっている感じだね。


「ハナたち、おりょうりがんばったです~」

「おお、ハナちゃんえらいな! ちいさいのに、たいしたもんだ」

「えへへ」


 族長さんにお料理を褒められたハナちゃん、えへへと照れちゃったね。

 ただし照れながらもお料理はバクバク食べているあたり、たくましい。


「このおまつりといい、うちのかみさまといい、おせわになってばかりで」


 続けて、族長さんが謝意を示した。シャツのポケットでもぞもぞしている、オレンジちゃんをチラリと見たね。

 自分たちの神様をよくしてくれるのが嬉しいのか、ニコニコしている。


「うちの村もよくして頂いているので、お互い様ですよ」

「こんどはきかいがありましたら、ぜひともわたしらのまつりに、おまねきしたいですな」

「お、あっちの森のお祭りですか」


 そう言えば、俺はエルフィンで活動した範囲はとても狭い。

 灰化した森に、湖畔リゾートとその周辺くらいだね。

 エルフたちが暮らす、現役の集落とかに訪れたことがないわけだ。

 ちたま側でそれを成し遂げたのは、お袋だけ。

 まだまだ見ていないこと、知らないことがたくさんだ。


「それは良いですね。機会がございましたら、ぜひ。……まあ、今のところ仕事が多くて予定がつけづらいかもですが」

「ははは、むりせず、タイシさんのごつごうがよろしいときで」

「はい、そうします」


 あっちの森までは百八十キロメートルほどの距離があるので、行くとなると十日は見積もっておかなければならない。

 往復の日程に、現地での活動期間だね。

 車で行ければ……まあ、舗装路がないから一日かかるくらいかな?

 多分燃料は往復持つだろうけど、速度はそれほど出せない。

 さらに色々準備が必要なので、まだ無理は出来ないんだよな。

 ランクルが無いと歯が立たないだろう。

 でも、いつかは行ってみたいな。知り合った人たちの暮らす、森へ。


「いつか、みなさんの世界を旅してみたいですね」


 俺はまだ、この村を守らなければならない。

 親父もまた、俺が独り立ちするまで自由になれない。

 爺ちゃんは親父に完璧に引き継いだので、もう悠々自適の異世界旅を満喫している。

 俺がエルフィンを気ままに旅できるようになるには、まだまだ時間がかかるだろうな。

 いつか、必ず。


 ――ただ、エルフィン惑星系に横たわる灰化問題を、まだ解決出来ていない。

 

 果たして解決可能な問題なのかも含め、まだまだ道は遠い。

 前に進まなければ。


「タイシ、どうしたです?」


 これからのことを考えていると、ハナちゃんがちょっと心配そうに俺を見つめた。

 ……今日は楽しい祭りの日だ、小難しいことを考えるのは、またにしよう。

 それはそれとして、ハナちゃんを安心させてあげよう。


「ハナちゃんたちの世界を、いつか旅できたら良いなって考えていてね。きっと楽しいよ」

「あや! たのしそうです~!」


 ハナちゃんも同意なのか、キャッキャとばんざいして楽しそうアピールだ。

 ……エルフィンでも、基本的にエルフたちは森から出ない。

 平原の人たちが、特殊なだけなんだよな。


「――たび! たびはよいものですよ!」

「いろんなものが、みられるかな!」

「いくっきゃないです!」

「あああああやきものあああああ!」

「あにめっ! あにめっ!」


 うわああああ!

 旅ってワードに反応したのか、いつの間にか平原の人たちに囲まれてるぞ!?

 もうなんか、テンションアゲアゲじゃないか。

 でもまあ、彼らは長らく旅を続けていたわけで。経験豊富で、実績も抜群だ。

 彼らのノウハウは、今もこれからも、遠い未来でも宝になるだろう。

 いずれ、俺がエルフィンを旅出来るようになったら、彼らの力を借りたいな。


「ま、まあ……そのときはよろしくお願いします」

「まかせてください!」

「ああああ! たびあああああ!」

「たぎってきた!」


 ハイテンションな彼らだけど、情熱が凄いね。

 そのときは、お願いしますだ。

 いつになるかは、わからないけど。


 そして俺がエルフィンを自由に旅するとき。

 おそらくかなり先の未来になるだろう。

 その時――俺の隣には、誰がいるのだろうか。


「あえ? タイシどうしたです?」

「ああいや、ちょっとね」

「ちょっとですか~」


 未来のことは、わからない。

 でも、一つの希望として、大事にしていこう。



 ◇



「わきゃ~、おさかなおいしいさ~」

「ほくほくねっこも、たまらんさ~」

「おさけ、のみほうだいさ~」


 エルフたちに挨拶回りした後は、しっぽドワーフちゃんたちに挨拶した。

 みんなお料理をおつまみに、お酒をガンガン飲んでらっしゃる。


「タイシさん、フネをたくさんつくるって、きいたさ~」

「ほんとさ~?」

「できたら、うれしいさ~!」


 そして、今計画中のエルフ重工についての質問を受ける。

 彼女たちにとっては、とても重要で興味が尽きないのだろう。

 あこがれの船が、たくさん作られる。それは、彼女たちにとっての夢なのだから。

 今のところのプランは、説明しておくべきだね。


「現在は、こういう予定で、こうなってこうで――」


 一通り説明して、その意義も伝える。

 エルフィンの力を借りれば、十分実現可能であることも。


「ゆめみたいさ~!」

「そのときは、うちらもがんばるさ~!」

「わきゃ~!」


 実際にエルフたちの作ったカヌーを使っているだけに、その量産性と性能は彼女たちも知っている。

 実現性の高い話として、みんな乗り気だね。

 実際に動き出したら、もちろんお手伝いをお願いしよう。


「わきゃ~ん、ウチもちからになるから、がんばろうさ~」


 偉い人ちゃんも、当事者だけに気合いが入っている。

 頼もしい仲間で、色々力を借りることになるだろう。


「ということで、おおきなけいかくのせいこうをいのって、カンパイするさ~!」

「そうするさ~!」


 お、偉い人ちゃんが、ドワーフちゃんたちに発破をかけたね。

 連帯感を高める良いアイディアだ。


「カンパイは、こないだうちらがしこんだおさけでやるさ~」

「タイシさん、どうぞさ~」

「ありがとうございます」


 そうして乾杯の準備が行われ、お酒が配られる。

 これがドワーフちゃんの仕込んだお酒か。香りからすると、蒸留酒だね。

 そうとうアルコール度数は高いと見た。

 どうも今日のために仕込んだぽくて、初めて見る。


「ハナちゃんは、おさけじゃないやつさ~」

「ありがとうです~」

「あ、私もそれで」

「どうぞさ~」


 ハナちゃんユキちゃんは、冷え冷えジュースだね。

 ドワーフちゃんたちががんばって、冷やしてくれたやつだ。


「では、カンパイさ~!」

「「「かんぱーい!」」」


 やがて偉い人ちゃんが乾杯の音頭を取り、ぐいっとドワーフ蒸留酒を呷る。

 スピリタスには及ばないけど、それでもかなりアルコール度数が高いお酒だね。

 味については特に癖はないのだけど、喉がカッと焼ける。なかなか刺激的なお酒だ。

 

「これは、相当強いお酒ですね」

「なんかいも、これでにこんださ~」


 お酒の感想を述べると、リーダードワーフちゃんがヤカンみたいなのを見せてくれた。

 前に見た、蒸留器だね。一定の温度で暖められて、冷やすことも出来る彼女たち。

 お酒を蒸留するのは、お手の物だろう。


「お、なんかすごそうな、おさけじゃん?」

「それって、どんなあじ?」

「きょうみあるのだ」

「なんだか、かなり強そうですね」


 乾杯をして盛り上がっていると、マイスターとマッチョさん、おっちゃんエルフにヤナさんがやってきた。

 お酒に目が無いエルフだけに、匂いを嗅ぎつけてきたようだ。


「のんでみるさ~?」

「このあいだつくった、つよいやつさ~」

「どうぞさ~」


 すかさず、ドワーフちゃんたちがヤナさんたちに、お酒を配り始めた。

 相当大量に蒸留したっぽいな。どんどん出てくるよ。

 でもこのまま飲むと危なそうなので、果汁で割って貰った方が良いかな。


「あ~、これはそのまま飲むと一発で沈むので、割って飲みましょう」

「そうするじゃん」

「まつりは、まだまだあるからな~」


 俺の提案はそのまま受け入れられ、みんなジュースで割っていく。

 エルフの森で果物取り放題なので、果汁は豊富なんだよね。

 そうしてドワーフ酒果汁割りを作り、いざ参らん。


「おおお! かなりつよいじゃん」

「かなり割ったのに、ガツンと来ますね」

「これは、きをつけてのまないとな」

「つよいけど、くせがなくて、おいしいのだ」


 ドワーフ酒を味見したヤナさんたち、その強さにびっくりしているね。

 焼酎の感覚で割っていたから、そりゃガツンと来るわけで。

 このお酒は、普通の人が飲む分には気をつけた方が良いな。


「でも、これならしょうちゅう、かわなくてすむかんじ」

「たしかにそうじゃん」


 あ、マッチョさんとマイスターが、ドワーフ酒があれば焼酎買わなくて良いことに気づいたね。

 そうそう、お安く高い度数のお酒が手に入るようになったわけだ。

 これは、輸出品としても使えるだろうな。


 そんな新しい発見をしつつ、ドワーフちゃんたちのグループを抜けて次の挨拶に向かう。

 お次は、妖精さんたちだね。動物たちも一緒に居るので、まとめて挨拶しよう。


「こんにちは、みんなお祭り楽しんでるかな?」

「タイシさんきたー! たのしんでるよ! たのしんでるよ!」

「あめざいく、つくってるよ! まげまげだよ!」

「めずらしいおかし、たくさんだね! たくさん!」


 声をかけると、きゃいきゃい妖精さんたちが集まってきた。

 サクラちゃんにイトカワちゃん、アゲハちゃんは俺の肩に乗ってきゃいきゃいだ。

 ほかの妖精さんたちもみんな大はしゃぎで、キラッキラ粒子をめっちゃ放出している。

 物理的にまぶしい。


「おさけのおかしだね! おさけ!」

「のみすぎたかも! のみすぎ!」

「おさえめに~」


 なんだか妙に数が多いけど、妖精さんたちもお団子を作っては食べ、合間にお酒をちまちま飲んでいるね。

 というか彼女たち、お料理を祭りの最中でも独自生産してるよ。

 数が多いので、なんかセルフサービスな感じ。


「おだんご、まだまだありますよ! ありますよ!」

「きゃい~! しょくにんわざだね! しょくにんわざ!」


 どうやらモルフォさんが先頭でお団子を量産していて、この大人口を捌いているらしい。

 さすが職人だね!


「きゃい~」

「きゃいきゃい~」

「きゃいきゃいきゃい~」


 よく見ると祭り会場のそこかしこに、妖精さんがきゃいきゃいしている。

 結構高密度なのは見てわかるんだけど、こんなに妖精さんって村に居たの?

 ……。

 ま、まあ賑やかで楽しいから、気にしないことにしよう!

 妖精さんたちは問題なく楽しんでいるようなので、アニマルズを確認だ。


「ば~うばう」

「ギニャ」

「きゃう」


 なぜかニホンカワウソちゃんも参加しているけど、のんびりくつろいでいるね。

 フクロオオカミはキャベツとトウモロコシに首ったけで、フクロイヌは果物をかじっている。

 カワウソちゃんは、お魚を食べている。……それ自前?


「……」

「~」


 クモさんやちょうちょさん、ハチさんも、キャラメルを抱えてぷるぷるだ。

 今日は思う存分、味わってね。


 その後、独自にきのこを焼き始めたきのこ自慢の森エルフたちに挨拶したり、親父や高橋さんたちと飲んだり、海竜ちゃんと遊んだり。

 一通り挨拶回りを行い、無事お仕事完了だ。


「挨拶回りは終わったけど、そろそろお料理大会の時間だね」

「あい~! おりょうりするです~!」

「参加者の方々に、声をかけてきますね」

「ウチも、おてつだいするさ~」


 挨拶回りは終わったけど、俺たちはまたいそいそとお仕事を始める。

 お次は新作お料理大会。

 村で作れそうな、お手軽日常料理を提案するゆるいイベントだ。

 さてさて、どんなお料理が出てくるかな?


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