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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第三章  エルフ農業(初級編)
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第六話 お野菜沢山食べましょう

 

「タイシさんの言った通り、ラーメン美味しくなったな」

「豆もやし沢山とか、素敵」

「カイワレダイコンも、入れると全然違うのな」


 豆もやしこんもり、かいわれ大根ちょろっとのラーメンを食べたエルフ達、大満足です。大量の豆もやしが投入されていたので、おなかも一杯になりました。かさ増しとも言います。


「ハナちゃんすごいわね~」

「こんなに育てちゃうって、えらいわ~」

「えへへ」


 この豆もやしとかいわれ大根を提供したハナちゃん、奥様方になでなでしてもらって嬉しそう。もやしを育てたらどうなるか、食べたらどんな味がするか、皆も実感がわきました。


「おうちのもやし、育つの楽しみだわ~」

「もっと一杯仕込んじゃおうかしら」

「いいわね~」


 野菜を作ると、食べ物いっぱい、味も美味しくなる。そう気づいたエルフ達。おうちでの栽培にも、がぜん気合が入ります。

 皆の気合が入ったところで、ヤナさんが言いました。


「それじゃあ皆さん、今日も頑張って畑仕事しましょう!」

「「「はーい」」」


 今日も家庭菜園作りです。もう半分のおうちは作り終わっているので、今日やれば全部のおうちに家庭菜園ができます。

 皆はゾロゾロと作業に向かいました。


 今日も畑仕事は順調です。もう何回もやっているので、鍬で耕すコツもわかってきました。残ったおうちは三軒だけですので、そつなく予定の作業はこなせました。


「今日は早くおわったな」

「昼たべよう」


 ちょっと早い時間ですが、もうお昼にしてしまいます。お昼はすいとん汁にしました。昨日採った山菜が沢山はいったすいとん汁、おなか一杯になりました。


 お昼を食べてくつろぐ皆。これからどうするか話し合います。


「今日、これからなんか予定あったっけ?」

「特にないな」

「どうすんべ」


 今日の夕食までにする作業、特に予定がありませんでした。ヤナさんは何をしようかと話あっている皆に言います。


「温泉掃除当番の方以外は、予定した作業も無いですし、各ご家庭でやりたいことをやりましょう。お昼寝してもいいですし、お掃除しても良いですよ」


 畑もできました、山菜取りや洗濯は昨日やりました。今日はもう皆でやる作業はありませんので、各自好きにしてくださいという方針です。


「おうちのお掃除してます」

「俺らは集会場で駄弁(だべ)ろうぜ」

「私はお昼寝するわ~」


 それを聞いた皆は、各々したいことをするために解散していきました。ヤナさんの今日のお仕事も終了です。お疲れ様でした。


「じゃあ僕たちも帰ろうか」

「そうね」

「おうち帰るです~」


 一家そろって、わいわいとおうちに帰るハナちゃん達。家族が多いって、良いですね。

 おうちに着いたハナちゃん達は、それぞれ余暇を楽しむことにしました。


「僕は昼寝でもするよ。カナはどうする?」

「私は溝……絵を彫るわ」


 木の板と(とが)った石を取り出したカナさん、気合十分です。パッケージ写真を見てへこんでいましたが、内心では対抗心だってモリモリなのです。そこらにあった石ころをひっつかんで、闘志を(みなぎ)らせながら個室に入って行きました。ゴゴゴ……と音が聞こえてきそうなほどの闘志です。

 でもカナさん……モチーフがそこらの石ころな時点で、かなり望み薄ですよ?

 おうちの皆は、そんなカナさんを微妙な表情で見送りました。


 ぱたん。

 カナさんが入って行った個室の扉が閉じられました。


 ……しばらく微妙な空気が流れましたが、気を取り直してハナちゃんも余暇を楽しむことにします。


「ハナは、家庭菜園みてくるです~」

「何かあったら僕を呼ぶんだよ」

「わかったです~」


 ヤナさんに返事した後、ハナちゃんはスコップとじょうろを準備して、ぽてぽてとおうちの畑に行きました。もやし栽培が、とっても上手くいったハナちゃん。野菜栽培の面白さに目覚め始めたようで、ご機嫌で歩いて行きます。


 ぽてぽて。


「あえ?」


 おうちの畑に到着したハナちゃん。また何かを発見してしまいました。


「もう芽が出てるですか~」


 二十日大根とサラダミックス。一昨日撒いた種が、ぽこぽこと芽を出しています。こちらも大志に聞いていたより、ずっと早く成長していたのでした。


「……そういう物だと、思うことにするです」


 豆もやしも゛っさり事件で耐性が付いたハナちゃん、もうこれくらいではわたわたしません。でもやっぱりちょっと腰が引けた様子で、二十日大根の芽を摘んで間引いていきます。成長が遅い芽、間隔が狭すぎる芽を、つみつみ、つみつみ。

 ほどなくして、二十日大根の芽は等間隔になりました。綺麗な畑です。ハナちゃん、頑張りましたね。


 ……あれ? 芽の間引き方って習ってませんよね。それどこで知ったの?


「ふい~」


 ひとしきり作業して、満足な様子のハナちゃん。腰を下ろしていったん休憩です。綺麗に並んだ芽をみて、ご機嫌でした。座って足をぴょこぴょこ、ちょこっとぼんやり。

 そんな感じでのんびり休憩しました。


 しばらく休憩してから、ハナちゃんはぴょこっと立ち上がり、じょうろをもって意気揚々と畝に向かいます。これから水撒きをするのですね。


「おいしい野菜~にょきにょきです~」


 また奇妙な歌を歌いながら、じょうろで水をちょろちょろかけていきました。

 すると――。


 ぽこ。ぽこぽこ。にょきにょきにょき。


 なんと! 野菜がにょきにょき伸び始めました! さすがのハナちゃんもこれにはびっくり!


「あや?! あやややや!」


 じょうろを放り出して、尻もちをついてしまうハナちゃん。なんだか今日は、予想外のことばかりです。あややや言うハナちゃんをよそに、野菜はぐんぐん育っていきました。

 それを見て、またもや「あえ~? あえ~?」と右に左にわたわた、わたわた。

 そんなハナちゃんの声を聞いたヤナさんが、慌てて家から飛び出してきました。


「ハナ! どうした!」


 ヤナさんはちょっと足をグキっとさせながらも、シタタタタと走ってきます。そして――例のブツを見てしまいました。


 に゛ょっきり。も゛っさり。


「おわあああ! こっちもめっちゃくちゃ育ってる!」


 ヤナさんもハナちゃんと一緒になって、わたわたし始めました。どこかで見た光景です。

 畑には「あえ~? あえ~?」「おわわわ! おわわわ!」と、ハナちゃんとヤナさんの困惑する声が響いたのでした。


 

 ◇



「ハナちゃんすごいわ~」

「またお野菜沢山とか、素敵」

「うちも頑張らなきゃ」


 なでなで、なでなで、なでなで。


「うふ~」


 またまた大量の野菜が出来てしまったので、夕食に皆で食べることに。皆になでなでしてもらっているハナちゃん、ご機嫌です。

 しかし、食べたことのない野菜。お料理の仕方が分かりません。


「これ、どうやってお料理すればいいのかしら」

「このはっぱ野菜、なにをどうすれば食えるのかまったくわからんな」

「ハツカダイコンてやつも、どう食えばいいんだろ」


 大志も、こんなに早く収穫できるとはおもっていなかったので、お料理の仕方は教えていませんでした。

 大量の二十日大根とはっぱ野菜ことサラダミックスを前にして、エルフ達は話し合います。あーでもない、こーでもない。議論は一向に纏まりません。

 

 そんな皆が話し合う横で何を思ったか、マイスターがおもむろに二十日大根を掴んで食べ始めました。

 洗っていない山菜も食べられる彼は、なんのためらいもなく生でバリバリいきます。

 ひとしきり食べてごっくんしたマイスターは、皆に言いました。


「このハツカダイコンてやつ、生で食えるな」

「まじか」

「どれどれ」


 マイスターの毒見が済んだのを確認したエルフ達、しゃくしゃくと二十日大根をかじっていきます。

 ちょっと辛いですが、それ以上に甘みもあって美味しく食べられました。


「けっこう美味いな」

「これならみそ汁にいれても、生でも美味しくなりそうだな」

「こっちはどうだろ」


 バリバリと、はっぱ野菜も食べ始めるマイスター。食べたことが無い物でも、いきなり食べられちゃう根性は凄いですね。でも、見習いたいような、見習いたく無いような……。


「これも生でいけるな。草の味が多少するけど、塩かけりゃ問題ないんじゃね?」

「どれどれ……おっ! ほんとだ。結構食えるぞ」

「こんだけ食えりゃ十分だべ」


 これもマイスターの毒見が済んだので、他の皆もはっぱ野菜をバリバリと味見しました。

 ちなみにマイスター本人には、毒見をしているという意識はありませんでした。止める間もなく食べてしまうので、自然と毒見役に納まってしまうのですが。


 こうしたマイスターの体を張った毒見芸のおかげで、ようやく今日の献立が決まりました。

 山菜おやきに二十日大根たっぷりみそ汁、それに塩かけはっぱ野菜の三品です。

 

 質素な献立ですが、これは一つの始まり、一つの到達点となります。

 そう、エルフ達は今日、ついにラーメンに頼らず一汁一菜(いちじゅういっさい)を実現したのでした。


 割と大きな一歩を踏み出したことに、全然気づかないエルフ達。いつもの奥様方が、いつもの様子で料理を始めます。

 今日も和やか、エルフ達はできあがる夕食を心待ちにして、時間は過ぎて行きました。


 そしてやっぱり、おやきが足りなくなり追加で焼くことになりました。

 奥様方、つまみ食いは程々にしましょうね。


 さて、ここまでは順調、とってもいい感じですね。

 大志が来るまであと一日。エルフ達は無事に過ごせるでしょうか……。


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