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エルフのハナちゃん  作者: Wilco
第二十一章 エルフ重工
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第八話 巫女ちゃんめでぃかる


 いろいろあったけど、モルフォさんの診察を始める。

 よくよく見てみると、彼女の羽根に大穴は無かった。

 しかし、細かい穴が結構たくさん。

 ……初めて見る症例だ。

 

「おっきな穴は開いてないのですね」

「きをつけてますから。きをつけてますから」

「おかあさん、しんちょうにやってたよ! しんちょう!」


 サクラちゃんいわく、どうやら慎重に妖精ぱぅわーを運用していたらしい。

 早い時点で自分の羽根の特徴を認識して、対処をしていたってことか。

 賑やかきゃいっきゃいな妖精さんにしては、けっこう落ち着いた印象もある。

 体格とも相まって、結構特殊なお人って感じはするね。

 

「お母さんって、落ち着いてるね」

「おかあさん、しずかなひとって、ひょうばんだよ! ひょうばん!」

「ほめられてしまいました! ほめられてしまいました!」


 ……妖精さん基準だと、静かな人というカテゴリらしい。

 俺からすると十分きゃいきゃいグループなのだけど。

 ま、まあ文化の違いは置いといて、そろそろ診断を始めよう。


「それにしても、美しい羽根ですね~」

「うつくしいって! うつくしいって!」


 いつも通りちやほやして妖精さん謎粒子を出してもらう。

 モルフォさん、てれてれしながら七色粒子をぶわわっとお出しになられた。

 しかし、そこかしこから色つき粒子が出てきて、場所の特定が大変だ。

 なるほどこれは重症である。

 

『こことここ……こっちも』

「反対側はこっちとこっちですかね」


 メカ好きさんと協力して朱をちょんちょんと羽根に入れていくのだけど、ほんと多い。

 モルフォさん、慎重にやってこなかったら大変なことになっていただろうな。

 彼女の落ち着いた性格のおかげで、脆化をギリギリのところで食い止めているって感じがする。

 おかげで大穴が空くことはなかったけど、代わりに広範囲に脆化点ができていた。


「よくここまで頑張りましたね。緻密な制御をされていたようで」

「こまかいこと、とくいですから。とくいですから」

「わたしはにがてだね! おおざっぱというじかくはあるよ!」


 お母さんは細かいことが得意で、サクラちゃんは苦手らしい。

 それでも妖精さんスケールであれば、俺たちからすると精密そのものなんだけど。


 そうして雑談を挟みながら診断を続け、なんとか朱入れを終えた。

 しかし……。

 

「タイシさん、ぼくたちだけじゃ、ぜんぶはみきれていないとおもいます」

「ですよね。私も同じこと考えてました」


 モルフォさんの脆化点をマークしたとは言え、メカ好きさんも俺も少し自信がない。

 慎重かつ精密な妖精ぱわーの制御により大穴が空かなかったけど、その代わり脆化部分は細かく点在していた。

 長年の蓄積ってやつだろうな。


「ここは一つ、権威のお力を借りましょうか」

「それがいいとおもいます」


 この点についても、メカ好きさんと意見が一致する。


 ――というわけで。

 

「キャー! 大人な妖精さんがいるー!」

「はじめまして。はじめまして」

「おかあさんだよ! おかあさん!」

「そうなんだ!」


 巫女ちゃん先生を召喚し、総力体制でモルフォさんの診察を開始だ。

 脆化病診断において、ちたまで彼女の右に出るものはいない。

 

「さっそく診るね!」

「おねがいします。おねがいします」


 どこで手に入れたのか、巫女ちゃんが白衣を羽織って診断開始。

 形から入るタイプかな?


「こことここだね! こっちもかな?」


 そして巫女ちゃん、俺たちとは違い虫眼鏡も使わず診察を進めていく。

 ちょいちょいと羽根に朱を入れていくけど、やっぱり俺たちでは発見できなかった脆化部分はあるようだね。


「ここもそろそろだね! 念のため治しておくのが良いよ!」

「なるほど。なるほど」


 予防措置も含めて、着々と診察が進む。さすがは巫女ちゃん大先生だ。

 というか、俺とメカ好きさんは色付き粒子の目視のみで診断している。

 しかし巫女ちゃんは、それとはまた違った「何か」も視ているようだ。

 それが何かはわからないけど、彼女にしかできない技だと思う。

 その「何か」を視ることにより、予防措置もできるって感じか。

 

「綺麗な羽根だね!」

「ほめられてしまいました! ほめられてしまいました!」


 ちやほやする技術も駆使して、巫女ちゃんは粛々と診察を続ける。

 さすが権威だ。

 そうして二時間とちょっとに渡る診察を終えて――。

 

「あとは、治すだけだよ!」

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

「きゃい~!」


 今までにない時間をかけて、モルフォさんの診察が終わった。かなりの大仕事だったね。

 サクラちゃんもようやく診断が終わったということで、きゃいっきゃいだ。

 ではでは、あとは妖精さんたちにお任せしよう。

 

「それでは、あとは妖精さんたちにお任せする番かな」

「まかせてね! まかせて!」

「がんばるよ! がんばる!」

「まげちゃうからね! まげちゃう!」


 お任せされた妖精さんたち、気合みなぎる感じだね。

 かなりたくさん部品を作る必要はあるけど、ここまでくれば大丈夫だろう。

 治療まで持っていける状況を作ってくれた巫女ちゃんには、お礼しないとね。

 

「ありがとう。君のおかげでなんとかなりそうだよ。きちんとお礼はするね」

「どういたしまして!」

「ひとまずお仕事は終わったので、妖精さんと思いっきり遊んでほしいな」

「わーい! そうする!」


 巫女ちゃんは妖精さん大好きなので、一緒に遊べるのが何よりのお礼になる。

 それとは別に、報酬も用意するけど。

 ひとまずは、お泊りして思いっきり村を楽しんで欲しい。

 

「それじゃ、お花畑にいくね!」

「いっしょにいきましょ! いっしょにいきましょ!」

「きゃい~」


 そしてそのまま、巫女ちゃんは妖精さんたちと一緒にお花畑へと向かっていった。

 楽しく遊んでね。

 

「キャー! お花タワーができてる! なにこれ綺麗!」

「おきゃくさんだね! いらっしゃい! いらっしゃい!」

「いっしょにあそぼ! あそぼ!」

「キャー!!! 妖精さんもたくさん住んでる~!」


 しばらくして、お花畑のほうからは、巫女ちゃんと妖精さんたちの楽しそうな声が聞こえてきた。

 今日は一日、キャーキャーと賑やかだろう。

 そうして思いっきり遊んで、大勢の妖精さんたちと、交流を育んで貰えたら何よりだ。

 


 ◇



「妖精さんたち、またね!」

「またね! またね!」

「おみおくり~」

「おみやげのおだんごだよ! おだんご!」


 翌日、巫女ちゃんはつやつや顔で村を後にする。

 明日は小学校があるので、今日中に帰らないといけないからね。

 まあ、今度長期休みがあったら村に招待しよう。

 彼女はまちがいなく、俺たちの恩人なのだから。

 

 とまあ、巫女ちゃんを家まで送るお仕事をするわけだけど。

 せっかくなので、マイクロバスを出してお出かけイベントも同時開催とする。


「おでかけです~」

「旅行から帰ってきたばかりですが、お出かけは良いものですね」

「またしゃしんとらないと!」

「これがのりものですか? のりものですか?」

「そうだよ! そうだよ!」

「すごいやつだよ!」

「らくちんなやつ~」


 メンバーはハナちゃんとヤナさんカナさん。

 それとモルフォさんに妖精ちゃん三人娘だ。

 

(おでかけ~)

「神様、シートベルトをしましょうね」

(こうかな?)


 もちろんユキちゃんと神輿も一緒だ。

 さらには……。


「わきゃ~ん、またどこかにつれていかれるさ~……」

「こわがることないさ~。おいしいラーメン、たべられるさ~」

「あれはすごかったさ~」


 偉い人ちゃんと、ミタちゃんご一家も。

 ちょっとした社会見学って感じで、ご招待だ。

 偉い人ちゃんにどこへ行くか説明するのを忘れたので、黄緑しっぽはぷるぷるだけど。


「わわわきゃ~ん……」

「おでかけ、たのしみさ~」

 

 ぷるぷる偉い人ちゃんとは対照的に、ミタちゃんご一家はわきゃわきゃと楽しそうだ。

 そして今回、ミタちゃんご一家を連れ出したのは、わけがある。


「かあちゃ、ラーメンたのしみさ~」

「たくさんたべるさ~」

「わきゃ~」


 ミタちゃんのお母さん、当初からリーダーっぽい役割を果たしていた。

 そんな彼女は今や、実質的な湖のリーダーとなっているわけで。ヤナさん的役割を担い始めている。

 まだまだ駆け出しだけど、それでもみんなから頼られているわけだね。

 であれば、俺もいろいろ頼りにする部分も出てくる。というか、連れだす機会も増えるわけだ。

 今のうちから、ちょいちょい慣れてもらおうって作戦だね。


「わきゃ~ん……。こんどはどこにいくのさ~?」


 ちなみに偉い人ちゃんを拉致――おっと連れてきたのは、単なる接待でござる。

 おいしいラーメンをぜひとも食べて頂きたくて。

 ただ、外出慣れしていない偉い人ちゃんはぷるっぷるだけど。

 しかしあのラーメンさえ食べさせてしまえば、外出が大好きになること間違いなしだ。

 外の世界は広くて、美味しい物も沢山あるんだよって実感してもらいたい。

 そう、これは接待なのである。


 ……二日後にお医者さんに連れていくための、仕込みではなく接待なのだ。

 針をチクっとされてご機嫌斜めになることが予想されるので、今のうちにラーメンの味を覚えさせ、それでご機嫌を取り戻してもらうという作戦では決してない。

 あくまでも、純粋な接待なのである。

 

「あや~、またタイシわるだくみしてるです~」

「ハナちゃん、大人になるっていうのはああいうことなの」

「ああいうことですか~」


 ちょっ! ハナちゃんバックミラーで俺の表情確認してる!

 運転席だから悪だくみ顔、見えないと思ってたのに!

 ユキちゃんも適当な説明してないで、フォローしてください!

 


 ◇

 

 

「このおだんご、じしんさくですよ。じしんさくですよ」

「お母さんのお団子、すごい! 職人技だね!」

「ほめられてしまいました! ほめられてしまいました!」

「おかあさんてれちゃってるね! てれてれだね!」


 巫女ちゃんちに向かう道中は、にぎやか大爆発だ。

 バスの中では、モルフォさんの職人お団子試食会が開催されている。

 巫女ちゃんも思わずうっとりする、素敵お団子がつぎからつぎへと出てくるね。


「大志さん、このままラーメン屋さんで合流ですよね?」

「そうだよ。みんなでラーメンを食べながら、和気あいあいと過ごそうってね」

「たのしみです~」


 こんな賑やかな車内でも、ユキちゃんは予定の確認などお仕事をきちんとしてくれる。

 たまに俺がド忘れするときもあるから、大事な役目だね。ありがたやありがたや。

 今回はユキちゃんが確認してくれたとおり、巫女ちゃんのご両親と護衛君とはラーメン屋さんで合流だ。

 そのまま夕食を一緒に食べて、親睦会をする。

 俺は俺で、ラーメン屋さんご夫婦とちょっと話もあるので、丁度タイミングが良かった。

 巫女ちゃんをご両親にお返しするのと併せて、ちょっと仕事を進めようって計画だね。


「ハナ、ラーメン楽しみかい?」

「あい~! たくさんたべちゃうです~」

「わけっこしようね」

「もちろんです~」


 ハナちゃんはラーメンが楽しみでしかたないのか、キャッキャと大はしゃぎしている。

 そんな様子を、ヤナさんとカナさんがにこにこと見ているね。

 でもお二人も、ちょっとじゅるりとしておりまして。

 食いしん坊ご一家さんだ。


「わきゃ~ん、いろんなたてものがあるさ~」

「たのしいさ~」

「わきゃ~」


 ドワーフちゃんグループも、窓の景色を楽しみ始めた。

 ぷるぷる偉い人ちゃんも、今は好奇心で目をキラキラさせている。

 いまだに行き先を告げていないのだけど、ふっきれたようだ。

 ……振り回されるのに、慣れただけかもしれないけど。


 とまあ、賑やかなみんなの声を楽しみながら、バスを走らせる。

 二時間とちょっとくらい走って、巫女ちゃんの住む町に到着だ。

 そのままラーメン屋さんへ直行する。


「大志さん、ラーメン屋さん大繁盛してますね」

「最初のころとは見違えるようだ」

「おきゃくさん、たくさんです~」


 ラーメン屋さんに到着すると、良い感じにお店は繁盛していた。

 すっかり軌道にのった感はあるね。よきかなよきかな。

 混雑は予想済みで席は予約してあるので、ささっと入店しようじゃないか。


「それではみなさん、お店に入りましょう」

「いくです~」

「ラーメン! ラーメンさ~」

「たのしみだね! たのしみ!」

「キラキラしていてたのしそうですね! たのしそうですね!」


 駐車場にバスを停めて、みんなでラーメン屋さんに入店!

 すると、予約席にはすでに巫女ちゃんのご両親と護衛君が座っていた。


「お待たせいたしました」

「パパ! ママ! ただいま~!」

「おお! ちょうど私たちも、さっき来たところなんですよ」

「お久しぶりです」


 声をかけると、にこやかにあいさつを返してくれた。

 巫女ちゃんもお父さんお母さんの席にむかい、真ん中に座ってご機嫌だね。


「わきゃ~ん。なんだかいいにおいが、するさ~」

「ふしぎなところですね! ふしぎ!」


 ラーメン屋さん初体験の偉い人ちゃんとモルフォさんは、興味深そうにきょろきょろと店内を見回しているね。

 そういや、妖精さんは基本甘い物しか食べない。

 サクラちゃんたちはもう何でも食べるけど、モルフォさんはどうだか確認しとこう。


「あの……これからしょっぱい物とか食べますけど、大丈夫ですか?」

「わたくし、すききらいはないですよ。ないですよ」

「お肉とかでも、食べられます?」

「あのむらでも、ふつうにたべてましたよ。たべてました。おにくおいしいですね!」

「さようで」


 ……どうやら、何でも食べられるようだ。

 というか、村で過ごしていたときにお肉とか食べていたらしい。

 お留守番リザードマンたちに貰ったっぽいな。

 このお母さんも、相当な食いしん坊と見て間違いないだろう。

 まあ、それならここの絶品ラーメンも楽しめるよね。よかったよかった。


 さて、それじゃあモルフォさんもラーメンを食べられると言うことで。

 俺も席について、何を食べるか選ぼうじゃ無いか。

 ということで、メニューを開いて物色する。

 相変わらず多種なのだけど、これに対してはいろいろ個人的に思う点もある。

 でもまあ、今はそれ系の話は置いといて、夕食を楽しもう!

 

「ハナはこれにするです~」

「僕はこれがいいな」

「わたしはこれ!」


 さっそくハナちゃん一家は食べたいメニューを決めて、うきうきしている。

 俺はどれにしようかな。

 

「あ、私はこれで」

「わたしはこれだよ! これだよ!」

「おいしそうだね! たのしみだね!」

「なぞのたべものですね! なぞですね!」


 そうこうしているうちに、ユキちゃんや妖精さんたちも食べたいものを決めていた。


「わきゃ~ん、みそラーメンがあるさ~」

「これ、ばつぐんにおいしいさ~」

「うちもそれにするさ~」


 ドワーフちゃんたちもお決めになられたようなので、俺も急がないとね。

 ということで、海の幸ラーメン、君に決めた!

 これは食べたことがないから、どんな味か楽しみだ。

 さて、俺は決めたからあとは神様だけかな?

 

(これしかない~)

 

 と、神様もお決めになられたようで。

 まあデカ盛り系のやつという予想は付くけど、今回はどんなフードファイト対象を選んだかな?

 

(これこれ~)


 ……ペタ盛りラーメンて、なんぞ? これが単位だとすると、テラより上なんだけど。

 なんか単位がインフレ起こしてないかな?

 名前からして危険物な感じがするよ……。


 とまあ一つだけ単位がおかしいラーメンも含め、みんなの分を注文する。


「うふふ~うふふ~。ラーメンたのしみです~」

「僕もわくわくしてるよ」

「まだやせてないけど、これくらいはだいじょうぶよね!」

「だいじょうぶだよ! おそらくだいじょうぶ!」

「わきゃ~ん、まちきれないさ~」


 ラーメンが出来上がるのを待つ間、みんなわくわくが抑えきれないようだ。

 もうすでに店内には良い香りが漂っているので、空腹は刺激されまくり。

 全員うずうずしながら、その瞬間を待つ。

 

 そうして、十五分ほどウェイトしたところで――。

 

「お待たせ致しました!」


 次々に、ラーメンが運び込まれてくる。

 テーブルの上はもうお祭り状態となり、様々なメニューがずらりと並び始めた。

 

「伸びちゃうといけないから、先に来た人から食べちゃいましょう」

「「「はーい!」」」


 ラーメンは時間が勝負なので、伸びる前に食べちゃうのが吉だ。

 というわけで、先に来た人から食べちゃうことにする。

 

「うきゃ~……、くちのなかが、てんごくです~」

「ほわわ……」

「はわ……」


 いち早く来たハナちゃんとヤナさんカナさんは、一口目でうっとり。

 ハナちゃんとかは、エルフ耳をでろんと垂らしてとろける笑顔だね。

 

「大志さん、以前より味に深みが増してますよ」

「ほんと?」

「ええ。お客さんが増えてたくさん作るようになったので、腕が上がったのではないかと」

「なるほど」


 ユキちゃんは信州野菜とえのきたっぷり、辛味噌ラーメンを食べて、感心したように感想を述べた。

 以前より味がよくなっているらしい。ラーメン屋さん夫婦も、たゆまぬ修業を続けているようだ。

 

「うわっきゃ~ん! このみそラーメン、やばいほどおいしいさ~!」

「たまらんさ~」

「いしきをうしないかけたさ~」


 ドワーフちゃんグループもラーメンが来たようで、濃厚白みそラーメンにうっとりしていた。

 偉い人ちゃんとかは、黄緑しっぽをぷるぷるさせて感動しているね。

 ミタちゃんは美味しすぎて気絶寸前だし。

 

「これはおいしいですね! ほそながいおだんご? ほそながいおだんご?」

「らーめんていうおだんごんだよ! らーめんておだんご!」

「せつめいがざっくりしすぎだね! ざっくり!」

「おおざっぱ~」


 妖精さんグループは、モルフォさんが恐ろしい速度でラーメンを消費していた。

 体が大きいだけに、食べる量も多いようだ。なんちゅうか逞しさのレベルが違う感じ。

 サクラちゃんのフリーダム過ぎるラーメンの説明はあれだけど、気に入って貰ったぽい。


 そうして、村人たちがラーメンをうっとりとほおばる様子を眺めていると――。


「はい、ペタ盛りラーメンです」

(きたー!)


 ――来た。神輿しか頼まないであろうデンジャー物量ラーメン!

 ラーメン屋さんご夫婦が、二人がかりで運んでいるよ。


「……でかすぎです?」

「大志さん、これってもはや……タライでは」

「奇遇だねユキちゃん、自分も同じこと考えたよ」

「ですよね」

「あやや~」


 神様がご注文なされたペタ盛りラーメン、もはやどんぶりというスケールではなかった。

 タライサイズのどんぶり? に、想像を絶する量の麺や具材がどっかんと鎮座している。

 物量をこれでもかと主張した、明らかな危険物だ。

 威圧感すら感じるラーメンでござるよ。

 

(いただきまーす!)


 この威圧感にも臆さず、神輿は器用に箸を使ってちゅるるんと食べ始める。

 息継ぎという行為が必要ない神輿のため、ノンストップでどんどん麺が吸い込まれていく様は、見ていて見事だ。


「おおお~! なんかすごいのが居るぞ!」

「あの量のラーメン、食べきれるの?」

「つうか、ネタメニューじゃなくてほんとにあるんだ」


 周りのお客さんたちも、神輿フードファイトを見て盛り上がり始める。

 ネタメニューと思っていたらしいけど、このお店の品ぞろえは全部ガチメニューなのだ。


(おいし~)


 とか言っている間に、もう半分くらい消えていた。

 ――神様、食べるのめっちゃ早いよ!?


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