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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十二章 冬への備えは
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第一話 ぐんにゃり稲刈り

 エルフ重工なんとか式会社の設立はひとまず放置して、まずは目の前の一大イベントを行わなければいけない。

 そう、稲刈りである。


「はいみなさん。いよいよ稲刈りを始めたいと思います!」

「「「おー!」」」


 良い感じに実った稲穂が(こうべ)を垂れる田んぼの前では、村人一同および観光客のみなさまが気合いみなぎる様子で並んでいる。

 農作業つなぎを着ているので、どこからどう見ても農家な感じだ。


「あ~、稲刈りって久しぶりね」

「俺もだな」


 今回はお袋と高橋さんも参加しているけど、二人ともやっぱり農作業着姿だ。

 これはこれで、新鮮である。


「タイシタイシ、ハナがんばっちゃうですよ~!」


 もちろんハナちゃんも、子供用の農作業つなぎをまとってぴょんぴょんしている。

 目の前に大量の食料があるので、もう大興奮だね。

 ここは一つ、煽っておこう。


「ハナちゃんがいてくれたら、百人力だよ。心強いな!」

「ぐふ~」


 ――おっと、作業前なのにぐにゃってしまった。

 どうしよう。

 自立不可能なまでにぐんにゃりしてしまったので、抱えてあげたほうが良いよね。


「大志さん、いきなり一名脱落しましたけど」

「衝撃の展開だね」

「ですかね?」

「ぐふふ~」


 ぐにゃってご機嫌ハナちゃんを抱き上げていると、それを見ていたユキちゃんから突っ込みを頂く。

 これはあれなんだよ。ギリギリのラインを見誤ったんだ。


「さきゆき、ふあん」

「かいまくから、とばしてるかんじ」

「もうだつらくしゃがでたとか、ふるえる」


 それを見ていたやっぱり農家ルックのエルフたちからも、ハナちゃん戦艦がいきなり戦線離脱した様子を見てつっこみが入る。

 いやでも、これわりといつもの光景ですよね?


「わきゃ~ん、うちもおてつだいするさ~」

「うちらもさ~」

「よくわからないけど、がんばるさ~」


 ま、まあ今回は戦力になる方々が大勢なので、なんとかなるだろう。

 なると良いな。


「わたしたちは、おだんごつくってまってるよ! まってるよ!」

「がんばってね! がんばってね!」

「たくさんつくっときます~」


 主力がいきなり離脱した事に物議を醸し出している中、妖精さんたちはきゃいっきゃいでおにぎりを握っている。

 お昼ご飯用のやつを、今から量産だね。なんたって、今回は大人数だ。

 彼女たちが協力してくれるおかげで、かなり助かる。


 と言うわけで、いきなりハナちゃんぐにゃる事件は起きたけど、ひとまず稲刈りを開始だ。

 刈って刈って刈りまくるぞ!



 ◇



「それでは、稲刈りの実習を行いたいと思います」

「ぐふ~」


 ぐんにゃりハナちゃんをおんぶ紐でくくりつけておんぶしながら、俺は稲刈り実習を行う。

 背負ったハナちゃんはご機嫌でぐんにゃぐにゃだけど、早期の回復を期待したい。

 とまあ、それはそれとして。


「いねかりって、くさむしりとはちがうんですよね?」

「このどうぐで、さくっとやるみたいよ」

「そうなんだ~」


 参加者はあっちの森エルフたちに、きのこ自慢の森エルフたち。


「がんばるさ~」

「おしごと、するさ~」

「わきゃ~」


 あとはしっぽドワーフちゃんたちだね。

 みなさん支給された鎌を片手に、俺の指示を待っている。

 さて、それじゃあ始めよう。


「まずはじめに、稲を手でつかんで……まあこれくらいのところで鎌を下から上に引き上げるように、刈って下さい」

「ぐふ~」


 お手本として、稲をつかんで地面からだいたい……十五センチくらいの高さの部分に鎌を入れた。

 慣れていると、それほど力を入れずにサクッと行ける。


「基本これを繰り返して、手に持てなくなったらそこにおいて下さい」

「ぐふふ~」

「とくにむずかしいことは、ないかんじ」

「これなら、だいじょうぶそうさ~」

「さくっといけそうさ~」


 もうほんと単純なので、稲刈り未経験のエルフたちやドワーフちゃんたちは、ほっとした表情だ。

 まあほんと、つかんで鎌で刈り取るだけだからね。

 干したりもするんだけど、それは後で説明すれば良い。


「と言うわけですので、お手数ですが作業のほうよろしくお願い致します」

「「「はーい!」」」

「ぐふふ~」


 一通り説明は終えたので、さっそく始めて貰うことにする。

 特に難しいことはないし大勢人がいるので、さくさくと作業は進んでいくね。


「大志さん、さすがに大勢いるだけあって、すぐに終わりそうですね」

「確かに。むしろ過剰戦力とも言う」

「ぐふ~」


 隣で作業していたユキちゃんも、見る間に刈られていく稲をみてにっこにこだ。

 本来なら田んぼ一枚で一反という広さを刈り取るには、大人一人で二日かかる作業である。

 しかし今回はその面積に十人くらいを投入しているので、あっという間に終わるだろう。


「かっこいい~!」


 ちなみにヤナさんとメカ好きさんは、コンバインで別の田んぼを刈り取り中だ。

 事前に研修は終えてあるので、意気揚々と作業中だね。

 今はヤナさんがお試しで刈り取りをしていて、メカ好きさんが見学中だ。

 指導は親父なので、任せておいて良いだろう。


 ということで、それぞれ作業分担してさくさくと稲刈りを進める。


「おおお……すでにこしがいたいじゃん……こしが……」

「すぐにこしいたくなるとか、ふるえる」

「こういうしせいで、ながいことさぎょうしないもんな~」


 進めているうちに、だんだんと腰痛との戦いになってきたようだ。

 エルフたちは腰をとんとんやりながら、それでも地道に作業を続ける。


「わきゃ~、たくさんかれたさ~」

「うちもさ~」

「おいてくるさ~」


 しっぽドワーフちゃんたちは、背が低いのでそれほどダメージがないようだ。

 力もあるので、さくさく出来ている。


「タイシタイシ~、ハナもたくさんかったです~」

「お~、ハナちゃん偉いね~。なかなかの働きぶり!」

「えへへ」


 やがてハナちゃんもぐんにゃりから復活し、んしょんしょとお仕事をお手伝いだ。

 まだまだ元気いっぱい、なかなかのペースでエルフ田んぼを刈り取りしている。

 刈り取るたびに、エルフ耳がぴこぴこして可愛らしいね。


「ぜは~……ぜは~……。ひ、久しぶりの重労働……」


 ちなみにキツネさんは、もうなんかグロッキー。

 稲の神――おっとそれ系が得意な割に、やっぱり実作業はキツいらしい。

 この辺をなんとかする権能は、残念ながら無いようだ。


「あわきゃ~……。もう、うごけないさ~」


 それと偉い人ちゃんも、ユキちゃんと同じくグロッキーになっていた。

 今はレジャーシートの上でうつ伏せに倒れ、ピクピクしている。

 しかし、体力が全然ない彼女にしてはとってもがんばっていると思う。

 無理せず、ぼちぼちやって貰えれば良いかな。


(と~う!)

(じょうずだね!)


 ちなみに我が村自慢の神輿も稲刈りに参加していて、低空飛行で稲をバッサバサと刈っている。

 オレンジちゃんはその周りをほよほよ飛んで、応援しているね。

 というか、うちの神様稲刈り上手だな……。


 そうしているうちに、時刻はあっという間に過ぎ去り、待望のお昼となる。


「おだんごたくさんあるよ! た~くさん!」

「いっぱいつくったからね! どしどしたべてね!」

「きゃい~」


 今日の献立は、妖精さんが量産したおにぎりと、たくあんのお漬物。


「おみそしるは、ここからよそってね」

「からあげもあるわよ~」

「たまごやきもあるの」


 あとはエルフの奥様方が作った、お味噌汁と唐揚げ、そして卵焼きと新鮮サラダだ。

 量産が楽なメニューでござる。

 これらを各自取りに行き、お昼の準備完了。

 それでは、食べましょうか!


「はい、みなさん午前の作業お疲れ様でした。昼食をとって休憩しましょう」

「「「はーい!」」」


 みんなで適当な場所に集まり、頂きますをして昼食開始となる。

 レジャーシートに各々腰掛け、ニコニコ笑顔だね。


「おにぎり、おいしいな~」

「からだをうごかしたあとだから、いっそううめえ」

「それな」


 さっそくおにぎりを食べ始めるエルフたちだけど、食欲が凄いね。

 あっという間に一個食べ切っちゃう感じだ。

 やっぱり体を動かしたから、おなかペコペコだよね。


「さっきかりとってたやつが、これになるんだよな~」

「ふしぎね~」

「うめえな~」


 その横では、稲刈り初参戦の観光客たちも、すっごい勢いで食べている。

 一本の刈り取った稲を眺めながら、好奇心溢れる目でおにぎりを楽しんでいる。

 彼らにとってはこれも観光イベントなため、満喫して頂きたい。


「わきゃ~、おにぎりおいしいさ~」

「ごはんってのも、いいものさ~」

「たまらんさ~」


 ドワーフちゃんたちも、結構な勢いで食べているね。

 お酒は控えているようだけど、気を遣ってくれているのかな?

 なんにせよ、家族で集まって楽しそうだ。

 みんなしっぽをぱたぱた振っていて、和やかだね。


 さて、参加者たちのお昼風景を一通り確認したので、そろそろ俺もお昼と行こう。

 ということで、ハナちゃんたちが集まっている場所まで歩いて行く。


(おそなえもの~)

(おいしいね!)

「おお! これがおにぎりですか!」


 ハナちゃんたちがいるグループは、神様ズやあっちの森族長さんもご参加頂いているようだ。

 神輿とオレンジちゃんがおにぎりをあぶだくしょんし、族長さんもキラキラお目々でおにぎりを食べている。


「ウチの村で作ったお米で、炊いたやつなんですよ」

「なるほど、これはたくさんつくりたくなる」

「ですね」


 ヤナさんはあっちの森族長さんに解説しながら、一緒におにぎりを食べているね。

 こうした現地での説明を担当してくれるので、とってもありがたい。


「ほら、大志の席はそこよ」


 そうしてメンバーを確認したところで、お袋がちょいちょいと俺の席を指さす。

 ハナちゃんとユキちゃん、あと偉い人ちゃんが、ニコニコ顔で座っていた。

 どうやら、俺を待っていてくれたようだ。

 あんまり待たせたら悪いから、さくっと席について食事を始めよう。


「タイシ~、これがタイシのぶんです~」

「取り分けておきました」

「二人ともありがとう。助かるよ」


 よいしょと座ると、ハナちゃんとユキちゃんが、俺の前にお昼を準備してくれた。

 あらかじめ取り分けておいて貰って、大変ありがたい。


「わきゃ~ん、タイシさんこれもどうぞさ~」

「あ、卵焼きですか。ありがとうございます」

「どういたしましてさ~」


 偉い人ちゃんもすすすっとこちらに寄ってきて、卵焼きを配膳してくれる。

 なんだか、至れり尽くせりだね。

 せっかく取り分けて貰ったのだから、さっそく食べよう。


「それでは、頂きます」

「どうぞです~」


 頂きますをすると、ハナちゃんがいそいそとお味噌汁を手渡してくれた。

 そうそう、俺は食事をする際に、まずお味噌汁を一口飲むんだよね。

 ハナちゃんよく見てるなあ。


「ハナちゃんありがと」

「うふ~」


 お味噌汁を受け取って、ありがとうの印にハナちゃんの頭をなでてあげると、うふうふとご機嫌になった。かわいいなあ。

 せっかくなので早速頂こう。


 ということで、ずずっと一口すする。

 味は……若干濃いめの味付けだね。農作業で汗をかいているから、このしょっぱさがとっても美味しく感じる。

 具材はジャガイモに豆腐、わかめちゃんと大根か。

 食べ応えがあるように、若干大きめに切り分けてある。

 煮崩れもしていないので、結構手間暇かかってるなこれ。

 さすが奥様方だ。


「なるほどこれは、農作業後に染みる味だね」

「おいしいです~」


 ハナちゃんも隣でお味噌汁をすすっていて、二人でほんわかする。

 エルフ耳がてろんと垂れて、垂れ耳ハナちゃんだね。


「はい、こちらもたくさん食べて下さいね」

「ユキちゃんもありがと」

「どういたしまして」


 ハナちゃんとお味噌汁を楽しんでいると、ユキちゃんからおにぎりが差し出された。

 ニコニコ顔で、お皿を手渡してくれる。


「ささ、どうぞ。どうぞどうぞ!」

「う、うん」


 しかし、ユキちゃんなぜか一瞬にして黒キツネさん化した。

 一体どうしたのだろうか。

 ……さっき稲刈りでかなり体力を消耗していたから、お疲れなのかな?

 ま、まあうかつに突っ込むと危険な感じがするので、スルーしよう。

 君子危うきに近寄らず。これも危機管理なのだ。


「じゃあ、おにぎりから行こうかな」


 お皿には大きめのおにぎりがのっかってるので、適当に一つを手に取り一口かじる。

 ほんのり薄味のご飯と、しっとりした海苔の風味が爽やかな味だった。

 中身の具は、定番の梅干し。ちゃんと種が取ってあるやつだね。

 この酸味が農作業で疲れた体にとっても効く。

 おにぎりもなかなか、絶品ですな!


 じゃあ次は、盛り付けてある鶏の唐揚げも食べてみよう。

 外はカリッと、中はじゅわわっとジューシー。

 良い感じに二度揚げしてあって、食感は抜群だ。

 味はにんにく醤油ベースみたいで、パンチがあるけど定番の味付け。

 安定感抜群の、主力おかずだね。


「おにぎりも唐揚げも、なかなかの出来だね。とっても美味しい」

「ですね」

「からあげ、カリカリふわふわです~」

「たまごやきも、なかなかさ~」


 おにぎりも唐揚げも、どちらも美味しく出来ているね。

 じゃあ今度は、偉い人ちゃんがうっとり顔で食べている、卵焼きを食べてみよう。

 お味の方は――ほんのり甘く、さらに出汁が香る良い出来だ。

 ややしっかりと焼き上げてあり、噛めば噛むほど旨みが出てくる。

 これも良い出来で、思わずにっこり笑顔だね。


「うふふ~、みんなでおひる、たのしいです~」

「こういう青空の下、みんなで食べるって久しぶりですよね」

「たしかに、そうかもさ~」


 楽しい仲間に、美味しい食事、そして天気はあっぱれ秋晴れ。

 和やかな雰囲気で、お昼休憩の時間は過ぎていく。


「……」


 しかし食べている最中、ダークフォックスさんはちらちらと、俺のお皿を見るわけだ。

 彼女の視線は、おにぎりが乗っかっているお皿だ。

 一体どうしたのだろう?


 と、ユキちゃんの視線に気をとられた瞬間――。


「タイシさんおだんごおかわりする? おかわり!」

「たんまりあるよ! たんまり!」

「しっぱいしたやつおいとくね! しっぱいしたやつ!」


 妖精さん三人娘が突如として上空から出現、そして急降下爆撃。

 俺のお皿におにぎり爆撃を行い、ずしりと補充された。

 どさくさに紛れて、イトカワちゃんがいくつか小惑星をおいてくあたり抜け目が無い。


「どうぞ! どうぞ! しっぱいしたやつ!」

「お、おう……」


 ということで、いきなり大量になったおにぎりをまた食べ始める。

 ちなみにイトカワちゃんの失敗したやつは、普通におにぎりだった。

 整形を失敗しただけなのね。ほっと一安心だ。

 デザート以外では特に大冒険しないあたり、妙なところで堅実である。


「……」


 そうしておにぎりを食べている間も、ちら、ちらっとお皿に視線を送るキツネさん。

 ほんと、どうしたんだろうね?

 あと残されているのは、おにぎり一個とお漬物だ。

 たくあんに野沢菜だね。


 ……あれ? 今日出すお漬物に野沢菜ってあったっけ?

 急遽追加されたのかな?


(なつかしいやつ~)

(ほのかにひかってるね!)


 そしてこの、謎の声のご指摘である。たしかになんか、懐かしい気がするね。

 ……まあ、気にすることも無いか。残すともったいないから、食べちゃおう。

 うん、やっぱり野沢菜は美味しいね。ほかのお漬物には無い、爽やかな味がする。

 昆布や鷹の爪の風味も効いていて、なかなか絶品だ。


「フフフ……」


 あれ? 妙に耳しっぽが美しいユキちゃん、ニヤリと笑ったね。

 そしてすすすっとこっちに来るわけだけど。どうしたのだろう?


「大志さん、お茶をどうぞ」

「あ、ありがと」

「フフ……」


 妙に耳しっぽが美しいユキちゃん、俺にお茶を手渡して正面に座る。

 ダークしっぽをふりふりと振っていて、なぜかご機嫌だ。

 しかし、暗黒だけどやっぱり毛並みは妙に美しく、これは素晴らしいね!


「久々に使ったけど、効いてる効いてる……」

「ん? ユキちゃんどうしたの?」

「ああいえ、こちらの話です」


 なるほど、そちらの話ですか。

 あんまりつっこまないでおこう。若い娘さんだから、いろいろあるよね。


「あら、お茶が切れちゃったわね」


 とそこで、ヤカンを傾けたお袋がお茶切れを訴える。

 さっき妙に耳しっぽが美しいユキちゃんが持ってきてくれた分で、終わっちゃったみたいだ。


「お義母さん、補充してきますね」

「ユキちゃん悪いわね~」

「いえいえ」


 あ、補充してくれるみたいだ。細かいところで気が利く、良い娘さんだね。

 ありがたやありがたや~。


「大志、ああいう甲斐甲斐しい子は大事にしなきゃだめよ?」

「それはもちろん。わかってるよ」

「――あや!」

「どうだか」


 妙に美しい耳しっぽを拝んでいると、お袋から人生のためになるご忠告を頂いた。

 こういう忠告は従っておいて間違いは無いね。

 というか、何回も危機から脱出できているわけで。

 これもまた、ありがたや~だね。


「むむむ~」


 しかし、ハナちゃんがなにやら考え事を始めた。

 むむむとエルフ耳をぴこぴこさせている。


「……タイシ、これたべないです?」

「これって、お漬物?」

「あい」


 そして突如、ハナちゃんがお皿を指さした。

 まだ野沢菜が残っているね。もちろん食べますとも。


「もちろん食べるよ。残すともったいないからね」

「じゃあじゃあ、ハナがたべさせてあげるです~」


 いきなりハナちゃん、あーんをしてくれるわけだけど。

 ……ああこれ、お袋の話を聞いてたんだな。

 甲斐甲斐しい子は大事にしなさいってやつだ。

 ハナちゃんも刺激されちゃったかな?


「タイシ、あ~ん」


 大事にされたい一心で、甲斐甲斐しく世話焼きしようとするハナちゃん、かわいいなあ。

 せっかくがんばっているのだから、お付き合いしましょう!


「それじゃ頂きます」

「あい~」


 ということで、ハナちゃんのあ~ん攻勢にお付き合いして、野沢菜を食べる。

 これで全部食べたかな?


「ハナちゃんありがとね」

「うふふ~」


 お礼に頭をなでなでしてあげると、うふうふとご機嫌になった。

 甲斐甲斐しく世話を出来たのが嬉しいのか、にっこにこ笑顔だね。

 しかし、なんかハナちゃん妙にお姫様っぽくみえるな。

 キラッキラしてるよ。パーティクルエフェクトかかってる。


「なんだかハナちゃん、きれいに見えるね」

「うきゃっ!」


 見たまんまの感想をそのまま言うと、ハナちゃんうきゃっと飛び上がった。

 凄いな、正座の状態から三十センチくらいの高さは飛んだぞ。なんちゅう跳躍力。


「タイシ、いきなりどうしたです~?」

「見たまま、ハナちゃんキラキラしててかわいいなって。お姫様みたいだよ」

「ぐ、ぐふふふ~」


 ほんと見たまんまを補足したら、ハナちゃんがまれに見るぐにゃり状態になった。

 この状態でも妙にキラキラお姫様に見えるのが、また凄い。

 ぐにゃり姫である。


「またこれ、すごいぐにゃりましたね」

「おんなのこだもの」

「ぐふ~」


 まれに見るぐにゃり状態のハナちゃんを見て、ヤナさんカナさんもニコニコ笑顔。

 ほのぼのとした、昼休みであった。


「ぐふふ~、ぐふふ~」


 ちなみに、ハナちゃんは夕方までぐにゃってました。


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